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建設業界の人材定着のために開始された“建設キャリアアップシステム(CCUS)”を解説!

生活や経済に必要なインフラを社会インフラといいますが、その社会インフラの建設や維持するには建設業者が欠かせません。特に最近は建設業者を支える人材不足が懸念されており、社会問題になっています。新しい建設事業が止まるだけでなく、すでに建設されている道路や湾岸や様々な施設は定期的な整備が必要です。それらが滞れば、私たちの生活や経済に影響が出る可能性もあります。

そこで、建設業就業者を増やす試みの1つとして開始されたのが建設キャリアップシステム(通称CCUS=Construction Career Up System)になります。今回は建設キャリアアップシステムについて、概要および背景や現状の運用と、メリットデメリットと利用のやり方などを解説するので、興味のある方はご参考ください。

1 建設キャリアアップシステムとは

建設キャリアアップシステムとは

2019年4月遂に『建設キャリアアップシステム』が全国的な運用がスタートしました。官民一体となり、建設業界の熟練技術者に適正な処遇の実現を目指します。

重層下請構造*の建設業界において、技能者がどこの現場でどのような技能を利用して経験を積んだのかを蓄積し、評価ができる仕組みを作り上げようとしています。具体的には、資格や職務履歴と共に現場経験をデータベースに集める事で、適切な評価ができるようにしようという試みになります。

*重曹下請構造とは、仕事と依頼者から直接仕事を受ける元請と元請から仕事を受ける1次受け、2次受けと下請けが重なっていく構造をいいます。

1−1 導入された背景

導入された背景

建設業は、日本国憲法にある“健康で文化的な生活“をする事に密接に関わる業種の1つです。そして、その建設業の現場を支えるのが“技能労働者”や”建設技能者“になります。建設工事に携わって働く人は、『建設工事の施工管理に従事』する人と、『建設工事の施工に従事』する人に分かれて、その中で細分化されています。

建設工事の施工管理に従事する人 技術者=施工技術上の管理をする人 ・管理技術者
・主任技術者
・管理技術者や主任技術者を補助する技術者
建設工事の施工に従事する人 建設技能者 ・登記基幹技能者
・上級職長
・技能検定合格者 等
技能者ではない 普通作業員

〇技術者と技能者

技術者は、工事現場の施工技術管理を司る人をいいます。建設法上、建設工事を施工する上では技術者を置くことを求められています。
技能者とは、『建設工事の直接的な作業を行う、技術を有する労働者』と定義されています。技能者と技能労働者と建設技能者は同義となります。

建設現場に技能労働者がいない状況になれば施工自体があるいは適切な施工が出来なくなってしまうリスクが増加します。過去は、豊富な労働人口に支えられ充分な技能労働者が確保できていました。その結果、不適格業者の排除が課題となっていました。

しかし、現在では日本の労働者人口は高齢化と共に減少しています。その結果、技能労働者も高齢化と減少の課題が顕著に表れました。
建設業の就業者がピークだったのは1997年で約685万人の就業者がいました。しかし、2019年1月時点には約473万人と30.9%減少しています。一方で、有効求人倍率は6.18倍と2001年以降最高値になっているため、典型的な人手不足の状況です。

さらに、60歳以上の技能労働者は81.1万人と全体の4分の1に該当する一方で、20代以下は約1割と高齢化が進んでいます。これらのことを指して、「33対11」というキーワードとして課題になっています。
⦅年代別技能労働者数⦆国土交通省『技能労働者の位置づけについて』よ

60代以上 50代 40代 30代 20代と10代
81.1万人 65.8万人 87.7万人 57.8万人 16.7万人

この技能労働者の確保が建設業界の大きな課題になります。そして、技能労働者の確保のためには、技能に合致した処遇を実現する事が求められました。過去は、適切な評価をするための現場経験のデータ蓄積の実現が出来ずにいました。工事現場においても技術者が誰であるかは施工体制台帳に保管されますが、実際に工事を行った技能者までは記載されていませんでした。

また、職人気質の強い“見て盗む”といった教育などが主で、技能者に必要な技術が体系だった習得方法が確立していませんでした。

その結果、製造業の賃金のピークは技術習得が進む50〜54歳であるのに対して、建設業の賃金は40歳から横這いになります。また、60歳を越えると550万円ほどだった年間賃金が200万円近く急激にダウンする製造業と比べて、建設業の賃金は450万円から400万円となだらかに下がっていきます。これらは建設業界において技術は評価されるものの、現場管理や部下の教育等が評価されない傾向が表れていると読むことも可能です。

つまり、技能労働者の確保や工事の品質確保のために必要な、工事現場での就業履歴や技能資格を業界全体で横断的に登録と客観的なデータ蓄積を行う事が必要とされました。そしてそれを仕組み化したのが『建設キャリアアップシステム』になります。また、建設キャリアアップシステムへの技能者ならびに事業者の登録が進みデータ蓄積が十分に出来れば、経験や能力が適正に評価され処遇に反映される環境が実現します。

◯若年就業者の確保

若い年代の就業者の確保は、技能者確保の中でも重要な課題となっています。建設業界で働いたがその後異なる業界へ転職していく若い年代就業者の理由をまとめると以下の3点に集約されます。

若年就業者の確保

  1. ①労働環境が悪い。
  2. ②適切な評価が受けられない。
  3. ③キャリアが描けない。

実態として、新卒の離職率は3年経つと43%が離職しています。
転職理由の1つである労働環境が悪いというのは、社会保険への加入状況と実労働時間の長さという点が主に挙げられます。社会保険への加入状況は労働者でみると平成29月の段階で下記の通りです。

・社会保険加入状況『社会保険加入等の状況について(国土交通省)』より

雇用保険 健康保険 厚生年金
平成23年 75% 60% 58%
平成29年 90% 95% 94%

社会保険への加入をミニマムスタンダートにする事として建設業界は変化を起こしました。
具対的には、仕事を発注する際に社会保険加入業者に限定する働きかけが行われました。また、社会保険に未加入の建設業者は、建設業に必要な許可や更新が受けられない仕組みを構築しました。その結果、平成23年に低い数値だった社会保険加入状況と比較すると大幅な改善を実現しています。適用対象外を除くと、単純な未加入は2%以下となっています。

また、長時間労働の是正に関しても週休2日の確保のための取組を進めてきました。
具体的な取組としては、公共事業では労務費等の導入と、現場管理費や共通仮設費の補正率の変更をしました。また、週休2日に積極的に導入する企業を働き方改革に積極的に取り組む企業として評価してきました。

これらの事の具体的な取り組みにより、労働環境の改善は実現してきています。残る課題の『適切な評価が受けられない』や『キャリアが描けない』という課題です。これらの課題解決方法として期待されるのも、建設キャリアアップシステムとなります。

1−2 制度の概要

制度の概要

建設キャリアップシステムは、システムを利用するICカードを通じて技能者の現場での就業履歴や保有資格などをデータとして蓄積していきます。

◯流れ

①情報登録
建設施工を実施する技能者と、技能者を雇う事業者双方が情報登録を行います。

②カード取得(建設キャリアアップカード)
技能者にICカードが配布されます。
カードは、登録基幹技能者の資格保持者が所持できるゴールドカードと一般のカードの2種類あります。

③現場情報登録
建設施工を開始する段階で、元請けや事業依頼主が建設の内容や工事内容などを登録します。

④仕事内容登録
元請けや下請け企業が、現場毎に技能者の仕事内容などを登録します。

⑤建設現場での就業履歴の登録
技能者の現場での就業状況が建設キャリアアップカードカードをリーダーで読み込む事で履歴登録を行えます。

⑥データの活用
元請と上位事業者は、自社の現場で働く技能者の情報閲覧が可能です。また、技能者と所属事業者が認める情報についてはどの事業者も閲覧することが可能です。
技能者は常に自分の登録情報を閲覧可能です。また、転職時の提供情報として利用することも可能です。

◯技能者の能力評価

技能キャリアアップシステムを利用する事で蓄積するデータを利用して、客観的な能力評価を行う事を目指しています。
能力評価の対象は、客観的に把握できる以下の3つをポイントにします。

若年就業者の確保

就業日数…経験値を計ります。
保有資格…知識や技能を計ります。
登録基幹技能者講習*や職長**経験など…マネジメント能力を計ります。

これらの情報をもとに、レベルを4段階に評価します。

≪4段階のレベル≫

レベル 目安
レベル1 見習いなどの初級技能者になります。
レベル2 一人前の技能者などの中堅技能者になります。
レベル3 職長ができる経験や技術をもつ技能者になります。
レベル4 登録基幹技能者等に値するに充分なマネジメント能力を有する高度な技能者になります。

*登録基幹技能者とは、高度な作業能力と豊富な経験をベースとして、効率的な現場作業をマネジメントできる能力を有する技能者をいいます。また、専門工事業団体の資格認定保持者になります。期待される職務としては、上級職長として元請の建設計画や管理業務への参画・補佐などがあります。詳しくは一般財団法人建設業振興基金のwebサイトで確認できます。

**職長は、建設現場等で作業を行う作業員を指揮監督する者をいいます。職長の役割は「安全衛生管理」「品質管理」「工程管理」「原価管理」「環境管理」「人間関係管理」などの幅広い管理を求められます。

職長は各現場に必ず1人必要となります。また、大規模な建設現場でグループごとに異なる作業を行う場合には、そのグループ単位で職長が必要になります。職長になるには2日間で合計12時間の職長教育を受けて職長教育修了証の交付を受けます。加えて、安全衛生責任者の資格を追加する場合には、安全衛生責任者の教育を2時間受ける必要があります。

〇建設業振興基金

システムの運用主体は、一般財団法人建設業振興基金になります。建設業振興基金の役割は、国の基幹産業である建設産業界の振興を図るために機関になります。振興のための手段が近代化や合理化になります。近代化・合理化のために大きく建設キャリアアップシステムの運用とあわせて『経営支援』と『人材育成支援』と『検定や講習』を行っています。

経営支援は大きく以下の支援・強化を行っています。

  • ・金融支援…元請建設企業向けの融資や、下請建設企業等向けの債権の支払保証や、債務保証等を実施しています。
  • ・CI-NET(電子商取引)…見積依頼から商談や注文・請求・決済までの商取引を電子商取引化し、効率化が出来ます。
  • ・経営強化…中小の建設業者向けに専門家による経営相談支援を行います。
  • また、検定や講習については、以下の検定や講習などを行っています。
  • ・建築/電気工事施工管理技術検定…建設業法第27条に基づく技術検定になります。
  • ・建設業経理検定…国土交通大臣の登録を受けて、建設業に求められる専門性の高い財務・経理担当者の育成のための検定になります。
  • ・管理技術者講習…建設業法の規定で4,000万円(建築一式工事では6,000万円)以上の請負代金合計となる下請け契約について求められる管理技術者の育成講習となります。
  • ・その他、登録建設業経理士webや・建築・設備施工管理CPD制度など

〇運用詳細

以下からは運用詳細を解説していきます。

①情報登録
システム利用を開始するには、技能者と事業者のそれぞれが情報登録をします。

◯技能者の登録情報

登録情報には、必須情報と推奨情報があります。

必須情報

  • ・本人情報…住所/氏名/生年月日/性別等を登録します。
  • ・会社情報…所属事業者名や職種を登録します。
  • ・社会保険加入状況…かつて建設業では社会保険未加入の業者が多かった反省から社会保険の加入を促進しています。
  • ・建退共手帳の有無…建設業退職金共済(建退共)は、建設業に従事する人のための退職金制度です。共済手帳の交付が済んでいれば、どの現場での就業も働いた日数分掛け金の加算ができます。

推奨情報

  • ・保有資格…所有している資格を登録します。
  • ・その他…研修受講履歴/受賞履歴/健康診断受診歴など
  • なお技能者登録は本人の代わりに所属事業者や元請事業者などが代行申請を行うことも可能です。

◯技能者の情報登録申請方法と技能者登録料

申請は、インターネットと郵送と窓口の3つの申請方法があります。なお、申請の際には運転免許書やマイナンバーカードなどの本人確認書類の提出が必要になります。なお、所属事業者等の代行申請も可能です。

登録料は申請方法により異なります。
インターネット申請の場合、2,500円かかります。郵送と窓口の申請の場合には3,500円がかかります。なお、カードの有効期限は10年になります。
有効期限内のカードの破損や紛失などによる再発行や交換には、郵送費を含めた実費相当(1,000円程度)の負担が必要になります。

◯事業者の登録情報

  • ・企業情報…所在地や商号や法人名を登録します。
  • ・建設業許可情報…業種/番号/有効期間
  • ・社会保険加入状況など

◯事業者の情報登録申請方法と技能者登録料

申請方法は技能者と同じで、インターネットと郵送と窓口の3つの申請方法があります。なお、元請事業者や譲位下請け事業者等の代行申請も可能です。

登録料は個人事業主か法人により異なり、さらに法人は資本金によって異なります。個人事業主の場合、一律3,000円かかります。但し、1人親方は無料です。法人の場合、資本金に応じて3,000円から120万円と大きな幅があります。なお、事業者登録は5年ごとに更新が必要になり、更新の際にも登録料が必要になります。

資本金 新規・更新登録料
500万円未満 3,000円
500万円以上1,000万円未満 6,000円
1,000万円以上2,000万円未満 12,000円
2,000万円以上5,000万円未満 24,000円
5,000万円以上1億円未満 30,000円
1億円以上3億円未満 60,000円
3億円以上10億円未満 120,000円
10億円以上50億円未満 240,000円
50億円以上100億円未満 300,000円
100億円以上500億円未満 600,000円
500億円以上 1,200,000円

また、事業者には管理者ID利用料が1IDあたり2,400円(毎年)必要になります。

②カード取得(建設キャリアアップカード)
技能者の登録と登録料の支払いが完了すると、技能者IDが発番されます。その後、技能者が希望する送付先住所へ簡易書留でキャリアアップカードが発送されます。カードには、ID番号と氏名、初期登録年と有効期限と生年月日が記載され、顔写真がついています。
所属事業者などが代行申請を行なった場合には、送付先は代行申請を行った先にすることも可能です。

③現場情報登録
元請事業者などの事業者が建築現場を開設する場合には、「現場名」「工事内容」「契約情報」等を登録します。

④仕事内容登録
事業者が施工体制を登録します。施工体制とは、具体的には自社に所属する技能者情報(氏名、職種、職長等の立場)や次数*情報を登録します。

*次数とは、建設業の下請けの数をいいます。元請から仕事を受けた業者は“1次受け”で、1次受けから仕事を受けると“2次受け”になります。下請けの過度な重層構造による「生産性の低下や労務費へのしわ寄せ」や「施工責任の不透明化による品質低下」を抑止する為に下請次数制限を取り入れている自治体も増えています。

建設工事は3次までで、土木工事は2次までといった制限が増えてきています。

⑤建設現場での就業履歴の登録
元請事業者は建設現場にカードリーダを設置します。運営主体が提供する無料アプリもある為、iPhoneとBluetooth接続でのカードリーダを使用することも可能です。また、パソコンにUSB接続のカードリーダを使用する事も可能です。
現場で従事する技能者はそのカードリーダで、入場実績を記録・蓄積していきます。
なお、カードリーダの詳細情報や、アプリ(建レコアプリ)の操作手順やダウンロードについても、一般財団法人建設業振興基金のwebサイトで確認できます。

⑥データの活用
データを蓄積する事で、技術とその技術を利用した経験を“見える化”します。
データを抽出することも可能である為、必要な資格を持った技能者が何人いるのかなどの確認をすることも簡単にできます。

(例)建物一郎/技能者就業履歴

現場名 就業年月 就業日数 立場
ABCタワー 2019.06 90日 職長
DEFマンション 2019.09 30日 職長
XYZビル 2019.10 10日 作業責任者
合計 130日

◯現場利用料

現場利用料は、建設現場で技能者がシステム利用する就業履歴回数に応じて発生します。技能者が就業履歴を取得する度に3円の利用料が発生します。例えば、技能者1,000人日の現場で100%就業履歴を蓄積した場合の利用料は3,000円になります。
計算式:1,000人日×就業履歴取得率100%×単価3円

2 建設キャリアアップシステムのメリットとデメリット

建設キャリアアップシステムのメリットとデメリット

最終的な建設技能者の登録目標は2024年に全ての技能者330万人とし、2019年4月から本格運用をスタートさせて1年後の2020年3月末までに100万人を登録者目標としています。
しかし、実際の登録者は19年9月末時点において約11.6万人となり、19年11月末時点では約15万人と想定以下の数値となり、出だし好調とはいいがたい状況になっています。
本格運用が開始されて1年が経とうとする現状で、メリットとデメリットを解説していきます。

2−1 メリット

メリット

建設キャリアアップシステムにより蓄積していく客観的で実用的なデータをどのように活用するかがメリットのつくり方になります。そのためメリットは、建設現場で従事する技能者と建設業を営む企業の双方にあります。

〇技能者のメリット

  1. ①仕事を得ることに役立つ。
  2. ②自分のキャリアを明確にできる。
  3. ③客観的な評価が求められる。
  4. ④福利厚生などの待遇の改善が求められる。

◯企業のメリット

  1. ①技能者の確保が出来る。
  2. ②技能者管理がシステム化、簡素化できる。
  3. ③仕事と雇用の幅が広がる。

以下、それぞれのメリットを解説します。

〇技能者のメリット

技能者のメリット

①自分のキャリアを明確に出来る

キャリアを描けないというのは、建設産業から離職する若年就業者の要因の1つである事は前述の通りです。建設キャリアアップシステムでは、技能者を4段階に判定しようという試みを行なっています。これから蓄積されていく保有資格と就業履歴に追加して、各種研修参加実績や技能検定結果を組み合わせる事でより事実に近い判定の実現を目指しています。

これにより、例えば35歳までにこのレベルまで到達する、といったキャリアのロールモデルができれば若い技能者や就業者にとってモチベーション向上に繋がるメリットになります。

②仕事を得ることに役立つ

転職が成功するかどうかで重要になるのは、事実に基づいたキャリアです。素晴らしい職務履歴であればあるほど、疑いの目で見るのが人事担当になります。以前勤務していた会社へ問い合わせを入れる場合もあります。

しかし、建設キャリアアップシステムで蓄積した情報であれば公的なシステムからのアウトプットになります。そのため、本当かどうかを疑う必要がありません。1つずつ現場経験を積んだ実績で転職を決める事ができるというのは、技能者にとって大きなメリットになります。

③客観的な評価が求められる

仕事のモチベーションがアップする大きな要因の1つは、正当な評価です。自身の資格と職歴が蓄積されていけば、自身のキャリアが明確になるという事は、客観的な市場価値がわかるということに繋がります。

もちろん、職長などは人をマネジメントするため、資格と職歴だけではなく人間性などの要素も大きく影響します。しかし、客観的な評価を得る有益な材料になる事は疑いようがありません。人的マネジメントが難しい場合には、スペシャリストの方向を目指すなど、会社との方向性をすり合わせる材料にもなります。

④福利厚生などの待遇の改善を求められる

社会保険や建退共などの福利厚生状況は登録情報になるため、平成29年以降の社会保険未加入企業を下請けから排除する動きが徹底できます。
また、研修や資格を登録するため下請企業としても社員教育状況は元請企業へアピールができ、教育の充実につながります。

〇企業のメリット

企業のメリット

①技能者の確保が出来る

今までの解説と重複しますが、建設キャリアアップシステムは建設業にキャリアモデルと公正な評価を築く動きになります。まだまだ登録状況等は順調とは言えない面もありますが、計画通りにいけば中長期的には建設業界の大きな課題である技能者の確保につながります。
また個社毎にも、自社の社員の教育・資格取得状況や現場での就業履歴が信頼度の高い形で収集・開示が出来ます。その結果、元請業者や技能者から信頼を獲得できれば、仕事や技能者が集まる事が期待できます。

②技能者管理がシステム化、簡素化できる

中小企業の場合には、技能者の情報管理がエクセル等のアナログ管理である場合も少なからずあります。建設キャリアアップシステムでは作業員名簿や安全書類などがシステムからデータ出力できます。また、建設現場での出退勤管理などもシステム化されているため、事務効率は改善します。

③雇用と仕事の幅が広がる。

まず、雇用でいうと令和2年1月1日より企業と技能実習生も建設キャリアアップシステムに登録をしていないと技能実習生を受け入れする事が出来ません。つまり、外国人実習生を技能実習生として受け入れられないというデメリットが発生します。逆に言うと、システムを利用していれば外国人実習生を受け入れる事が可能です。

また、ゼネコンが元請となっている仕事は建設キャリアアップシステムを利用していないと、受けにくくなってきています。なぜなら、ゼネコンやその1次受けはほぼ100%システム登録を済ませており、その2次受け3次受けにも登録する事を要望しています。そのため、システムを利用する事で仕事の幅も広がる可能性があります。

2-2 デメリット

デメリット

全体的かつ長期的にはメリットが多い仕組みではありますし、技能者にはほぼデメリットはないといえます。一方で、企業側からすると「利用に費用が掛かる」「人材引き抜きへの不安」「新しいシステムを利用する手間」等がデメリットになります。

デメリット

①利用に費用が掛かる

すでに説明している内容ではありますが、詳細は割愛しますが、システム利用には技能者と事業者双方に費用が掛かります。事業者登録料は資本金が500億円以上の場合ではありますが最大120万円発生します。

一方で、システムの利用料は発生しますが、構築費用等の負担はありません。人事評価システムを個別で導入する事を考えれば、けして高価な費用ではないといえます。

②人材引き抜きへの不安

技能者の客観的評価が優れていればいるほど、優れた技能者を引き抜きされてしまうのではないか、という心配になる事業者もでてきます。
実際には、データは技能者本人とその本人が所属する企業の両名から承認を得た建設業者のみが確認できます。そのため、評価の根拠となる情報は、意図しない引き抜き相手にわたる事は少ないといえます。

③新しいシステムを利用する手間

システムを利用する上で最も大きなネックであり、デメリットになるのが新しいシステムを利用する事です。特に、建設業は高齢化が進んでいるため、カードが届かない、ログインできない等のシステムを上手く利用できない要因は様々あります。これらの不安を解消するために、建設業振興基金ではセミナーやFAQなどの資料をwebサイトに掲載しています。また、若い技能者に任せるというのも若い技能者に責任感や頼られる喜びを抱かせる良い機会になります。

3 まとめ

日本の生活や経済の基盤になる住宅やビルや道路などの社会インフラを建築する建設業が、技能者の増加・技能の向上を目指して進める建設キャリアアップシステムについて解説しました。今後日本の建設業の人材不足やスキル不足に対応していくモデル企業になれるように、建設業を営む企業はシステムの活用を積極的に利用する事をおすすめします。

建設業許可申請が全国一律76,000円!KiND行政書士事務所:東京