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建設業経理士って何? 資格を取得するメリットや対策のポイント、活用方法を解説!

最近の建設業界は2020年の東京オリンピックや東日本大震災の復興工事受注で好調を維持しています。このような状況の下、注目を浴びている資格が建設業経理士です。建設業経理士とは、受注から完成引き渡しまで長期に及ぶことが多い建設業の独特な会計処理に精通したスペシャリストで、建設業の会計や財務を支える重要な役割を担っています。

今回の記事では、建設業経理士の概要や建設業経理士の資格が注目されている理由、資格取得のメリット、試験の概要や試験科目、試験対策のポイントなどを分かりやすく解説するので、ぜひご参考ください。

1 建設業経理士とは

建設業経理士とは

建設業経理士とは、建設業における会計知識と会計処理能力を備えた建設業経理のプロフェッショナルです。建設業は受注産業であるため受注から完成引き渡しまでが長期間にわたることも多く、他の企業とは異なった特殊な会計処理が求められます。建設業と言えば大手ゼネコンのイメージがあるかもしれませんが、中小規模の建設業者や工務店などが多数を占める産業です。

これらの中小企業は財務基盤も脆弱で適正な財務管理や税務申告ができていないと企業経営に深刻なダメージを受ける可能性も否定できません。そのため、建設業では適正な経理と計数に関する専門的な知識とスキルが求められており、建設業者の健全な発展を図るためには財務・経理の高度な知識を備えた建設業経理士の存在が必要不可欠です。

建設業経理士になるためには建設業経理士検定試験という試験に合格する必要があります。建設業経理士検定試験は、建設業経理に関する知識の向上を図るために実施されている検定試験で、国土交通大臣の登録を受けて一般財団法人建設業振興基金が実施しています。

この検定試験は難易度の高い順に1級から4級まで実施されていますが建設業経理士検定試験と呼ばれるのは1級と2級のみです。3級と4級は建設業経理事務士検定試験として実施されています。そもそも、建設業経理事務士検定試験は昭和56年から試験制度が創設されましたが、当初試験に合格した者は建設業経理事務士と呼ばれていました。その後、平成18年の建設業法施行規則改正により登録試験制度が創設され、建設業経理士検定試験の1級および2級が国土交通省の登録経理試験として登録されたことから1級と2級の合格者のみが建設業経理士へと名称が変更されたものです。そのため、3級と4級については従前からの建設業経理事務士という名称が継続して使用されています。

建設業経理士と建設業経理事務士

このような理由で1級と2級の試験は建設業経理士検定試験という名称に変更され、3級と4級は建設業経理事務士検定試験という名称のままで実施されているのです。なお、平成18年以前の1級および2級の合格者は建設業経理事務士1級または2級という従前の名称のままですが、現在の建設業経理士1級または2級と同等の扱いです。

2 建設業経理士が注目されている理由

建設業経理士が注目されている理由

建設業経理士は建設業における会計のスペシャリストである反面、建設業以外ではあまりその知識を生かすことができません。このような活躍の場が限定されている資格にもかかわらず、最近は建設業経理士という資格が注目を浴びているのです。その理由として「建設業界の好調維持により社会的ニーズの拡大」、「建設業界の職場は全国どこにでもある」、「企業によっては資格手当が支給される場合も」という以下の3つのポイントが挙げられます。

3つのポイント

ポイント1 建設業界の好調維持により社会的ニーズの拡大

建設業は1990年代をピークに2009年頃までは低迷の一途をたどっていた業界です。しかし、リーマンショック後の景気回復や東日本大震災の復旧需要、東京オリンピックによる需要増が続いており、ここ数年は建設業界全体として好調を維持しています。以下の図1は新設住宅の着工戸数の推移です。

図1 新設住宅着工戸数の推移

新設住宅着工戸数の推移

(出典:一般財団法人日本建設業連合会

この表は新設される住宅の着工戸数を年度ごとに集計した建設業のバロメーターとも言えるものですが、2009年には70万戸台にまで減少した着工件数が近年は90万戸台半ばで堅調に推移しています。また、以下の図2は建設投資の推移を示した表です。

図2 建設投資の推移

建設投資の推移

(出典:一般財団法人日本建設業連合会

建設投資とは日本国内における建設活動の実績を投資額で表したもので、国土交通省が建設市場の規模などを明らかにする目的で公表している数値です。直近の数字は見込み額や見通し額が使用されているものの、ここ数年は投資額も堅調に伸びており2000年代始めの60兆円台の水準を回復しています。最近は需要増による人手不足や賃金の上昇などが新たな問題としてクローズアップされつつあり、東京オリンピック後の反動減なども問題視されています。しかし、現在も公共事業などは人手不足により供給が追い付かない状況が続いており、今後も公共事業を中心として建設業界は堅調に推移していくと考えられているのが現状です。このような業界の好調さを受けて建設業会計に精通した建設業経理士も社会的なニーズが拡大しており、様々な企業から引く手あまたの状態となっています。

現在の労働市場は空前の売り手市場とも言われていますが、厚生労働省発表の資料によると会計事務などの仕事は有効求人倍率が低い(注1)職種です。そのような中でも安定した需要のある建設業経理士は非常に魅力のある資格の一つとなり注目を集めています。

(注1)有効求人倍率とは全国の公共職業安定所(ハローワーク)に登録している求職者に対して企業からの求人数の割合を示す指標です。有効求人倍率が1より小さいと求職者の数の方が求人数よりも多いことを表しており、就職が難しいとされています。令和元年9月の全職業における正社員の有効求人倍率は1.13倍でしたが、経理事務の職業だけに限定すると0.73倍と就職が比較的難しい職業です(参考:厚生労働省)。

ポイント2 建設業界の職場は全国どこにでもある

国土交通省の発表によると、平成31年3月末現在で全国46万8千もの事業者が建設業許可を受けています。以下の図3は建設業の許可を受けた業者数と建設投資額の推移です。

図3 建設業許可業者数の推移

建設業許可業者数の推移

(出典:一般財団法人日本建設業連合会

建設業の許可を受けた業者数は1999年の60万件超と比べると減少傾向が続いていました。しかし、2012年以降は建設投資額の増加に伴い減少傾向に歯止めがかかっており、近年は47万件前後と安定的な水準での推移です。これだけの数の建設業者が日本各地で許可を受けていますが企業規模は以下の図4の通りです。

図4 規模別許可業者数の推移

規模別許可業者数の推移

(出典:一般財団法人日本建設業連合会

建設業者はその大半を中小企業や零細企業が占めており、資本金10億円以上の大手から個人事業主のような零細企業まで大小さまざまな企業があります。また、建設業者は東京や大阪、神奈川、愛知のような都心部で許可件数が多くなっていますが、その他の地方でも多くの建設業者が許可を受けています。このことからも分かるように、建設業は大小さまざまな規模の会社が多数存在しており、全国どこでも職場を見つけやすい職業であることが注目されているポイントの一つです。

ポイント3 企業によっては資格手当が支給される場合も

建設業経理士は日商簿記などと比較すると資格保有者が少なく、1級建設業経理士に限ると全国で約2万7千人(2級は約31万5千人)しかその資格を保有していません。そのため、企業によっては資格手当なども支給される資格となっており、待遇改善やキャリアアップに役立つ資格としても注目を浴びています。また、建設業経理士は建設業界において経理部門に限らず営業部門やその他の管理部門でも役に立つ資格です。すでに建設業界に勤務されている方がキャリアアップのために取得できる資格であることも建設業経理士が注目されている理由の一つです。

3 建設業経理士を取得するメリット

建設業経理士を取得するメリット

建設業経理士は建設業界の好調さなどによって注目を浴びている資格です。また、建設業経理士は専門的な建設業経理に関する知識を得られるだけでなく、資格を取得することによって様々なメリットがある資格となっています。こちらでは、建設業経理士を取得する3つのメリットについて確認してみましょう。

建設業経理士を取得する3つのメリット

①有資格者は就職や転職に有利

建設業経理士を取得する最も大きなメリットは就職や転職に有利に働く資格だという点です。ここまで説明してきたように建設業経理士は建設業の経理に特化した専門的な知識とスキルの証明になる資格であるため、建設業への就職や転職の際には資格を保有しているだけで一定の評価を受けることができます。また、建設業経理士の1級と2級に限っては公共事業の入札などの際に経営事項審査加点評価対象となるため、雇用する建設業者にとっても大きなメリットとなる資格です。

経営事項審査とは、国や地方公共団体などが発注する1件あたり500万円以上の建設工事を直接請け負う際に必ず受けなければならない審査です。この審査では経営状況と経営規模等を数値化して評価する方式が採用されていますが、経営規模等を構成する「社会性等(W)」という項目で建設業経理士の存在は大きく影響してきます。この「社会性等(W)」という項目にも複数の評価項目が存在しますが、そのうちの一つである「建設業の経理の状況(W5)」では「公認会計士等の数」と「監査の受審状況」が評価の対象です。

・公認会計士等の数

公認会計士等の数として評価の対象となるのは公認会計士や税理士(有資格者であれば登録は不要)、会計士補、1級建設業経理士、2級建設業経理士です。この評価では旧1級と2級の試験合格者である建設業経理事務士の1級と2級も同じ扱いになります。公認会計士や税理士、会計士補、1級建設業経理士は一人当たり1でカウントされ、2級建設業経理士は一人あたり0.4で数値の計算を行います。この数値を年間平均完成工事高に応じた以下の図5評価テーブルと照らし合わせた数字が公認会計士等の数の点数です。

図5 公認会計士等の数 評価テーブル

公認会計士等の数 評価テーブル

(出典:一般財団法人建設業振興基金

この公認会計士等の数は社内に常時雇用されている資格者しか対象となりません。公認会計士や税理士などを常時雇用できる建設業者は一部の大手のみに限られているため、多くの建設業者は建設業経理士1級または2級の有資格者でこの点数を稼ぐ方法が現実的です。

・監査の受審状況

監査の受審状況は以下の3つの形態に分類されて加点されます。

  1. (1)会計監査人設置会社(20点)
  2. (2)会計参与設置会社(10点)
  3. (3)経理責任者の自主監査(2点)

大手企業でない場合は(1)と(2)はハードルが高く、建設業者の多数を占める中小企業は(3)による加点を目指すこととなります。経理責任者の自主監査では、社内の経理実務責任者が経理処理の適正さを確認し、自主検査した証として署名押印した書類を作成する必要がありますが、この署名押印を行えるのは公認会計士、税理士、1級建設業経理士のみです。よほどの大手企業でなければ社内に公認会計士や税理士を雇うことは難しいので、1級建設業経理士の自主監査による加点が中小企業も含めた多数の建設業者が選択できる現実的な方法となっています。

以上のように、公共工事を受注する際に建設業経理士は必要になる資格です。そのため、建設業経理士の資格保有者は就職や転職の際に非常に有利になります。

②簿記資格からのステップアップを目指せる資格

建設業経理士検定と日商簿記検定は試験の範囲や出題形式で重なる部分が多くあります。そのため、簿記資格を保有している方やすでに簿記資格の学習を進めている方にとって建設業経理士検定は学習しやすい資格の一つです。毎年多くの方が簿記検定に合格していますが、2級や3級の資格だと保有者全てが簿記の資格を活かした仕事に就けるわけではありません。このような方がさらなるキャリアアップを目指す場合、建設業経理士は受験しやすい上にキャリアアップを目指せる資格のため非常に現実的な選択肢です。

すでに簿記の学習をしている方は比較的短時間で資格取得も目指すことができる上、建設業の経理業務という限られた分野にはなりますが専門性の高い職種へのステップアップが目指せます。また、これから簿記の学習を始める方も簿記資格の延長として建設業経理士の資格取得を検討することができるため、将来のキャリアの幅を広げてくれる選択肢となる点も大きなメリットです。

③一度取得すると一生有効な資格

建設業経理士の資格は簿記の資格などと同様に一度取得した資格に有効期限は設けられていません。そのため、建設業経理士の資格は一度資格を取得すると一生有効となる資格となっており、検定試験を一度クリアできたらその後はご自身が仕事を続ける限り有効となる資格です。特に1級や2級は経営事項審査において加点評価対象にもなるため、建設業界の事務職で働く方にとっては一生ものの資格になります。なお、1級と2級の建設業経理士には登録制度というものがあり、登録された「登録1級建設業経理士」または「登録2級建設業経理士」の資格は5年間という有効期限が定められているため注意が必要です。

この登録制度は会計・経理知識等の維持および向上を測ることを目的として創設された制度で、登録するかしないかは試験合格者の任意で決めることができます。登録希望者は一般財団法人建設業振興基金が実施する登録講習会を修了すること等によって登録建設業経理士の商号が付された登録証の受けとることが可能です。

登録期間の5年間は会計・経理知識についての維持向上を意欲的に行い、検定試験合格後も積極的な自己研鑽を行うものであることを財団が証明・認定すると共に、登録者に対して情報提供等の様々な支援が行われます。しかし、経営事項審査は試験に合格したものを対象に評価されるため、登録してもしなくてもその貢献度に差はありません。登録には15,430円の費用もかかるため、合格後の登録については必要に応じてご自身で判断するようにしてください。

4 建設業経理検定試験の概要・試験科目

建設業経理検定試験の概要・試験科目

ここからは建設業経理士検定試験(1級と2級)と建設業経理事務士検定試験(3級と4級)の具体的な内容について確認していきます。試験概要、各級の試験科目と出題範囲、試験の難易度は以下の通りです。

①試験概要

1級と2級は建設業経理士検定試験として、3級と4級は建設業経理事務士検定試験として実施されています。試験は各年度の上期と下期に2回実施されていますが、上期の試験は1級および2級のみの実施です。直近の令和元年度は9月8日(日)に上期の試験として建設業経理士1級および2級の試験が実施され、下期の試験として3月8日(日)に1級から4級の試験が予定されています(注2)。1級と2級の建設業経理士の試験は毎年9月と3月の第二週目(第一週目のときもあり)の日曜日に実施されているため、年2回受験できる試験です。

(注2)令和元年度下期に予定されていた3月8日の試験は新型コロナウィルス感染症に対する政府からのイベント等の中止や延期、規模縮小等の対応要請を受けて中止になりました。

試験は1級のみが3科目に分けて実施されており、全ての科目に合格しなければ1級建設業経理士にはなれません。なお、1級試験は科目合格制度が導入されているため、最初の科目合格から5年以内に全ての科目に合格すれば1級建設業経理士の資格を取得することが可能です。有効期間である5年以内に3科目全てに合格できなかった場合は、期間が満了した科目の合格が消滅するためその科目も再度受験する必要があります。この他の主な試験概要は以下の通りです。

・受験資格

学歴や年齢、性別などに関わらず誰でも受験することができます。いきなり建設業経理士1級から受験することも可能ですが、1級は他の級と試験時間が重複しているため他の級との併願は不可能です。なお、1級の複数科目を同日にまとめて受験することは可能です。

・受験料

各級の受験料は直近の試験で以下の通り定められています。
1級(1科目)7,410円
1級(2科目同時)10,600円
1級(3科目同時)13,680円
2級6,280円
3級5,250円
4級4,220円

・受験地

令和元年度下期の試験では全国51の会場で試験が実施される予定でした。例年、全国47都道府県の全てに試験会場が設けられていますが、4級は一部の試験会場でしか実施されないので注意しなければなりません。令和元年度下期の試験では27地区の会場で4級試験が実施される予定でした。

②試験科目と出題範囲

・1級
建設業経理士1級では原価計算、財務諸表、財務分析という3つの科目の試験が実施されています。試験は建設業原価計算、財務諸表および財務分析について出題され、「上級の建設業簿記、建設業原価計算及び会計学を修得し、会社法その他会計に関する法規を理解しており、建設業の財務諸表の作成及びそれに基づく経営分析が行えること。」という試験レベルが主催者から示されています。具体的な試験の出題分野については以下の通りです。

  • 1.簿記・会計の基礎
  • 2.建設業簿記・会計の基礎
  • 3.完成工事高の計算
  • 4.原価計算の基礎
  • 5.建設工事の原価計算
  • 6.材料費の計算
  • 7.労務費の計算
  • 8.外注費の計算
  • 9.経費の計算
  • 10.工事間接費(現場共通費)の意義と配賦
  • 11.工事原価の部門別計算
  • 12.工事別原価計算
  • 13.総合原価計算の基礎
  • 14.原価管理(コスト・マネジメント)の基本
  • 15.経営意思決定の特殊原価分析
  • 16.取引の処理
  • 17.決算
  • 18.個人の会計
  • 19.会社の会計
  • 20.計算書類と財務諸表
  • 21.本支店会計
  • 22.連結財務諸表
  • 23.共同企業体の会計
  • 24.財務分析

多くの出題分野は2級とも重複していますが、1級では2級で出題されないような各分野の踏み込んだ内容についても出題されています。基本的には、企業の会計から決算までに要する建設業簿記の知識と建設業特有の原価計算、財務分析などが主な出題内容です。

・2級
建設業経理士2級の試験では、建設業の簿記と原価計算及び会社会計について出題されます。主催者からは示されている試験レベルは「実践的な建設業簿記、基礎的な建設業原価計算を修得し、決算等に関する実務を行えること。」です。1級で必要とされる会計学としての学問的な知識や会社法をはじめとする法規に関する理解、経営分析などは2級では出題されません。具体的には、1級の試験範囲から1.簿記・会計の基礎における会計公準や会計基準、会計法規、13.総合原価計算の基礎、14.原価管理(コスト・マネジメント)の基本、15.経営意思決定の特殊原価分析、22.連結財務諸表、23.共同企業体の会計、24.財務分析などを除いた分野が試験範囲となっています。

・3級
建設業経理事務士3級の試験では建設業の簿記や原価計算に関する内容が出題されます。主催者が発表している試験レベルは「基礎的な建設業簿記の原理及び記帳並びに初歩的な原価計算を理解しており、決算等に関する初歩的な実務を行えること。」で、2級よりも出題範囲が狭く初歩的な内容となっており、以下の14分野から出題されています。

  • 1.簿記・会計の基礎
  • 2.建設業簿記の基礎
  • 3.取引の処理
  • 4.完成工事高の計算
  • 5.原価計算の基礎
  • 6.建設工事の原価計算
  • 7.材料費の計算
  • 8.労務費の計算
  • 9.外注費の計算
  • 10.経費の計算
  • 11.工事別原価計算
  • 12.決算
  • 13.個人の会計
  • 14.計算書類と財務諸表

・4級
建設業経理事務士の4級で問われるのは基本的な簿記の仕組みのみです。主催者から発表されているレベルも「初歩的な建設業簿記を理解していること。」に留まり、出題範囲も非常に限られた試験となっています。具体的には、建設業経理事務士3級の出題分野から4.完成工事高の計算、5.原価計算の基礎、6.建設工事の原価計算、7.材料費の計算、8.労務費の計算、9.外注費の計算、10.経費の計算、11.工事別原価計算を除いた範囲が主な出題範囲です。基本的な簿記の仕組みが問われる内容となっており、原価計算なども出題範囲には含まれていません。

③試験の難易度

上記の出題範囲などからも分かるように1級は出題範囲も広く比較的難しい試験となっており、2級、3級、4級の順に難易度は易しくなっていきます。以下は過去2回の建設業経理士および経理事務士の受験者数と合格者数、合格率をまとめた表です。

表6 建設業経理士および経理事務士の合格率

建設業経理士および経理事務士の合格率

各回によって試験の難易度は多少変動しますが、概ねの合格率は上表の通りです。例えば、1級は毎回各科目で20%から30%前後の合格率となっており、3科目の全てに合格しなければ建設業経理士1級の資格を得ることができないため比較的難易度の高い試験だと言えます。2級は毎回30%から40%前後の方が合格できる試験で、こちらは1級の試験とは異なり勉強法次第で確実な合格を狙えるレベルです。建設業経理事務士の3級は毎回65%前後、4級は毎回75%前後の方が合格できる試験になっており、2級の合格率と比べても格段に合格しやすい難易度となっています。

5 試験対策のポイント

試験対策のポイント

建設業経理士として経営事項審査加点評価対象となるのは1級と2級のみです。そのため、建設業経理士の資格を活かして仕事をしたいのであれば1級または2級の取得が必須とも言えます。しかし、建設業経理士の試験に合格するためには建設業に特化した経理知識や専門用語だけでなく土台となる簿記の知識なども必要です。

そのため、簿記の学習経験が無い方は建設業経理士の学習内容だけでなく簿記の学習内容から勉強を始める必要があります。初学者の方で効率的に資格の取得を目指す場合は「日商簿記3級+建築業経理事務士3級」「日商簿記2級+建設業経理士2級」「日商簿記1級+建設業経理士1級」のように、日商簿記を学習した後で同じ級の建設業経理士を学習するという流れがおすすめです。この方法であれば日商簿記の学習で簿記の下地となる知識を身に付け、建設業経理士に必要な知識を後から追加する形で学習することができます。すでに簿記の資格を取得している方は、日商簿記1級の保持者が建設業経理士1級、日商簿記2級が建設業経理士2級、日商簿記3級が建設業経理事務士3級といった具合で同じ数の級を受けると無理なく効率的に合格を目指すことが可能です。

ただし、学習に必要な時間や出題の難易度から考えると、日商簿記1級の検定試験は建設業経理士1級よりも難しい試験です。そのため、建設業経理士の1級を目指す方が必ずしも日商簿記1級の資格を取得する必要はなく、日商簿記2級の知識を下地として建設業経理士1級の取得を目指すことも現実的な勉強法となります。このように、建設業経理士試験では専門的な建設業会計などの知識以外に簿記の知識も必要となるため、どのように下地となる簿記の知識を身につけられるかが試験対策の大きなポイントです。また、試験対策のポイントとしては下記の2点も挙げられます。

試験対策のポイント

・出題傾向の把握

建設業経理士の試験は過去問と同じパターンの問題が多く出題されているのが特徴です。そのため、過去問対策は必須となっており、問題集なども利用してより多くの設問パターンに慣れておくことが合格への近道となります。例えば、2級、3級、4級で毎回1問目に出題されている仕訳作成の問題は、使用する勘定科目群が問題文に併記されておりその中から正解となる勘定科目を選び出して仕訳を作成する形式です。

このような決まったパターンは過去問対策を行うことで解答形式に慣れることができ、本試験で問題文の理解や解答形式に戸惑うことがなくなります。特に、1級の各科目では毎回1問目に200字や300字などで解答する記述式の理論問題が出題されていますが、こちらについては問題の傾向を正確に把握しておかなければ的確な試験対策を行うこともできません。このように、建設業経理士の試験では過去問対策を通して出題傾向の把握をしておくことが重要な試験対策のポイントです。

・解答の正確性とスピード

建設業経理士の試験は簿記などの試験と同様に電卓などを利用した計算問題が多く出題されています。そのため、試験に合格するためには問題演習を通して解答の正確性とスピードを上げる訓練も必要です。知識のインプットだけでなく、正確かつスピーディーにアウトプットできる能力が問われる試験だけに過去問対策や問題集などで数多くの問題演習をこなすことが得点力のアップにつながります。

また、1級の各科目で出題される理論問題は限られた時間の中で200字や300字などの指定された文字数の解答を作成しなければならないため、記述式に特化した正確性とスピードを上げる対策も必要です。このように、試験対策を行う場合は解答の正確性とスピードについても意識した学習を行うことが重要なポイントとなります。

6 まとめ

まとめ

今回の記事では建設業経理士について概要や試験内容、試験対策のポイントなどを確認しました。建設業経理士は建設業界において重要視される資格の一つであるため、現実的なキャリアアップにもつながる資格です。しかし、建設業経理士は通常の簿記とは異なる専門的な知識も問われる試験となっているため、資格取得を目指す場合は試験概要や試験対策のポイントを正確に理解した上で対策を行う必要があります。必要に応じて資格スクールなども活用し、効率の良い学習で合格を掴みとってください。

建設業許可申請が全国一律76,000円!KiND行政書士事務所:東京