建設業界は文系・理系問わずに活躍できる?就職の仕方、必要資格、学歴など
建設業への就職は、理系だけでなく文系の学部を卒業した人でも可能です。事務系の職種や、技術系の職種の中でも施工管理については、文系・理系問わず業務を行うことができます。
この記事では、建設業界とはそもそもどういうところなのかや、建設業の会社の種類、職種、建設業界で働くのに必要な資格などを詳しく解説していきます。建設業界へ新卒で就職したい方や、異業種からの転職を検討している方は、参考にしてみてください。
目次
1 建設業界とは
建設業界には、他の業界にない独特の構造があります。また、建設業を行うには工事の種類ごとに許可を得なければならない場合があります。
これらについて、以下で詳しく解説します。
1-1 建設業の構造
建設業は、「重層下請構造」となっていることが大きな特徴です。イメージとしては、ピラミッド型のように下へ下へと広がっていくような形です。発注者から元請業者、元請業者から下請業者へと、業務の一部が下請けに出されていき、複数の業者で1つの工事を完成させることが常態化しています。
その理由としては、建設業の工事の種類には様々なものがあり、その種類ごとに許可が必要となる場合があるため、専門の業者に工事を委託することが多いためです。
その許可が必要な場合について、以下で解説します。
1-2 建設業の許可とは
建設業の許可が必要な場合については、建設業法第3条に明記されています。建設業を営む場合、国土交通大臣または都道府県知事の許可を得る必要があります。これは公共工事、民間工事いずれの場合でも必要となります。
ただし例外として、「軽微な建設工事」のみを請け負うことを営業とする場合には、許可は不要です。
この「軽微な建設工事」となるかの基準は、工事の種類が「建築一式工事」か「それ以外の工事」かで異なり、以下の通りです。
●建築一式工事の場合
次の1または2のいずれかに当てはまる工事
- 1.工事1件の請負代金の額が1,500万円未満の工事
- 2.延べ面積が150㎡未満の木造住宅工事*
※「木造」とは、建築基準法第2条第5号に定める主要構造部(①壁②柱③床④はり⑤屋根⑥階段)が木造であるもののこと
※「住宅」とは、①住宅②共同住宅③店舗等との併用住宅において、延べ面積の2分の1以上を居住のために使用しているもののこと
●建築一式工事以外の建設工事の場合
工事1件の請負代金の額が500万円未満*の工事
- 工事1件の請負代金の額が500万円未満*の工事
※消費税、地方消費税の額を含む
上記の「軽微な建設工事」に該当しない工事を請け負って営業する場合には、以下のように国土交通大臣または都道府県知事から許可を受けなければなりません。
-
●2以上の都道府県の区域内に営業所を設けて営業する場合
国土交通大臣
本店の所在地を所管する地方整備局長等が許可を行う -
●1都道府県の区域内のみに営業所を設けて営業する場合
都道府県知事
営業所の所在地を管轄する都道府県知事が許可を行う
さらに、建設業の許可は、下請契約の規模などによって、「一般建設業許可」か「特別建設業許可」かに分類されます。
-
●一般建設業許可
○発注者から直接工事を請け負った場合(元請となる場合)の1件の工事について、それの全部または一部を下請けに出す場合の下請契約の金額が4,000万円(建築一式工事の場合は6,000万円)未満の場合
○下請けとしてのみ営業する場合 -
●特別建設業許可
○発注者から直接工事を請け負った場合(元請となる場合)の1件の工事について、それの全部または一部を下請けに出す場合の下請契約の金額が4,000万円(建築一式工事の場合は6,000万円)以上の場合
ここまでで工事の種類が「建築一式工事」がどうかで、許可の要否が決まったり、許可の種類が異なることを説明してきました。以下では、その建築一式工事などの工事の29種類について解説していきます。
1-3 建設業の工事29種類
建設業の工事は29種類に分類されます。工事の種類とそれぞれの工事の内容は以下の通りです。(以下の工事には補修工事、改造工事、解体工事も含まれます。)
土木一式工事業 | 総合的な企画、指導、調整のもとに土木工作物を建設する工事 |
---|---|
建築一式工事業 | 総合的な企画、指導、調整のもとに建築物を建設する工事 |
大工工事業 |
例)大工工事、型枠工事、造作工事 |
左官工事業 | 工作物に壁土、モルタル、漆くい、プラスター、繊維等をこて塗り、吹付け、はり付ける工事 例)左官工事、モルタル工事、モルタル防水工事、吹付け工事、とぎ出し工事、洗い出し工事 |
とび・土工工事業 |
例)とび工事、ひき工事、足場等仮設工事、重量物のクレーン等による揚重運搬配置工事、鉄骨組立て工事、コンクリートブロック据付け工事、くい工事、くい打ち工事、くい抜き工事、場所打ぐい工事、土工事、掘削工事、根切り工事、発破工事、盛土工事、コンクリート工事、コンクリート打設工事、コンクリート圧送工事、プレストレストコンクリート工事、地すべり防止工事、地盤改良工事、ボーリンググラウト工事、土留め工事、仮締切り工事、吹付け工事、法面保護工事、道路付属物設置工事、屋外広告物設置工事、捨石工事、外構工事、はつり工事、切断穿孔工事、アンカー工事、あと施工アンカー工事、潜水工事 |
石工事業 |
例)石積み(張り)工事、コンクリートブロック積み(張り)工事 |
建築一式工事業 | 総合的な企画、指導、調整のもとに建築物を建設する工事 |
屋根工事業 | 瓦、スレート、金属薄板等により屋根をふく工事 例)屋根ふき工事 |
電気工事業 | 発電設備、変電設備、送配電設備、構内電気設備等を設置する工事 例)発電設備工事、送配電線工事、引込線工事、変電設備工事、構内電気設備(非常用電気設備を含む。)工事、照明設備工事、電車線工事、信号設備工事、ネオン装置工事 |
管工事業 | 冷暖房、冷凍冷蔵、空気調和、給排水、衛生等のための設備を設置し、または金属製等の管を使用して水、油、ガス、水蒸気等を送配するための設備を設置する工事 例)冷暖房設備工事、冷凍冷蔵設備工事、空気調和設備工事、給排水・給湯設備工事、厨房設備工事、衛生設備工事、浄化槽工事、水洗便所設備工事、ガス管配管工事、ダクト工事、管内更生工事 |
屋根工事業 | 瓦、スレート、金属薄板等により屋根をふく工事 例)屋根ふき工事 |
タイル・レンガ工事業 |
例)コンクリートブロック積み(張り)工事、レンガ積み(張り)工事、タイル張り工事、築炉工事、スレート張り工事、サイディング工事 |
鋼構造物工事業 | 形鋼、鋼板等の鋼材の加工または組立てにより工作物を築造する工事 例)鉄骨工事、橋梁工事、鉄塔工事、石油、ガス等の貯蔵用タンク設置工事、屋外広告工事、閘門、水門等の門扉設置工事 |
鉄筋工事業 | 棒鋼等の鋼材を加工し、接合し、または組立てる工事 例)鉄筋加工組立て工事、鉄筋継手工事 |
舗装工事業 | 道路等の地盤面をアスファルト、コンクリート、砂、砂利、砕石等により舗装する工事 例)アスファルト舗装工事、コンクリート舗装工事、ブロック舗装工事、路盤築造工事 |
しゅんせつ工事業 | 河川、港湾等の水底をしゅんせつする工事 例)しゅんせつ工事 |
板金工事業 | 金属薄板等を加工して工作物に取付け、または工作物に金属製等の付属物を取付ける工事 例)板金加工取付け工事、建築板金工事 |
ガラス工事業 | 工作物にガラスを加工して取付ける工事 例)ガラス加工取付け工事、ガラスフィルム工事 |
塗装工事業 | 塗料、塗材等を工作物に吹付け、塗付け、またははり付ける工事 例)塗装工事、溶射工事、ライニング工事、布張り仕上工事、鋼構造物塗装工事、路面標示工事 |
防水工事業 | アスファルト、モルタル、シーリング材等によって防水を行う工事 例)アスファルト防水工事、モルタル防水工事、シーリング工事、塗膜防水工事、シート防水工事、注入防水工事 |
屋根工事業 | 瓦、スレート、金属薄板等により屋根をふく工事 例)屋根ふき工事 |
屋根工事業 | 瓦、スレート、金属薄板等により屋根をふく工事 例)屋根ふき工事 |
内装仕上工事業 | 木材、石膏ボード、吸音板、壁紙、たたみ、ビニール床タイル、カーペット、ふすま等を用いて建築物の内装仕上げを行う工事 例)インテリア工事、天井仕上工事、壁張り工事、内装間仕切り工事、床仕上工事、たたみ工事、ふすま工事、家具工事、防音工事 |
機械器具設置工事業 | 機械器具の組立て等により工作物を建設し、または工作物に機械器具を取付ける工事 例)プラント設備工事、運搬機器設置工事、内燃力発電設備工事、集塵機器設置工事、給排気機器設置工事、揚排水機器設置工事、ダム用仮設備工事、遊技施設設置工事、舞台装置設置工事、サイロ設置工事、立体駐車設備工事 |
電気通信工事業 | 有線電気通信設備、無線電気通信設備、ネットワーク設備、情報設備、放送機械設備等の電気通信設備を設置する工事 例)有線電気通信設備工事、無線電気通信設備工事、データ通信設備工事、情報処理設備工事、情報収集設備工事、情報表示設備工事、放送機械設備工事、TV電波障害防除設備工事 |
造園工事業 | 整地、樹木の植栽、景石のすえ付け等により庭園、公園、緑地等の苑地を築造し、道路、建築物の屋上等を緑化し、または植生を復元する工事 例)植栽工事、地被工事、景石工事、地ごしらえ工事、公園設備工事、広場工事、園路工事、水景工事、屋上等緑化工事、緑地育成工事 |
さく井工事業 | さく井機械等を用いてさく孔、さく井を行う工事またはこれらの工事に伴う揚水設備設置等を行う工事 例)さく井工事、観測井工事、還元井工事、温泉掘削工事、井戸築造工事、さく孔工事、石油掘削工事、天然ガス掘削工事、揚水設備工事 |
建具工事業 | 工作物に木製または金属製の建具等を取付ける工事 例)金属製建具取付け工事、サッシ取付け工事、金属製カーテンウォール取付け工事、シャッター取付け工事、自動ドアー取付け工事、木製建具取付け工事、ふすま工事 |
水道施設工事業 | 上水道、工業用水道等のための取水、浄水、配水等の施設を築造する工事または公共下水道若しくは流域下水道の処理設備を設置する工事 例)取水施設工事、浄水施設工事、配水施設工事、下水処理設備工事 |
消防施設工事業 | 火災警報設備、消火設備、避難設備若しくは消火活動に必要な設備を設置し、または工作物に取付ける工事 例)屋内消火栓設置工事、スプリンクラー設置工事、水噴霧、泡、不燃性ガス、蒸発性液体または粉末による消火設備工事、屋外消火栓設置工事、動力消防ポンプ設置工事、火災報知設備工事、漏電火災警報器設置工事、非常警報設備工事、金属製避難はしご、救助袋、緩降機、避難橋または排煙設備の設置工事 |
清掃施設工事業 | し尿処理施設またはごみ処理施設を設置する工事 例)ごみ処理施設工事、し尿処理施設工事 |
解体工事業 | 工作物の解体を行う工事 例)工作物解体工事 |
参考:建設工事の内容、例示、区分の考え方
2 建設業界の会社の種類
建設業界の会社にはいくつか種類があり、行う業務内容が異なります。以下で企業の会社の種類ごとに、主な業務内容を解説します。
2-1 ゼネコン
ゼネコンとは、「General Contractor」の略称で、総合建設業者のことをいいます。ゼネコンの特徴は、「設計・施工・研究」を総合的に自社内で行うことができるということです。
ビルやマンション、大型競技場、病院などの公共施設といった大規模な建造物の工事を手掛けます。また、道路、橋、ダム、トンネルなどの土木工事についても請け負います。
ゼネコンの主な仕事は、工事現場での作業ではなく、工事全体の統括を行うことです。いくつかのサブコンなどの下請け業者に工事を依頼し、その進捗状況などをまとめて管理します。
ゼネコンの中でも売上高や規模の大きい会社は「スーパーゼネコン」と呼ばれています。鹿島建設、大成建設、清水建設、大林組、竹中工務店の5社がこれにあたります。
2-2 サブコン
サブコンとは、subcontractorの略称で、下請け業者のことをいいます。元請業者から受注した工事を請け負い、実際に現場で作業にあたります。元請業者からだけでなく、発注者から直接工事を請け負うこともあります。
ゼネコンは発注者から土木工事一式、建築工事一式として工事を請け負います。それに対してサブコンは、舗装工事、電気通信工事、消防施設工事といった専門工事をゼネコンから請け負います。請け負った工事の一部はサブコンから更なる下請業者に下請けに出される場合もあります。
2-3 設計事務所
ゼネコンや工務店など、自社内に設計を担当する部署を持っている会社もありますが、設計事務所はその設計業務に特化した会社です。
設計事務所は規模によって、「組織系設計事務所」と「アトリエ系設計事務所」に分けられます。組織系設計事務所は規模が大きいため、設計の種類である「意匠設計」「構造設計」「設備設計」の全てを行うことができます。手がける設計の案件は規模が大きいので、担当者ごとに資料作成やプレゼン、施工管理など業務が細分化されているという特徴があります。
一方、アトリエ系設計事務所は、比較的規模が小さく、意匠設計を得意とする事務所が多いです。1人で全ての業務を担当する場合もあり、デザイン性の高い設計を実現しやすいという特徴があります。
2-4 工務店
工務店とは、住宅工事を請け負う地域密着型の建設会社のことをいいます。ハウスメーカーと比べて営業エリアが狭く、地元に根ざした営業を行っています。施主と一緒に間取りやデザインなどを作っていくため、施主にとっては思い通りの家を建てることができるというメリットがあります。
施工の制度は職人の腕にかかっており、工務店ごとに差が生じます。家を建てた後のアフターメンテナンスの内容も会社によって異なります。地元の会社ならではの手厚い対応が可能である場合もあれば、繁忙時には職人が手薄となり対応に時間がかかる場合もあります。
2-5 ハウスメーカー
ハウスメーカーとは、注文住宅を大量生産できる体制を備えた全国規模の住宅建設会社のことをいいます。住宅を造る際の工法や建築資材について規格化し、設計や施工方法が統一されているため、効率よく家を建てることができます。また品質についても、全国どこの店舗で建てても均一となるのが特徴です。
そのため、家の間取りやデザインを決める場合には、いくつかのパターンの中から選ぶこととなり、工務店と比べると施工プランの自由度は低くなります。
アフターメンテナンスについても会社内で細かく規定されているため、安心して受けられるのも施主にとってはメリットです。
3 建設業界の職種(技術系)と必要な学歴
建設業の会社の中でも、ゼネコンの主な仕事内容について詳しく解説していきます。
職種は技術系と事務系に分けられ、以下のようになります。
●技術系
- ○設計
- ○施工管理
- ○研究開発
●事務系
- ○営業
- ○事務管理
ここからは技術系の職種の仕事内容と、その職種につくために必要な学歴などについて解説します。
3-1 設計
設計は、建設する建物の内観・外観をデザインしたり、設備や構造を設計する仕事です。
設計を行う人はその業務内容から、以下の2つに分かれます。
- ●建築士・設計士
- ●CADオペレーター
建築士・設計士が行う設計という仕事は、以下の3つに分けられます。
- 1.意匠設計
- 2.構造設計
- 3.設備設計
意匠設計とは、建物の外観や内観をデザインしたり、建物のコンセプトを決めたり、建物内の導線や部屋の配置を計画するもののことをいいます。意匠設計が設計全体の元となり、構造設計や設備設計はその後に決まります。
施主からの要望をもとに大まかな外観、高さ、面積、形状などを表したものが基本設計で、予算などに合意が得られ契約後に行うのが詳細設計となります。
構造設計とは、建物の安全性を確保するために内部に施す設計のことをいいます。地震や台風などの自然災害にも耐えられるような建物となるように、柱や土台などといった建物の骨組みを設計します。
建物を建てる場所の環境や地盤なども考慮して構造設計は行われます。設備設計とは、建物のインフラである電気、上下水道、空調、インターネットなどの設備の設計のことをいいます。
設備設計は設計の中でも裏方のようなイメージがありますが、建物内で人々が快適に過ごせるよう室内環境を整える仕事であり、重要な設計のうちの1つです。
建築士と設計士の違いは、「建築士の資格があるかどうか」にあります。建築士は、1級建築士、2級建築士、木造建築士のいずれかの国家資格を有している人のことを指します。1級建築士であれば設計できる建物に制限はありませんので、より幅広く仕事をすることができます。
そして設計士とは、建築士のような国家資格はなく、建築士の設計業務のサポートを行う人のことをいいます。延べ面積100平米未満の木造建築物については建築士でなくても設計を行うことができるため、設計士でも設計が可能です。
また、CADオペレーターとは、CADという図面作成ソフトを用いて建築士・設計士の作成した図面をパソコン上に落とし込む作業をする人のことをいいます。
CADに関する資格は、「CAD利用技術者試験」「建築CAD検定試験」などがありますが、CADオペレーターになるために資格が必要ということはありません。資格よりも、CADオペレーターとしての実務経験などの方が、就職の際には有利となります。
設計の仕事をするには、設計士やCADオペレーターのように資格のいらない場合もありますが、1級建築士などの建築士の方ができる業務が多く、市場価値も高いです。
2級建築士・木造建築士の資格を取得する場合、文系などの建築に関する学歴が全くない場合は、建築実務の経験年数が7年以上必要となります。つまり受験資格を得るのにかなり時間がかかります。
さらに文系出身の場合、1級建築士の資格は、2級建築士の資格取得後でなければ受験することができません。
したがって、建設業の職種の中でも設計の仕事に就きたい場合には、建築学科の大学・短大・専門学校などでの学歴があった方が有利となるでしょう。
3-2 施工管理
施工管理とは、工事の工程や安全、品質、工事にかかる原価など工事を総合的に管理する仕事です。工事の進捗状況を管理するため、サブコンなどの下請業者と関わります。また発注者との打ち合わせなどで関わることもあり、コミュニケーション能力や判断力が求められます。
施工管理において特に重要とされる「4大管理」とは、次のようなものをいいます。
- 1.安全管理 : 無事故で安全第一に工事が完了するよう現場の安全を管理すること
- 2.工程管理 : 工事が期限内に終わるために工事の日程などを管理すること
- 3.品質管理 : 完成した建造物が求められる品質基準を満たすよう管理すること
- 4.原価管理 : 予算内で工事が行えるよう資材や人件費などの原価を管理すること
施工管理の仕事の中に含まれるものに、「現場監督」があります。会社によっては施工管理=現場監督として扱っているところもあり、両者は明確に区別されている訳ではありませんが、一般的には以下のように考えられています。
-
●施工管理
工事全体を総合的に管理・統括する
-
●現場監督
工事現場内を管理・統括する
現場監督は、作業にあたる労働者をまとめたり指示を行う仕事や、現場での工事の進捗管理を行う仕事です。
施工管理の仕事は、資格がなくてもできます。文系出身の人でも就職することが可能です。
現場の作業員や職人とのコミュニケーションを円滑に行えることが重要となります。しかし将来のキャリアアップを考える場合には、「施工管理技士」の国家資格が必要となる場合があります。
施工管理技士は全7種類あり、それぞれ1級と2級の資格が存在します。これらは、以下の3つの工事区分に該当します。
工事の種類 | 工事の内容 | 該当資格 |
---|---|---|
建築 | マンション、住宅、ビルなどの建物の工事 | 建築施工管理技士 |
土木 | 道路、橋、河川、上下水道などの工事 | 土木施工管理技士 建設機械施工管理技士 |
設備 | 電気、ガス、配管、空調などの工事 | 電気工事施工管理技士 管工事施工管理技士 造園施工管理技士 電気通信工事施工管理技士 |
建設現場には、「監理技術者」または「主任技術者」を配置することが建設業法26条により定められています。
主任技術者は、工事の規模や元請・下請にかかわらず、建設業の許可を得たものが工事を行う場合に配置しなければなりません。
2級施工管理技士の資格があれば、主任技術者となれます。監理技術者は、上述の特別建設業の許可が必要な場合と同様、発注者から直接工事を請け負った場合(元請となる場合)の1件の工事について、それの全部または一部を下請けに出す場合の下請契約の金額が4,000万円(建築一式工事の場合は6,000万円)以上の場合に配置しなければなりません。
1級建築士、1級施工管理技士の資格があれば、監理技術者となれます。また、工事(個人の住宅を除く)の請負金額が3,500万円以上(建築一式工事の場合は7,000万円以上)の場合、配置する技術者は「専任」でなければならないと定められています。
専任の技術者となれるのは、遠接業許可の区分によって異なり、以下の通りです。
- ●一般建設業 : 1級施工管理技士、2級施工管理技士
- ●特別建設業 : 1級施工管理技士
施工管理技士の1級の資格を取るためには実務経験が必要となります。
土木、環境、電気など指定の学科を専攻していた場合は、文系などそれ以外の学科専攻の場合と比べて、必要な実務経験年数は短くなります。
そのため、施工管理は文系出身でも就職できる職種ですが、土木系、環境系、電気系、建築系などの学科を卒業した人は、資格取得の面で有利であるといえます。
3-3 研究開発(技術開発)
研究開発(技術開発)とは、新たな施工方法や建設技術を開発するための研究を行う仕事です。建設するものによって工事の種類や施工方法は様々です。マンションやビル、商業施設などの建物や、橋や道路、河川工事など、あらゆるものが建設対象となります。
設計によっては建設するのに特殊な技術が必要となる場合もあり、従来の建設方法にとらわれずに新たな建設方法を研究していくことで建設が可能となるものもあります。従来の建設方法をより安全なものにするための研究も行われています。
研究開発(技術開発)の仕事は、専門的な知識が必要となりますので、理系出身者が活躍している分野となります。
4 建設業界の職種(事務系)と必要な学歴
ここからは事務系の職種の仕事内容と、その職種につくために必要な学歴などについて解説します。
4-1 営業
ゼネコンにおける営業は、官公庁や民間企業を相手とする営業であり、建設の依頼を受注する仕事です。民間企業相手の営業はBtoBの営業です。BtoBとは「Business to Business」の略で、1件の工事の単価は非常に大きなものとなります。
顧客となる民間企業は、数が限られているため他社の営業マンとの競合となります。顧客としっかりとした信頼関係を築けるかどうかが、仕事の受注を左右するため重要となります。
官公庁が相手の公共工事の受注は、一般的に競争入札によって行われます。民間企業相手の営業スタイルとは異なるのが特徴です。
営業には特別な資格は必要ありませんが、顧客からの要望や質問などにその場で答えられるだけの知識があると信頼に繋がります。コミュニケーション能力が求められる職種であり、文系出身者でも就職できます。
4-2 事務
建設業の事務は、一般の事務の仕事とほとんど同じです。経理や、電話対応、書類作成などを行います。
CADオペレーターとの兼務を行う人もあり、CADの知識があると就職に有利といえます。
建設業の経理処理には特有のものがあり、「建設業経理士」の資格があれば就職の際に有利となる場合があります。「建設業経理事務士試験」の1級・2級を取得すると「建設業経理士」となります。事務に関しても、文系出身者の就職は可能です。
5 建設業界で必要な資格
ここまでの解説の中で、設計や施工管理の職種に就く場合にあると有利な資格について、以下の2つを紹介しました。
- ●施工管理技士
- ●建築士
以下では、これらの資格を取得するための要件などを解説していきます。
5-1 施工管理技士
施工管理技士とは以下の7つで、それぞれ1級と2級があります。
- 1.建築施工管理技士
- 2.土木施工管理技士
- 3.建設機械施工管理技士
- 4.電気工事施工管理技士
- 5.管工事施工管理技士
- 6.造園施工管理技士
- 7.電気通信工事施工管理技士
施工管理技士の試験は、令和3年から試験内容が改正されています。従来は学科試験、実地試験という名称でしたが、以下のように変更となりました。
- ●第一次検定:施工技術のうち基礎となる知識および能力を有するかどうかを判定
- ●第二次検定:施工技術のうち実務経験に基づいた技術管理および指導監督に係る知識および能力を有するかどうかを判定
施工管理技士の受験資格として、実務経験年数があります。実務経験年数は、学歴や指定学科を卒業したかどうかによって異なります。その指定学科には以下のようなものが該当します。
国土交通省令で定める学科 |
|
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---|---|---|---|
国土交通省令で定める学科に準ずると認める学科 |
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1級建築施工管理技士の第一次検定の受験資格については、以下の通りです。
●学歴
学歴 | 実務経験年数 (指定学科) |
実務経験年数 (指定学科以外) |
---|---|---|
|
3年以上 | 4年6ヶ月以上 |
|
5年以上 | 7年6ヶ月以上 |
|
10年以上 | 11年6ヶ月以上 |
その他 | 15年以上 |
●実務経験に指導監督的実務経験年数が1年以上を含み、かつ、5年以上の実務経験の後、専任の監理技術者による指導を受けた実務経験年数が2年以上ある者
学歴 | 実務経験年数 (指定学科) |
実務経験年数 (指定学科以外) |
---|---|---|
|
8年以上 | ー |
●2級建築士試験定合格者 : 合格後5年以上の実務経験が必要
●2級建築施工管理技士
区分 | 学歴 | 実務経験年数 (指定学科) |
実務経験年数 (指定学科以外) |
---|---|---|---|
2級合格後の3年以上の者 | 専任の監理技術者による指導を受けた実務経験2年以上を含む3年以上 | ||
2級合格後の5年以上の者 | 合格後5年以上 | ||
合格後5年未満の者 |
|
9年以上 | 10年6ヶ月以上 |
その他 | 14年以上 |
●第一次検定のみ受験者(2級建築施工管理技士(第二次検定合格者)): 実務経験問わず
1級建築施工管理技士の第二次検定の受験資格については、以下の通りです。
下記のいずれかに該当する者 |
---|
|
2級建築施工管理技士の第一次検定の受験資格については、以下の通りです。
区分 | 実務経験年数 |
---|---|
17歳以上の者(在学中も受験可能) | 問わず |
2級建築施工管理技士の第一次検定は、17歳以上であれば誰でも受験可能です。ただし、第一次検定と第二次検定を同日受験する場合は、第二次検定受験資格を満たしていることも必要となります。
2級建築施工管理技士の第二次検定の受験資格については、以下の通りです。
下記のいずれかに該当する者 |
---|
|
●学歴
学歴 | 実務経験年数 (指定学科) |
実務経験年数 (指定学科以外) |
---|---|---|
|
2年以上 | 3年以上 |
|
3年以上 | 4年6ヶ月以上 |
その他 | 8年以上 |
●職業能力開発促進法による技能検定合格者
受検種別 | 技能検定職種 | 級別 | 実務経験年数 |
---|---|---|---|
躯体 | 鉄工(構造物鉄工作業)、とび、ブロック建築、型枠施工、鉄筋施工(鉄筋組立て作業)、コンクリート圧送施工 | 1級 | 問わない |
2級 | 4年以上 | ||
単一等級エーエルシーパネル施工 | 問わない | ||
職業訓練法施行令の一部を改正する政令(昭和60年政令第248号)による改正前の職業訓練法施行令による鉄筋組み立て | 問わない | ||
仕上げ | 建築板金(内外装板金作業)、石材施工(石張り作業)、建築大工、左官、タイル張り、畳製作、防水施工、内装仕上げ施工(プラスチック系床仕上げ工事作業、カーペット系床仕上げ工事作業、鋼製下地工事作業、ボード仕上げ工事作業)、スレート施工、熱絶縁施工、カーテンウォール施工、サッシ施工、ガラス施工、表装(壁装作業)、塗装(建築塗装作業) | 1級 | 問わない |
2級 | 4年以上 | ||
単一等級れんが積み | 問わない | ||
職業能力開発促進法施行令および地方公共団体手数料令の一部を改正する政令(昭和61年政令第19号)による改正前の職業能力開発促進法施行令による石工(石張り施工)、床仕上げ施工、天井仕上げ施工 | 問わない |
5-2 建築士
建築士の資格は、以下の3つです。
- 1.1級建築士
- 2.2級建築士
- 3.木造建築士
従来の建築士の受験資格は、学歴と実務経験のどちらも要件となっていました。しかし、令和2年の改正により、実務経験の要件が緩和されました。
1級建築士の受験資格については、以下の通りです。
建築に関する学歴または資格等 |
---|
|
指定科目の履修が必須となりますが、その指定科目については「建築技術普及センター」が都道府県別に学校課程名を掲載していますので、そちらで確認することができます。
従来は1級建築士試験を受験するのに実務経験が必要でしたが、改正により実務経験は免許登録のための要件となりました。
1級建築士についての免許登録要件は以下の通りです。
受験資格要件(学歴(卒業学校)) | 免許登録要件(実務経験) |
---|---|
大学 | 2年以上 |
短期大学(3年) | 3年以上 |
短期大学(2年)・高等専門学校 | 4年以上 |
2級建築士 | 2級建築士として4年以上 |
国土交通大臣が同等と認める者 | 所定の年数以上 |
建築設備士 | 建築設備士として4年以上 |
2級建築士・木造建築士の受験資格については、以下の通りです。
建築に関する学歴または資格等 | 実務経験年数(試験時) |
---|---|
大学、短期大学、高等専門学校、専修学校等において指定科目を修めて卒業した者 | 最短0年 |
建築設備士 | 0年 |
その他国土交通大臣が特に認める者(外国大学を卒業した者等) | 所定の年数以上 |
建築に関する学歴なし | 7年以上 |
2級建築士・木造建築士については、建築に関する学歴がない人でも受験することができます。その場合の実務経験は7年以上必要となります。
指定科目の履修をして受験する場合で、その指定科目については1級建築士の場合と同様に、「建築技術普及センター」で確認することができます。
2級建築士についての免許登録要件は以下の通りです。
受験資格要件(学歴(卒業学校)) | 免許登録要件(実務経験) |
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大学・短期大学・高等専門学校 | なし |
高等学校・中等教育学校 | 2年以上 |
建築に関する学歴なし(実務経験7年) | 7年以上 |
都道府県知事が同等と認める者 | 所定の年数以上 |
6 まとめ
建設業には様々な職種があり、営業や施工管理などの分野では文系出身者でも活躍できます。施工管理技士や建築士などの資格があると、就職やキャリアアップに有利となるため取得しておくと良いでしょう。
これらの資格の受験に関しては、指定科目を履修している人の方が実務経験の要件が緩和されるため有利ですが、文系出身でも実務経験さえ積めば受験は可能なので、検討してみてください。