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建設業で会社の規模や生産性を上げる方法は?

新型コロナ感染の影響で建設需要が落ち込んだ後、2021年度以降は緩やかな回復傾向が見られてきました。しかし、工期の長期化・人手不足・資材高などにより倒産する中小の建設事業者が増加しており、現在の建設業界は優しい経営状況とは言えません。

こうした環境の中で建設事業者として生き残り成長していくには、会社の規模を拡大させて経営基盤を強化したり、業務の生産性を高めて収益性を向上させたりすることが必要になります。

そこで今回の記事では、建設業で会社の規模や生産性を上げる方法などを解説します。建設業界の現状と中小等の建設事業者に求められる経営、規模拡大・生産性向上の必要性と実現する方法など説明するので、今後の建設事業者の経営のあり方に興味のある方などは、参考にしてみてください。

1 建設業界の現状

2023年4月12日に公表されている(一財)建設経済研究所および(一財)経済調査会 経済調査研究所の「建設経済モデルによる建設投資の見通し(2023年4月)」では、2022年と2023年の建設投資の予測が発表されました。

2022年度は、コロナ禍からの社会経済活動の正常化が進んだため国内景気が改善して、民間住宅建設投資、非住宅建設投資ともに、前年度を上回ると予測されています。

建設投資全体は、最近まで見られた物価上昇の影響を受けたため、名目値ベースでは前年度と比べて同水準になるものの、実質値ベースでは前年度を下回る水準になると判断されました。

2022年度の建設投資は、前年度比0.1%増の66兆6,900億円で、政府建設投資は前年度と比べて同水準(0.1%増)と予測しています。民間建設投資については、「住宅投資」が前年度と比べて同水準の0.2%増で、「非住宅投資」が前年度を上回る水準の7.2%増です。

民間住宅投資については、新設住宅着工戸数が建設コストの高止まりや住宅ローン金利上昇の可能性などの点から、前年度比でやや減少になると予測されました。一方、名目値ベースの投資額は建設コストの上昇により前年度と同水準で推移すると見込んでいます。

民間非住宅建設投資については、企業の設備投資意欲が高いため、名目値ベースで前年度を上回る水準と予測していますが、資材価格やエネルギー価格の高騰等、経済・金融市場の動向に注視する必要がある、と指摘しているのです。

2023年度は、民間住宅建設投資、非住宅建設投資ともに、引き続き前年度を上回るとの見込みで、建設投資全体としては、前年度比で名目値ベースは微増、実質値ベースでは同水準になると予測しています。

2023年度の建設投資は前年度比2.6%増の68兆4,300億円との予測です。政府建設投資は前年度と比べて微増の2.3%増、民間建設投資の「住宅投資」は前年度と比べて微増の1.1%増、「非住宅投資」は前年度と比べて同水準の0.9%増と判断されました。

政府建設投資における国の直轄・補助事業は、前年度当初予算並みで、地方単独事業費については、前年度並みと見込んでいます。民間住宅投資は、新設着工戸数は前年度と同水準、名目値ベースの投資額は微増との予測です。

民間非住宅建設投資は、比較的堅調な状態が続き2022年度比で同水準になると予測していますが、長引くウクライナ問題や国内外の金利政策の変化等、世界的な経済・社会情勢には注意が必要と指摘しています。

建設投資額(名目値)の推移を見ると、2019年度が62.3兆円、20年度が65.4兆円、21年度が66.6兆円、22年度が66.7兆円(予測)、23年度が

68.4兆円(予測)です。このように国内の建設投資額はコロナ禍の影響を受けましたが、現在ではその状態から穏やかに回復しつつあると考えられます。

・建設業の倒産廃業の状況

株式会社東京商工リサーチは、2023年4月度の全国企業倒産(負債額1,000万円以上)について、その倒産等の件数が610件(前年同月比25.5%増)で2022年4月から13カ月連続で前年同月を上回った、と発表しました。

産業別では、最多は「サービス業他」の191件(前年同月比23.2%増)で、次いで「建設業」が134件(前年同月比65.4%増)となっており4カ月連続で前年同月を上回っています。

また、株式会社帝国データバンクの「倒産集計」の「2023年3月報」によると、倒産件数は、前年同月に比べて36.3%多い800件で、11カ月連続で前年同月を上回りました。

業種別では、全業種で前年同月から増加しており、人手不足・高齢化が進む「建設業」が前年同月110件から155件へと40.9%増と大きく伸びています>。

帝国データバンク社の分析によると、2022年度の倒産動向の特徴は、手厚い資金繰り支援の終了後に「物価高(インフレ)」「人手不足」「コロナ融資」「円安」など四重・五重の苦境に見舞われ、事業継続を断念した中小企業が多い点です。

「物価高倒産」や「コロナ融資後倒産」は各々前年度から急増し、「人手不足倒産」も建設業や運輸業などで多いと指摘しています。

1-1 建設業が抱える問題

建設業界では、低生産性、人手不足、下請構造、などの問題があり、今すぐにでも改善が必要な状況です。

1)就業者数の減少傾向

建設業就業者数(令和4年平均)は479万人で、ピーク時(平成9年平均)から約30%も減少しました。特に技能者は平成9年の455万人から令和4年には302万人へと激減している状態です。

また、就業者の年齢構成を見ると55歳以上が35.9%、29歳以下が11.7%と高齢化が進み、次世代への技術承継が大きな課題となっています。人手不足が全産業で問題となっていますが、建設業界では高齢化対策とともに若者を中心とした人材確保が喫緊の課題となっているのです。

2)主要建設資材の価格高騰

2021年(令和3年)後半から原材料費の高騰やエネルギーコストの上昇等に伴い、各種の建設資材の価格が高騰しています。特に全国的にセメント・生コンクリートの騰勢が続いており、事業者の経営を圧迫しているのです。

  1. 生コンクリート(円/10㎥):2023年4月 ¥178,500(+21.0%)
  2. セメント (円/10t):2023年4月 ¥129,000(+18.3%)
  3. 厚板(円/t):2023年4月 ¥144,000(+8.7%)
  4. 型枠用合板(円/50枚):2023年4月 ¥100,000(+8.4%)

建設資材の価格が高騰している現状において、適切な価格転嫁が実現できなければ、建設事業者は厳しい経営を強いられることになります

3)建設業の一日当たりの賃金

製造業と建設業の一日当たりの賃金について、平成25年と令和4年を比較した結果は以下の通りです(各々10月時点でのデータ)。

  1. 製造業:18,361円→19,861円
  2. 建設業・全体:17,321円→21,032円
  3. 建設業・職別工事業(下請等):15,170円→18,722円

以前の建設業の賃金は製造業に比べて低い水準にありましたが、過去11年間で大幅に改善されました。特に建設業・職別工事業では直近において年平均3.4%も上昇してきています

こうした賃金アップの状況は人手不足が深刻な建設業界では当然、必要とされた対応の結果と言えますが、急激な人件費の上昇は建設事業者の経営を厳しくさせる要因になりかねません。

4)働き方の現状(就業状況)

国土交通省の「建設業を巡る現状と課題」によると、建設業労働者の働き方の特徴として以下の点が確認できます。

●産業別年間出勤日数

令和3年度の建設業、製造業、全産業の産業別年間出勤日数を見ると、建設業は全産業より12日多く、製造業と比べると16日多い状態でした。

●産業別年間実労働時間

産業別年間実労働時間については、建設業は全産業より90時間多く、製造業と比べる68時間多い状態になっています。

●建設業における平均的な休日の取得状況

休日の取得状況については、建設業全体は「4週6休程度」の44.1%が最多で、次に多いのは「4週5休程度」の22.9%でした。従って、他の産業では当たり前となっている週休2日が建設業界ではあまり実現されていません

以上の通り、他の産業と比べて建設業の就労状況は労働者にとって厳しい状況となっています。賃金は改善されているもの、働き方の面ではまだまだ厳しい状況であり、人材確保が困難になっている一因になっている可能性が高いです。

5)低い生産性と建設業の特徴

株式会社H&Companyは、建設業における労働生産性に関する最新動向を分析し、2023年2月21日(火)にレポートとして公開しました。その主な内容は以下の通りです。

●2021年の労働生産性は、全産業が4,793.9円で、建設業は3,103.5円となっており1,690.4円低い

※労働生産性=実質国内総生産額÷(就業者数×1人当たりの年間総労働時間)で算出

2001年比で見ると、108.4%と改善傾向にあるものの、全産業の改善幅と比較すると、10.4ポイント低い結果となっています。

●2021年の建設業の実質国内総生産額は、2001年比で78.7%、就業者数は同74.5%である

実質国内総生産額の減少以上に就業者数は減っています

●2021年の1人あたり年間労働時間は、全産業が1,650.9時間で、建設業は1,966.5時間と315.6時間多い

建設業の年間労働時間は、全産業の中で最も多い状況です。2001年比で97.3%と減少はしていますが、全産業は89.5%であることから、建設業では1人当たりの年間労働時間の短縮が進んでいないことが分かります。

実質国内総生産額の減少以上に就業者数が減少していますが、1人あたりの年間労働時間がほとんど同じです。従って、建設業では労働生産性があまり改善されていないことが分かります。

この生産性の低い理由としては、建設事業(建設現場等)でよく見られる以下のような要因が挙げられるでしょう。

・一品受注生産

建設業は、異なる土地・場所等で、顧客の注文に応じて行う、一品毎の生産形態が多いです(ライン生産やロット生産などの効率的な生産が困難)。

・現地屋外生産

建設作業は、様々な地理的、地形条件の下で、日々変化する気象条件等に対応しながら進めなければならない難しさがあります(生産条件の統一や標準化の難度が高い)。

・労働集約型生産

建設業は労働集約型生産で、様々な材料、機材、施工方法と専門工事会社を含めた様々な技能を有する多数の作業員、などによって遂行されます(機械化・自動化などが困難)。

・仕様変更の多さと工期の長期化

建設工事では各作業の進行過程で設計仕様の変更が多く、それに伴う変更作業の発生により工期の長期化を招く傾向が見られます(変更等に伴う無駄が多い)。

このように建設業は、製造業のようなライン生産、ロット生産やセル生産などの決まった生産方式が取りにくく、自動化やロボット化も難しいため、生産性の改善が積極的に進められてこなかったのです。

2 建設事業者に求められる経営と規模拡大・生産性向上の必要性

現在の建設業者に必要な経営を示し、その中で会社の拡大・生産性向上に取り組むことの有効性について見ていきましょう。

2-1 ビジネスモデルの再考

経営環境が大きく変化している現在、これまでの建設業のビジネスモデル(ビジネスの基本の方針と仕組)では成長を維持するのが困難になってきたため、時代に適合したビジネスモデルの再考が必要です。

建設業のこれまでの特徴は建設需要に支えられた受注型ビジネスであるため、その需要が減少したり、複雑な業務から生産効率が低下したりすると、建設事業者の業績が悪化します。

建設需要はその時々の経済環境や国等の政策などによって変化しますが、最盛期を過ぎた後バブル崩壊、リーマンショック、東日本大震災、新型コロナ感染の流行、などに伴う経済危機に見舞われ、中長期的には減少傾向にあります。

一方、近年では東日本大震災からの復興、東京オリンピック・パラリンピックの開催、首都圏等での都市再開発などがあり徐々に回復してきました。

しかし、以前のような需要の伸びを期待する状況ではなく、新型コロナのようなパンデミックが発生すれば、需要は直ぐに縮小してしまいます。また、物価高騰問題、ウクライナ問題や台湾問題等の安全保障上の問題、などが進展すれば、需要の大幅な減少の可能性も高いです。

つまり、現在の建設需要は大きな伸びが期待しにくい一方で、縮小する要因がいくつも存在する不安定さがあります。こうした状況の中で従来通りの生産・業務活動していくと、仕事量を安定して確保することが難しくなるほか、利益を減少させることになり、事業継続が困難になりかねません

そのためその時代に適したビジネスモデルを採用することが必要です。ビジネスモデルは、誰の、どのニーズを、どのように提供していくか、をまとめたビジネスの基本となる仕組で、事業者によって様々なものが存在します。

たとえば、これまでの中小建設事業者のモデルなら、「特定の元請事業者を対象に、自社が得意とする工事スキルで、その元請事業者の受注案件の下請を受注し、求められる低コスト等の施工を提供していく」といったモデルが多く見られました。

しかし、今後の環境に対応していくために以下のようなモデルに再考することも必要です。

  1. ・特定の元請事業者だけでなく、有望な複数の元請事業者と取引する
  2. ・下請事業だけでなく、自ら元請事業者となる
  3. ・元請事業者なら新設物件だけでなく補修物件(リノベーション、メンテナンス等)にも対応する
  4. ・得意の限られたスキル・工事だけでなく、他の種類の工事・技能に対応できるようにする
  5. ・低コストの提供にこだわらず、高品質や短納期などの付加価値の高い業務にも対応する
  6. ・建設業だけでなく不動産賃貸や不動産管理などの周辺事業等への進出も検討する
  7. ・生産性を向上するほか、カーボンニュートラルへの貢献や環境負荷の低減を図る業務プロセスに変更して他社との差別化を進める

ビジネス環境が変化すれば、商売相手、そのニーズ、そしてそのニーズを捉えるための事業(商品・サービスの内容や提供方法 等)を変更させることが必要となりますが、結果的に事業の規模を拡大させたり、生産性を高めたりすることに繋がるのです。

2-2 経営基盤の増強

ビジネスモデルの変更は一朝一夕にはいかないこともあり、経営を維持しながら進めることも必要です。そのため経営状態を改善して強化していくことが求められます。

具体的には収益を安定させることが課題となりますが、そのためには以下のような取組が重要です。

1)顧客の拡大や分散化

特定の元請などの顧客に仕事を依存した経営はリスクが高くなるため、ある程度顧客を分散化できるように取引先を拡大することが求められます。自社だけで顧客開拓が難しい場合は他の事業者と協力・連携することも必要です。この取組も規模の拡大に繋がります。

2)収益性の改善

以下のような取組が必要です。

・受注価格の改善

受注する工事単価の改善が求められます。下請構造にある建設事業者が既存の元請事業者に対して工事単価を上げていくことは容易ではないですが、国の公共工事設計労務単価のアップや適正工期の促進などもあり、工事単価を見直せる可能性が高まってきました

値上げ交渉が困難な場合、新たな元請事業者を開拓して受注単価を改善するという取組も必要となりますが、結果的に規模の拡大に繋がります

・経費削減

全ての経費項目について無駄を取り除き、経費の削減に努めなければなりません。経費の中で金額の大きい順にその非効率性を評価し、効果が低いものは排除もしくは他のものに代替していくことも必要です。

とりわけ人件費を含む生産コストの削減は重要であり、工事プロセスや作業方法の改善などによる生産性向上が求められます

・資材高騰の対策

建築資材や使用する機器およびその燃料等の価格が高騰しており、利益を圧迫しているケースが多いですが、その資材や仕入先などを変更するなどして低減化に努めなくてはなりません。仕入先を複数にして価格を争わせて少しでも安い価格で購入できるようにする仕組を持つことなどが重要です。

2-3 働き方改革の推進と人材の確保・育成

会社を成長させるためには優秀な人材を確保していかねばなりません。しかし、中小等の建設事業者が有能な人材を確保するには、以下のような状態にすることが必要です。

  1. ・賃金が業界や他の業種と比べて見劣りしない
  2. ・モチベーションが上がる、報酬を含む人事制度が整備されている
  3. ・週休二日制など安定して休日が確保できる
  4. ・有給休暇や育児休暇などがとりやすい
  5. ・会社の発展・成長、働きがいなどを感じられるビジョンや企業体質がある
  6. ・キャリア形成に繋がる教育訓練・研修などの制度がある

働きたいと思える環境を整備するためにはその経費を賄える収益が必要となるため、事業規模の拡大と生産性向上の実現が求められます

2-4 建設事業の生産性の改善

限られた資源で仕事量を増やし収益を拡大させるためには、既存の業務を見直し生産性を高めていく以下のような努力が欠かせません。

1)作業工程と作業方法等の改革・改善

生産性を大幅に高めるためには作業プロセスとその作業方法を抜本的に変えることも必要になります

建設業の場合、各種の資材を建設現場に持ち寄って工程に従って建設工事が進められますが、現在ではいくつかの資材を工場で加工・組み立てて現場へ搬入するといった形態が多く見られるようになってきました

また、従来の作業工程を排除・統合してコストの低減と納期の短縮を図るケースも少なくありません。

2)作業のIT化(デジタル化)や自動化

建設作業プロセスにおける業務をデジタル化したり、自動化機器を導入したりして省人化や納期短縮を図り、生産性を高める例が多く見られています。また、単に生産性を高めるだけでなく業務を変革して新しい価値を創出するといった「建設DX」に取り組む例も増えてきました。

建設業においても、作業工程や作業方法にデジタル技術を活用して、生産性の向上と新し付加価値の提供を実現して成長を図る動きが強まってきたのです。

3 建設事業者における規模拡大の方法

ここでは建設事業者が事業規模を拡大させ収益を高めるための方法を紹介しましょう。

3-1 成長できるビジネスモデルと戦略の採用

厳しい経営環境を乗り越え成長し続けるためには、従来の建設業のビジネスモデルや戦略とは異なるタイプ・内容を採用することも必要です。

1)SDGs等など新たなニーズへの対応

建設業界の主な市場は、「住宅」「店舗」「オフィスビル」「ホテル」「工場」「物流倉庫」「学校」「病院」などですが、各時代における建築・工事のニーズは異なるため、現在のニーズに対応してビジネスを組み立てることが重要になります。

たとえば、現在のニーズとしては、省エネルギー・低ランニングコスト、自然環境保護・自然との調和、癒し空間や働きやすい空間、地球温暖化対策、SDGs等への対応、などがトレンドです。

こうしたニーズに対応した工事・施工を実施していくことが新しい仕事を増やすことや事業規模の拡大に繋がります

●SDGs等への対応

SDGs(持続可能な開発目標)とは、2015年9月の国連サミットで採択された、2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標のことです。そして、世界の各国、各企業等がその目標達成に向けて取り組んでいます。

国や企業等が設置する建築物においてもSDGsに関連する項目があり、それを反映した設計・施工・運用が建設事業者に求めるようになっているのです。

SDGsは17目標もあり、建設事業者に求められる課題は多岐にわたり、「太陽光発電の促進、自然エネルギー導入の促進」「耐震技術の向上や土砂崩れ等の防災対策」「災害に強い住宅や省エネルギー住宅の建設」「植樹、地産地消による資材の確保やビオトープの整備」などの対応が求められています。

また、設計・施工面での対応だけでなく、「適正な人事評価と賃金等の適正な処遇」「子ども食堂の運営等の社会貢献活動」「日雇い労働者も含む、全労働者への健康診断の実施」などの組織内の活動も必要です。

SDGs等への対応は、取引先だけでなく社会全体からの評価を高めることに繋がり、結果として工事の受注に繋がることが期待できます

●省エネ・地球温暖化対策への対応

SDGsの目標にも関連しますが、CO2排出量の削減などによる地球温暖化対策の実施が建設業においてより重要になってきました。建設工事や施工後の建築物等から排出されるCO2排出量は他の産業に比べて多いと見られており、その削減が社会から要求されているのです。

また、建築物の施主や運用会社などが直接的に運用時のCO2排出量の低減を求めており、それに対応できる設計・施工が必要となってきました。つまり、それに対応できることが受注の前提条件になり得るのです。

加えてエネルギー資源を含む物価の高騰が続いているため、建築物の低コスト運用が益々求められるようになっています。再生可能エネルギーを利用するなど、低いランニングコストで運用できる設計・施工が求められており、その対応が受注増には不可欠となってきたのです。

●働きやすく自然に優しい建築への対応

働き方改革が叫ばれ、労働者の就労環境の改善が重視されるようになり、彼らが働きやすいオフィス等の設計・施工・運用が求められるようになってきました。また、新型コロナのようなパンデミックの際の対応が図りやすい空間の提案なども必要です。

また、子供の保育や防災時の避難などに対応できる建築なども必要になってきました。従って、こうしたニーズへの対応には、その会社の従業員目線で働きやすいスペースの設計・運用等が求められます

ほかにも労働者だけでなく周囲の地域住民から見た自然との調和なども必要です。地域の建物・景観や文化などにマッチした建物や付随する施設等はその建物の価値を高めるため、施主からの要望も多くなっています

2)事業の多角化

様々な事業の多角化も事業規模を拡大させるのに有効です。たとえば、以下のような事例が多く見られます。

●農業・畜産分野への進出

・しいたけの菌床栽培

この新進出は、しいたけ栽培が盛んな地域で、露地栽培より収益幅の大きい菌床栽培(施設栽培)に進出した事例です。事業の特徴として、安心安全の食材の提供、CO2削減の取組(日本初のしいたけの「カーボンフットプリント」認証の取得)、再生資源利用の取組、など健康面や環境面にも配慮した事業活動が展開されました。

・本業とのシナジーを活かした畜産業への進出

この事例の特徴は、主な飼料に本業の造園業の業務(公園等の管理業務)で発生する刈草を有効利用する、木材チップや剪定くずを牛糞に混ぜて堆肥化して土壌改良材等として販売する、というリサイクル運営に注力した点です。この企業は、環境問題に取り組む企業として地域に貢献しています。

●介護サービス分野

・通所介護施設の運営

この建設事業者は、自社所有のマンションの空室を利用した通所介護サービスの運営を検討したのをきっかけに通所介護施設の運営を始めました。施設規模については利用者20名までの収容が可能ですが、15名定員で運営されています。

運営の特徴は、厨房完備、栄養士の手作りによるこだわりの昼食、マッサージ師による指圧マッサージや水圧マッサージなどリハビリの充実、車イスのままお風呂場に入室できるお風呂の設置、などの利用者目線のサービスです。

●環境・リサイクル関連分野

・樹皮をリサイクルした土壌改良資材の開発

この企業は、スギ・ヒノキの樹皮を特殊加工して土壌改良資材を製造する技術を開発し、これを用いた土壌改良事業を開始しました。製造時にゴミとして焼却処分される樹皮をリサイクルするためCO2削減や環境保護に役立っています

・焼却灰溶融スラグを利用したコンクリート資材の開発

この建設事業者は、家庭からでるゴミの焼却灰溶融スラグを再利用したコンクリート平板を開発し製造、販売しています。増加していくゴミの減量と廃棄物の再利用を実現することにより循環型社会の形成に貢献しているのです。

3)脱請負

下請事業に依存している企業はビジネスモデルを見直す際に「脱下請け」の取組を含めることも必要になります。下請事業だけでは元請事業者の経営に自社が振り回され、状況によっては成長の機会を逃すことになりかねません

下請法(下請代金支払遅延等防止法)などにより一定の保護があるものの、元請事業者に対する下請事業者の立場は弱いため、元請事業者からのコスト・納期・品質などで過度の要求に晒され、利益の出にくい事業構造になっている下請事業者がよく見られます。

従って、そのような状況にある下請事業者では、成長のために下請事業に依存しないための「脱請負」に向けた取組も必要となっています。

具体的には、自社が元請けとなって工事を施主から直接受注することや、建設業に関連した不動産業(賃貸業や管理業等)やまったく異なる業種へ進出する、などに取り組むことが考えられます。下請事業者のままでは成長の限界に直面しやすくなるため、脱下請けへの取組を少しずつでも進めることは重要です。

3-2 マーケティング力などの経営力の強化

多角化の推進、異業種への進出や脱下請けなどを進めるためには、マーケティングなどの経営力を強化することが求められます

現状のビジネスモデルを分析して、今後の規模の拡大による成長を目指すために自社がどうあるべきか、どのような事業を行っていくべきかについて、状況を分析して新たなビジネスモデルの(再)構築を検討することも必要です。

新たなビジネスモデルを構想し実際のビジネスへと具現化して遂行していくためには、そのための経営力が欠かせません。現状の自社を取り巻く経営環境や社会の状況を分析して、将来の自社が目指す姿を描き、それを実現するためのビジネスを構想して具体化していくための経営知識やノウハウが必要です。

特に事業規模を拡大させていくにはマーケティング面の能力を向上させなければなりません。マーケティングはビジネスモデルに基づいて、そのビジネスで儲けるための一連の仕組(システム)やプロセスであるため、事業経営の要になります。

誰を対象にするか、対象者のニーズ、ニーズに対応する自社の商品・サービスの内容、その価値のあり方や価値の提供の仕方、ライバルとの違いや勝ち方、などを具体的に構想し、ビジネスとして回るようにセッティングしていくのがマーケティングの役割です。

多角化展開、新事業への進出や脱請負などの新しい取組を成功させるためにはマーケティングを中心とした経営ノウハウを向上させることが求められます

3-3 規模拡大を支える経営資源の確保・増強

事業規模の拡大が進むと経営者に求められる知識や能力は増大していきます。そのため少ない経営者や従業員だけでは拡大する事業に対応することが困難となるため、複数の経営者や部下でその役割を分担していくことは重要です。

特に従業員を育成して重要な事業や業務を委ねられるようにしていくことが求められます。教育訓練を強化して、1つの工事案件を任せる人材を増やす、営業力を強化させて新たな元請事業者を開発させる、マーケティング力を養成して新事業等を構想・推進させる、といった取組は重要です。

また、第三者の協力者などの支援や連携などを活用することも必要になります。自社の組織力や人材だけでは対応できないことも多いため、他者を活用する経営にも取り組まねばなりません

下請事業者同士が連携して有望な元請事業者との取引を増やす、或は共同で施主から工事を直接受注する、また協力して新事業に進出する、といった取組は重要になります。

企業組織は共通の目的を有する人の集団であるため、その目的意識が高く、目的を達成する能力の高い人が多く集まるほど、事業を拡大させることが可能です。そのため事業者はそうした人や企業を確保するための努力が欠かせません

3-4 魅力ある会社づくり

有能な従業員や協力者を集めるためには、自社が彼らにとって魅力的な会社になる必要があります

就職・転職希望者から、自社が応募先として選ばれるには、建設事業者としての将来性、経営の安定性、好ましい理念・ビジョン、働きがいのある業務内容、適正な待遇・処遇等を実現する人事制度、居心地の良い職場環境、などが欠かせません

建設業には3K(きつい、危険、汚い)のイメージがある上に賃金水準が他の業種と比べ低い傾向にあるほか、休みが取りにくい状況にあります。政府の主導でこれらは改善しつつありますが、対応できない場合は益々人材確保が厳しくなる可能性が高いです。

また、昨今の若者では賃金・休みといった面だけでなく、企業としての社会貢献性などの理念・ビジョン、やりがいのある仕事や居心地の良い職場環境を求める傾向も見られます。

優秀な人材を確保していくためには、上記のような就職希望者等の目線に立った会社づくりに取り組む必要があるわけです。

また、取引先や協力者等を拡大させるためには、自社が彼らにとって有利な存在になることが求められます。自社と取引することで、仕事量が増える、新しい顧客を開拓できる、新事業に進出できる、といった価値が得られると感じさせることが重要です。

企業同士の取引、付き合いは、ビジネスでの理念・考えが同質であるということだけで成立したり、発展したりするのは困難であり、その状況を打破するためには「利」の存在が必要になります。つまり、自社が協力者にとっての利(仕事量や利益の増大 等)を提供できる存在になることが重要です。

4 建設事業者における生産性向上の方法

ここでは建設事業者の生産性向上に繋がる取組や方法を説明しましょう。

4-1 建設業務の標準化

建設業の工事作業等の業務では従来から行われきた作業プロセスや作業方法に従って通常遂行されますが、その中には属人的な部分や非効率な面も少なくありません。そのため経営者としては、作業全体を見直し無駄を排除した効率的な業務へと改善する必要があるわけです。

作業者の中には自身の創意工夫と努力で独特で高度なスキルを獲得した者も多いですが、作業者全体でみると、作業方法が必ずしも統一されておらず、仕事の質・量にばらつきが見られることも少なくありません

建設作業の効率性を高めるためには、各作業プロセスと各作業方法をできるだけ統一・標準化することが有効になります。また、プロセスと作業を可能な限り簡素化、単純化することも重要です。

既存の作業者は従来通りの作業に慣れ親しんでいるため、新しい方法の導入に抵抗を持つことも多いですが、仕事が楽になる、早く終わる、効率的になったら賃金が上がる、休みがとれやすくなる、などのメリットを提示して協力を促すことも必要になります

ベテラン作業者の高いスキルを反映させるだけでなく、経験の浅い作業者でも容易に実行できる標準作業等にすることも考慮して適切な作業方法に仕上げることが重要です。また、そうした効率化のための取組の中で、デジタル技術や情報システムなどを活用して進めることも必要になります。

4-2 技能等と意欲の向上

作業を標準化・簡素化した後は、その新しい作業方法等を実行できるための技能を習得させることが必要です。そのため作業者には習得するための教育訓練の機会を提供しなければなりません。

関係する作業者を一堂に集めて一定時間の訓練を行ったり、上司・先輩が後輩等に付いて実際の作業の中で指導して習得させたりする方法が良く行われています。もちろん特殊な技能や外部から導入する技能などでは、外部機関の研修などに従業員を参加させて教育することも必要です。

なお、教育訓練等の後、従業員が新たな作業方法を正しく実行するように意欲を高める取組も行わねばなりません。具体的には、新たな作業の実施により発生した成果(納期短縮やコストダウン 等)を示し、その成果に報いる処遇等が求められます。

納期短縮が実現できれば、作業工程に余裕も生じるため、休日を増やしたり、有給休暇の取得を進めたりする、コストダウンに成功すれば賃金アップを行う、収益の拡大に繋がれば昇進・昇格させる、といった成果に対する処遇が重要です。

人は何らかのインセンティブ(誘因)があったほうがモチベーションは上がりやすいため、自社の従業員に適したものを考案して提供しましょう。

4-3 建設DXの推進

建設作業の生産効率の向上のために「建設DX」を推進していくことは有効です。建設DXとは、建設業においてAIやIoTなどのデジタル技術を活用して、事業や業務に変革を起こし様々な経営課題を解決することを指します。

たとえば、3Dデータや3Dモデルなどのデジタル情報を計画・調査・設計に活用することで、作業や管理の効率化を図ることが可能です。こうした仕組は「BIM/CIM」と呼ばれますが、そのシステムを導入・運用すれば、ミスや手戻りの大幅な減少、単純作業の軽減、工程短縮、施工現場の安全性向上、などの効果が得られ、業務効率の向上に役立ちます

また、情報通信技術を取り入れた重機である「ICT建機」を使用すれば、遠隔地からその重機を操作・コントロールしたり、自動で運転したりできるため、省人化や安全性の向上が図れます

無線で遠隔操作できる無人の飛行物体である「ドローン」を利用すれば、従来、作業者が現場に足を運び確認していた工事状況や建築物等の状態などを遠隔からチェック・分析することが可能です。確認にかかる時間を削減できるだけでなく、危険な作業から作業員を開放してくれます

なお、ドローンなどにより得られた画像データ等をAIで解析するシステムも多いです(ICT建機での利用も多い)。状態を分析して、その状況から対象物の安全性や耐震性などの判定や、自動運転などに活用されています。

中小建設業などでは、手軽にDXに取り組む「スモールDX」を推進する例も多いです。たとえば、電話、移動、コミュニケーションミスによる手戻りの削減を目的として、クラウドを利用したコミュニケーションツールの活用等が挙げられます。工事現場の管理に必要な書類や写真などの作成・共有や進行管理にクラウドのストレージが利用されているのです。

また、クラウド型のビル監視制御システムなどもあります。自社の監視センターから顧客の設備運用や維持管理を少人数でサポートする、というサブスクリプション型サービスなどが提供されています。

建設業においてもDXが積極的に活用されており、業務の効率化や省人化などに利用されているのです。

4-4 他者の活用とマネジメントの強化

業務の改革・改善を図るには自社の従業員のみならず、元請事業者、下請事業者や協力者などの関係者が情報を共有して、連携・協力して工事・作業にあたる必要があり、そのためには彼らを適切に管理しなければなりません

工事現場の各種作業の進捗管理を適切に行うことで無駄な人の遊びや待機時間などを省き効率的な工事進行が可能となります。そのためには各作業の進捗情報などを一元的に管理し工事業者等の関係者が共有できる仕組や情報システムが不可欠です。

もちろん工事の遅延などが発生した場合の報告と対応・処置を誰がどのように行うかの仕組を作り、早急な対応が実施できるような管理体制も求められます。また、手戻り・手待ちなどが生じるリスク(支持地盤深度、地下水位、地下埋設物、騒音振動、近隣対応 等)を事前にあげて対応策を用意しておくといった対応も必要です。

自社の従業員に対しては作業管理だけでなくモチベーション管理も行うことが望まれます。決められた作業工程を標準の作業方法で的確に実施しているか、新たに導入した標準作業を守っているか、そうした取組で労働意欲が低下していないか、などの確認が欠かせません

モチベーションが低下している場合は、その低下要因を追求して対策を講じることが基本となります。モチベーション低下は様々な要因が考えられますが、労働条件や人事処遇などが原因である場合は全社的な改善が必要で時間も多くかかるため、できるだけ早く改善活動に着手することが重要です。

作業方法や管理方法が正しくても作業者のやる気が低下していれば、効率化が進まなくなり得るため、モチベーション管理も適切に実施していかねばなりません

5 まとめ

建設業界ではコロナ禍の打撃を受けた後、その需要は緩やかに回復してきましたが、中国経済の停滞、ウクライナ問題、物価高騰などに晒され厳しい環境にあることから大幅な需要回復は期待しにくいです。

この状況を乗り越え成長していくには会社規模の拡大と生産性の向上が役立ちます。今後の建設事業者は、脱下請け、事業の多角化や新事業の進出などで事業規模を拡大させることや、業務の標準化や建設DXの推進等により生産性を高めることに取り組み、成長を持続できるように努めてみてください

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