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建設業のピラミッド構造を詳細解説!ゼネコン、サブコン、下請会社とは

業界の構造を理解することは、その業界に就職しようとする人や仕事を依頼しようとする人にとって重要です。製造業・卸売業・小売業・飲食業、建設業など複数の業界がありますが、そのどれも業界構造は異なります。

そのため、業界の構造を知ることでその業界の特徴や強みや留意すべきポイントなど様々なことを理解できます。また、就職する場合などはその企業が業界の中でどのようなポジショニングにあるのかを知ることで将来性も見えてきます。

建設業の構造を代表する特徴は、“ピラミッド構造”になります。そこで今回の記事では、“ゼネコン”や“サブコン”や“下請会社”について、また仕事の受発注の流れなどの特徴を解説するので、建設業のピラミッド構造について知りたい方は参考にしてみてください。

1 建設業とピラミッド構造

建設業のピラミッド構造を理解するには、まず建設業許可についての理解が必要です。建設業を営むには、許可が必要です。その許可は、土木一式と建築一式の2つの他に27つの専門工事の許可があります*。

建設業法は、昭和24年5月に制定されました。建設業制定当時には建設工事として指定されていたのは22業種のみで、『板金工事』や『とび工事』『ガラス工事』などのみの工事を請け負う業者は建設業法の適用の除外となっていました。そこから4年後の昭和28年8月に適用範囲を広げ、全の工事を請け負う業者が適用対象となりました

そして、昭和36年5月の業法改正によって総合工事業者のみが『土木一式工事』と『建設一式工事』を請け負うことができるとした“総合工事業者登録制度”が創設されました。

また、専門工事業の業種区分が26業種になり、専門工事の業種それぞれに資格要件が必要となりました。

さらに、昭和46年4月に、登録制度から許可制度に替わり、業種区分も28業種となり、現在の業種別許可制度が導入されました。この業種区分の区分けは以下の2つの考えから実施されています。

  1. ①工種が相違する工事であっても、同一業者が請け負うといった営業形態(例:とび工事・土木工事・コンクリート工事)は1つの区分とする
  2. ②技術的内容が相違し、かつ工事量が現状で多いものあるいは今後多くなる見込みがある工事は独立した区分とする。

さらにそれから14年が経過した昭和60年10月に業種区分の見直しが行われました。この昭和60年の業種区分の見直しは、『建設技術の高度化と専門化の進展に応じた業種区分の更なる細分化』と『建設工事の責任所在を明確にするため』という2つの方向性が議論されました。

その上で、『許可業種区分は施工技術の進歩などに伴う建設業界の実態を的確に把握しつつ長期的な課題として慎重に検討』すべきという結論から、業種区分の見直し時の基本的な方針が示されています。

[表1 業種区分の内容見直し時の基本的方針]

観点 内容
施行実態 建設業法の許可が必要な規模の工事がある
該当する工事全体で、相当規模の工事量と件数がある
取引実態 独立した工事として発注者と元請建設業者などに認識されている
施工技術 施工技術と施工方法、使用機械などについて他の工事と相違する特殊性や独立性がある
該当する工事に従事する技術者が相当数いる
該当する技術者に対して資格制度や講習会制度などがある
業界の実態 業界として認めることができる業者数がある
概ね全国に業者団体がある

これらのことから、建設業はそれぞれの専門性と独自性をもった業種によって成立しています。そして、これらの複数の専門工事業者が共同で工事することで建設物が出来上がります。

そのため、建設業界においては複数の許可に分かれた業者の技術や労働力を活用して、一つの建設物を計画的に建設していく業者が必要となります。この複数の業者を束ねる企業数は少なく、業種別の許可をもつ事業者ほど数が多くなっています。この建設業の業者数を表すのが、『ピラミッド構造』になります。

1-1 ピラミッド構造と仕組み

ピラミッドは、古代エジプトの王や王妃の墓として建てられた四角錘型の建造物です。誰もが写真やテレビなどで1度は目にしたことがあるかと思います。

建設業の特徴を代表する“ピラミッド構造”は、四角錘型の頂点に位置する“ゼネコン”から“サブコン”へと広がっていく仕事の受発注の流れならびに事業者数を表しています

このピラミッドの頂点にいるゼネコンが、民間や国や公共団体から仕事(建設工事)を受注します。ゼネコンが受け持つ業務は、建設工事全体の統轄することになり、実際に現場で工事を行うためには、専門の工事業者を活用する必要があります。

そのため、ゼネコンは仕事を受注すると、関係会社や取引業者に建設工事の発注を行います。ゼネコンから仕事を受注するのは、サブコンになります。ゼネコンは仕事を受注するので、元請企業、一方で元請企業であるゼネコンから仕事を受注するサブコンは下請け企業という関係性になります。

しかし、ピラミッド構造では下請けは1事業者だけではありません。ここでも、建設業許可業種は複数に分類されているため、下請け企業の1事業者で全ての工事を賄うことができません。そのため、サブコンも自身で工事できない範囲の工事を必要な許可を持つ建設業者に発注します。

この時、ゼネコンから仕事を受注した事業者を“1次請け”と呼び、1次請けから仕事を受注する事業者を“2次請け”と呼びます。2次請けの工事の大半は設備工事になります。

下請会社は、個人事業主や小規模な事業者が多くなります。しかし、前述の『業種区分の内容見直し時の基本的方針』にあるように、業種区分に認められた工事は特殊性や専門技術が必要で、相当量と規模のある工事になります。そのため、小規模な事業者であるからこそ、工事に必要な専門的な技術と経験を有した工事業者になります。

●一式請負と別途工事

建設業において、依頼主から工事の依頼は一つ一つ許可を持つ業者に依頼することはありません。基本的には、工事全体を依頼します。これを“一式請負”と言います。一式工事を請け負うのは、ゼネコンです。

工事一式を請け負ったゼネコンが工事を許可が必要な工事毎に各サブコンに発注します。もともとは一式請負だった工事が、別々の工事として発注する工事を“別途工事”と言います。

サブコンが請け負うことになる別途工事は、主に設備工事が中心です。設備工事とは、空調工事や電気工事や衛生工事などのことです。また、工事の規模が大きくなるにつれて、ゼネコンが工事において果たす役割は、全体の工事を『統括管理』することに集約する傾向が近年強くなっています。そのため、サブコンの一次受けが『施行管理』の機能がメインになり、2次請けが実際の施工を行うという構造が多くなっています。

*許可の詳細は、経済産業省『業種区分、建設工事の内容、例示、区分の考え方(H29.11.10改正)』で確認できます。

●統括管理と施工管理

建設現場においては、同じ工事現場に複数の事業者や作業員が異なる工事を同時に混在している状況になります。そのため、この混在作業において労働災害を防止するための安全衛生管理が統括管理と言われます。

具体的には、統括管理とは下請業者に対して法令違反に対する監督や違反項に対する是正指示や労働災害防止のための技術指導などを行います。

『職場での労働者の安全と健康確保と、快適な職場環境の形成を目的とする法律である労働安全衛生法においては、労働者を雇用した事業者がその労働者を保護する義務があることが原則です。しかし、建設現場は複数の事業者が一同に作業をするような場所であり、自社以外の労働者への危害が発生する可能性がある作業も複数あります。そのため、自社が雇用した従業員のみを保護するという姿勢では、危険回避が充分ではなくなります。

この点を回避するために、『統括安全衛生管理』が定められ、ゼネコンなどの元請業者が統括管理を行い、建設現場全体の安全を確保していくこととなります。

一方で、施工管理は工事自体の管理を行います。施工管理は、安全であることを前提に効率的な工事の実現への責任を負っています。具体的な業務として、工程管理/出来高管理/品質管理/原価管理/安全管理などの管理を行います。

つまり、建設現場において工事現場の全体を統括する立場から安全面を考慮する“統括管理”、安全かつ効率的な工事を管理する立場から具体的な工事の工程や品質などを管理していく“施工管理”の2つの管理の側面で回っています。

●ピラミッド構造の仕組み

ゼネコンは、工事を依頼する者から工事一式の依頼を請け負います。建設業の工事と一言で言っても、国や地方公共団体などの行政から依頼を請ける道路や湾岸やトンネルなど『公共物件工事』、個人や企業などの民間からの依頼となるマンションやビルなどの大型商業施設などの『大型物件工事(民間)』と個人の住宅や小規模なアパートなどの『小規模物件工事(民間)』に分けられます。

これらの工事であっても、原則はピラミッド構造であることに変わりはありません。民間や行政から工事依頼を請けるゼネコンがいて、ゼネコンから工事を請け負うサブコンがいます。

工事の規模や種類によってピラミッド構造は変わりませんが、ゼネコンとサブコンのそれぞれ得意とする工事は異なってきます。具体的には、公共工事を中心に工事を行うゼネコンやサブコンがいる一方で、個人の住宅をメインに工事を行うゼネコンやサブコンもいます。

●ピラミッド構成の数

令和4年度(2022年度)の建設投資額は、61兆8700億円(前年比▲1.7%)となっていて、近年のピークであった令和元年(2019年度)の建設投資額65兆4000億円からの減少傾向が継続しています*。

この61兆円規模の建設業界を支える建設業者の数は、約22万社になります。平成26年度において、建設業許可を取得している47万業者のうち建設工事を完成させることで得られる収益である“建設工事完成工事高”がある業者は21.6万業者になります。また、その中で総売上高のうち建設工事完成高が8割以上である建設業専業業者は17.9万社になります。

この17.9万社のうち、ゼネコンは最も規模の大きいスーパーゼネコン*が5社、全国展開の準大手と中堅ゼネコン47社と地方で活躍する地場ゼネコンの2万社で構成されています。専門工事業者として下請工事を行うサブコンや建設会社は、全体からゼネコンを差し引いた約15.9万業者となります**。ここから、ゼネコンとサブコンを含めた建設工事を行う事業者の数は概ね1:9の比率になっています。

*参照:建設経済研究所『建設経済モデルによる建設投資の見通し(2021年7月)』

1-2 ピラミッド構造のメリット

“下請業者”や“ピラミッド構造”というと、丸投げなどという言葉が連想され、良くないイメージにつながる側面もあります。一方で、アウトソーシングや業務委託は一般的にどの企業でも実施していることです。また、サプライチェーンと言われる複数の企業が共同して一つの商品を作っていくことは効率的な側面も多くあります。

建設業のピラミッド構造も、過去から続く構造ではありますが、一方で効率的な面やメリットも多くあります。具体的には、以下のようなメリットがピラミッド構造にはあります。

  1. ① 発注者が適切な業者を選定できる
  2. ② 工事自体の効率を改善できる
  3. ③ 企業の経営効率を上げることができる

●発注者が適切な業者を選定できる

ピラミッド構造は建設工程を一式にしてパッケージ化しているとも言えます。そのため、発注者は一つの依頼・契約を行うことで欲しい建築物・建設が得られます。逆に、建設工程を個別にする必要がある場合には、全ての建設工事許可と技術をカバーしている業者を探さなければならなくなります。

また、家を建てる場合など多くの人は一生のうち1度か2度の機会です。その時に、家を建てる際に必要な技術とその技術に紐づいた建設業許可を把握し、業者を選定することは発注の難度が高くなりすぎます。

ピラミッド構造の発注の場合には、元請に家の建設を注文すれば、その後の工事に必要な業者選定は元請が実施してくれます。また、元請が依頼した工事の完成は発注者ではなく元請の責任で確認・管理されていきます

●工事自体の効率を改善できる

企業の規模に関わらず、事業領域の中に強みと弱みがあります。強みと弱みというのは、得意分野と苦手分野と言い換えられます。建設業者も同様に、建設業の中で得意分野と不得意分野があります。

ピラミッド構造のように、自身の強みを中心に仕事を受注し、不得意・弱みの部分は下請業者や他社に発注することで工事全体の効率は改善できます。また、専門分野に特化することで、各業者は新しい技術や機器に精通することができ、よりスペシャリストとしての生産性効率が改善できます。

また、ゼネコンのような統括管理をする事業者がいることで、建設現場の安全性を維持し、業者が異なる混在した状況下で最適な工事工程を選択することができます。逆に、複数の事業者が全体の進捗工程も分からない中で工事をしだしたら、その工事の効率性は悪化するだけであり、建設現場の安全性は崩壊します。

4大管理という、工程管理・品質管理・原価管理・安全管理なども同様で、工事全体の施工を管理するからこそ、実施できます。ピラミッド構造は、事業規模の大きい建設業者がその全体の責任を果たす中で、より効率的な工事を実現しているという面があります。

●企業の経営効率を上げることができる

建設業許可には前述のとおり、29通りの許可があります。これら全ての許可が必要な工事は常に必要と言うわけではありません。しかし、自社ですべての工事を完結させようとすると、様々な許可を取得しできる作業者を維持しなければならなくなります。

自社で建設工事を完結することは、意思疎通や統制の面ではプラスに働くことはあります。一方で、工事によっては必ず必要ではあるものの工事日数は少ないというものもあります。その場合には、どうしても自社完結の場合にはその作業員を遊ばせてしまう日が出てしまいます。

一方で、ピラミッド構造で各工事業者を利用できる場合、必要な時に必要な技術を調達できます。1工事の単価でみると、下請に仕事を依頼するほうが外部への発注になるため、費用面は上がると考えるのが一般的です。しかし、自社完結型の場合には固定コストとして専門工事ができる人員を採用する必要があり、工事頻度が低い場合には大きく費用倒れになる可能性が出てきます。

競合他社との競争に勝っていくためには、自社の持つ強みを強化していくことが必要です。強みを強化するためには、得意分野を中心に事業を進め強みをお客様のニーズに応え続けるように変化させていくことが求められます。不得意分野を下請けやパートナー企業に委託することで、強みを中心にして事業強化ができるピラミッド構造は経営効率を高める効果があります

1-3 ピラミッド構造の留意点

一方で、ピラミッド構造の全てがメリットと言うわけではありません。ピラミッド構造は、製造業やシステム業界でも見られる構造です。そして、どこの業界でもピラミッド構造がマイナスの影響を生んでしまう場合があります。

それが、多重化したピラミッド構造です。つまり、元請から仕事を受ける下請(1次請け)がいて、その一次請けからさらに下請(2次請け)が仕事を受けて、さらに3次請けや4次請けなどの仕事が落とされていくことが重なっていきます。

こうなると、1つの受発注が行われるたびに利益が抜かれます。そのため、最終的に複数回受発注が行われると利益幅が薄くなる、もしくは利益が無いような仕事になってしまいます。このような状況で仕事を受ける工事業者は、利益を得るためにコストを削ることや作業員の賃金を抑えなければならなくなり、最悪の場合には不正行為などが発生する原因になります。

また、仕事の対価である工事代金も多重化されたピラミッド構造では遅滞することが発生します。多重化されたピラミッド構造の各事業者への入金があった後に支払いをすることになるため、最終的な工事業者の手に工事代金が入るまでが結果的に遅くなります。

その他にも、ピラミッド構造において、仕事を発注する事業者と受注する事業者のパワーバランスにおいて発注者側の力が強すぎる状態が様々な問題を生む原因になります。

基本的には、ピラミッド構造の中の下請け企業はその立場が発注者より弱くなりがちです。そのため、法律において下請企業となる中小企業を保護するために下請代金支払延滞等防止法があります。

●下請代金支払遅延等防止法

この法律は、下請事業者の利益を保護し、取引の適正化を促進することを目的に公正取引委員会が運用しています。親事業者が下請事業者に製造や修理やソフトウェアなどの作成や役務提供を委託した場合に適用されます。

建設を含む物品の製造の場合には、親事業者と下請事業者の資本金額のバランスによって法律の適用取引かどうかが決まります。資本金は以下になります。

  親事業者 下請事業者
物品製造、委託修理の場合 資本金3億円超 資本金3億円以下*
資本金1千万円~3億円以下 資本金1千万円以下*
ソフトウェアの作成などの場合 資本金5千万円超 資本金5千万円以下*
資本金1千万円~5千万円以下 資本金1千万円以下*

*個人事業主を含みます。

これらの定義に当てはまる取引の場合には、親事業者には以下の義務が発生し、禁止された行為もあります。

親事業者の義務と禁止行為

義務 発注書面の交付 委託後、直ちに以下の事項が記載された書面を交付しなければなりません。✓給付内容
✓下請代金の金額と支払期日ならびに支払方法など
発注書面の作成と保存 委託後に給付とその受領(役務提供の実施)、下請代金の支払いなどについて記載書面などを作成することと保存をしなければなりません。
下請代金支払期日の定め 下請代金の支払期日は、給付受領日(役務提供を受けた日)から60日以内としなければならず、かつできるだけ短い期間内に定めなければなりません。
遅延利息支払い義務 支払期日までに支払いを実施しなかった場合、給付受領日(役務提供を受けた日)から60日後から実際に支払い日までの日数に年率14.6%を乗じた金額を遅延利息として支払良しなければならない。
禁止 受領拒否 下請事業者に責任がない状態で、その給付受領を拒否することは禁止されています。
下請代金の支払遅延 支払代金を下請事業者と定めた期日に対して支払いを遅延することは禁止されています。
下請代金の減額 下請事業者に責任がない状態で、発注時に取り決めた下請代金を減額することは禁止されています。
返品 下請事業者に責任がない状態で、給付受領後に下請事業者にその給付に係る物品を返品や引き取りをさせることは禁止されています。
買いたたき 一般的に支払いされている対価に対して、著しく低い金額で下請代金を定めることは禁止されています。
物品購入/役務利用などの強制 親事業者が指定しての物品購入や役務利用に対して強制することは禁止されています。
報復措置 中小企業庁や公正取引委員会などへ禁止行為を報告したことなどを理由に、報告を実施した下請事業者に対して取引停止などの不利益となる行為は禁止されています。
有償支払原材料などの早期決済 下有償支給原材料*を親事業者から購入する場合に、支払期日より早期に支払させる行為は禁止されています。
割引困難な手形交付 下請代金の支払期日までに一般的な金融機関で割引ができないもしくは困難な手形を交付することは禁止されています。
不当な経済上の利益の提供要請 親事業者のために、金銭や役務などの経済上の利益を提供させることは禁止されています。
不当なやり直しなどの禁止 下請事業者に責任がない状態で、給付内容の変更、やり直しなどをさせることは禁止されています。

なお、より詳しい下請代金支払遅延等防止法については中小企業庁のWebサイトで確認できます。

2 ピラミッドを構成する会社

前述のとおり、建設業のピラミッド構造を構築するのはゼネコンとサブコンです。ゼネコンとサブコンと一言にいってもその中には規模も得意分野も果たしている役割などが異なってきます。ゼネコンとサブコンのそれぞれについて解説します。

2-1 ゼネコン

ゼネコンは、General Constractor(総合請負業)の略になります。ゼネコンは、発注者から直接依頼を請け、工事一式全体を取り仕切って完工させ、最終的に建設物の引き渡しまでをその業務としています。また、建設物の引き渡した後の維持管理についても請け負うことも多くなります。

●ゼネコンの種類

ゼネコンには、その事業規模からスーパーゼネコン準大手ゼネコン中堅ゼネコンゼネコンに分けられています。

スーパーゼネコンは、年間の完成工事高(売上高)が1兆円を超える企業を言います。スーパーゼネコンは、その会社規模の大きさから、工事規模や難易度の高い工事も受注することができます。

そして、それぞれ強みを持ちながらもどんな工事も請け負うことができる『総合力』を持っています。そのため、オフィスビルやタワーマンションや学校等の公共施設や、道路やダムや湾岸施設など生活インフラ設備等の土木工事まで多様な建設物を手掛けることができます。

また、建設業も他の業界同様IT化や新たな技術や環境問題などの社会的問題への対応が求められます。スーパーゼネコンを代表とするゼネコンは、建設業が取り入れるべき研究開発や新技術の導入など中長期的な成長に必要な研究開発について先陣をきって進める役割も担っています。

加えて、スーパーゼネコンは売上の中で建築部門の占める割合が65%以上と高い点があります。これは、準大手ゼネコンなどの建築部門の売上が50%前後なのと比較すると、主に施工を中心に依頼を請けていることが分かります。

2020年3月期の売上高でいうと、以下の5社がスーパーゼネコンに該当します。

  1. ①清水建設
  2. ②大林組
  3. ③大成建設
  4. ④鹿島建設
  5. ⑤竹中工務店

スーパーゼネコンの5社のうち、竹中工務店以外は上場しています。4社の2021年3月期の売上高の合計は6兆6104億円(前期比12.2%減)と、10年ぶりの減益になっています。また、2022年3月期の4社の予想も利益は減益予想となっています。新型コロナ感染拡大や東日本大震災復興・復旧工事や東京オリンピック・パラリンピック関連工事と続いた大型の建設工事需要が一巡した影響が表れています*。

建設業界のピラミッド構造の頂点に位置するスーパーゼネコンの利益の増減は、建設業界全体の状況を反映します。好景気だった建設業が大型工事の一巡や新型コロナにより工期の遅れや需要自体の減少などマイナスな要因が表れていると言えます。

*帝国データバンク『上場スーパーゼネコン4社が10年ぶり減収、足もとの景気動向に暗雲も』

●スーパーゼネコン5社特徴

スーパーゼネコンは、事業規模が大きいことは共通していますが、各社それぞれの特徴があります。共通している特徴として、研究開発や技術開発など

・清水建設株式会社

1804年創業で、日本の主要都市に支社があり、海外(アメリカ・ヨーロッパ・アジア)にも拠点を置き海外展開も積極的に実施しています。売上はスーパーゼネコンの中でも最も高い企業であり、建築分野に強みを持ち、規模の大小を問わず多種多様な建築物件を手掛けることができます。

・株式会社大林組

1892年創業で、清水建設同様に日本の主要都市に支社があり、海外展開も積極的に実施しています。東京駅や六本木ヒルズや東京スカイツリーなどの時代を象徴する建築を実施しています。また、『地球にやさしいリーディングカンパニー』という企業理念に沿って、再生可能エネルギー事業へも力を入れています。また、ロボティクスなどの建築分野以外でも技術開発に積極的に取り組んでいます。

・大成建設株式会社

1873年創業で、日本の主要都市に支社があり、海外(アジアやアフリカ)にも拠点があります。東京都庁第一宿舎や明石海峡大橋や東京オリンピックに向けて設立された新東京競技場などの建設を手がけました。大規模な建築土木に強みを持つだけでなく、一般向け住宅“パルコン”ブランドを持ち、高機能性住宅展開にも独自性と強みを持っています。また、スーパーゼネコンで唯一、非同族経営の企業になります。

・鹿島建設株式会社

1840年創業で、日本の主要都市に支社があり、海外(アジア・オセアニア地域・北米・ヨーロッパ)に現地法人があります。国立新美術館やフジテレビ本社ビルや東京ミッドタウン日比谷等の知名度の高い建築物や、トンネルやダムと言った土木工事が強い企業です。234社のグループ企業があり、広い事業領域を持つ点も特徴になります。

・株式会社竹中工務店

スーパーゼネコンの中で最も歴史が古く、その操業は1610年になります。国内に支店を構えて、アジア・アメリカ・ヨーロッパに海外拠点があります。東京ミッドタウンやあべのハルカスなどが代表する建築物で、建築専業のゼネコンになります。また、スーパーゼネコンで唯一非上場を継続しています。

●準大手ゼネコンと中堅ゼネコン

準大手ゼネコンとは、スーパーゼネコンを除いた年間売上高3,000億円をこえる全国展開している建設会社をいいます。準大手ゼネコンもスーパーゼネコンと同じく、研究開発や技術開発などに力を入れており、それぞれ得意とする分野に対して高い専門技術を有しています。

スーパーゼネコンと比較すると、売上高は低くなりますが、上場企業も多くあります。準大手ゼネコンには以下の企業があります。具体的には、準大手ゼネコンの売上が大きい上位5社ではフジタ以外は上場しており、フジタは上場企業である大和ハウスグループで、2009年までは上場していました。

  1. ・長谷工コーポレーション
  2. ・五洋建設
  3. ・フジタ
  4. ・戸田建設
  5. ・前田建設工業

中堅ゼネコンとは、年間売上高が1,000億円以上の建設企業を言います。中堅ゼネコンも研究開発や技術開発に力を入れる点で、スーパーゼネコンや準大手ゼネコンと同様です。また、総合力でスーパーゼネコンや準大手ゼネコンと競争していくわけではなく、河川工事や鉄道工事など特殊かつ専門の技術が必要な分野に特化して競争力を高めている点が特徴になります。

中堅ゼネコンの売上上位5社は以下のようになっています。準大手ゼネコンと同様に、5社中4社(鴻池組以外)は上場しています。上場していない鴻池組も、上場している積水ハウスが50%以上の株主になっています。

  1. ・鴻池組
  2. ・奥村組
  3. ・フジタ
  4. ・鉄建建設
  5. ・東亜建設工業
  6. ・東洋建設

●地場ゼネコン

地場ゼネコンとは、商圏エリアを絞って活躍するゼネコンになります。営業エリアを限定しますが、工事の種類でいうと地域に必要とされる工事全てを総合的に引き受けています。スーパーゼネコンや準大手ゼネコンなど商圏を日本全国に広げているゼネコンが受注する工事より規模は小さくなりますが、地域の生活インフラを支える存在であり、地域密着型のゼネコンとしてなくてはならない存在です。 

そして、地場ゼネコンの数は2万社あり、スーパーゼネコンや準大手ゼネコンなどと比較するとその数は圧倒的です。今後、少子高齢化が進むことによりさらに深刻化が進む地方経済の停滞などによって、生活インフラの維持は地域経済や生活にとって死活問題になります。

そのため、今後地場ゼネコンは工事の効率性を高めながら、他の工事事業者と共に地方のインフラや生活自体を守る存在としての役割が期待されています

2-2 サブコン

サブコンは、建設工事の専門技術を必要とする工事を請け負う会社になります。サブコンはSub Constractorの略語で、ゼネコンが請け負った工事一式の中で、アウトソーシングする部分の工事を引き受ける事業者になります。

サブコンの工事は特殊性の高い工事になるため、高い技術がある事業者には多くの工事の引き合いがくることになります。ゼネコンは総合力が求められますが、サブコンは一般的には高い専門性が求められます。そのため、サブコンが強みを強化しようとする時にはその専門性が強化される部分を向上させることで実現できます

サブコンは、特殊工事を請け負う下請け業者になります。ゼネコンが受注した特殊工事をサブコンに依頼することで工事全体の質を向上させることができます。また、ゼネコンは自社で特殊工事ができる人材を育成・確保する必要が無く、サブコンは仕事を受注する営業組織などを小さくできるため、経営効率も高まります。

●サブコンの工事種類

サブコンは専門工事業者になります。その専門工事は、以下の4つになります。

  1. ①電気設備
  2. ②空調設備
  3. ③衛生設備
  4. ④消防設備
・電気設備

電気設備工事は、建物で電気を使うために必要な工事です。電気のインフラ整備やコンセントの設置、照明器具の取り付けなどを行います。

電気工事には、強電工事と弱電工事に分けられることができます。強電工事と弱電工事の違いは、電圧の差です。強電工事は48ボルト以上を取り扱う工事で、弱電工事は48ボルト未満を取り扱う工事になります。但し、実際の建物の電気設備工事には強電と弱電の両方が入り混じるため、工事においては両方の知識が求められます。

サブコンが取り扱う電気設備工事は強電工事が主になります。主な具体的工事は、高圧配管路からの建設物への電気を引き込むための工事、電気を建物内で利用するための新線設備工事と照明やスイッチやコンセントの配線と設置、電気や空調などの設備機器の制御設備を設置する工事などがあります。

一方、弱電工事にはインターネットを利用するためのLAN配線工事やテレビの受信信号をアンテナから建物に引き込むテレビ配線工事や火災報知機や煙感知器などを設置する防災設備工事があります。この弱電工事を取り扱うサブコンもいますが、別の専門業者が担当することが一般的です。

・空調設備工事

空調設備は、正式には空気調和設備と言い、建物内で実施する生活や活動をするために必要な環境を維持するための設備になります。空調設備があることを普段あまり利用者は意識することは少ないかもしれませんが、重要な役割を担います。

空調設備が住まいや建物の空気環境をコントロールしているため、空調が効かない状態では建物を快適に利用することができなくなります。夏や冬などに外とは異なり快適な環境を作り出しているのも、常にきれいな空気を提供しているのも空調設備になります。商業施設の空調設備の不調は、営業に支障が出るなどの経済的マイナスにもつながりかねません。

空調設備には、換気・湿度調整・加湿・除湿・配管という5つの役割があります。建設工事においてはヒートポンプやボイラー、熱源機器や換気設備、配管・ダクト設備・排煙設備などの新規設備取り付けや配管の工事があります。また、新規取り付け後の設備の更新工事やメンテナンスや保守点検も実施します。

・衛生設備工事

衛生設備工事は、建物の水回りに関わる給水・排水・給湯・消火設備などの設備を取り付ける工事を言います。具体的には、洗面器や洗面化粧台や便器や浴槽などの衛生器具や水回りの設備を取りつける工事です。空調設備同様に、衛生設備工事も建物を快適に利用するためには不可欠な工事と言えます。

衛生設備工事は、建物に水を供給し、利用した水を建物から排水する一連の流れを作り出す工事と言えます。水を建物に供給する方法は、受水槽から水を給水ポンプによってくみ上げる方法と、高架水槽から供給する方法の2通りがあります。

衛生設備工事は、トラブルが発生した場合には水が利用できなくなることに加え、漏水などが発生した場合には電気設備などの故障などの原因になる場合もあるため、安全かつ正確な工事が求められます。

・防災設備工事

防災設備とは、建物の防災対応のための設備になります。防災設備に係る基準は、消防法と建築基準法などが代表的な法律・規則となります。

消防法は、火災を防ぐことと火災が発生した際にはその被害を最小限にすることが目的の法律になります。消防法が求める防災設備には、火災の早期発見や報知・通報などの情報伝達や消火や避難などに係る設備があります。建築基準法が求める防災設備には、主に非常用エレベーターや延焼拡大防止や利用者避難のサポート設備があります。

火災や地震などを代表とする災害が発生すると、建物とその利用者にとって危険な状況が生まれます。最悪の場合、建物は全壊し利用者の生命が失われてしまいます。防災設備は、この災害を発生させない、もしくは発生してもその被害を最小化させるための設備になります。

防災設備は、消火設備、警報設備、避難設備、消防活動用設備の4つに大分できます。

消火設備 “火を消す”または“延焼を防止”するための設備になります。具体的には、消火器や屋内/屋外消火栓設備、スプリンクラー設備、ガス系や泡の消火設備などがあります。
警報設備 火災や煙やガス漏れなどの発生を検知すると警報を鳴らすことで建物内の人に危険を伝えるための設備になります。また、近年はサーバルームや通信機器室など専用の検知システムも普及が進んでいます。具体的には、自動火災報知設備、ガス漏れ火災報知設備、非常警報機器などがあります。
避難設備 火災や地震などの災害発生時において、安全に非難するための“利用”と“誘導”のための設備になります。利用する設備には、避難はしごや救助袋などの避難器具があります。誘導する設備には、誘導灯・誘導標識・非常用照明などがあります。
消防活動上必要な設備とその他設備 消防活動に必要な設備として、連結送水管や消防揚水は非常コンセント設備や非常用エレベーターなどがあります。その他、排煙設備や、地震などによる停電に備えるための自家発電装置などがあります。
また、防火のための防火扉や防火シャッターなど火災を遮る防火設備もあります。

そのため、万が一のトラブルが発生した時に役に立つ設備であり、万が一の際には必ず想定したとおりの動きや機能を果たすことが求められます。つまり、防災設備機器の故障や機器の不具合は小さなことであっても、建物の利用者の生命や財産を損なうリスクがある非常に重大な設備と言えます。

防災設備は、利用することが極めてまれであるため、半年に1回の定期点検と年に1回の総合点検の実施が義務付けられています。

●サブコン大手

空調設備と衛生設備の工事をあわせて管工事と言います。この管工事を得意とするサブコン大手5社は以下になります。

  1. ①高砂熱学工業
  2. ②大気社
  3. ③三機工業
  4. ④ダイダン
  5. ⑤新日本空調

それぞれ売上規模は異なりますが、最も売上高が高いのは高砂熱学工業になり、21年3月期の売上が2,751億円となっています。5社の中で売り上げ規模が少ない新日本空調も21年3月期の売上は1,072億円となっています。サブコンの上位は、スーパーゼネコンや準大手ゼネコンの規模には及ばないものの中堅ゼネコンと同様の規模にはあります

また、サブコン2位の売上規模を誇る大気社は、グローバル展開が進んでおり、日本国内と海外の割合が6:4となっています。

●サブコンの今後

ゼネコンがその建設工事量のピークを迎えたことにより、サブコン業界もその影響を受けることが予想されています。サブコンの多くは、国内事業が多く、ゼネコンの発注ありきで仕事量が決まってくる面があります。

ただ、建設業界においても働き方改革や環境への取り組みなど外的環境は大きく変わろうとしています。その中で、既存事業における専門技術を生かした海外展開などに加えて、省資源や省エネに取り組むことにより売上・利益の拡大や競合他社との差別化を進めることが求められています

3 まとめ

建設業の構造の特徴と言える“ピラミッド構造”とその構造を支えるゼネコンとサブコンを中心に解説をしました。

ピラミッド構造は、建設業を知る上で重要な特徴です。建物を建てることは簡単ではありません。また、出来上がってしまうと、その建物の構造や設備について確認することが困難と言う特徴があります。そのため、ゼネコンのように事業規模も会社の規模も大きい会社がその建設一式について責任をとる仕組みであることは非常に重要です。

ゼネコンは建設一式に対して責任を負っているからこそ、サブコンや下請けの建設現場での働きや建築物に対して部分に捕らわれることなく全体を管理し、より良い建設と建設現場を作り上げていきます。また、サブコンや下請事業者は専門的な技術を磨き、任された限定的ではあるものの専門的かつ重要な工事を行うことができます。

その意味で、ピラミッド構造は、お互いの利点をより集めて成果を出していく構造と言えます

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