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建設業の熱中症対策はどうなってる?労働災害発生に向けた防止対策まとめ

建設業にとって、猛暑の中の作業は大変負荷が強いものです。特に近年は猛暑が続いており、台風・豪雨などによる寒暖差の変化も激しい状況です。若かったり基礎疾患がなくても、熱中症で命を失うケースもあり、熱中症対策は、重大な労働災害発生防止の観点から極めて重要です。

そこで、この記事では建設業の熱中症対策の現状や、国土交通省の資料等各種書面を踏まえ、労働災害発生の防止を実現するための対策についてまとめます。

1 熱中症と熱中症対策

熱中症対策を行う上では、熱中症のしくみを踏まえ、基本的な対策を行う必要があります。まず、熱中症の原理を踏まえ、どのような対策を行うことで、労働災害発生の防止が望めるかから確認していきましょう。

1-1 熱中症はなぜ発生するか

人間の体は暑いときや運動、肉体労働を行うことによって体温が上昇します。この時、平常時であれば、人間の体の対応調節反応を通して汗をかいたり、皮膚に血液が集まる皮膚温上昇という現象によって、汗の蒸発や外気に対する熱伝導を起こすことにより、人間の体内から熱が放散されます。

しかし、暑い(暖かい)、湿度が高い、風が弱い、熱を発生させる物がある(機械・重機など)という環境では、体から外に対し熱を放散できる要が減り、汗の蒸発も不十分になります。すると、体内に熱がたまり、身体のバランスが破綻、体温上昇を起こし熱中症になります。

熱中症が発症すると、体調、環境、行動などにより、作業従事者の体に症状が発症します。具体的な症状としては、熱射病、熱疲労、熱けいれんや、熱失神など発生することがあります。十数分前まで普通だった人が突然死に至るという事例もあります。

熱中症の発症原因については、労働者の体調・性別・年齢・暑さへの慣れなど当事者の身体的状況と、気温・湿度・輻射熱・気流など周囲の環境及び活動強度、持続時間、休憩などの行動条件が複雑に関係するため、様々な要因が関わります。

個人の体質についても、基礎疾患の有無など様々な要因が関わってくることを踏まえておく必要があります。

熱中症において現れる様々な症状に関しては、環境省の「熱中症環境保健マニュアル」で定義されています。軽い順から、Ⅰ度、Ⅱ度、Ⅲ度と分類していきます。

分類 症状
Ⅰ度 症状としては一番軽度だが、作業ができなくなる複数の症状が存在。
めまい・失神など、いわゆる「立ちくらみ」の状況が発生。
脳への血流が瞬間的に不十分になった状況でもあり、熱失神とも呼ばれる。ふらつく状態であるため、作業は当然できず、機械のオペレーション作業等においては事故発生の原因になりかねない。

筋肉痛・筋肉の硬直も熱中症の症状の一つ。いわゆる筋肉のこむら返りであり、発症部分に強い痛みを伴う。原因は発汗による塩分の欠乏により生じるので、ナトリウムの随時の補給が予防に不可欠。

手足のしびれや不快な気分も熱中症の症状であり、体に違和感を感じたら、すぐ水分補給と休息を行うことが重要。

Ⅱ度 (頭痛・吐き気・嘔吐・倦怠感・虚脱感等、作業を続行するのはまず無理で、早急に休養が必要な状況。

症状によっては、体がぐったりする・力が入らない・いつもと様子が違うなど、軽度の意識障害等、行動に直接表れず、本人だけが認識しているという状態もありうる。症状の悪化を防ぐため、労働者が違和感を訴えたら休養させることが必要。

Ⅲ度 Ⅱ度の症状に加え、更に重篤な症状が発生。
具体的には、意識障害・けいれん・手足の運動障害が典型例。
呼びかけや、刺激を加えても反応がおかしかったり、全身のけいれんで体ががくがくしている、まっすぐに歩けないなど、完全に動きができない状態になっている。
他にも高体温、肝機能障害、腎機能障害、血液凝固障害など、体に大きな影響を与える症状が発生する。
また、熱中症が原因で死亡に至る例も年間数百件存在し、熱中症で死亡に至る事例の中では、建設業が一番割合が高い

以上の通り、熱中症は本人の体調の問題だけでなく、作業場の事故など、周囲にも関わるより大きな労働災害の原因になる可能性があります。重大なインシデントを引き起こさないためにも、軽度のうちに休憩や水分・塩分補給をとらせて休ませる、そして軽度に見えても後で重篤化する可能性があるため、できるだけ救急に相談、必要に応じ出動要請を行うことが必要です。

1-2 熱中症の発症期間と対策

熱中症の漠然なイメージとして、真夏や温度・日光の照射が強い昼間などに発生するという印象があります。実情としては、6月~9月にかけて幅広く発生、また朝9時台の作業開始後から発生という事例等、早朝・夕方でも発生しているので注意が必要です。

特にここ数年は、気温の急激な変化や水量の増加など、過去とは異なる気候の変化があります。上記の6月~9月の時期については、常に毎日気象情報を気象庁のサイトや気象・災害状況確認アプリなどを利用して、早い時間のうちから天候に注意し、作業を進めていくことをお勧めします。

加えて、現在は暑さ指数(WBGT値)を計測、数値化し、危険性を明示した上でメールやスマホへのプッシュ通知で教えてくれる装置や、熱中症予防アプリなどもあります。このような作業現場の情報がピンポイントでわかる、熱中症になりやすい状況かを各担当者が把握・共有できる状況作りができるようになりましたので、ぜひ導入することが望まれます。

また、暑さ指数の低減のために、送風機、社交ミスト、ドライミスト、作業場用大型扇風機、現場への散水での温度低下など、屋外での温度を下げる工夫は必須です。

加えて休憩場には、エアコンを備え付けたり、水分補給ができる装置や飲み物のパックを備えておく等、シャワー室を設ける、製氷機や自販機の設置、冷蔵庫への経口補水液の設置等、暑さ対策・水分補給への積極的な整備が要されます。

保守工事や一時的な作業など、作業場所の関係でプレハブなどの休憩場が設置できない場合は、現場休憩所に日よけテントやベンチの設置、クーラーや温冷粉を設置した休息車の配置など、別の方法で作業員が休める環境を整える必要があります。

1-3 実作業における管理の重要性

6月~9月の現場で作業を行うに当たっては、強い意識を持った熱中症対策が必要です。

まず、作業における休憩時間の確保は必須です。人によっては、作業が調子よく進んでいるときに休憩を取りたくないという人もいるかもしれませんが、1時間に1回の休止や、常時、もしくは休憩時の水分・塩分補給は欠かせません。

加えて、夏場は熱中症になりやすい環境があることを前提におき、特に高温多湿な場所では休憩時間を長く確保するなど、通常以上の休憩と水分補給が必須です。

また、特に気温が高まる午後を避けるための、出勤時刻の前倒し、早出、早帰りなどは必須といえるでしょう。

熱中症は、自覚症状なく進んでいくことがあります。現場職長が携帯型のWBGT値計測値を携帯し、測定値が厳重警戒値に達した場合は、作業を休止し早帰りするなど、熱中症の症状が実際に発生する前に、先回りで対策をしていくことが重要です。

1-4 装備の通気性の重要さ

熱中症対策には、通気性の良い軽装が良いのが一般的です。しかし、建設現場では、安全衛生上の観点から、長袖の作業服やヘルメット、安全チョッキなどの装備が必要になるため、通気性がどうしても失われます。

現在は、ファン付きの通気性を確保したヘルメット、作業服や、太陽光や熱を吸収しにくい安全チョッキ、空調服など、長袖で安全に配慮した作業服でも、できるだけ負担が軽減できるような作業服・道具が開発されていますので、このような暑さ対策を行える道具の導入も重要です。

1-5 労働者の日々の健康管理

熱中症は、高温多湿や直射日光の外部要因だけでなく、労働者の体調など内部要因によって誘発されることもあります。

健康管理のチェックシートや、体調管理、検温等のチェックは必須です。また、現在の状況では、マスクをして作業をせざるを得ない環境も想定されます。職場内で万一の事がないように、マスクを付ける必要がある場所では装着する、一方高温で通気性が良い屋外ではマスクを必要に応じ着脱するなど、感染症対策も重要になります。

万一作業場で感染症のクラスターが発生した場合、作業に極めて重大な影響を与えることになります、日々の健康管理に加え、感染症対策も当面は重要な課題の一つとなります。

また、尿の色で体内の水分状況がわかるため、トイレへの張り紙等で、尿の色が濃い場合は、一定の水分を摂取するように掲示しておくことも重要です。

発汗や体内の水分量に関しては、尿が脱水症状チェックのバロメーターとなります。常に確認し、体内の水分量に応じた水分の補給を心がけることが重要です。

加えて、作業中における各作業員のモニタリングも不可欠です。作業において、各担当者が定期的な水分・塩分の補給を行っているかの確認に加え、市区町村で熱中症に関する警戒アラートが発令されている場合は、労働災害発生の防止のためにも、いつも以上に巡回や各作業員との体調に関するコミュニケーションを行うことで、不測の事態を減らすことが望めます。

設備としては、熱中症警告アラームの必要場所への設置やWBGT測定器の携帯など、現場責任者が危険のサインをすぐに察知できる環境作りが必要です。また、現場が広い場合は、経口補水液や冷却用品、空調機能を備えた車両などを巡回させ、頻繁に作業員の体調確認、水分補給、休憩を促すことも必要です。

また、熱中症に対する許容度は人によって異なりますので、各担当者がセルフチェックシートで現在の状況を確認する必要があります。

特に熱中症にかかりやすい人としては、以下の傾向があります。

  1. ・65歳以上である
  2. ・心筋梗塞・狭心症などにかかったことがある
  3. ・これまで熱中症になったことがある
  4. ・高血圧である
  5. ・太っている
  6. ・風邪を引いて熱がある
  7. ・下痢をしている
  8. ・二日酔いである
  9. ・朝食を食べなかった
  10. ・寝不足である

基準については、それぞれで定める必要がありますが、各担当者がセルフチェックを行い、現場責任者だけの管理ではなく、自主的に管理をしていける環境作りも必要です。

1-6 労働安全衛生教育の必要性

労働安全衛生法など法律で、労働安全衛生にかかる基準は決まっています。ただ、この基準を踏まえ、各作業員がわかりやすいレベルまでかみ砕いた上で、労働安全衛生のレクチャーを受けたり、自主的に勉強会を行うなどして、自発的に取り組むことも重要です。

検索キーワードで、「環境省 熱中症予防」、「厚生労働省 熱中症関連情報」など検索すると、公的な情報のページが出てきます。きちんとエビデンスのある資料に基づき、対策を行い、作業チーム全体で労働安全衛生教育を深めていく必要があります。

1-7 もし熱中症が疑われた場合は?

国土交通省では、「建設現場における熱中症対策事例集」、厚生労働省では「職場における熱中症予防対策マニュアル」を作成しています。ポイントは以下の通りです。

・救急措置段階

高温多湿場所において作業に従事させる場合には、労働者の熱中症の発症に備え、あらかじめ病院、診療所等の所在地及び連絡先を把握するとともに、緊急連絡網を作成し、関係者に周知することが重要です。

熱中症の自覚というのが、なかなか自覚しにくいケースもあります。作業を行っている際、自分自身が、あるいは他の作業員が「熱中症になったかもしれない!」という「疑いの視点からの確認」が、作業現場で行われる応急処置の第一歩です。

その上で、熱中症を疑わせる症状が現れた場合には、救急処置として涼しい場所で体を冷やすことが第一です。その上で、水分及び塩分の摂取等行います。

必要に応じて、救急隊を要請し、又は医師の診察を受けさせることも重要で、当事者を放置するのでなく、責任者か他のスタッフが、体調に変化がないか様子を確認する事が必要です。

・作業現場でできる応急処置

何よりも、まずは意識が正常であることの確認が必要です。質問の例として、厚生労働省は下記の質問例を示しています。

  1. ・「今日は何月何日ですか」
  2. ・「今は何時頃ですか」
  3. ・「あなたの名前は何ですか」
  4. ・「私は誰ですか」
  5. ・「ここはどこですか」

このような普通なら誰でもわかる質問に明確な受け答えができれば「意識ははっきりしている」として判断できます。

一方、1つでも明確に答えられない場合は「意識がおかしい」と判断、重篤なⅢ度の熱中症として扱う必要があります。この場合には早急に救急に連絡、現状を説明し、救急隊を要請する必要があります。

意識がはっきりしているケースや救急隊を呼んだケースでも、その後の応急措置を行う必要があります。

  1. 1.涼しい場所に移す
  2. 2.脱衣と冷却を開始(対処は必ず同性、不在の場合は同性の救急隊員が行うこと)

具体的には、暑い現場から涼しい日陰か、冷房が効いている部屋などまず移動・搬送します。その後、衣服を脱がせて、体から熱を放散させていく必要があります。加えて、可能な限り皮膚・体を露出させ、水をかけ、うちわ、扇風機の風に当てることが必要です。寝かせた状態で下半身を持ち上げ、下半身に分布する血液をより多く体の内部に集める必要があります。

意識がはっきりしない場合は特に、救急隊が到着する前から早々にこれらの方法を開始する必要があります。また、対処に迷う場合は救急隊に行うべき措置の判断を仰ぐのが確実です。

意識がはっきりしている場合、上記の1.2を行いながら、水分を自力で摂取できるかどうかを判断する必要があります。万一はきけがあったり、または吐いたりしている場合には「水分を摂取できない」と判断し、点滴による水分補給に切り替える必要があります。

当然建設現場では点滴措置はできないので、救急隊を要請、医療機関での点滴による水分補給を行うことが必須です。

もし吐き気や嘔吐がなく、自力で水分を摂取できるなら、水分を与えても問題ありません。

冷たい麦茶やジュース、氷水などを与え、加えて作業をしていた場合は、塩分も失われているとみなし、塩分を含んだスポーツドリンクや経口補水液を与えるのが素早い対処法です。

いずれにしても、熱中症が顕在化している状況では、誰かが常に付き添い、異変がないか患者を見守ることが重要です。

本人が大丈夫だと話しても、体調が急変する可能性もあります。体調が回復しない、悪化するなどがあれば、やはり医療機関への搬送を要請する必要があります。救急車を呼ぶことについて躊躇せず、少しでもおかしいという違和感があれば救急隊を要請すべきと言えます。

特に注意すべきは、水分接種後の嘔吐です。様々な要因が重なり、嘔吐にいたる場合、仰向けだと誤嚥(ごえん)の可能性があります。

誤嚥というのは、嘔吐した水分等が喉から気管に流れ込み、咳や呼吸の問題などを引き起こすことです。誤嚥を防ぐためにも、誰かが様子を見ていることと、顔・体を横に向け、嘔吐があっても直接水分等を飲み込まないようにしたり、袋等を用意しておくことが必要です。

救急車がきた場合は、後の措置は救急隊にバトンタッチし、同じ環境下にある他の作業員にも異常がないか確認する必要があります。

なお、人間は寝ている間にも汗をかきます。就寝直前の体重は起床直後よりもわずかに減ると言われており、これは汗腺からの水分蒸発や、呼吸に伴う水分の放出減少が原因であり、人間が起床したときは、概ね500ミリリットルの水分が失われていると言われています。

それ故、起床時は脱水状態であり、作業時に現場へ食事や水分をとらずに向かい、そのまま作業にかかるというのは脱水症の原因の一つにもなり得ます。

1-8 実際の脱水症による労災事例

それではここで、厚生労働省「職場における熱中症予防対策マニュアル」に記されている、他業種も含めた脱水症による実際の災害事例を確認します。

・30代建設工事業

被災者は、基礎型枠の解体作業において、単管等の資材の受け渡し等の作業に従事していたが、体調が悪くなってうずくまり、その後、その場に倒れこんだ。すぐに救急車を手配して病院へ搬送したが、およそ3時間後に死亡が確認された。被災者は採用3日目であった。

熱中症は、若いからと言ってかからないとは限りません。特に、仕事を始めてすぐの作業員の場合、自分の限度の把握が難しい物です。それ故に、新規採用者は特に体調や様子のモニタリングをしっかりと行う必要があると言えます。

・40代建設工事業

被災者は、既存ビルの内部土間等工事施工に雑工として入場した。午後3時 30 分頃作業が終了し、共同作業者の運転する車にて店社事務所に戻ろうとしたところ、交差点での信号待ちの間に自ら降車し、午後4時頃に路上に倒れているところを発見された。救急搬送されたが、同日死亡した。

作業が終了し、終わったという状況でも、熱中症が急激に悪化し、命に関わることになるケースが存在します。このケースは、自分で車から降り、その時は動ける状態だったけれども、直後に倒れ、救急搬送されるも、死亡が確認されました。

普通に作業をしていた人が、突然体調を崩すというのも熱中症の怖さです。現場業務終了後も、各自が水分・塩分補給を行ったり、作業中に無理をしないことが重要です。

・30代建設工事業

災害発生当日、被災者はマンション新築現場にてコンクリート打設の補助をしていた。昼の休憩後、午前中の作業の続きを始めたが、午後1時30 分頃、突然転倒したので小休止を取らせ様子をみていたが、顔色が悪く、熱中症が疑われたので、救急車で病院へ搬送した。救急隊が到着した時は意識があったが、午後3時前に意識を失い、4日後に死亡した

このケースは、現場で小休止をして様子を見ていたが、救急車を呼ばずに様子を見るだけにとどめたために、症状が悪化した可能性も考えられます。少しでも危ないと感じたら、救急に連絡し、指示を仰ぐことが必要です。

・20代商業

事業場にて商談、展示車両の洗車業務等に従事していた労働者が、午後5時30分頃、事業場内の清掃作業中に頭痛を訴えた。2階の休憩室で休養し、午後7時過ぎに帰宅した。翌朝、起床してこないことから、家族が様子を見にいったところ、呼吸停止の状態で発見された。

20代と極めて若い年代であり、頭痛と思って休養、救急を呼ばず帰宅した後、翌日に呼吸停止の状態で発見されたというケースです。この日のWBGT値は32.0℃となっており、かなり高い音頭でした。20代で現場作業ではないという環境でも、熱中症は発生し、死に至る場合もあることを把握する現場担当者・作業従事者は把握する必要があります。

・50代土木工事業

道路わきの案内看板移設工事を行っていた被災者が体調不良を訴えたため、日陰で休ませていたが、その後意識混濁状態になっているところを発見された。すぐに救急車で病院に搬送したが、翌日死亡した。

このケースも、救急を呼ばず、日陰で休ませるという一時的措置にとどめたために発生した災害です。意識混濁状態になってからでは手遅れですので、早急に救急を呼ぶ必要があったケースです。

・30代その他建設業

土壌等の仮置場において、密閉容器から鋼製容器に土壌等を移し替えるため、被災者は密閉容器のふたを開ける作業を行っていたところ、暑さによる疲れがみられたため車で休憩していたが、15 分後に体調が急変し病院に搬送された。意識不明であったが、2週間後に死亡した。被災者は現場入場2日目であった。

このケースも、現場に入ってすぐであり、かつ一時的な休憩で、救急を呼ばなかったことが問題だったと言えます。当初は大丈夫に見えても、いつ急変するかわからないのが熱中症の怖さです。

極力早めに救急を呼ぶことと、現場責任者など他のスタッフが常に様子を見ることが重要といえます。

・30代土木工事業

屋根の防水工事において、被災者は午前8時から当該工事の補助作業に従事していたが、午後5時頃作業終了後、同僚と現場近くの宿舎に徒歩で戻り、午後5時 50 分頃、宿舎エレベーターを降りたところで意識を失い倒れた。直ちに病院に搬送されたが、翌日死亡した。

このケースは、普通に元気だったのに突然倒れたというケースに見えます。しかし、この背景には下記のような状況がありました。

  1. ・被災者に対して熱への順化期間は設けられていなかった
  2. ・被災者に対する健康診断が実施されていなかった
  3. ・被災者は熱中症発症に影響を与えるおそれのある疾患を有していた

つまり、作業時に明確な症状は出なかった物の、健康診断の未実施や疾患など、熱中症の発生を誘発する原因が複数あり、結果として人の命が失われる事態に至ったケースと言えます。

・30代建築工事業

被災者は、基礎型枠の解体作業において、単管等の資材の受け渡し等の作業に従事していたが、体調が悪くなってうずくまり、その後、その場に倒れこんだ。すぐに救急車を手配して病院へ搬送したが、およそ3時間後に死亡が確認された。被災者は採用3日目であった。

(以上、厚生労働省「職場における熱中症予防対策マニュアル」より一部抜粋)

これは、30代と建設業界では比較的若い年齢層にもかかわらず、急に体調が悪化し、数時間後に命が失われた事例です。こちらも採用3日目と、現場になれていない状況で職務に従事していたため、現場責任者も本人も体調の変化に対応できず、最悪の結果となってしまいました。

・60代林業

被災者は、広葉樹の伐採現場において、他の労働者とともに午前 10 時から立木の伐倒や造材作業を行っていた。午後3時頃、同僚が伐倒作業を行っていた被災者に作業終了を告げ、先に集合場所へ戻ったが、なかなか被災者が集合場所に戻らないため、再度、呼びに行ったところ、斜面に倒れている被災者を発見した。医療機関に救急搬送したが、4日後に死亡した。被災者は当該事業場の労働者として作業に従事した初日であった。

このケースは建設作業とは異なる事例ですが、作業従事初日かつ、被災者に対する健康診断が実施されていなかったことから発生した事案です。

林業の場合は、範囲が広いため、誰かの体調に異変があっても気がつかないというパターンも想定できますが、建設工事業でも、作業員同士の距離が離れている場合は同様の事案が考えられます。

新規採用者が、現場での加減がわからず無理をして、万一の事態を引き起こしてしまうと言うケースは非常に多いので、新規採用者は特に、一定期間、無理をさせず、採用者自身にキャパシティを把握させたり、体調がおかしいと思ったらすぐ責任者に連絡するなど、体調異変がないよう、また体調異変に対応できるよう、最初のうちにレクチャーしておく必要があります。

・40代・土木工事業

被災者は、町道の舗装工事において、朝礼後の午前8時 30 分から、同僚1名と共にロードカッタを操作し、アスファルトを切削する作業に従事した。午後0時前に作業が終了し、後片付けしていたとこころ、気分が悪くなり、倒れこんだため、病院に運ばれたが、死亡した。

最後は、午前中の作業でも体調が悪化する事がある事例です。この作業時のWBGT値は29.4℃と高めでした。熱中症は午後に発生するというイメージがありますが、午前中の作業でも発生するケースはありますので、夏場は気をつける必要があります。

以上紹介してきたとおり、一見大丈夫そうに見えても、後で命に関わる体調悪化が発生するというケースは非常に多いです。作業員自身が大丈夫、もしくは自分自身が大丈夫と思っても、違和感を感じたら、すぐ救急を呼ぶようにすることが、最悪の事態を防ぐ上で重要です。

2 まとめ

熱中症の原因や現場での対策、対処法や、熱中症による命に関わる事例などを解説しました。熱中症は、ここまでで見てきたとおり、命に関わる事例も少なくありません。

自身が体調をしっかりと管理するのに加え、現場責任者は従事者全体の高頻度のモニタリング、作業者は自身の体調把握と、無理をしないことの注意を心がける必要があります。

そして、水分・塩分を補給、休憩を1時間など短いスパンで入れるなど、職場全体と作業員個々がそれぞれ、熱中症の予防に対し積極的に取り組む必要があります。

特に2020年代になってから、異常気象で北海道で30度後半を記録したり、場所によっては40度など、極端な気温になる地域もあります。

これまでの熱中症対策からより対応を強めた手法を取っていくことで、職場での熱中症による労働災害発生が内容に心がけていくことが大切です。

建設業許可申請が全国一律76,000円!KiND行政書士事務所:東京