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建設業の安全大会とは? 開催は義務?

建設業界では、各企業で年に1度安全大会が開催されます。建設業の安全大会は、建設現場における労働災害を防ぐため、そこで働く人たちの安全衛生にかかる知識を深め、その意識を醸成するために行う行事です。全業種に占める建設業の労働災害の割合が非常に高い状況にあることから、建設業の安全大会の重要性は極めて大きいのです。

そこで本記事では、建設業の安全大会の意義や必要性、また、安全大会と労働安全衛生法や建設現場安全管理指針との関係を解説するとともに、コロナ禍における安全大会の開催について解説していきます。建設業界で仕事をされている方は、ぜひ参考にしてください。

1 建設業の安全大会とは

建設業の安全大会は、建設現場における事故や災害を防ぐため、そこで働く労働者の安全衛生にかかる知識を深め、その意識を醸成するために行う集会です。
安全大会は、全業種に占める建設業の労働災害の割合が高いことから、建設現場の事故や災害を防ぐ非常に重要な役割を担っています。また、安全大会は、毎年7月に実施される全国安全週間の活動の一環でもあります。

1-1 安全大会とは

安全大会とは

安全大会は、建設現場や工事現場で働く労働者を災害から守るため、労働者の安全衛生にかかる知識を深め、その意識作りを行うために開く集会をいいます。

建設現場や工事現場における作業は、以下のような災害や事故が発生する危険を伴います。

  • ①高所作業における転落事故
  • ②地下作業における落盤事故
  • ③頭上からの建築資材の落下・衝突事故
  • ④建設作業用機械による巻き込まれ・切断事故
  • ⑤工事車両の走行による事故
  • ⑥屋外作業における飛来物体の衝突事故
  • ⑦建設中の建物・工作物の倒壊・火災事故
  • ⑧建設用塗料・化学品による爆発・火災事故
  • ⑨屋外作業における熱中症リスク
  • ⑩屋外作業における感染症リスク

労働災害は建設業だけに限らず、製造業をはじめ他の業種においても発生していますが、全業種に占める建設業の労働災害の割合は、非常に高い状況にあります。

労働安全衛生法では、労働災害を防止して労働者の安全と健康を守るため、職場・作業場における安全衛生管理体制の充実や労働者の危険・健康障害を防止するための措置、快適な職場環境を形成するための措置などについて定めています。

その中には、職場の安全管理者や衛生管理者、労働者などに対して行うべき労働安全衛生にかかる様々な教育・訓練についても規定があります。これら安全衛生にかかる教育・訓練は、「労働安全衛生教育」と呼ばれ、労働安全衛生法における主要な骨子となっています。

安全大会は、主に建設業界の各企業が実施している行事ですが、労働安全衛生法の中に具体的に定められているものではありません。
しかし、安全大会は、労働者の安全衛生にかかる知識を深め、意識を醸成する非常に重要な役割を担っていることから、労働安全衛生教育の一環とされています。すなわち、建設業界の各企業は、従来から、労働安全衛生教育の一環として安全大会を開催してきた経緯があるのです。

1-2 建設業における労働災害の状況

厚生労働省が公表した「平成31年 / 令和元年労働災害発生状況」によると、令和元年(2019年)の全産業における労働災害による死亡者数は845人、休業4日以上の死傷者数は12万5,611人となっています。

このうち、建設業は、死亡者数が269人、休業4日以上の死傷者数が1万5,183人を占めています。この建設業の数値を全産業に対する比率で表すと、

  • ①死亡者数=269人 / 845人=31.8%
  • ②休業4日以上の死傷者数=15,183 / 125,611=12.1%

と非常に高い数値となっています。

この中で、全産業に対する比率が高い死亡者数について、平成20年以降の推移をみると、平成20年の430人が平成21年以降300人台になり、さらに平成28年と令和元年には200人台まで減ってきています。特に、令和元年は死亡者数が269人と、過去最低の数値を達成しています。

【建設業における労働災害による死亡者数の推移】

平成20年 平成21年 平成22年 平成23年 平成24年 平成25年
全産業A 1,268人 1,075人 1,195人 1,024人 1,093人 1,030人
建設業B 430人 371人 365人 342人 367人 342人
B / A×100 33.9% 34.5% 30.5% 33.4% 33.6% 33.2%
平成26年 平成27年 平成28年 平成29年 平成30年 令和元年
全産業A 1,057人 972人 928人 978人 909人 845人
建設業B 377人 327人 294人 323人 309人 269人
B / A×100 35.7% 33.6% 31.7% 33.0% 34.0% 31.8%

このように、長期的には、建設業の労働災害における死亡者数は減少傾向にあります。
しかし、全産業に占める建設業の死亡者数の比率は、平成20年から30%以上の高い数値が続いています。
この結果は、全産業における労働災害死亡者のうちの約3分の1が建設業労働者であることを示しており、建設業の労働災害死亡事故が非常に高い割合であることがわかります。

建設現場における死亡原因で多いのは、墜落・転落、はさまれ・巻き込まれ、激突され、交通事故などとなっており、建設現場では、危険な高所や足場が悪い中での作業、あるいは取扱いに注意を要する作業機械の操作などが多いことが大きく影響しています。

このことから、建設業における労働安全衛生教育の重要性は、他の産業に比べ非常に高い
といわざるを得ません。

1-3 安全大会の内容

建設業の安全大会は、建設現場の作業に従事する社員・従業員や取引先などの関係会社・関係者を集め、作業現場・工事現場における安全や衛生についての知識や理解を深め、より安心・安全な体制・現場を作っていくための行事です。
そのため、通常は自社のみの社員を集めて安全大会を開くのではなく、広く取引先企業や協力会社の社員・従業員にも参加を要請して、全員が一堂に会して実施する例が多いのです。

安全大会の内容は、具体的には以下のようなものが多くみられます。

①労働安全衛生に関する講演・講話・セミナー

・建設業における労働災害の状況やその防止策などについて、有識者や労働安全衛生分野の先進企業を招いて、講演・講話してもらう
・会社の代表者や作業現場の責任者が、現在実施している労働安全衛生対策を説明する
・現場の作業員が、自分の経験を踏まえて、労働災害を防ぐ注意点などを説明する

②労働安全衛生に関する上映

建設業における労働災害の状況やその防止策などについて、ビデオを上映する

③労働安全衛生に関する表彰

労働安全衛生の取組みに貢献した自社または関係会社の社員・従業員を表彰する

④スローガンを掲げての決起

労働安全衛生のスローガンを紹介し、全員の認識を深める

ここで、安全大会の実例として、三和グループの安全大会を紹介しましょう。

【平成30年度 三和グループ安全大会の概要 参照:三和興業公式サイト】
三和グループの中核企業である株式会社三和興業は福岡市に本社があり、建物解体や産業廃棄物処理、建材販売、土木工事など建設関連の業務を行っています。

〇開催日時:平成30年6月2日(土)
〇開催場所:福岡市民会館小ホール
〇平成30年度三和グループ安全スローガン
「木を抜くな 隠れた危険はすぐそばに 気づいたあなたが安責者」
なお、三和グループ安全スローガンは、毎年新しいものが設定されています。

〇内容
①挨拶
株式会社三和興業代表取締役社長から、今期よりスタートした「安全推進室」の取組みの紹介、労働安全衛生に向けた訓示など
②発表
グループ会社社員による「私の事故体験から学んだ事」の発表
③表彰
協力会社表彰
社内表彰
④安全講話
招待会社から「正しい取扱い(当たり前のこと)」の講話
④安全宣言
本社工事部社員による「安全宣言」

このように、安全大会は集まった者全員で建設業における労働災害の実態やその対策なについての知識・理解を深め、労働災害事故を発生させない決意を再認識するための建設業に不可欠な行事なのです。

1-4 安全大会の開催時期

安全大会の開催時期

安全大会は、各企業・各企業グループで毎年実施されており、その時期は5~8月に開催する企業が多くなっています。

その理由は、毎年7月1日からの1週間が「全国安全週間」に該当し、安全大会は全国安全週間との繋がりが深いためです。

全国安全週間は、主催者が厚生労働省と中央労働災害防止協会、協賛社が建設業労働災害防止協会をはじめとする各業種団体、実施者が各事業場とされています。

【全国安全週間の目的】
〇産業界における自主的な労働災害防止活動を推進するとともに、広く一般の安全意識の高揚と安全活動の定着を図る

令和2年度(2020年度)の全国安全週間は、6月1日~30日までを準備期間、7月1日~7日までの1週間を実施期間として行われました。

【令和2年度全国安全週間のスローガン】
〇エイジフレンドリー職場へ! みんなで改善 リスクの低減

令和2年度全国安全週間実施要綱では、全国安全週間の実施期間中に、主催者・協賛者は次のような取組みを実施することと定められています。

  • ①安全広報資料を作成して配布する
  • ②様々な広報媒体により広報を行う
  • ③安全パトロール等を実施する
  • ④安全講習会や事業者間で意見交換・好事例の情報交換を行うワークショップ等を開催する
  • ⑤安全衛生にかかる表彰を行う
  • ⑥7月1日の「国民安全の日」の行事への協力を行う
  • ⑦事業場が実施する事項に指導援助を行う
  • ⑧その他、全国安全週間にふさわしい行事等を実施する

また、実施者である各事業場は、全国安全週間・準備期間中に実施する事項として、以下のものが定められています。

  • ①安全大会等において、経営トップによる安全への所信表明を通じた関係者の意思の統一・安全意識の高揚を図る
  • ②安全パトロールによる職場の総点検を実施する
  • ③安全旗の掲揚、標語の掲示、講演会等の開催、安全関係資料の配布、ホームページ等を通じた自社の安全活動等の社会への発信を行う
  • ④労働者の家族に対する職場の安全に関する文書の送付、職場見学等による家族の協力の呼びかけを行う
  • ⑤緊急時の措置にかかる必要な訓練を実施する
  • ⑥「安全の日」の設定、全国安全週間・準備期間にふさわしい行事を実施する。

実施要綱では、全国安全週間の実施期間中または準備期間中に各事業場が実施する事項として、①の安全大会で経営トップが安全への所信表明を行い、関係者の意思統一・安全意識の高揚を図るということが定められているのです。
このことから、産業界における自主的な労働災害防止活動を推進し、広く一般の安全意識の高揚と安全活動の定着を図るための全国安全週間の活動の一環として、各企業・事業場で安全大会が開催されているのです。

2 安全大会の開催は義務か

それでは、安全大会を開催することは、各企業にとって法律上の義務なのでしょうか。このことについて、労働安全衛生法には、明確な定めがありません。しかし、国が定める建設現場の安全管理に関する指針では、安全大会が労働災害防止対策の一環として想定されています。

また、国のホームページでは、安全大会を実施することが、事業場が行う自主的な教育訓練として労働安全衛生教育の中に位置づけられています。

以上から、安全大会は法律上の開催義務はないが、各企業・事業所が自主的に実施すべき行事であることがわかります。ここでは、これらのことについて、詳しくみていきましょう。

2-1 労働安全衛生法と安全大会

労働安全衛生法と安全大会

安全大会は、労働安全衛生教育の一環として実施される行事です。それでは、労働安全衛生法には、労働安全衛生教育に関する規定がどのような形で定められているのでしょうか。

以下は、労働安全衛生法から労働安全衛生教育に関する規定を選び出したものです。

〇第19条の2第1項(労働災害防止業務従事者に対する教育)

事業者は、事業場における安全衛生の水準の向上を図るため、安全管理者、衛生管理者、安全衛生推進者、衛生推進者その他労働災害の防止のための業務に従事する者に対し、これらの者が従事する業務に関する能力の向上を図るための教育、講習等を行い、またはこれらを受ける機会を与えるように努めなければならない

経営者は、職場で労働災害防止業務に携わる社員(安全管理者、衛生管理者、安全衛生推進者、衛生推進者など)に、業務能力の向上を図るための教育・講習等を行い、または、これらの教育・講習等を受ける機会を与えるように努めることが義務付けられています。

〇第59条第1項(雇用時の安全衛生教育)

事業者は、労働者を雇い入れたときは、当該労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、その従事する業務に関する安全または衛生のための教育を行わなければならない

経営者が労働者を雇用したときは、この労働者に、担当業務に関する安全・衛生教育を行わなければならないとの規定です。

〇第59条第2項(作業内容変更時の安全衛生教育)

前項の規定は、労働者の作業内容を変更したときについて準用する

前項の安全・衛生の教育は、労働者の作業内容を変更したときにも義務付けられています。

〇第59条第3項(危険・有害業務に対する特別教育)

事業者は、危険または有害な業務で、厚生労働省令で定めるものに労働者をつかせるときは、厚生労働省令で定めるところにより、当該業務に関する安全または衛生のための特別の教育を行わなければならない

経営者が、厚生労働省令の定める危険・有害業務に労働者を従事させるときは、その業務について安全・衛生の特別教育を行わなければならないという規定です。

〇第60条(新任職長等に対する安全衛生教育)

事業者は、その事業場の業種が政令で定めるものに該当するときは、新たに職務につくこととなった職長その他の作業中の労働者を直接指導または監督する者(作業主任者を除く。)に対し、次の事項について、厚生労働省令で定めるところにより、安全または衛生のための教育を行わなければならない

  • 1 作業方法の決定および労働者の配置に関すること
  • 2 労働者に対する指導または監督の方法に関すること
  • 3 前2号に掲げるもののほか、労働災害を防止するため必要な事項で、厚生労働省令で定めるもの

作業場の業種が政令で定めたものに該当するときは、経営者は、新任職長等に対して作業方法の決定、労働者の配置、労働者への指導・監督の方法、その他厚生労働省令で定める内容の安全衛生教育を行うことが義務付けられています。

〇第60条の2第1項(危険有害業務に従事している者に対する安全衛生教育)

事業者は、前2条に定めるもののほか、その事業場における安全衛生の水準の向上を図るため、危険または有害な業務に現に就いている者に対し、その従事する業務に関する安全または衛生のための教育を行うように努めなければならない

経営者は、危険有害業務に従事している者に対して、安全衛生教育を行うように努めなければならないとの規定です。

以上みてきたように、労働安全衛生法では、労働災害を防止するために労働安全衛生教育を徹底するよう厳しく規定されています。

ただし、この中には、具体的に安全大会について定められた規定は見当たりません。
このことから、安全大会の開催は労働安全衛生教育の一環ではあるものの、労働安全衛生法上の義務とはなっていないことがわかります。

2-2 建設現場安全管理指針と安全大会

安全大会の開催が労働安全衛生法上の義務ではないとすると、企業にとって開催する・しないは、まったくの自由なのでしょうか。

この問題を解くには、国や行政庁がどのように考えているかが重要となります。
国が定めた建設現場の安全管理に関する指針として、「元方事業者による建設現場安全管理指針」(平成7年4月21日労働省基発第267号の2)があります。

その建設現場安全管理指針では、元方事業者は、請負人に示す見積条件に労働災害防止に関する事項を明示するなどにより、労働災害防止措置の範囲を明確にするとともに、請負契約において、労働災害防止対策の実施者およびそれに要する経費の負担者を明確にするよう記載されています。

また、元方事業者は、労働災害防止に必要な経費のうち請負人が負担する経費は、請負契約書に添付する請負代金内訳書等に明示するよう記載されています。

そして、この請負契約において実施者および経費の負担者を明示する労働災害防止対策として、「元方事業者が主催する安全大会等への参加」が例示されています。さらに、請負代金内訳書に明示する経費として、「元方事業者が主催する安全大会等に関係請負人が労働者を参加させるための費用」も例示されているのです。

【元方事業者による建設現場安全管理指針】

元方事業者による建設現場安全管理指針

これは、従来から建設業における元方事業者と請負事業者の間で、労働災害防止対策の実施者や経費の負担者が不明確になりやすいとの問題があったことから、指針としてまとめられたものです。

この建設現場安全管理指針の中に、安全大会の実施者や経費の負担者を明確にするよう記載されていることから、国は安全大会について労働災害防止対策の一環として想定していることが伺えます。

すなわち、国は、安全大会の開催は労働安全衛生法上の義務ではないが、労働災害防止対策の中の代表的なものとして想定していることになります。

2-3 安全大会は労働安全衛生教育の一環

安全大会は労働安全衛生教育の一環

従来から、安全大会は労働安全衛生教育の一環として実施されてきました。
安全大会が労働安全衛生教育の一環であるという根拠は、労働安全衛生法には明記されていません。
しかし、国は、安全大会が主要な労働安全衛生教育の一つであることを別の個所で明示しています。

厚生労働省東京労働局のサイトでは、事業主向け各種情報の中で、労働安全衛生教育の重要性について広報しています。そこでは、労働者に対する安全衛生教育や訓練には、法令上実施することが義務付けられているものと、個々の事業場が独自の判断で実施しているものがあることが説明されています。

そして、安全衛生教育は、それぞれの事業場の実態に即してどのような対象者に必要なのかを十分に検討した上で教育・訓練計画を立て、これに基づき実施していくことが重要であるとしています。

その上で、労働安全衛生教育を次のように区分しています。

労働安全衛生教育を次のように区分

  • ①労働安全衛生法に基づく教育等
  • ②事業場が行う自主的な教育、訓練等

それぞれの内容は、以下のように示されていますが、②の事業場が行う自主的な教育、訓練等の中に、「安全衛生大会の実施」が明記されているのです。

【厚生労働省東京労働局による労働安全衛生教育の区分】

労働安全衛生法に基づく教育等 事業場が行う自主的な教育、訓練等
1 雇い入時の安全衛生教育
(法第59条第1項)
2 作業変更時の安全衛生教育
(法第59条第2項)
3 職務教育(法第60条)
4 免許、技能講習
(法第60条1項、施行令第20条)
5 特別教育
(法第59条第3項、労働安全衛生規則第36条)
6 安全衛生教育および指針
(法第60条の2)
7 能力向上訓練(法第19条の2)
8 健康教育等(法第69条)
9 労働災害防止業務従事者講習
(法第99条の2)
(事業場内で実施するもの)
1 安全衛生講習会の実施
2 安全衛生大会の実施
3 消火訓練、避難訓練(法令のものを除く)等の実施
4 OJTの実施
5 安全朝礼等の実施
6 TBK、KY活動等の実施
7 管理監督者による指導
8 安全衛生パトロール時等の指導
9 災害発生事例および再発防止対策の周知
10 ヒヤリ・ハット事例および安全衛生対策の周知
(事業場外で実施するもの)
1 労働基準監督署等が開催する講習会等への参加
2 各安全衛生関係団体等が開催する講習会等への参加
3 発注者、元請等が開催する講習会への参加

上の表を見てわかるように、厚生労働省では、安全大会は「事業場が行う自主的な教育、訓練等」で「事業場内で実施するもの」に区分しています。

実際には、参加人数の関係で、事業場内ではなく外部の会場を借り上げて実施している企業も多くみられますが、安全大会は事業場内で実施するOJTなどと同じ区分になっているのです。

厚生労働省によると、過去の労働災害を分析したところ、危険性や有害性に関する知識や対応できる技能があれば、事故を未然に防止できたケースが多数認められたとのことです。
そこで、危険性や有害性に関する知識や対応できる技能を労働者に身に付けてもらうためには、機械や設備を安全な状態で使用することに加えて、労働者に対する適切な教育の実施が非常に重要であるとされています。

上でみたように、労働安全衛生教育には、法令上実施を義務付けられているものと、各企業が自主的な判断で実施しているものがあります。安全大会は、労働安全衛生法上実施を義務付けられてはいないものの、各企業がそれぞれ独自の判断で開催しているのです。

2-4 安全大会は事業場が自主的に行う教育

安全大会の開催は、労働安全衛生法上明確な義務として明示されていません。しかし、これまでみてきたように、国が定めた「元方事業者による建設現場安全管理指針」の中で、安全大会の実施者や経費の負担者を明確にする旨が記載されていることからも、国は安全大会を重要な労働災害防止対策として想定していることがわかります。

また、厚生労働省東京労働局のサイトでは、安全大会について、「事業場が行う自主的な教育、訓練等」として労働安全衛生教育の中に位置付けています。

これらのことから、安全大会の開催は労働安全衛生法上の義務ではないものの、主要な労働災害防止対策であると同時に、各企業や事業所が自主的に行うことが推奨される労働安全衛生教育でもあるのです。

3 安全大会の意義と必要性

安全大会の開催にどのような意義や必要性があるかについては、大きく区分すると以下のようになります。

  • ①建設労働者に対する注意喚起の機会となる
  • ②労働安全衛生意識を醸成することができる
  • ③対外的にアピールができる

3-1 注意喚起の機会

注意喚起の機会

建設業における労働安全衛生を徹底していくためには、労働安全衛生教育の一層の充実を図ることが重要です。そして、安全大会は、この労働安全衛生教育の一環として実施される重要な行事であるとの位置付けがあります。

しかし、労働安全衛生教育は、安全大会の開催だけでなく、建設労働者に対する各種の研修や職場内教育・啓発などが広く含まれます。また、安全大会の開催は、労働安全衛生法上の義務ではなく、各企業が自主的に取り組むべきものです。

これらのことから、安全大会を開催しなくても、他の研修や職場内教育・啓発などで労働安全衛生教育の充実を図ることが可能ではないか、との疑問が生じるかもしれません。

しかし、安全大会には、他の研修や職場内教育にはない大きな特徴があります。それは、自社および関係企業を含めた労働者が一堂に会することです。日頃、建設現場で働く労働者が、特定の会場に集まって同じテーマについて考え、問題意識を共有する機会はあまり多くありません。

安全大会は、講話や講演、体験談などを聴講することによる研修効果に加え、自社および関係企業を含めた労働者が一堂に会した上で、労働安全衛生のスローガンを掲げて注意喚起を行う絶好の機会となっているのです。

3-2 労働安全衛生意識の醸成

安全大会は、自社および関係企業を含めた労働者が一堂に会して、建設工事を行う際の注意を喚起する重要な役割を持っています。それと併せて、集まった参加者が労働安全衛生に関するテーマや問題意識を共有することで、共通する意識や機運が生まれます。

これは、安全大会と同じ内容を職場で個別に視聴しても、本物の安全大会のように参加者間の共通意識や気運の醸成効果を得ることは難しく、参加者が同じ日時に一堂に参集することによって初めて達成できる効果なのです。

ただし、参加者が同じ日時に顔を合わせることができるオンラインによるライブ配信式の安全大会であれば、イベント式でなくても参加者間での共通意識や気運を醸成する一定の効果はあります。

3-3 対外的なアピール

特定の会場を借り上げ、企業内や関係企業の労働者が一堂に会する安全大会は、企業にとって絶好のアピールの機会になります。安全大会を開催することは、その企業が労働安全衛生に対する重要性を認識し、労働災害の防止に力を入れていることを表しています。そのような労働安全衛生に対する取り組みを内外に示すことは、企業評価にも大きく影響してきます。

安全大会は、その開催を通じて、取引先や関係会社、一般の消費者などに対して自社の取組みを積極的にアピールすることができる機会でもあるのです。また、それと同時に、自社の社員・従業員に対しても、会社側の安全衛生意識の高さや取組みの充実度を示すことができるのです。

4 コロナ禍における安全大会

2020年初頭から新型コロナウィルスの感染拡大が続いており、各種のイベントや行事のスムーズな開催が困難になっています。建設業における安全大会の開催も例外ではなく、2020年の大会は、コロナ感染の影響を大きく受けました。

企業によっては、安全大会をオンライン形式に切り替えて実施したところもありますが、今後の安全大会を円滑に開催するためには、このような先行事例が良い参考となるでしょう。

4-1 2020年の状況

2020年の状況

安全大会は、労働災害防止対策や労働安全衛生教育の一環として、非常に重要な役割を担っています。従来は、大人数を収容できる会場を予約し、自社および関係会社の社員・労働者が参集してイベント形式で実施されてきました。

しかし、2020年は新型コロナウィルスの感染拡大により、大規模なイベントが自粛や中止に追い込まれました。

そのような影響から、建設業界においても安全大会の開催を中止した企業が多くみられ、開催を断念した企業の中には、大手のゼネコンも複数社ありました。
一方で、3密を避けるために、オンライン形式で安全大会を開催した企業も現れています

〇オンライン形式で安全大会を開催した例

【岩堀建設工業株式会社 徳栄会 安全大会 参照:岩堀建設工業公式サイト】
岩堀建設工業株式会社は川越市に本社がある建設会社で、建築・土木工事、不動産、企画開発、コンサルティングなどの事業を行っています。

安全大会は、初めての試みでしたがライブ配信式で実施し、150人の参加があったとのことです。

〇開催日時:2020年7月10日
〇2020年度安全スローガン
「ワンチームみんなで目指そうゼロ災害」
〇内容
①挨拶
②表彰
作業所表彰
協力業者表彰
職長表彰
④特別講演
招待会社から「予防と消毒、コロナウィルスについて」の講演
④安全宣言

【三和建設株式会社 三和建設協力会 安全大会 参照:三和建設公式サイト】
三和建設株式会社は大阪市に本社がある建設会社で、建設工事・開発・環境整備をはじめ、不動産賃貸・売買・保守・管理などを手がけている会社です。

2020年の安全大会は一旦中止の判断を行ったものの、最終的にライブ配信式で実施し、200人以上の参加があったそうです。従来は、東西の各会場において別日程で実施していましたが、オンラインで開催することにより、全員が同時に実施することができたとのことです。

〇開催日時:2020年6月1日
〇2020年度安全宣言
「私たちは具体的な事前計画と効果的な危険予知を実施するとともに
指差呼称の重要性を深く理解し実行することで無事故無災害を達成します」
〇内容
①挨拶
②2019年の安全表彰
③東西の協力会活動報告
④2020年の感染症対策・熱中症対策の報告
⑤安全宣言

4-2 コロナ禍における安全大会

新型コロナウィルスの感染拡大が収束するまでの間は、大人数が一堂に会するイベント形式の安全大会は開催が難しいことも予想されます。しかし、安全大会は、労働災害防止の観点に加え労働安全衛生教育の一環としても、毎年開催すべき重要な行事です。

今後、この重要な行事をいかにして開催するかが、建設業界の課題となっています。そのため、今注目されているのがオンライン形式による安全大会の開催です。オンライン形式による安全大会は、従来のように参加者が特定の会場に参集して行うのではなく、オンライン回線を通じて開催する大会です。

オンライン形式で安全大会を開催できれば、以下のようなメリットが見込めます。

オンライン形式のメリット

①大人数が一堂に会することによる3密状態を解決できる

イベント形式の安全大会は、自社および関係会社の社員・労働者が1会場に参集するため、感染防止の視点から好ましくありません。
オンライン形式では、パソコンやスマホが1台あれば、自宅や職場に居ながら安全大会に参加することが可能となります。

②会場まで移動する手間や交通費がかからない

イベント形式では、安全大会の会場まで移動する時間や交通費がかかります。オンライン形式であれば、自宅か職場から参加できるため、会場まで移動する手間や交通費がかかりません。オンライン形式の安全大会は、参加者の負担を軽減してくれるのです。

③会場費用や講師の旅費がかからない

イベント形式の安全大会は、会場使用料がかかります。安全大会は各社ともに参加者が大人数であるため、一定以上の規模の会場を使用する必要があり、会場使用料もそれなりにかかります。

また、安全大会で講演を依頼している講師には、会場までの交通費を支給する必要があります。オンライン形式にすることで、会場使用料や講師旅費がかからず、企業の経費節減に役立ちます。

④内容を後日配信することができる

イベント形式の安全大会でも、その内容を録画して後日配信することが可能です。しかし、イベント形式の大会は、画面で視聴することが前提となっていないため、後で録画を見てもあまりわかりやすくありません。

一方、オンライン形式の大会は、画面で視聴することを前提に配信内容が組み立てられているため、後日見る場合にわかりやすいメリットがあります。

このように、メリットが多いオンライン形式の安全大会ですが、逆にデメリットがないわけではありません。

オンライン形式のデメリット

①モチベーションが上がり難い

安全大会は、自社および関係企業を含めた労働者が一堂に会した上で、労働安全衛生のスローガンを掲げて注意喚起を行う絶好の機会となっています。また、会場に集まった労働者が、労働安全衛生に関するテーマや問題意識を共有することで、共通する意識や気運が生まれます。

一方、オンライン形式の安全大会でも、確かに個人レベルでは、労働安全衛生の注意喚起や問題意識を持つことが可能です。

しかし、参加者が1か所に集まらないため、参集者全員による集団意識の醸成や共有という面からみると、モチベーションが上がり難いとの懸念があります。

②パソコンやスマホがないと自宅から参加できない

安全大会に参加する人たちすべてが、個人的にパソコンやスマホを持っているとは限りません。オンライン形式では、パソコン・スマホを持っていない場合は自宅から参加ができず、職場などに出向く必要があります。

③指定時刻に参加する必要がある

ライブ配信式の安全大会はリアルタイムで参加することができる反面、参加者は指定された開催時刻にパソコンやスマホを開いて参加する必要があります。

なお、オンライン形式でイベントを行う場合には、ライブ配信式とオンデマンド配信式があります。

オンライン形式の種類

①ライブ配信式

ライブ配信式は、イベントの内容をリアルタイムで配信する方式です。リアルタイム配信であるため、参加者側が発言や質問を行い主催者側が答えるなどのコミュニケーションが可能です。また、参加者は、特定の開始時刻に参加することが求められます。

このライブ配信式は、運用方法によって、さらに次のような方式に分けることができます。

〇主催者・講師から個別の参加者に配信する方式
主催者、講師、参加者すべてをオンラインで繋ぎ、内容をライブ配信する方式です。
会場はまったく使用しないため感染予防や経費節減ができ、参加者も自宅から参加ができます。

〇主催者・講師から会場の参加者に配信する方式
参加者が会場(1~複数)に集まり、その会場に向けて主催者・講師がライブ配信する方式です。参加者が複数の会場から参加することができるため、安全大会に参加する関係企業が自社の会議室などから視聴できるメリットがあります。

〇イベント形式とライブ配信を併用する方式
従来と同じように特定の会場に参加者を集めますが、感染対策のために参加人数を減らして実施します。
会場に入れなかった参加者には、行事内容をライブ配信します。

②オンデマンド配信式

オンデマンド配信式は、イベントの内容を録画・編集して配信する方式です。録画・編集したものを何度でも見返すことができるため、非常に便利です。ただし、ライブ配信式のように、リアルタイムで双方向のコミュニケーションをとることはできません。

この配信の方式については、安全大会を実施する各社の実情に応じて、最適な方式を選択するのがよいのではないでしょうか。

5 まとめ

建設業の安全大会は、建設現場で働く労働者を災害から守るため、労働者の安全衛生にかかる知識を深め、その意識作りを行うために開く行事です。

この安全大会は、労働安全衛生の中でどのような位置付けがされているか、ここで整理してみましょう。

①労働安全衛生法には、労働安全衛生教育を行うことが義務付けられている

業務に従事する労働者の安全や衛生を守るための労働安全衛生法では、事業者が労働者に対して、様々な形で労働安全衛生教育を行うことが義務付けられています。

②安全大会の開催は、労働安全衛生教育の一環として位置付けられている

このことは、厚生労働省東京労働局のサイトで、安全大会が「事業場が行う自主的な教育、訓練等」で「事業場内で実施するもの」に区分されていることからも明らかです。
また、建設業界では従来から、安全大会を労働安全衛生教育の一環として開催してきた経緯もあります。

③労働安全衛生法では、安全大会の開催義務は具体的に定められていない

労働安全衛生法では、労働安全衛生教育を行うことは義務付けられているが、安全大会の開催という文言は記載されていません。

ここまでのことをまとめると、労働安全衛生法では安全大会の開催義務は規定されていないが、各企業が自主的に行う労働安全衛生教育として位置づけられているということになります。
そこで、安全大会の開催が各企業の自主性に任せられているのであれば、実施する・しないは各企業の自由裁量に委ねられているかという問題が生じてきます。

これについては、④国が定めた「元方事業者による建設現場安全管理指針」で、安全大会は労働災害防止対策の一環として想定されている同指針では、請負契約で実施者および経費の負担者を明示する労働災害防止対策として、「元方事業者が主催する安全大会等への参加」が例示されています。

また、請負代金内訳書に明示する経費として、「元方事業者が主催する安全大会等に関係請負人が労働者を参加させるための費用」が例示されています。

このように、請負契約で、実施者および経費の負担者を明示する労働災害防止対策として安全大会への参加が記載されていることは、国が安全大会を労働災害防止対策の一環として想定していることになります。

以上のことを総合的に勘案すると、各企業にとって安全大会の開催は、労働安全衛生法上の義務ではないが、各企業が自主的に取り組むべき労働安全衛生教育であると同時に、国が想定する労働災害防止対策でもあるということになります。すなわち、安全大会は、各企業がその開催を強制されるものではなく、自主的に開催するよう努力すべきものといえます。

近年のコロナ禍により、2020年は安全大会を中止せざるを得なかった企業もありました。
また、2021年に入っても、変異型ウィルスの感染拡大もあり、予断を許さない状況が続いています。しかし、建設業界は、他の業界に比べ労働災害事故の発生する危険性が高い業種です。そして、安全大会は、これまでみてきたように、労働災害防止対策や労働安全衛生教育の一環として重要な役割を担っています。

その重要性を鑑みれば、2021年は、オンライン形式の導入や少人数で実施時期を複数回に分けるなどの取組みを進め、各企業それぞれに工夫して安全大会が開催されることが大切です。

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