建設業界への転職を考えている方必見! メリット・デメリット、必要資格などを解説
日本の建設産業は、国内総生産(GDP)のおよそ10%に相当する建設投資、全産業の一割の就業人口を持つ基幹産業です。民間だけでなく公的需要も大きいこと、取引で動く金額が大きいことなどで、異業種から建設業界への転職を検討している人もおられるでしょう。
そこでこの記事では、他業種から建設業界への転職を検討している方のために、建設業界のメリット・デメリットや必要資格についてまとめましたので、ぜひご参考ください。
1 建設業界の全体像
建設業界への転職を考える上では、まず、建設業界の全体像を把握しておくことが大切です。建設業と一概にいっても、「建設・土木・設計・施工」など、様々なジャンルに分けられます。行う事業も、「建設物の建築・インフラ整備・災害復旧・解体(高層ビル含め)」など、多岐にわたります。
また、各分野で必要とされる人材、業界内でのポジション、どれだけ力仕事があるかなど様々な点が異なってきます。そこでまずは、建設業界の形に関して全体像を見ていきましょう。
1-1 建設業界には様々なジャンル・職種がある
建設業界を4つの大きなくくりに分類し、それぞれで行う業務の概要を見てみましょう。
役割 | |
建設 | いわゆるスーパーゼネコン・ゼネコン・地場の設計会社など大きな建設物の建設がメインです。建設物など、建物そのものに関わることが多い立場となります |
土木 | 現場作業や、土(地盤固めなど)、建物の根本となる地面や道路、地下などを工事することが多く、インフラ整備や適切な地盤の整備など、現場仕事・力仕事や専門知識を活かした作業が多い、縁の下の力持ち的存在です |
設計 | 建物の設計を行ったり、各種官公庁に届出を行います。一級建築士などの専門資格の取得や書類の作成、CADなど専用ソフトの利用、設計知識のような頭脳労働に加え、現場での実際の施工が正しく行われているかを確認することも不可欠です。細やかさと口頭・書面の両方で、利害関係者に設計を伝える能力が求められる業務と言えます |
施工 | いわゆる現場監督の側面が強く、工事を実際に行う上で、設計通りに工事が行われているかなどの、厳格な管理が要されます。また、プロジェクトがきちんと予定通りに進んでいるか、労働者の安全が守られているかなどの管理も重要と言えます |
それぞれ建設業界においては欠けてはならない存在であり、各業種間における連携が極めて重要と言えます。
また、以下の通り、建設業ならでは独特な特徴もあります。
建設業の特徴 | 具体例 |
---|---|
受注・オーダーメイドが原則 | 一部例外はありますが、原則クライアントの注文を請け負い、オーダーに応じた事業を行いますので、基本的には全く同じ商品というのは存在しません(建売住宅のように、設計が近しいものは存在します) |
個別生産 | 建築物は、固有の土地の定着物として建築されます。当然、全てが同じ土地ではないので、土地の地盤や周辺環境、近隣住民、防災などを考慮した建設が求められます |
移動産業 | 工事現場は一定ではありません。ある現場が終わると、次は別の現場へ赴きます。同じところで毎日ルーチンワークをするのではなく、時期に応じ現場が変わることも特徴です |
屋外産業 | 工事現場の大半は屋外のため、天候・季節など自然の影響を受ける側面があります。そのため、雨・台風など天候不順による作業遅延が起こらないよう、監理者の監督が重要となります |
ワンチームで進める産業 | 建設を行う上で、一番上の「元請け」という企業は存在します。また、元請け企業には、下請け企業に安全管理など必要事項を周知させる義務を負います。下請け企業も元請けと一丸となり、建築物等を完成させる必要があります |
このように、他業種と異なる、建設業ならではの独自性が存在します。オフィスで同じ人と毎日顔を合わせるのではなく、屋外で都度チームを組む人とプロジェクトを行うため、閉鎖的な空間よりオープンな関係で働きたい人には向いた業界です。
1-2 建設業界全体の特徴・メリット・デメリットを把握する
建設業界全体の特徴を端的でいうと、「歴史ある日本の基幹産業」と定義できます。建設業界のメリット・デメリットをリストにすると以下の通りです。
・メリット
学歴が関係ないケースもあり、力やチームワークが重要なケースも多い | 資格や学歴が必要な分野もありますが、学歴が第一要因ではありません。特に土木においては、「力仕事ができる・チームをまとめる」親分肌の要素がある人間であれば、抜擢や独立も望めます |
---|---|
歴史がある産業である | ITなど最新の業態と違い、相手にすぐに仕事内容を理解してもらえます |
公共事業がある | 以前より公共投資の額は下がっていますが、民間だけの需要に頼る業種と比べると、安定性は高いと言えます |
コンプライアンスが過去の経験から整備されつつある | 以前は、労働災害防止などの安全管理・法令遵守が徹底されないなど課題が多い時代もありました。今も課題があるとはいえ、様々な法整備により、以前に比べると、働く人が守られる環境が整備されるようになってきたと言えます |
一般の事務職より、高給が望めるケースも多い | 建設現場で働く人はどうしても不足しているため、給料も一般の中小企業の中では高いケースが多いと想定されます。 |
基本的にはオープンでカラッとした仕事場 | 現場作業などの場合こそ、命に関わることで強い口調の指摘があることも想定できますが、基本的には、陰湿さのない、風通しのいい職場であるケースが多いと言えます。 |
・デメリット
封建的な業界の体質はまだ残っている会社もある | 多くの会社は、時代の要請に応じた、合理的な業務ができるよう体制を整えていますが、小規模な会社や昔からのやり方を引き継ぐ会社などでは、封建的な体質が続いているケースもあります。 |
---|---|
徒弟制度が残る現場もある | 企業や事業主の体質に左右されるところがありますが、いわゆる師匠と弟子の関係のように、「マニュアルはなく、師匠の背中を見て覚える」という体制が残る現場もあります。ただ、近年のIT活用により、職人の技術を極力マニュアル化・再現性の構築など、覚えやすくしている現場も増えています |
男社会の傾向はまだ残っている | 現在は、女性の建設作業従事者も増えましたが、基本的には男社会の現場という空気が残るところも少なくありません。業界全体の傾向として、建設産業に関わる女性を増やそうと空気がある一方、力仕事の多い現場に近づけば近づくほど、男社会・先輩後輩・体育会系など、独特の文化が残っている可能性は念頭に置いた方がよいでしょう |
各業種、人材育成に時間がかかる | 建設業種は、土木工事業・建築工事業の2つの総合工事業、大工子事業や左官工事業など26業種の専門校事業が存在し、各業種は、人材の育成のために教育・現場作業も含め数年~数十年の長い期間を要します。例えば。鉄筋工事業であれば、新卒で技能工として入り、安全衛生課長・作業責任者・作業部長などの現場のキャリアパスを積む上で、各種技能士、クレーン運転など専門資格を取る必要もあり、現場仕事だけでなく、資格試験の合格なども必要となり。10年~20年の期間を要するケースも想定されます。 |
安全管理に徹底的に注意する必要がある | 労働災害防止など、安全管理に関しては、特に注意する必要があります。特に、労働災害と見なされる事故を起こすと、様々な意味でマイナスになります。労災保険料が高くなったり、経営事項審査の評点が低くなるケースがあります。そして公共事業への入札停止、労災隠しなどの悪質な事例の場合は業務停止(この期間は、受けた仕事を全て手放すことになるため、経営に甚大な影響があります)になる可能性があります |
連鎖倒産 | 近年は以前より減った傾向がありますが、ある程度規模の大きな業者が倒産すると、下請け業者などは支払いを受けられずなくなる可能性があります。そのため、極力連鎖倒産を防ぐために、国土交通省も平成22年3月1日から「下請債権保全支援事業」を開始しています。下請建設企業又は資材業者の方が元請建設企業に対して有する債権(手形を含む。)について、ファクタリング会社が支払保証を行うことにより、下請建設企業等の債権保全を支援する形で、取引先が倒産しても、代金の受領に師匠がないようにするなどの制度整備が進んでいます。 |
1-3 建設業界で転職先として狙いたいところは?
建設業界で転職先を検討する上では、自身のスキル・できることと、適した業種を検討する必要があります。
ポイントは、「年齢」・「キャリア・学歴」「スキル・資格」・「自分がその職場で働くことがイメージできるか」を踏まえることです。自分が入れそうで、自身のこれまでのスキルが活かせる職種を選ぶことでしょう。
例えば、パチンコホールで店員を行っていた人が、いきなり建設現場に入っても、なかなかすぐに業務に貢献することは難しいでしょう。そのため、できれば職場見学などを行い、自分がこの職場でやっていけそうかを事前に検討することが大切です。
年齢 | 若ければ若いほど選択肢は広がります。特に20代であれば、様々なところから引く手あまたでしょう。逆に30代、40代になると経験者重視になるケースも多いです。もし業務で要されるキャリアに欠ける場合は、ハローワークで失業保険を受給しながら、職業訓練校で実務訓練を積むなど、これまでのキャリアを捨てる覚悟も必要な時があると言えます。 |
---|---|
キャリア・学歴 | これも当然ですが、建設業・類似業種での実務経験や、有名大学卒業・建設、建築に関わる学部の卒業、専門の高等専門学校卒業などができていると、大きなアドバンテージになるでしょう。逆に、異業種・無関係のキャリアの場合は、未経験扱い、つまりゼロからのスタートになり得ます。 |
スキル・資格 | 実務経験や、隣接業務の経験、職業訓練校での実習などは高く評価されます。建設業の現場では、ITを活用できている事業者と、そうでない事業者の乖離が出てきているので、IT関連のスキルも重宝されます。また、資格でないですが、ドローンを活用できると現場の確認に重宝する場合があります。 |
職場で働くことがイメージできるか | 建設業で働く場合においては、様々な職種があります。その職種で、そもそも自分がずっとやっていけそうか、現場を見学させてもらうなどすると望ましいでしょう。 |
2 建設業界に転職する上でのポイント・役立つ資格
建設業界への転職を考える上では、やはり若いほど有利であることが否めません。独立して建設業の許認可を取得する場合でも5年など一定の実務期間が求められますし、他の職種でも様々な資格試験を取得する必要が出てきます。
特に建設業は、業種・資格が多いので、どういうスキル・資格を取得するべきか迷うかと思いますが、原則は、実務を伴った資格であることが望ましいでしょう。
2-1 建設業界に転職するのに有利な資格は?
建設業界において、重要とされる資格を、列挙してみましょう。なお、建設業界は資格の数が大変多いため、主要な資格に絞り解説します。
資格名 | 内容 |
---|---|
技術士・技術士補 | 技術士を取得するためには、原則として技術士補として7年の実務経験(状況により、年数が変わる場合がある)を要し、試験内容も幅広く、相当な難関と言えます。事実上、実務に従事しながら取得する資格と考えて置いた方がよいでしょう |
一級建築士・二級建築士 | 設計・工事管理・各種手続き(行政への申請など)、図面作成や実務的続き、官公庁への許認可などの知識を問う複雑な資格です。建設の専門教育を受けていない場合、まず二級建築士の受験資格を得る必要があります。まず、7年の実務経験を通し、二級建築士に合格する必要があります。さらに二級建築士としての実務経験を4年以上行うことで、初めて一級建築士の受験資格が与えられます。一級建築士は、取得まで実務要件も含め十数年を要する、極めて難関の資格と言えます(ただし、学校等で専門教育を受けている場合は、期間が内容に応じ短縮されます)。 |
安全管理者 | 安全管理者が重要な理由は、労働安全衛生法上で設置義務があるからです。建設業を初めとする特定業種で、常時50人以上の労働者を雇用している場合は、少なくとも1人、専任の安全管理者を配置する必要があります。そのため、安全管理者の数が多ければ多いほど、建設業者にとってはプラスなのです。さらに、業態によっては、300人~2000以上の労働者を使用する業務に専任の管理者が求められるケースもあり、安全管理者のニーズは大きいと言えます。建設物の安全確保や、設備・器具の定期点検、作業訓練、消防・避難の訓練など扱う分野は多岐にわたりますが、職場の安全をマネジメントする上で、大きな責任を持つ立場とも言えます |
測量士 | 測量業を営む上では、営業所ごとに最低1人の専任管理者が存在しなければなりません。5年ごとの登録更新が必要とされています。受験には、大学などでの測量に関する学習経験・実務経験か、測量士補に合格し、実務経験を積むなど専門性が求められる職種です。 |
土地家屋調査士 | いわゆる「士業」と呼ばれる難関で、土地家屋の所在・形状・利用状況などを調査し図面を作成、法務局に登記を行います。合格率は8%~9%と相当な難関資格です |
技能士(技能検定制度) |
現場で活用される技術に関する試験で、厚生労働省が所管しています。特に土木関係では実務と並んで重要な資格と言えます。建設関係だけでも、以下の通り、様々な種類があります。
等級として、特級、1級、2級、3級の区分がある職種と、単一等級のみで区分がない職種が存在します |
クレーン・デリック運転士 | デリックは、建築資材をつり上げる大きなクレーンで、主に土木の現場で活用されます。クレーン・デリックとも建設現場で活用されるため、特に高層建築が増えた現代においては、現場で働く人にとっては非常に有用な免許です |
宅建士 | 以前は、宅地建物取引主任者(宅建主任者)という名称でした。建設業と直接は関係がないケースはあっても、関連会社で不動産事業を行っている場合、事務所への一定割合の設置義務があるため、宅建士の存在が重宝されたり、試験勉強のプロセスの上で不動産・民法等の法令に関する知識がつきます。 |
2-2 建設業界に未経験から入る上で注意したいことは?
建設業界に経験なしで入る場合は、内勤事務は需要が少ないので営業職を考えたり、一旦現職を退職し、職業訓練校の実習などを受け、経験・資格を取得する方法があります。または、アルバイトなどで入り現場からたたき上げる、建設業界で働く友人などに、自身のキャリア・スキルがマッチするかを確認したり、規模が小さい会社であれば社長と直接コミュニケーションをとる方法もあるでしょう。
2-3 建設業で狙いやすいポジションは?
建設業で狙いやすいポジションは文系と理系で異なります。例えば文系は、直接建設業とリンクするスキルを習得する機会は少ないですが、業務上、法令・通達などを扱うこともあるため、法学部出身の場合、アドバンテージになる場合もあるでしょう。
また、建設業全般で、営業ができる、経営に関する数字が読める人材は重宝されますので、それぞれ、営業やバックオフィスを検討してもよいかもしれませんが、若さか、年齢相応のスキル・知識・人脈などが要されるでしょう。
理系の場合、自身の専攻分野と、建設業に活かせる分野が一致・類似していればそれを積極的にアピールするとよいでしょう。
そして、未経験からの転職は、「このポジションを狙う」というより「入れるポジションに入る・自身の能力が活かせるポジションに欠員ができたら入る」など、まず組織の中に入り込む、自身のスキルと組織の中で活かせることをできるだけリンクさせてアピールするなどの考えも必要でしょう。
2-4 建設業界への転職と年齢の関係
建設業界は、年齢が若いほど有利という点は否めません。また、年功序列の側面も強く、長くいる人材が偉いという傾向も根強いです。もし建設業界に興味があれば、できるだけ若いうちに転職した方がよいでしょう。
建設業界は、実務経験だけでなく、資格を取得するのにも時間がかかるケースが多く、若いということはそれだけで大きなプラスになり得ます。
ですので、第二新卒・二十代などは大きなアドバンテージがあります。ポテンシャル採用などで入ることができるケースも想定されますので、年齢が若ければ、若さを積極的に活かすことをおすすめします。
3 建設業界が向いている人・向いていない人
建設業界は、歴史がある反面、いい文化も、けして今の風潮に沿うとは言えない文化も混在していると言えます。
良いところは、いい意味で、全体的にさっぱりしており、もの作りに対し、真面目な人が多いところでしょう。
一方、現在のコンプライアンス遵守がさけばれる世の中で、業務にかかる法令関係以外のコンプライアンス遵守は、会社によって幅があると考えた方がよいでしょう。まれに、酒の一気飲みや、作業所内・職場内での喫煙など、昔は許されたが、今は多くの人が違和感を持って見てしまう慣習を残している会社も、存在すると想定した方がよいでしょう。
3-1 建設業界は男女関係なく働きやすい職場か?
建設業界は、以前、そして今でも男の業界という側面が強くあります。
特に女性の場合、最近でこそ現場監督などを担当する人も出始めましたが、基本的には現場よりバックオフィスでの総務・経理や、営業、建築設計、管理など、肉体労働よりも知的労働が求められるケースが多いと想定した方が良いでしょう。
ただ、一部で、土木業界で働く女性を「ドボジョ」と呼び、女性の建設業界への参入アピールの動きも出てきています。また、建築士は男性・女性の性差が少なく、特に生活・文化の中核を担う女性の感性が、建築・個人宅建設を受注する上でプラスに働く面もあると言えます。
ただ、建設現場で働く職人の場合、年齢も考え方も様々です。職人ならではの技術・長年の経験にプライドを持つ集団をうまく取りまとめたり、適正な提案をできるかは、全体統括の担当者に取って大きな課題といえるでしょう。
3-2 建設業界の昔ながらの体質に慣れられるかを判断することが必要
建設業界は体育会系の会社も多いといわれています。それゆえに、先輩の命令は絶対、酒には付き合うなど、非常にウエットな上司・先輩との関わりが求められるケースがあります。
このような体育会系風土に慣れており、違和感を感じなければいいのですが、人によっては、「もう少しビジネスとプライベートは切り分けたい」という人もいるでしょう。
また、年功序列の体質ゆえに、大きな成果を挙げても抜擢されにくいというケースも想定されます。(規模の小さな企業になると、多少異なることも考えられますが)
ですので、早く出世したい場合は、企業風土を確認し、抜擢人事があるかなどの確認や、できるだけ良いポジションで入ることを心がけると望ましいでしょう。
3-3 自分の仕事に誇りが持てるものがつくれるか
建設業界は、様々な会社が昔ながらのあり方から、新しいあり方へ適応すべく、模索しているというのが、多くの建設会社の実情です。ただ、限られた人員・予算・リソースの中で、いかに優れたものを作るかは、多くの会社に取って重要なテーマとも言えます。
建設業界で働くことは、何十年、時に百年など長い期間にわたり、残るものを建設する、社会に不可欠なビジネスと言えます。建築物・構築物で、とても長い歴史を持ち、愛される存在となっているものは少なくありません。
一つの例として、「中銀カプセルタワー」という、故黒川紀章氏の設計したビルがあります。都内であれば、高速道路を車で走る際や、銀座。汐留近辺を散策する際に、一度は見かけたかもしれません。あの、三角形とカプセルを組み合わせたような独特の形状のビルです。当時は、メタボリズム(未来の都市像を想定して設計された)の思想が強く、近未来の具現化という意味も含み、独特な建築が目立ちました。
中銀カプセルタワービルは、当初取り壊されることが検討されていましたが、住民の意見もあり、現在のところは取り壊しを行わず、居住用マンションとして使われ続けています。
冷暖房も、シャワーも使えず、窓も開けられないなど居住に適さない面がありながらも、熱烈にカプセルタワーを支持する住民の存在により、今も異彩を放っています。
また、原宿駅前に存在する、「コープオリンピア」も、1965年に建築されてから現在まで、「ヴィンテージマンション」として支持を集めています。
1965年当時の値段で3,000万円から1億円の価格といわれますので、現在の価値に直すと相当な高額マンションと言えます。現在でも高額で取引されるなど、時代を超えて愛される建築物と言えます。
また、最近は六本木ヒルズ・東京ミッドタウン・あべのハルカス・東京スカイツリー・渋谷ストリームなど、時代を映す様々な建築物が建設され続けています。このほか、道路、インフラ、個人住宅など、何十年、時に百年を超えて利用されるものを建設業は造っていくわけです。責任も重大ですし、自身が作ったものが後々まで活用されるという点では、建設業界はまさに「未来へ残すものをつくる仕事」と言えます。
4 まとめ
建設業界は、日本の建築・インフラを支える上で大変重要な産業である反面、歴史ゆえの課題や、他業種からみたら、まだ近代的でないと感じる部分もあるかもしれません。
しかし、建設業界の社会的意義は大きく、建設業界に転身する場合は、ぜひ「大きな社会的意義のある仕事をしているのだ」という気持ちをもって、業務に関わっていくと望ましいと言えます。
また、ドローンの活用による各種調査、IoTの活用や5G、Wi-fi6など最新テクノロジーの活用や、VR機器を利用したイメージのプレゼンテーションなど、ITに通じた人材が建設業にシフトすることや、建設業界の中に入り込むことによって、「Contech」(Construction+Tech)つまり、建設とITの融合した事業を考案できる機会が生まれる可能性もあります。歴史や課題があるからこそ、建設業は伸びしろの大きい産業とも言えるでしょう。