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建設業の工事現場で必須の主任技術者とは?令和2年10月1日施行の主任技術者の配置義務緩和を解説!

令和2年10月1日より建設業法の改正が施行されます。“施行”とは、公布された法令が実際に効力を持つことです。そのため、施行された内容は正しく理解し実行に移すことが必要です。今回の施行内容の一つに、主任技術者の配置義務の緩和があります。主任技術者の配置義務については、建設業者ならびに建設業に携わる人たちに広く関わるポイントです。

そこでこの記事では、主任技術者の配置義務の緩和について、『主任技術者とは』という基本的な事項から施行される緩和に内容はその条件などについて詳しく解説するので、ぜひ参考にしてみてください。

1 主任技術者と監理技術者

主任技術者と監理技術者

建設業法では、建設工事依頼者保護の観点から各建設工事現場に配置技術者を配置することが義務付けられています。配置技術者とは、『主任技術者』と『監理技術者』を総称したものです。

主任技術者と監理技術者の違い

建設工事現場に配置すべき主任技術者と監理技術者の違いは、建設に関わる契約金額によって異なります。発注者から直接請け負った工事契約の代金が4,000万円(建設工事一式の場合は6,000万円)以上でかつ下請契約を施工する特定建設業者の場合に、監理技術者の設置が必要になります。上記の場合以外は、各建設工事現場には主任技術者の設置が義務付けられています。

配置技術者は、工事の現場における施工技術の管理が求められます。そのため、以下の資格要件を満たしたものが主任技術者になれます。

≪主任技術者の要件≫

①実務経験 許可を受ける業種の工事について一定の実務経験があること
・高校等(指定学科)を卒業後5年以上
・大学もしくは高等専門学校(指定学科)を卒業後3年以上
②実務経験 許可を受ける業種の工事について10年以上の実務経験があること
③資格等 上記の実務経験と同等以上の知識や技術や技能を有することが認められた者であること
具体例
・一級や二級国家資格の合格者もしくは免許を受けた者
・建設業の業種ごとに定められた実務経験を有する者

なお、監理技術者の資格は主任技術者よりハードルが高くなっています。

①資格等経験 許可を受ける業種の工事について、国土交通大臣が定める一級国家試験に合格した者または免許を受けた者
②実務経験 一般建設業許可の選任技術者の要件①~③のどれかに該当して、かつ元請として4,500万円以上の工事を指導監督としての2年以上の実務経験を有する者
③認定 国土交通大臣が上記①と②と同等以上の能力を有することを認定した者

●専任が必要な工事

工事の内容によって、配置技術者には専任であることが必要となります。専任が必要な工事は、『公共性のある施設もしくは工作物または多数の者が利用する施設若しくは工作物に関する重要な建設工事で、工事の請負契約の代金が3,500万円(建設一式工事の場合7,000万円)以上』の場合です。公共性のある施設や工作物/多数の者が利用する施設や工作物に関する重要な建設工事とは、個人の住宅などを除外してほぼ全ての施設や工作物に関わる工事が対象となります。

1-1 設置技術者の役割

設置技術者の役割

設置技術者の配置の必要性は、大きく以下の2つになります。

  • ・適正さと生産性の高い施工確保のための技術力を持った技術者が必要
  • ・建設生産物ならびに施工の特性を踏まえて技術力をもった技術者が必要

なお、建設生産物の特性とは具体的には以下になります。

  • ・事前に品質確認ができない一品受注生産であること
  • ・建設工事完成後には瑕疵があるかどうかの確認が難しいこと
  • ・長期間に不特定多数の人が利用すること、など

また、施工の特性とは、依頼者から直接建設工事の依頼を請ける受注者(元請業者)だけではなく下請け業者など多数の業者による総合組立生産であることや、天候などの自然現象に影響を受けやすい現地野外生産などが挙げられます。

これらの建設生産物や施工の特性を踏まえると、発注者は建設業者を信頼して依頼を託すことになります。

2つの技術力

そのため、建設業者は組織として持つ技術力と建設現場で実際の工事を行う技術者が個人で持つ技術力の2つの技術力を発揮させる必要があります。この2つの技術力を発揮させるために必要となるのが『適切な技術判断と確認』となります。この適切な技術判断と確認が現場配置技術者の大きな役割になります。

一方で、建設業を取り巻く施工体制の複雑化とそれによる施工責任の不明確化や品質低下懸念への対応が求められてきました。施工体制の複雑化とは、施工の専門化や分社化などの1つの工事を請け負う業者数の増加と、工事量の増減や繁閑の平準化への対応などがあげられます。これらに対応するために、施工体制における監理技術者と主任技術者の役割の違いを明確にする方向性が取られてきました。

●役割の明確化

建設業法に規定された役割・職務は、監理技術者と主任技術者に共通しています。そのため、適正施工を確保する必要性から、建設業法第26条の3『主任技術者および監理技術者の職務等』ならびに平成16年3月1日国総建第315建設業課長通知『監理技術者制度運用マニュアル』によって規定されています。

主任技術者および監理技術者の職務は、工事現場における建設工事の適正な実施を目的としています。そのため、当該建設工事に対して以下の職務を行うことが求められます。

  • ・施工計画の作成
  • ・工程管理
  • ・品質管理
  • ・その他技術上の管理
  • ・従事する者の技術上の指導監督

一方で、規模の大きい工事を想定すると元請の監理技術者と下請けの主任技術者の役割を整理していくと、管理すべき対象や品質管理以外は大きくその役割は変わらないということができます。品質管理については下請けの主任技術者はすべての工事の工程に立ち会うことで確認をしていくことが職務になることに対して、元請の管理術者の職務は必要に応じた立会検査を実施することと書類などの確認が主たる職務となります。そのため、その役割は主任技術者と監理技術者の役割は明確に異なります

さまざまな工事現場ならびに立場の違いを考慮すると、主任技術者の役割は概ね以下の2つのタイプに分けることができます。

タイプA(元請として全体管理) タイプB(下請として一部管理)
役割 請負全体の統括施工管理(下請を含む) 請負部分の施工管理
施工計画の作成 請負部分全体の施工計画書や施工要領書の作成と、設計変更などに適応するための施工計画書等の修正(下請業者が作成する施工要領書確認を含む) 元請が作成した施工計画書等に基づく、受注した工事部分に関する施工要領書作成と、元請等の指示に適応するための施工要領書の修正
工程管理 下請けを含む請負部分全体の工程管理を行い、下請間の工程を調整する。また、朝礼や巡回や工程会議等を開催と参加を行う。 請負部分の工程管理を行い、朝礼や工程会議等への参加を行う。
品質管理 下請から報告される報告内容の確認を主として請負部分全体の品質を確認し、必要に応じて立会による直接確認を行う。 原則は、全ての工程に立会して直接の確認を行う。
技術的指導 技術者を配置するなどして、法令を遵守する環境を構築する。下請を含む請負部分全体に技術指導を行う。 現場作業員の配置や現場の法令順守を行う。また、請負部分における作業員に技術指導を行う。
その他 発注者などとの協議や調整を行い、下請けからの協議事項も対応し、近隣住民への説明も行う。また、請負部分全体のコスト管理を行う。 元請への協議や、元請等の判断を踏まえた現場調整を行う。また、請負部分のコスト管理を行う。

●大規模工事における課題

建設業法は監視技術者や主任技術者の配置のみを規定しています。そのため、配置する人数については規定されていません。しかし、大規模工事においては1人の監理技術者が現場全体を確認・管理することが困難な現実が発生しています。そのため、大規模工事においては複数の技術者を配置することが通例となっています。

実際の大規模工事の監理技術者の一般的な配置方法の、監理技術者の下に工区別の監理技術者が配置されます。さらにその区分別の監理技術者の下にコンクリートや鉄筋などの工種別の技術者が配置され、さらにその下に業種別の技術者が配置される形になります。

監理技術者の役割を補佐する技術者の配置は、良好な施工の実現において有効となります。一方で、工事に関わる情報が分散することで全体の施工管理や工程を把握することの妨げになり、責任の分散という結果になることも懸念されます。

そのため、監理技術者は全体の総括を行う立場の人間を1名として、その他の補佐の立場の技術者とは分けておく必要があります。また、発注者が求める場合において補佐的な役割を担う技術者の職務分担等を説明することが必要です。
参考|国土交通省 『適正な施工のための技術者の役割等の明確化

1-2 監理技術者制度運用マニュアル

監理技術者制度運用マニュアル

監理技術者制度運用マニュアルは、建設業法上重要な事項の一つである監理技術者制度を適正に運用するための指針が記載されています。また、建設業者がその業務を実施する上で参考とすべき事項が掲載されています。

●専任技術者

監理技術者制度運用マニュアルに規定されている『監理技術者等』には、配置技術者と専任技術者がいます。配置技術者は前述のとおり、主任技術者と監理技術者がいます。専任技術者とは、営業所に常勤することが必要とされています。また、専任技術者の要件を満たすことが必要です。専任技術者の役割は、現場に配置される配置技術者とは異なり、営業所の中でのものになります。

専任技術者の業務は、具体的には発注者との交渉の上での技術的な部分の交渉を担い、工事見積書の作成を行い契約の締結を行うことです。また、専任技術者も主任技術者と同じ実務経験や資格などの要件があります。また、専任技術者は営業所での常勤を行う『専任性』が求められます。そのため、他の会社や営業所との兼務などは認められていません。

専任性は、通勤が不可能なほど遠い場所に自宅と営業所が離れている場合などは認められません。通勤が可能な住所に専任技術者の住所があることで、建設許可取得が可能になります。また、その会社の健康保険への加入状況によって専任性は証明されなければなりません。

なお、専任性にも例外があります。具体的には、営業所と工事現場が近接していて、工事現場の職務と営業所の職務の両方ができる状況下でかつ当該営業所との間で常時連絡体制が構築できる場合には特例として営業所の常勤が必要なくなります。

●監理技術者等に求められるもの

監理技術者制度運用マニュアルによる、監理技術者等に求められるものは、6つに分けられています。

  1. ①監理技術者等の設置
  2. ②監理技術者等の工事現場における専任
  3. ③監理技術者資格証と監理技術者講習修了証の携帯
  4. ④施工体制台帳の整備と施工体系図の作成
  5. ⑤工事現場への標識の掲示
  6. ⑥建設業法の順守

以下にそれぞれの詳細を解説していきます。

①監理技術者等の設置

監理技術者等の設置によって具体的に求められるのは、以下の4つの項目です。

監理技術者等の設置

・工事外注計画の立案
発注者から直接建設工事契約を締結する元請業者は、施工体制の整備と監理技術者等の設置についてその必要性を決定するために、工事外注計画を作成します。また、工事外注計画によって、下請契約の請負代金の予定額を把握することが求められます。
・監理技術者等の設置
元請業者には適切な技術者の設置が求められます。工事外注計画書の下請契約の請負代金(予定額)に応じて、監理技術者の配置の必要性に応じて配置を行います。なお、あくまで予定額に応じての配置判断になるため、実際の工事の状況によって監理技術者の配置が必要になる可能性が高い場合にはあらかじめ配置を行うことも求められています。
さらに、工事に用いる施工技術の難度が高く国家資格者の活用が求められる場合にも監理技術者の配置の必要性を判断することが求められます。
なお、当初は主任技術者の配置が適正であった工事が、その変更等によって監理技術者の配置が必要になった場合、速やかに監理技術者の配置を実施することが求められます。
また、建設工事の途中で監理技術者等の途中交代は、原則として認められません。しかし、例外的に途中交代が認められる場合も規定されています。当事者の死亡や出産・育児や退職などの真にやむを得ない場合や工期期間が多年に及ぶ場合や受注者の責任ではない要因での工事中止や内容の大幅な変更による工期延長などが該当します。
その他、共同企業体における監理技術者等の設置についても記載されています。
・監理技術者等の職務
監理技術者等は、建設工事を適正に実施するために『施工計画の作成』『工程管理』『品質管理』『その他の技術上の管理』『施工に従事する者の技術上の指導監督』の職務を誠実に実施することが求められます。
・監理技術者等の雇用関係
監理技術者等は、当該建設業者と直接的かつ恒常的な雇用関係が求められます。在籍出向者や派遣社員は直接的な雇用関係に該当しません。直接的で恒常的な雇用関係は、資格者証または健康保険被保険者証等によって証明することが求められます。
なお、直接的かつ恒常的な雇用関係の例外としては、『営業譲渡または会社分割』『持株会社の子会社』『親会社と連結子会社間の出向社員』『官公需適格組合員からの在籍出向者』があります。

②監理技術者等の工事現場における専任

重要な建設工事においては、原則として監理技術者等は当該工事現場ごとに専任とすることが求められます。また、この例外事項は以下の4つがあります。また、これらの例外は、発注者と請負業者の間で下記期間が書面などの手段により明確であることが前提になります。

請負契約締結から工事施工に着手するまでの期間
工事を一時的に全面停止する期間(工事用地等が未確保であることや自然災害や埋蔵文化財調査等による)
工場製作だけが実施される期間
工事完成後に検査が完了し、事務手続きや後片付けなどの残処理期間

③監理技術者資格証と監理技術者講習修了証の携帯

公共工事は、資格者証交付をうけた監理技術者講習の受講修了者から監理技術者を選任することが求められます。なお、講習を修了してから5年以内の監理技術者が必要となります。

これらの条件に該当する監理理技術者であることを証明するために、発注者が請求した場合には資格者証の提示を行うことが義務付けられています。また、当該建設工事の職務につく際には、随時資格者証の携帯が求められます。

④施工体制台帳の整備と施工体系図の作成

下請契約の請負代金が4,000万円(建築一式工事では6,000万円)以上の場合、建設工事の施工体制の的確な把握を目的として、『工事現場ごとに監理技術者の設置』と『施工体制台帳の整備』と『施工体制図の作成』の実施が求められます。

施工体制台帳は、下請負人が適切に業務を遂行するための指導を実施するために施工体制やその台帳の整備が求められます。発注者からの求めがあった場合には、施工体制台帳の公開ができる状況にすることが必要です。

施工体系図とは、各下請負人の施行分担状況が明確に区別されている図になります。施工体系図は工事現場の公衆が見やすい場所に掲示することが求められます。掲示することにより、工事関係者が施工体制全体を把握すること共に、その責任と役割分担を明確にすることができて、技術者の適正な配置確認を実施することができます。

⑤工事現場への標識の掲示

建設業者は、『建設業許可に関する事項』ならびに『監理技術者に関する事項』の記載標識を公衆が見やすい場所に掲示することが求められます。

⑥建設業法の順守

建設業者が、建設業法を遵守することは当然の義務となります。そのうえで、国土交通大臣や都道府県知事から建設業者に対して適切な指導があった場合にはそれに従うことが求められます。

2 主任技術者の配置義務緩和

主任技術者の配置義務緩和

2019年6月12日に『建設業法および入契法の一部を改正する法律』が公布されました。これは、以下の3つを目的とした改正になります。

建設業法および入契法の一部を改正する法律

  • ・建設業界の働き方改革の促進
  • ・建設現場の生産性の向上
  • ・持続可能な事業環境の確保

この改正のうち、大部分が2020年10月1日に施行となります。そして10月1日施行の一つが、建設現場の生産性の向上を目的とした建設現場の配置技術者のルールの合理化となります。このルールの合理化の内容が、主任技術者の配置義務緩和になります。

2-1 現場技術者配置要件の合理化

現場技術者配置要件の合理化

建設業界では、一定の資格要件が必要となる主任技術者等を以下の通り、広く負担が大きい形で設置の必要性が求められています。

  1. ①全ての建設企業が主任技術者等を配置すること
  2. ②請負代金3,500万円(建設一式工事では7,000万円以上)の場合には専任とすること

一方で、現場技術者と言われる主任技術者等の配置合理化を検討された背景には、以下のように複数の要素がありました。

  1. ①技術者不足の懸念
  2. ②生産性向上、働き方改革の必要性
  3. ③建設生産システムの変化
  4. ④長期的に継続する基本的枠組み
  5. ⑤重層下請け構造改善の必要性
  6. ⑥技術者資格確認制度の対象拡大への環境整備

(参照先:国土交通省『現場技術者配置要件の合理化について』)

①技術者不足の懸念

高齢化が進む建設業界において、現状では資格証保有者は横ばいで推移しています。しかし、監理技術者資格保有者の年齢構成をみると、平成14年から平成29年までの15年間で60歳以上の保有者が約1.2倍になっています。一方で、同期間で39歳までが半減しています。これらのことから、若年層の資格証保有者が減少していく中で現在の60歳代が退職していった場合に技術者不足になるという懸念があります。

≪監理技術者資格者証保有者の年齢構成≫

~39歳 40歳~59歳 60歳以上
平成14年 22.1% 63.5% 14.3%
平成29年 11.6% 57.2% 31.3%
増減 ▲47.5% ▲9.9% 118.9%

更に監理技術者資格者証保有者数の詳細を見ると、建築における管理着儒者資格者証保有者数は増加傾向が継続していますが、土木における同資格者証保有者は平成20年以降で減少傾向が続いています。これは、新規で同資格者証の取得者が減少している結果となります。そのため、建築の同資格者証保有者より高齢化並びに資格者証保有者の減少がより将来的には深刻化する懸念があります。

②生産性向上、働き方改革の必要性

監理技術者等の専任配置と、技術管理の観点で複数の現場を同時に担当することができる場合、監理技術者等の業務分担が可能になります。その結果、監理技術者等の勤務時間の均一化を図ることが期待できます。今までは、受け持つ現場の内容により、監理技術者の勤務時間には大きなばらつきがありました。このばらつきを均一化することで働き方改革につなげることが期待されています。

③建設生産システムの変化

建設生産システムの変化には、新技術活用による施工管理の効率化が挙げられます。測量と設計から施工や監督や検査といった内容を一元化したデータなどをクラウド化して、施工管理に必要な工程や出来形や品質などを一元管理するシステム開発が進められています。これらの新技術や工法の活用をすることで、信頼性の向上と品質管理の効率化を同時に実現することが期待されています。

④長期的に継続する基本的枠組み

建設業界ならびにその生産システムとその運用や環境は変化を継続しています。しかし、技術者制度の基本的枠組みは70年前のものが続いています。そのため、建設業法や労働法制や請負契約等の法制度に照らした現場体制を検討すべきであると考えられています。

⑤重層下請け構造改善の必要性

下請業者による、1次下請や2次下請において、再下請が増えています。再下請とは、下請業者がさらに下請業者と請負契約を締結することを言います。この再契約を行う理由としては、自社の規模だけでは必要な労働力が不足することや、自社だけの労働力では納期に間に合わないなどの理由から再下請けを実施しているという傾向があります。

これらのことから重層下請け構造は、現場に配置する技術者等の数が増える要因になります。

⑥技術者資格確認制度の対象拡大への環境整備

適正な施工確保を目的とした技術者制度検討会のとりまとめよると、以下のように合理化を必要とする課題があります。

  • ・一定年数の実務経験を有する者は、その経験した内容が該当の工事に対して適正であるかという点を現場毎に発注者などに証明することが求められています。この証明に対しては発注者毎に差異がある点も技術者に負担が重くなっているという課題があります。
  • ・主任技術者の資格要件が国家資格以外に、民間資格など120以上におよびます。そのため、確認を現場ごとに実施することは煩雑となりますが、合理化することによって、以下の効果が期待できます。
  • ・統一機関が実務経験内容などを確認し、適切な技術者配置という観点を持てる効果があります。
  • ・民間資格を含めた統一機関が主任技術者資格要件を満たしているかを確認ができます。そのため、主任技術者による現場での証明や確認を簡素化できます。

これらの現在の課題と合理化することによる効果を鑑みて、監理技術者資格証交付についてすでに導入している確認制度の対象を拡大して主任技術者も含めることが検討されています。しかし、現行の技術者制度を前提にしてすべての主任技術者へ対象を拡大した場合には技術者負担が大きくなりすぎることが予想できます。

また、合理化を図っていく中で、不適格者が参入することがないように限定的に進めていく必要性も議論されました。これらのことから、対象拡大の環境整備は現在も慎重に進められています。

2-2 専門工事一括管理施工制度

専門工事一括管理施工制度

技術者の配置制度は、『専門工事一括管理施工制度』が新たに採用されます。専門工事一括管理施工制度とは、改正法第26条の3第1項によって、特定専門工事の元請の主任技術者が、下請工事の主任技術者が行うべき職務を行う場合には、下請側の主任技術者の配置を不要とするという内容です。

●特定専門工事

専門工事一括管理施工制度が適用されるのは、『特定専門工事』のみになります。そのため、特定専門工事以外の工事=土木一式工事または建設一式工事などは従来通り元請と下請ともに主任技術者の配置が必要となるので注意が必要です。

特定専門工事とは、以下の3つの要件に該当する工事を言います。

  • ・土木一式工事または建設一式工事以外の工事の総称である専門工事であること
  • ・工事に用いられる施工技術が画一的であり、その施工技術上の監理効率の向上が必要であるという政令が定める工事(当面の対象工事は鉄筋工事と型枠工事を想定)であること
  • ・元請と下請間で契約締結した下請契約の請負代金総額が、3,500万円未満であること

●主任技術者配置不要の要件

特定専門工事でかつ以下の5つの要件をすべて満たすことで、下請業者は主任技術者の配置することが不要になります。

下請の主任技術者の配置が不要となる要件(改正建設業法第26条の3)
①事前に注文者からの書面での承諾を元請負人が得ていること
②元請負人と下請負人が書面による合意*を行うこと
③元請負人の主任技術者が、当該特定専門工事と同一種類の建設工事において1年以上の指導監督的立場実務経験**を有していること
④元請負人の主任技術者が当該工事現場に専任で配置をされること
⑤下請負人がさらなる下請契約を行わないこと

*書面による合意
元請負人と下請負人の間で行う書面による合意には、以下の内容の記載ならびに書面が必要となります。
・特定専門工事の具体的内容の記載
・特定専門工事の下請契約請負金額の記載
・ほかの特定専門工事における下請契約がある場合には、その下請契約請負金額総額の記載
・元請負人が配置する主任技術者に関する氏名と保有資格の記載、ならびに1年以上の指導監督的実務経験を有していることを証明する書面
・元請負人による当該主任技術者を専任配置する旨の誓約書面

**指導監督的立場実務経験
指導的監督的立場実務経験とは、建設工事の設計や施工全般の工事現場主任や現場監督的な立場で施工に必要な技術面を総合的に指導監督した実務経験を言います。加えて、実務経験に加えることができる建設工事は以下の2つの要件に合致することが求められます。

・許可を受ける予定の業種に関わる建設工事であること
・発注者から直接の請負であり、その請負金額が4,500万円以上であること

3 まとめ

今回は、2020年10月1日に施行された『主任技術者の配置義務の緩和』について解説しました。主任技術者の配置緩和は一部の施行であり、今後その対象の拡大や制度の見直しが継続的にされていくことも予想されるものです。今後もその変更や対象拡大などに適切に対応し、業務遂行の適正化や生産性の向上を図る必要があるため、施行内容を注視していくことが大切です。

建設業許可申請が全国一律76,000円!KiND行政書士事務所:東京