建設会社の事業譲渡の方法・手順、注意したいポイントは?
少子高齢化は建設業でも深刻化しており、経営者の跡継ぎ不足も大きな課題です。建設業の経営者が建設業をやめる、もしくは縮小・整理する機会は今後も増えることが予想される中、建設業を止めるもしくは縮小・整理する場合、事業を法人含む第3者へ譲り渡す事業譲渡も選択肢のひとつです。今回の記事では、建設会社における事業譲渡の方法や手順、注意したいポイントなどを解説するので、参考にしてみてください。
目次
1 事業譲渡とは
2022年の後継者がいないことによる倒産=経営者難倒産は422件ありました。これは2013年から経営者難倒産の件数を調べてから初の400件を超えています。また、前年対比10.7%増加で、2020年から3年連続で増加しています(東京商工リサーチ『2022年は過去最高の422件、初の400件超〜「後継者難」倒産の状況〜』)。
2022年の倒産件数は6,799件ですので、倒産全体の約6.2%が経営者難による倒産になります(帝国データバンク『全国企業倒産集計2022年度』)。建設業においても、同じく2022年の年間で91件の経営者難倒産がありました。
経営者難倒産が続く背景には、日本の経営者の高年齢化が進んでいると言う背景があります。2022年以降は団塊の世代が後期高齢者となっていくため、事業継承の課題が深刻化する“2025年問題”にも注目が集まります。
経営者の高齢化が進めば、自然と経営者の引退が増えていきます。この経営者の引退の際に後継者が自社にいないケースが経営者難倒産になります。また、倒産しない場合でも休廃業や解散などの選択もあります。
建設業においても高齢化は進んでおり、2022年の社長の平均年齢は63.02歳となっています。また、60代以上の社長の構成比が60%を超えており、70代以上でも33.3%となっています(東京商工リサーチ『社長の平均年齢 過去最高の63.02歳〜2022年「全国社長の年齢」調査〜』)。
どんな経営者も人間である以上、歳をとり経営を退く時が来ます。その時に、廃業や解散ではなく事業継続をする方法の1つが事業継承になります。
1−1 建設業の事業譲渡
事業譲渡とは、事業の全てもしくは一部を他の事業者に譲り渡すことを言います。事業譲渡は事業を譲り渡す「譲渡人」と譲り受ける「譲受人」が発生します。
⚫︎建設業の事業譲渡
建設業の事業譲渡においては、建設事業を継続するために必要な建設業許可や技術や人材やノウハウなどの譲渡を受けることになります。この中でも建設業の事業継続においては、建設業許可の認可が必須です。
なお、建設業許可を引き継ぐということは、譲渡人である建設事業者に対する経営事項審査の結果や過去の行政処分についても地位を引き継ぐことになります。
建設業の事業譲渡の制度は、令和2年10月1日に新設されました。改正された新制度では、事前の許可を受けることで建設業の事業における空白期間を作ることなく譲渡ができるようになりました。
それまでは、事業譲渡を受けた後に建設業許可の情報更新が必要となっていました。そのため、建設業許可の情報更新期間中は事業の継続ができないため、事業譲渡の支障となっていました。
建設業の事業譲渡時に事業の継続を行うためには、建設業許可の事前許可が必要になります。事前許可に置いて必要になるのは、事業譲受人である事業者が建設業許可の要件を備えていなければなりません。
1−2 廃業や株式譲渡との違い
建設業の経営者が高齢となり、自らが経営者として今まで通りの経営ができなくなる場合、大きく以下のケースに方向性は分けられます。
- ①会社や事業をやめる
- ②会社や事業を人に渡す
⚫︎会社や事業をやめる
経営者の高齢化や経営効率の改善の必要から、会社をやめることや事業をやめることを決める場合があります。
会社をやめることや個人事業主が事業を辞めることを廃業と言います。廃業には自主的に事業をやめる「自主廃業」と、債務超過や資金繰りがうまくいかずに意思とは異なる形で事業を辞めざるをえない状況(「倒産」や「破産」など)の2つのパターンがあります。
廃業に近い言葉で、『解散』があります。解散は事業を辞めた法人がその法人格を消滅させるために行う清算手続きを実施したことを言います。
一方で、複数事業を行っている法人などで一部の事業を廃止する場合もあります。これは、廃業ではなく事業の廃止と言います。事業の廃止を選択する経緯には、事業を継続しても収益が出ない場合や事業を継続することができなくなってしまった場合などがあります。
会社を廃業するにせよ、会社を存続させながら建設事業をやめるにせよ、いずれの場合でも建設業を行わなくなる場合、建設業の廃業届が必要になります。
⚫︎会社や事業を人に渡す
現在の経営者が会社や事業からは手を引くが、会社が存続することや事業を継続することも選択できます。その方法が『株式譲渡』や『事業譲渡』になります。
株式譲渡は、売り手(譲渡人)の保有株式を買い手(譲受人)に売却することを言います。株式譲渡をすることで、株式を譲渡された法人の所有者が変わります。
株式譲渡を行うときの契約が「株式譲渡契約」になります。株式譲渡契約は売り手と買い手が合意することで効力が発生します。株式譲渡において譲渡される株式は、発行済み株式全てを対象とする場合や一部の場合もあります。
全部の株式を売却するケースでは、株式を保有する者がその法人の所有者になるので実質的に経営する権利(経営権)が売り手から買い手へ移ることになります。
⚫︎株式譲渡と事業譲渡の違い
株式譲渡と事業譲渡は混同されやすい手法になります。事業譲渡の譲渡対象は「事業」になります。事業を譲渡する場合には、株式の譲渡は行われません。事業譲渡では譲渡する対象を選ぶことができ、債権や債務を引き継がない形にすることもできます。また、複数の事業を行っている場合には、譲渡する対象に選定した事業のみを譲渡することができます。
一方で、株式譲渡において譲渡の対象となるのは株式であり、会社の保有する権利になります。100%の株式を譲渡する場合には、債務も含めて会社の運営に対する責任を負うことになります。(ただし、株主は有限責任になるため、必ずしも個人で債務を保証する必要はありません)
株式譲渡においては、譲渡する株式数や譲渡された側の保有株式数によってその株式会社への意思決定への影響力が変わってきます。
一方で、株式譲渡と事業譲渡を混同する要因でもありますが、2つの譲渡の重複している部分もあります。最も重要な重複している部分が、『事業』が継続する点にあります。
譲渡された事業の将来的なあり方は譲渡を受ける側の経営方針によって大きく変わりますが、譲渡を受けるタイミングにおいて事業は継続できる状態で引き渡しされるのが一般的です。
また、事業が継続しながら経営者などが変わるため、従業員への説明や許認可の取り扱いを留意しなければいけない点も株式譲渡と事業譲渡の重複する点になります。
1−3 事業譲渡と株式譲渡のメリット
会社の経営方針や事業の整理をしようとする時に、前述のようにやり方は複数あります。状況に応じた選択をするためにも、それぞれのメリットとデメリットを理解しておく必要があります。
⚫︎建設業が事業譲渡や株式譲渡を行うメリット
建設業が事業譲渡を選択するメリットは、事業を継続しながら渡したい部分だけを切り取って譲渡のやり取りができる点に集約します。そのため、譲渡価格が調整しやすく譲渡人と譲受人の折り合いがつけやすいというメリットがあります。
<事業譲渡のメリット>
- ①集中と選択ができる
- ②事業の価値が高められる
- ③事業継続をしながら法人や債務の整理がしやすい
⚫︎選択と集中ができる
経営では、限られた経営資源をいかに有効に使うかを考えることは重要です。建設業界に限らず、経営者の高齢化が進むことで経営者が経営に使える時間が有限であることが明確になります。そのため、経営を続ける場合でも継続事業と撤退事業を分けることで経営する範囲を縮小することで経営資源の集中ができます。
また、一般的には不採算事業を事業譲渡を通じて切り離すことによって経営資源の集中を行うことも多くあります。不採算事業とは、経営規模が小さいなどの理由から赤字の状態の事業などを言います。不採算事業を事業譲渡によって切り離すことで資本などの資源を採算事業に振り分け直すことができます。
事業の撤退や廃業を選択してしまうと、従業員や顧客や取引先などに迷惑をかけるケースが多くなってしまいます。そのため、廃業を選択にしくいという面があります。
事業譲渡では、事業継続が前提です。そのため、従業員には今までと同じように働く機会を提供することも可能です。また、顧客や取引先も同様に事業譲渡後に取引を継続することを選択できます。
⚫︎事業の価値が高められる
事業譲渡となる事業で利益が出ない場合でも譲渡先で利益が出るケースもあります。例えば、1つの建設業種だけを孫請として1つの業者のみから仕事を受けていた事業があるとします。この時の課題は、発注先が1社に限られていて、その1社からの発注が常に収益性が低いことでした。複数の建設業種を持つ建設業者のもとに譲渡された事業譲渡後は、複数の発注先を確保して収益性の高い受注を確保することができるようになったケースです。
また、複数の事業を行う事業者のもとに事業譲渡されることで、経営や営業など工事以外の間接コストを下げることで事業収益性が高まるケースや関連工事を同一事業者内で実施できるようにすることで受注数と受注の利益率を高くすることに成功するケースなどがあります。
近年の経営者の高齢化に伴う後継者不足などは、もともと事業の価値が高いものの後継者がいないという点で継続性が低くなり事業価値が下がっている場合などは後継者が見つかる時点でテコ入れなども行わずに事業価値が高くなるケースです。
⚫︎事業継続をしながら法人や債務の整理がしやすい
事業を行っている場合には、その経営に必要な資金を借入などによって賄っているなどの負債がある場合があります。また、事務所や営業所などの施設の土地や建物を購入したなどの資産がある場合があります。
法人や事業を終了する場合でも、このような資産や負債を処理する必要があります。事業を単純にやめてしまうと譲渡収益などは入ってきません。譲渡収益とは、事業を継続することで得られる将来収入を現在の価値に置き直して譲渡対価として支払う金銭です。譲渡収益を使って負債を減らすこともできます。
また、事業を継続しながら負債や資産を整理していくことも可能ですが、事業を継続していくことが優先されて整理が進んでいかないというケースも多くあります。
事業譲渡を行えば、事業を手放せるために事業継続にかける手間はなくなります。事業を継続するためにかけていた手間を整理に割り振ることで計画的な資産や債務の整理を進めることができます。
⚫︎株式譲渡のメリット
事業譲渡と同じく事業を継続しながら経営への影響や関与をゼロないしもしくは小さくできるのが株式譲渡です。株式譲渡については事業譲渡と同一のメリットと異なるメリットがあるため、事業譲渡を検討する時に比較検討することが一般的です。
<株式譲渡のメリット>
- ①事後処理を含めた手続きが簡単になる
- ②法人の関わり方を決められる
⚫︎事後処理を含めた手続きが簡単になる
株式譲渡は、包括的に会社の経営を譲り渡す際に活用できます。そのため、自身の持っている株式を全て譲渡すると法人が所有する資産も負債も譲り渡すことができます。
そのため、法人の解散手続きなどを実施する必要がなくなります。株式譲渡の譲受先が今後も法人や後継者の問題を抱えていない先を選ぶことによって法人は継続的に存続することができます。
⚫︎法人の関わり方を決められる
株式譲渡においては、株式を譲渡する割合を決めることができます。そのため、譲渡人と譲受人の間で協議して、株式の過半数を所有し続けることもできます。
譲渡する株式数や譲渡人が持ち続ける株式数によって法人の所有者として影響力や関わり方を決定できます。将来的に株式を100%手放す場合においても、スムーズな法人や事業運営のために最初は過半数を超えない株式譲渡を行うなどの方法もあります。
重要なことは、株式譲渡において譲渡人がどのように関わりたいかと譲受人が譲渡人に対してどのように関わって欲しいのかのそれぞれの想いを合致させることです。
法人の関わり方を決められるという株式譲渡のメリットは譲渡人のみの想いで関わり方を決めると株式譲渡によって新しい株主が経営に参画して良い変革や変化をもたらすことを阻害する可能性がある点に注意が必要です。
2 建設業の事業譲渡のやり方
建設業者が事業譲渡を行う上で注意すべきは、建設業許可の事前申請になります。事業譲渡の際に事前申請を適切に実施しておくことで事業の中断する必要がありません。
事業の中断は、短期的に大きく営業活動や利益に影響しないという見方もあります。一方で、取引先やお客様からの評判を下げてしまい、営業再開後の評判の悪化などにつながる恐れがあります。そのため、出来なら事前申請を適切に実施して事業譲渡を行った後の新しい事業展開を最初から営業活動ができるように進めておくことをお勧めします。
建設業の事業譲渡においては、事業譲渡の方法と建設業許可の事前申請の2つを同時に進めていくことが必要です。
2−1 事業譲渡の流れ
事業譲渡においては、一般的には事業譲渡日をいつにするかということが決められます。それは、譲渡人と譲受人の双方の事情があるため、事業譲渡日までに事業譲渡を完了させる期限やタスク管理が求められます。
そのため、事業譲渡を実施する際には必要な手続きを把握して、スケジュールやタスク管理をしていかなければなりません。
<事業譲渡の大枠の流れ>
- ①事業譲渡方針(対象事業/価格/時期など)の合意
- ②事業譲渡の取締役会決議
- ③株主総会の特別決議
- ④譲渡先との譲渡契約締結
- ⑤移転の手続き
⚫︎事業譲渡方針(対象事業/価格/時期など)の合意
事業譲渡の最初は、譲受人を探すことからになります。建設業の事業譲渡を受けることを検討している事業者を探す方法は複数あります。知り合いの建設業者などが検討しているケースや、事業譲渡の専門家などに相談して譲渡を受けることを検討している事業者を見つけてもらうケースなどもあります。
なお、事業譲渡やM&Aの専門家やアドバイザーに相談を行うことは事業譲渡においては非常に有効です。事業譲渡などを多く手がけたことがある事業者はそもそも少なく、知識が不足していることからせっかく譲渡先候補が見つかってもなかなか話が進まないケースや譲渡価格が適正ではなくなってしまうケースなども発生します。
これらの専門的な知識がないことによって発生するリスクや不備を解消するために、事情譲渡の専門家などを活用することを推奨します。アドバイスを求められるのは、その他に銀行や士業などもいます。
事業譲渡方針は、譲渡人と譲受人の双方で合意します。合意をする前段階において、その価格や条件面での交渉や資産や事業自体の価値を査定する期間が必要です。
譲渡内容を先に決定して、その譲渡内容の価値を査定していきます。この価値の査定においても専門家がいた方が円滑かつ適正な価格で合意できることが一般的です。
⚫︎事業譲渡の取締役会決議/株主総会の特別決議
譲渡内容や価格が決定したのちに取締役会の決議が必要になります。事業譲渡の決議は取締役の過半数が決議に出席し、かつ出席者の過半数の承認することで決議されます。
取締役決議が可決されたのちに、株主総会にて事業譲渡の特別決議を行います。特別決議は、議決権を行使できる株主のうち過半数が出席する株主総会において2分の3以上の賛成によって可決されます。
なお、譲渡資産が総資産のうち20%未満である場合と、譲渡先との関係が特別支配関係にある場合には株主総会の特別決議は必要ありません。
株主総会の特別決議を経たのちには、通知もしくは公告が必要です。これは、株主の利益を毀損しないために株主に認められている株式買取請求権を行使する機会を提供するためです。
事業譲渡を決議した法人では、事業譲渡の効力が発生する20日前までに株主に事業譲渡実施を通知もしくは公告しなければなりません。また、株式買取請求権を行使する株主がいた場合には、買取価格を協議の上決定しなければなりません。
なお、買取価格の協議は効力発生日から30日以内に実施することと、買取代金の支払いは効力発生日から60日以内に実施しなければいけない定めがあります。期間内に協議がまとまらない場合、裁判所への申し立てができます。申立てを行う権利は、事業譲渡を行う会社とその株主の双方にあります。
⚫︎譲渡先との譲渡契約締結
譲渡先と譲渡内容に合意し事業譲渡の特別決議が完了したのちに、譲渡人と譲受人の間で譲渡契約を締結します。契約時には、契約書と合意内容にぬけ漏れがないようにします。譲渡契約書に合意内容を記載しておくことで譲渡後のトラブルを回避することができます。
<譲渡契約の合意事項>
- ・譲渡日
- ・効力発生日と条件
- ・譲渡対象
- ・譲渡価格
- ・従業員の雇用
- ・競業避止義務
- ・表明保証
- ・補償条項
- ・商号利用
- ・個人保証の解除など
⚫︎移転の手続き
譲渡契約を締結した後は、その契約内容に沿って合意内容を実行していきます。資産や負債の移転を伴う譲渡の場合には、対象資産や負債を譲受人側に移転していきます。
事業譲渡については、譲渡する権利や義務を1つ1つ移転します。また、第3者との契約を移転する場合には名義変更などの契約の譲渡手続きも対応が必要です。雇用契約なども移転のために、同意取得の後に譲受人側と新たな雇用契約を締結します。
資産や権利などを譲受人に譲り渡す対価として、譲渡人は譲受人から譲渡代金を受け取ります。
なお、譲渡と譲渡の対価支払いはできるだけ日付が近苦することで、譲渡価値の変動に対して双方の疑義が出る可能性を小さくできます。
2−2 事前申請の流れ
建設業の事業譲渡において、他の業界と異なっていることは建設業許可の取り扱いである『事前許可』です。ここでは、事前許可のやり方を中心に解説します。
⚫︎事前申請の大枠
まずは、事前許可において重要になるのは全体の大枠でやるべきこととスケジュールを頭に入れておくことです。事前許可の手続きや処理が間に合わないと、事業譲渡のスケジュールが狂うもしくは事業譲渡のスケジュールは計画通りでも建設業の営業ができない期間が発生してしまうなどの支障が発生します。
<事前申請の大枠>
- ①窓口への事前相談
- ②申請書作成
- ③申請書提出
- ④審査/認可
- ⑤通知書受取
- ⑥後日提出必要書類の提出
事前申請は、事業譲渡を行う4カ月前から実施できます。概ね、申請書受付から約30日前後の処理期間が必要です。ただし、処理期間は目安になりますので、必ず事前に窓口で確認が必要です。
なお事前申請の受付は、事業譲渡予定日から25日前までに実施しなければなりません。前述の処理期間(目安)も受付期限の双方とも、処理機関の祝祭日や休日を含まない店には注意が必要です。
承継する建設業許可が満了を迎えようとするタイミングが30日未満であると事前申請自体が受け付けられない点にも注意が必要です。
⚫︎事前申請の必須事項
事業承継の事前申請において必須となるのは、承継される譲渡先の事業者が建設業許可を取得する『建設業許可の5要件』を満たしていることが必要です。
<建設業許可の5要件>
- ①建設業にかかる経営業務管理責任者が常勤する
- ②専任技術者が常勤できる
- ③契約履行に必要な誠実さがある
- ④財産的な基礎がある
- ⑤欠格要件に該当しない
⚫︎手順詳細
事前申請は、許可行政庁で実施します。そのため、窓口への事前相談も行政庁の窓口で実施します。
前述の窓口の相談は、事業承継から4カ月前などの制約はありません。そのため、事業承継の詳細が詰まっていくタイミングなどなるべく早いタイミングで相談をする方がその後のスケジュールを適切に確保できます。
申請に必要な書類は以下のように量があります。事前申請の申請ができるタイミングより早く作成に取り掛かれるようにすることを推奨します。
<必要書類一覧>
- ・譲渡/合併/分割認可申請書
- ・相続認可申請書
- ・役員などの一覧
- ・営業所一覧表
- ・専任技術者一覧表
- ・使用人(建設業法施行令第3条規定)の一覧表
- ・誓約書
- ・直近1年間分の工事経歴書
- ・直近3年間分の各事業年度の工事施工金額
- ・直近1期の財務諸表
- ・定款
- ・営業沿革
- ・所属建設業者団体
- ・健康保険などの加入状況がわかる資料
- ・健康保険などの加入状況及び確認資料提出についての誓約書
- ・主要取引金融機関名称
これらの他に、以下の証明書が必要です。
- ・常勤する経営管理業務責任者などの証明書と履歴書
- ・専任技術者証明書
- ・技術者要件の証明書
- ・許可申請者の生年月日と住所などの調書
- ・使用人(建設業法施行令第3条規定)の生年月日と住所などの調書
- ・出資者や株主などに関する調書
- ・法人の登記事項証明書(発行後3カ月以内)
- ・事業納税書証明書
上記の必要書類の他に承継内容がわかる確認書類や添付書類が必要です。
- ・事業譲渡契約書の写し
- ・事業譲渡を決議した株主総会議事録や無限責任社員の同意書など
これらの事前審査に必要な申請書や書類を作成/提出します。申請書を窓口に提出すると、必要申請書の不足や記入漏れなどがないかの確認を受けられます。この窓口での提出段階で、認可基準を満たしているかの確認もできます。
この窓口の提出と確認が完了すると、申請書の正本を提出します。この際に正本と副本を用意して、正本を提出して受付年月日と受付番号が記載された副本を申請者が保管します。
提出を受けた行政庁は、事前申請の審査を実施します。審査は申請書類からの審査を行い、内容から確認が必要と判断された場合には追加情報や追加確認書類などの徴収依頼や営業所調査などが実施されます。
事前申請が認可されると、通知書が送付されます。事業承継の事前申請は認可されて終わりではない点に注意が必要です。実際に事業承継を実施したのちに決められた提出期限までに書類提出が必要です。提出が求められる書類は以下になります。
<事業承継後の提出必要書類>
(承継日から2週間以内)
- ・健康保険などの加入状況
- ・健康保険などの加入に関わる確認書類(承継日から30日以内:新設分割の承継法人が必要)
- ・新設会社の登記事項証明書
- ・営業の沿革
- ・所属建設業団体
3 建設業の事業譲渡の注意したいポイント
建設業における事業譲渡の成功とどんなものかは、その事業者ごとに異なりますが、共通している成功の要素もあります。共通の成功の要素は、建設業を継続させかつ譲渡後に事業価値がそれよりも高くなることです。
建設業の事業譲渡を成功させるために、注意したいポイントを3つ紹介します。
3−1 自社の強みを事実ベースでまとめる
建設業の事業譲渡では、自社が強い技術や工事や管理能力などをまとめておくことが必要です。自社の強みをまとめておくことで、事業譲受人にも強みを理解してもらえます。
譲受人が強みを理解すれば、譲渡後の事業の在り方やビジョンがより明確になり、強みを引き継いだ事業継承ができます。
強みをまとめる際に、さらに重要になるのは事実ベースでまとめておくことです。思い込みなどの主観的なものだと相手に伝えられません。
3−2 取引先や従業員を大事にする
事業譲渡前に進行中だった工事なども引き継ぎされます。取引先の満足が変わることなく、仕事を継続できるように慎重に対処方法を事前に譲渡人と譲受人で調整しておきます。
また、従業員が変わらず働き、力を発揮できるように労働環境や雇用条件の変化に気を配らなければなりません。譲渡元の従業員には、直接話をするなど動揺しないように事業譲渡について丁寧な説明が必要です。
3−3 事業譲渡は簡単ではない
事業譲渡は、一般的な企業が繰り返し実施するものではありません。それゆえに、事業譲渡に対して十分な専門知識を持っていないことが普通です。
特に、事業譲渡の適切な譲渡対象の決定や価格決定は適切な知識がないと失敗して承継の失敗につながるケースがあります。
事業承継を成功させるためには、専門知識を有した専門家のアドバイスを受けられる状態が必要です。
4 まとめ
建設業の事業譲渡についてまとめました。建設業が事業譲渡をしようと考えた時に、事業譲渡のやらなければならないことと合わせて建設業許可の維持のための手続きが加わります。複数の申請やその準備を同時に進めていくためには、やるべきことの把握と細かいタスク管理と実施するための十分な時間が必要です。実施に不安があるケースでは外部の専門家などの協力を得ることも有効です。