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建設業の働き方改革? 2024年から始まる時間外労働の上限規制とは

最近までの日本は、高度経済成長期やバブル期の成功体験を継承した「徹底的に働く」という価値観が根強く残っており、年齢によってはバブル期に「24時間戦えますか」というキャッチコピーのドリンク剤が出たり、00年代から10年代にかけても、長時間労働の職場や、いわゆるブラック企業などの問題が出たことは記憶に新しいでしょう。

しかし、失われた30年による経済成長の停滞、少子高齢化・核家族での育児・介護などの社会構造の変化やIT化の進展により、「働き方」を根本的に変える必要があるのではないかという課題を社会全体が意識するようになりました。

その中で、「働き方改革」というテーマが社会における大きな課題となっており、長時間労働が度々問題視されている建設業にも波が押し寄せています。働き方改革が影響を与える業種・分野は極めて多くあります。

今回の記事では、建設業において2024年から開始される、時間外労働の上限規制に関して解説するので、ぜひ参考にしてみてください。

1 建設業の働き方改革で、2024年からどう変わるの?

建設業の働き方改革で一番大きく変わるポイントは、労働時間の上限規制です。建設業の業界は、もともと人手不足であること、中小零細企業や一人親方が多いことから、労働時間が長くなるケース、土日祝日などの労働が常態化するケースが多くあります。

2020年に行われる予定であったオリンピックに対する建設需要や首都圏の建設需要、災害の復興需要への対応など、様々な事情から、労働時間への上限規制が他業種より5年遅い2024年4月へと延期されていました。

他業種に比べ、5年長い猶予期間が与えられたとはいえ、これまで業界で常態化していた長時間労働の状況から一気に方針を転換、かつクライアントの指定する期限に工事を完了させる体制を作るには、一朝一夕の準備では難しい所があります。2024年4月を迎えるにあたって、建設業界の経営者・管理職が率先して、働き方改革に対応できる体制を整える必要があります。

それでは、建設業の働き方改革で、労働時間の上限規制ほか各種規制はどう変わるのでしょうか。規制の理由から内容、対応方法、注意点を確認していきましょう。

1-1 建設業の労働時間上限規制は2024年4月から

建設業の労働時間上限規制は、2024年4月から開始されます。国土交通省の「建設業における働き方改革」の資料には、建設業の労働時間と、全体の産業の労働時間の比較が記されています。2016年のデータですが、全体の産業が年間労働時間1720時間・年間出勤日数222日なのに対し、建設業は年間労働時間2,056時間・労働日数251日と、全体の産業に比べ長時間労働・労働日数の高止まりが示されています。

さらには、同資料の建設業における「建設業における休日の状況」という資料を見ると、建設業全体が、4週4休以下、つまり土曜出勤は当然として、日曜日に休めない日もあるという職場が少なからず存在する状態です。4週8休、つまり完全週休2日間を実現している企業は建設業全体の5.7%に過ぎないという状況です。

もともと建設業は、担い手確保の課題があり、労働条件の改善が多方面から求められていました。これまで建設業の主軸を担った団塊世代の大量退職や、若い人材の建設業への敬遠など、人は減る、しかし新規雇用が難しいという状況が続いています。

しかし、労働時間や日数を改善したくても、建設業の現場では人数・予算が限られるという現実が存在します。様々な制約がある中でも、工期に間に合わせることが至上命題です。加えて元請と下請の力関係などがあり、労働時間の上限規制が難しい状況でした。

また、個人事業主である一人親方などは、労働時間や日数などで工賃が変わります。働けば働くほど売り上げが上がるため、個人事業主にとっては労働時間・労働日数を短縮することによるメリットがない状況です。このように、労働時間短縮でインセンティブがある従業員と、むしろマイナスな一人親方という関係があり、単純に業務効率化をし、労働時間削減を行えばみんな満足、という状況ではないことも言えます。

このような状況で労働時間などの課題を解決するために、これまでより一歩踏み込んだ措置が取られることになりました。限度を超えた時間外労働をさせた経営者等に対し「6ヵ月以下の懲役、または30万円以下の罰金」という実際の罰則を伴う、強い措置が導入されることとなりました。

もし、経営者が規制に反した働かせ方をした場合、刑事罰だけではなく、業務の存続の根幹が揺るがされる可能性もあります。労働者の使用に関する法令の規定に基づき、経営者・役員が懲役・罰金刑に処せられた場合、建設業許可の欠格条項に該当することになり、代わりの役員の補充が出来ない場合は、建設業許可の取消になる可能性があります。また、欠格条項の該当者は、処罰終了後5年間は建設業許可を取得したり、建設業の役員となることができません。

また、代わりの役員を任命した場合でも、労働法違反の事例は建設事業者のデータベースに登録される可能性が高く、元請業者・下請業者からの敬遠などで、事業継続そのものが厳しくなるおそれがあります。そのため、長時間労働の問題というのは軽視することができません。

ただし、一般的な大企業が2019年4月、中小企業が2020年4月に時間外労働の労働規制が入る一方、建設業など一部の業界に対しては、業界の特殊性やオリンピックの建設需要への対応や各種建設需要への対応のため、5年間の猶予が与えられています。結果として、2024年4月1日から「原則月45時間」かつ「年360時間の労働時間」の上限が設けられる事になりました。

なお、災害や復興など、急を要する場合は、やむを得ない例外として、上限を超えることが認められます。(単月で100時間未満、2ヶ月ないし6ヶ月の平均で80時間の条件を適用しない)

1-2 なぜ建設業の労働時間上限規制がされるのか

経営者、特に中小零細事業者や個人事業主からしてみると、今回の規制は「意図はわかるけど、現実的には相当な負担で対応できるかわからない」という意見もありますが、このような規制が導入されたのは、労働者の健康維持・労働災害の防止と、担い手確保のためです。

長時間労働が常態化すると、年代・体力を問わず、注意力が散漫になるおそれがあります。建設現場は、高所労働やクレーン・デリックなどの機械操作、重量物の運搬、道路工事や立木の伐採など、少しのミスが大きな労働災害や第三者への被害に繋がる作業が大量にあります。

建設現場等においては「ご安全に」「注意一秒、怪我一生」などの言葉が使われています。長時間労働による注意ミスにより労働災害や第三者への被害が発生すると、被害者への金銭賠償や謝罪に加え、様々な意味で経営者・現場責任者が法的・金銭的・社会的責任を問われることになります。

その時、「現場作業員が作業に間に合わせるために、自主的にやっていたのだ」という言い方は通用しません。管理する側が、労働の管理者として「適切な管理を怠った」とされるのです。

これまで、長時間労働の問題は、繰り返し各所で提起されていました。しかし、発注者の力が強く、短納期要請や顧客からの仕様変更などの各種要求に応えないと、今後の発注が望めなくなってしまうおそれがある、また受注者側も忖度してしまうという業界構造がありました。

加えて、長年続いた慣習を急に変更することは難しいというのは、どの業界でも得てしてあることです。建設業でも、土日返上で工期に間に合わせるようにするため、加重労働・長時間労働などで「なんとかしてきた」という面も否めません。

その点で、これまではなんとかなったが、今回は「変えるきっかけにしよう」とトップ・管理職が腹をくくる必要があります。

1-3 建設業労働時間上限規制の内容

建設業の労働時間上限規制の内容を整理します。厚生労働省の働き方改革特設サイトには、下記の例が列挙されています。

  • ・時間外労働(休日労働は除外)の上限は、原則として、月45時間・年360時間
  • ・臨時的な特別の事情がなければ、これを超えることはできない
  • ・臨時的な特別の事情があって労使が合意する場合でも、
        時間外労働 :年720時間以内
        時間外労働+休日労働 :月100時間未満、2~6か月平均80時間以内
  • ・原則である月45時間を超えることができるのは、年6か月まで

また、2024年4月からも続く建設業の特例としては、下記のものがあります。

  • ・災害の復旧・復興の事業を除き、上限規制がすべて適用
  • ・災害の復旧・復興の事業に関してのみ、時間外労働と休日労働の合計について、「月100時間未満」「2~6か月平均80時間以内」とする規制は適用されない

以上の点があります。

1-4 建設事業者は上限規制にどう対応するか

建設事業者が上限規制に対応する上では、どの従業員が・どのような業務に・どれくらい時間を費やしているかという状況を把握することが重要です。

一つの手法として、各従業員が、どれくらいの時間働き、何の業務に従事し、どのような成果を出しているかを、紙なりGoogleカレンダーなり、あるいは職場で使用しているシステムなりに30分単位で記録してもらうというやり方があります。

また従業員が関わっている事業に重複しているものはないか、複数人で行う方が効率のいいもの、あるいは単独で行った方が効率的なものなど、「従業員が実際にやっていること」を見える化するプロセスで、様々なものが見えてきます。

例えば、

  • ・ある従業員は所定時間で業務を終えており、早く帰ってもいいはずなのに、上が残業しているため気を遣って残り、サポートしている
  •  

  • ・ある従業員は、他の従業員1時間でできる作業に1時間30分かけたり、常態的に残業をしているが、残業代目当てに仕事をダラダラとしている
  •  

  • ・ある従業員は、特定の作業がボトルネックになっており、特定作業をする局面では、作業に習熟したサポート人員にヘルプをさせる必要がある
  •  

  • ・あるパート社員は、正社員が行うべき業務も巻き取り、従業員の負担の軽減に貢献している。正社員の業務に関しても円滑に行える見込みがあるため、正社員化・役職を付けることにより権限を与え、より能力を発揮し、相応の報酬を得てもらう

その他、様々な「見える化」したことにより、これまでなんとなく判定されていた社員の業務に対する貢献が明確化されることが望めます。それぞれの能力に応じ、業務の再編成や再配置を行うことにより、各人が能力を発揮しやすい位置に動けることとなり、またぶらさがり社員に対する緊張感も与える事ができます。

また、無駄な仕事を減らすことで、従業員の残業・ストレスを軽減し、結果として職場のホワイト化・個人の能力の発揮も望みやすくなります。

「こんなに忙しいのに、どうやって時間を削るんだ」という考えから、「時間を削るために、なぜこんなに忙しくなっているのか、無駄なことをやっていないか見直そう」という分析・改善を行うことで、結果として業務全体を効率化し、経営者・従業員のQOL(クオリティ・オブ・ライフ)も向上させることが望めます。

また、業務効率化で時間ができることにより、従業員に複業を認めたり、自主的な専門分野の学習、家族がいる場合は家族とのコミュニケーションの促進、地域社会への参画など、従業員により幅広い視野を持たせたり、行動をさせることができるようになることが望めます。

1-5 建設業の36協定はどう変わる?

建設業に限らず、従業員を残業に従事させるためには、過半数以上の労働組合(もしくは労働者の代表者)と使用者間での36協定(さぶろくきょうてい)の締結が必須となります。なぜ36協定という名前なのかというと、労働基準法36条を協定の根拠としているからです。

労働基準法36条第1項の条文は、下記の通りです。

“(時間外及び休日の労働)
使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定をし、厚生労働省令で定めるところによりこれを行政官庁に届け出た場合においては、第三十二条から第三十二条の五まで若しくは第四十条の労働時間(以下この条において「労働時間」という。)又は前条の休日(以下この条において「休日」という。)に関する規定にかかわらず、その協定で定めるところによって労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる。“

上記のとおり、労働時間や休日の原則的な規定は労働基準法で定めてられていますが、36協定を締結すると、締結した事項に定めたことに基づき、原則的な規定を超えて労働時間を延長したり、休日労働をさせることができます。

従来の36協定でも、時間上限というのは定められていましたが、建設業は適用除外の対象であり、36協定自体にも罰則規定は定められていませんでした。そのため、建設業においては36協定が実効性を持たないという課題が存在しました。

しかし、建設業においては2024年4月から時間外労働の上限は「原則月45時間・年360時間」が罰則付きで定められたことにより、実質的に強制力を持つようになります。

次の項目で、具体的な例を検討します。

1-6 建設業の労働時間上限規制の注意点

労働時間の上限規制を考える上では、「所定外労働時間」と「法定外労働時間」の違いを理解することが重要です。

労働基準法違反の有無は「所定外労働時間」ではなく、「法定外労働時間」の超過時間で判断されます。

上記の「所定」と「法定」は、一見違いがわかりにくいですが、具体例を元に説明します。

法定外労働時間とは、「労働基準法で定めた法定労働時間(1日8時間・1週40時間)を超える時間のことを指します。また、法律上の休日労働は、労働基準法で定められた「法定」休日に労働した時間がカウントされます。

加えて、労働基準法では原則として、使用者は労働者に対して「毎週少なくとも1回」以上休日を与えなければならないとされています。ゆえに、「法定」休日とは、1週間につき1日以上の休日のことをいいます。ただ、「1週間につき、1日以上」という点は注意が必要です。

仮に、毎週土曜・日曜を所定休日、そのうち日曜を法定休日と定めている事業場があったとします。この場合、土曜日に労働した時間は「法定」休日労働には該当しない一方、日曜日に労働した時間は「法定」休日労働とされることになります。月曜~土曜までに労働した時間が40時間を超えていた場合には、超えた時間は「時間外労働」にカウントされるので、注意が必要です。

この所定休日と法定休日の違いは、一般の人にはわかりにくいです。社会保険労務士などの専門家に、「自社の場合はどうなのか」という実例を当てはめた上で、法定労働時間を遵守するか、36協定をどのような内容で締結するか、社会保険労務士に相談・作成を依頼すると良いと言えます。

どのような業種でも、繁忙期というものは存在しますが、労働者の労働時間把握を常時行わないと、気付いたら規定に抵触している可能性も0ではありません。そのため、専門家や総務・人事と連携した労働時間の管理は重要と言えます。

1-7 「働き方改革」と事業成長の両立をするには?

働き方改革の重要性は確かにわかっているが、うちの会社では難しいという意見もあるでしょう。ただし、「うちの会社では働き方改革なんてできない」という気持ちでいるより、働き方改革を契機として「どうすれば業務効率を向上し、働き方改革を実現できるか」、「従来の無駄な慣習・非効率な業務の排除、IT化の実現」「労働環境の改善で、スキルある人材を集め、育成し、事業を成長させされられるか」と前向きに考える方が生産的です。

「パーキンソンの法則」という言葉に、聞き覚えがあるという方も少なくないかと推察します。

「仕事の量は、完成のために与えられた時間をすべて満たすまで膨張する」「役人の数は、仕事の量とは無関係に増え続ける」など、様々な切り口で語られますが、要は長年仕事をやっていると、本来「なくてもいいのではないか?」という仕事も含めて増え続けることを示唆した法則です。

実際、建設業でも、形骸化した安全チェック、やたらとハンコの欄が多い稟議書、無駄な会議、作業現場の「ムリ・ムラ・ムダ」、属人化してブラックボックスとなった作業など、創業当初に比べ、様々な「なくした方がよいけど、これまでの慣例で続けている」ということが多い事が考えられます。

特に、業歴を重ね、規模も大きくなった会社ほど、「慣例作業」というのは積み重なっている可能性があります。これを機に、「これはいらないのではないか」という作業を廃したり、ITで代替できる場合は代替する、各種制度やサービスを活用するなど、工夫を図る必要があります。

IT・各種制度・サービスを通してできる効率化事例を挙げます。

  • ・契約書を紙ベースではなく、Web上の契約にする(契約書のシステム利用料はかかるが、印紙代が不要になる文書が増える)
  •  

  • ・勤怠管理を紙製のタイムカードではなく、クラウド化することにより、ICカード・GPS等で電子タイムカードを打刻、オンラインで出勤情報を共有、勤怠管理や給与計算のデータとしても活用する
  •  

  • ・過去の契約書を電子化してくれるサービスを用いて、契約書を電子化、必要な際にオンラインで内容を参照できるようにする
  •  

  • ・作業人員が足りない際に、事業者や職人とのマッチングができるアプリを活用する
  •  

  • ・働き方改革推進支援助成金など、労務管理に対する助成金や、IT補助金・小規模事業者持続化補助金など各種補助金を活用するために、社会保険労務士(助成金)、商工会・商工会議所・認定支援機関(補助金)に相談したり、事業効率化のための設備投資・設備資金借入を行う。
  •  

  • ・働き方改革推進センターという機関があるため、相談を行い、専門家から業務効率化・労働時間短縮のためのアドバイスを受け、実行する
  •  

  • ・トップや総務部長が、「休日・夜間・早朝のメールや連絡対応は、緊急時以外は禁止」と定める
  •  

  • ・人材に特定の技能ばかりを集中して行わせるのではなく、他の業務も研修・実務参加・習熟させることで、業務の属人化を防ぎ、また人材の多能工化(マルチタスク対応)を図る
  •  

  • ・ポジションを問わず、職員全員をランダムなグループに分け、現在の業務のムダやボトルネック、効率化などに関するブレーンストーミングを行い、集約した意見を順次実行していく
  •  

  • ・通信機能・カメラ・動画撮影機能付きタブレットの導入により、施行状況を現場と現場事務所
  •  

  • ・本店(支店)でリアルタイム共有したり、各種書面をデジタルでアップデートできるようにする
  •  

  • ・ノウハウや基本的な指導を動画に収めることで、同じ人が2度・3度教える必要をなくしたり、研修をビデオ化・オンライン化することにより、一度に一カ所に集まって行うことや、同じ人が同じ事を繰り返し教えることをなくす
  •  

  • ・ドローンの空撮機能を使うことにより、直接の確認が難しい場所のチェックを可能にする
  •  

  • ・VRを活用し、熟練職人の作業を記録、他の担当者が実際の動作をトレースしながら、習熟しやすくする

など、事例を挙げると枚挙に暇がありません。

ただし、IT等はあくまで改善のツールに過ぎません。本当に必要で、効率化に資するか、それとも従来のやり方が効率的かを見定め、取捨選択していく必要があると言えます。

1-8 働き方改革対応のアクションリスト

ここまで、建設業に要される働き方改革や対処法などを示してきました。

全体を踏まえ、経営者・管理職がすべきことをアクションリストとして整理します。

  • □ 全従業員の従事する業務を1週間書き出すことにより見える化、労働時間に対する成果や適性、業務上のボトルネックやブラックボックスの発見、社員が具体的にやっていることと、出した成果の確認、やらないでいいことをやっていないかなど、従業員の関わる業務と、業務の洗い出しをする
  •  

  • □ 働き方改革の相談機関や社会保険労務士、認定支援機関、商工会、商工会議所等に相談、働き方改革に対応するための各種労働協約・36協定の作成、人員の再配置、働き方改革に対する補助金・助成金の活用検討、必要に応じた申請と受給
  •  

    □ 労働を効率化するためにIT・IoTの導入(ITコンサルタントなどの客観的な視点・設置も含め)と、コンサルタント等による従業員への使い方レクチャー・ITへの習熟研修を行う

     

  • □ 働き方改革にそった労働時間での業務の試行(数週間)、トライアルを含め、実際に働き方改革に対応できるか、時間を必要以上に取る業務はないか、業務時間を適正化するために削れる業務はないかを洗い出し、削り、業務に支障がないかを実地確認する
  •  

  • □ トライアル期間であることを踏まえ、これまで検討に上った手法。IT機器・IoT装置などを都度導入し、試していく。想定通りの成果が得られるかを、実際に活用することにより確認する
  •  

  • □ 働き方改革の実際のテストを通して、社員側からの意見を集約し、業務の改善にフィードバックする
  •  

  • □ 根本的に不要な業務を見直し・削減する。また、属人化・ブラックボックス化している事業は、人事の停滞・不正の温床・事業のボトルネックとなるおそれなど、負の面が多いため、複数人が対応できるようにしたり、業務プロセスを担当者に必ず分解させ、「外から何をやっているのかわからない」という状況を作らない
  •  

  • □ 社会保険労務士のアドバイスを受け、業務体制改善や働き方改革にかかる書類整備を行う。また、働き方改革に関するサイトや書籍などを通し、2024年4月までに余裕を持って対応できるよう準備をする
  •  

  • □ 同時に、業務改善のPDCA(Plan-Do-Check-Action、計画・実行、検証、行動)サイクルを回し、次々と無駄な業務の洗い出しや、人員の無駄な手待ち時間の削減、ダラダラ残業の撲滅、形骸的な業務の停止、風通しの良い、ポジションを問わず意見を言える空気づくりなど、無駄取りと改善のサイクルを高速で回していける体制を構築

2021年5月現在から見れば3年近くあるため、多少余裕を持ってしまう可能性があります。しかし、実際の所は、日々の業務に追われていると3年というのはあっという間に過ぎていきます。

気付いたら、建設業でも働き方改革の適用が開始し、労働時間の削減と業務の両立が難しくなるという状況になって始めて業務を見直そうと思っても遅い場合もあります。

経営者だけではなかなか動きにくいからこそ、早めの働き方改革対応の準備開始、各種専門家への相談と、働き方改革実現への制度設計・書類作成・各種補助金・助成金申請の依頼、必要なITツール等の試験導入従業員一人一人の時間と成果に対する意識付けなど、打てる手段は早めに打っておくことが望ましいでしょう。

直前になればなるほど、対応も急ごしらえになり、結果として不充分な物になったり、制度に穴が出来るという事態が起こりかねません。余裕を持って対処することが大切です。

 

2 まとめ

建設業に関わる事業者からは、「今の業務でいっぱいいっぱいなのに、さらに時間の制約をつけ、足かせを付けるようなことは止めて欲しい」という意見もあります。

しかし、制度適用が決定した上は、どのように対応するか、今回の働き方改革を機に、いかにプラスの方向に現状を改善していくかを検討するかなど、前向きに対応していく方が生産的な場合もあります。特に今回の働き方改革は、「これまでのあり方を抜本的に変えよう」という国や社会からのメッセージとも考えられます。

これを改革の好機にするか、それとも小手先の対応で乗り切るかは、経営者・管理者の事業・社員・社会に対する心がけ次第です。ぜひ今回の働き方改革を業務改善・業務改革のチャンスと捉え、事業成長や職場環境改善のきっかけとしていくことが大切です。

建設業許可申請が全国一律76,000円!KiND行政書士事務所:東京