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建設業と建築業の違いって何?

建設業と建築業の違いは何でしょうか。急に聞かれると、建設業界で働く方でも答えにくいかもしれません。これから建設業や建築業で働こうとする場合、求められるスキルや知識が異なるケースも出てくるため、両者の違いについてしっかりと把握しておきたいところです。今回の記事では、建設業と建築業の違い、求められる人物像、建設業界で役立つ国家資格について解説するので、ぜひ参考にしてみてください。

1 建築と建設の概要

建築業と建設業の違いは、業界の中で働く人たちからすると知っていて欲しい違いです。しかし、急に聞かれても答えられない人が多いのかもしれません。

一方で、これから建築や建設の業界で働こうとする人や、別の業界で働く人たちからすると違いを説明することが難しい違いです。一般的な話として、建設現場の話をするつもりで『建築現場』と言ってしまう会話も多くあります。

建築と建設の大きな概要として、建築は建物を作ることを意味して、建設は建築と土木を含めた建設工事全体を意味しています。

1−1 建築業とは

建築は、主に建物を建てる場合に使用します。本来、建築という単語は人々が雨や風などをしのぐ生活空間をつくることを意味していました。しかし、人々の生活が豊かになっていくにつれて、生活空間に求められるものが、単に雨や風や暑さや寒さをしのぐだけでなく“快適さ“が大きくなっていきました。このように、建物に求められるニーズが変わっていくことで建築の持つ意味も変わっています。

●「築」の意味

築の意味を国語辞典で調べると、『土や石をつき固めて土台を作る』『建物などを造る』という意味が出てきます。この『建物などを造る』という意味が、建築には含まれています。また、「新築」や「増築」や「改築」などの住宅を建てる様々な状態を表す単語に築が使用されています。

●建築業とは

建築業は、家やマンションなどの建物を実際に造る業種を言います。また、建築業にはインテリアデザインなどの建物をデザインする業種も含みます。

具体的には、大工や住宅設備に関わる技術者や建築士、インテリアデザイナーなどが建設業に含まれる仕事になっています。

●建築業の規模

前述した通り、建築業と土木業を合わせると建設業になっています。建設の中での建築と土木の建設投資(日本国内の建設活動の実績を出来高ベースの投資金額で表した建設業界の規模を表す上で利用される数値)の割合は、2010年では建築54%/土木46%となっていました(一般社団法人日本建設業連合会『建設市場の現場(2010年度版)』より)。

一方で、同じく2022年では建築65%/土木35%と建築の割合が高くなっています(国土交通省『令和4年度(2022年度)建設投資見通し』より)。

これは、2010年の建設投資が42兆円だったのに対して、2022年は67兆円まで増加しています。その中で建築業は2010年では約23兆円、2022年では約43兆円と1.87倍に増加していることがわかります。

●建築業の今後

建築業は、社会情勢に大きく影響を受ける業界と言われています。直近で言うと、東京オリンピックや新型コロナウイルス感染対策などに大きな影響を受けました。

また、建築業を含めた建設業全体の課題である業界を支える人材の高齢化と若年層の業界への転入減少による労働力不足という長期的課題を抱えています。

そんな建築業界の今後に影響を与える主たる要素は以下のようなものがあります。

<今後の建築業界へ影響がある主たる要素>

  1. ・公共工事は安定
  2. ・SDGsへの取り組み拡大
  3. ・新しい労働力や働き方の改善

●公共工事は安定

国や地方公共団体が道路や橋などの社会資本を整備することを目的として行われる工事である、公共工事の需要の大小は建築行にも大きな影響があります。

公共工事では、道路や橋といった土木に該当する工事が主で建築は割合が多くない印象があるかもしれません。実際に、前述の令和4年度建設投資見通しを見てみると、令和4年建築における投資額見通し43兆円の中で6兆円(約14%)になります。

しかし、公共工事の需要は長期的に安定している点において民間工事より社会情勢に左右されにくいという特徴があります。

東日本大震災を契機に政府が進めている国土強靭化計画は引き続き実施されており、2025年に開催が予定されている大阪万博のための建築も引き続き進められていきます

●SDGsへの取り組み拡大

SDGsは「持続可能な開発目標」を意味し、2030年までに持続可能なより良い世界を目指す国際目標になります。SDGsは17のゴールを持っており、その中では建築業にも大きく関わる事項があります。

例えば、17のゴールには「産業と技術革新の基盤をつくろう」「住み続けられるまちづくりを」「つくる責任 つかう責任」などのゴールがあります。

ゴール「産業と技術革新の基盤をつくろう」に対して建築業ができる貢献には、ICT技術の活用など資源の利用を極力減らして環境にやさしいビルや住まいを作ることが挙げられます。

ゴール「住み続けられるまちづくりを」に対して建築業ができる貢献には、誰も取り残さない持続可能なまちをデザインして、自然循環を意識してCO2やゴミの排出が減らせる都市のあり方を作り直していくことができます。

ゴール「つくる責任 つかう責任」に対して建築業ができる貢献は、リユースやリサイクルによって廃棄物の発生量を減少させることができます。具体的には、長期優良住宅認定制度に適応した建築を手がけることでアフターフォローや産業廃棄物管理の推進を通じて廃棄物の発生量を抑える取り組みを進めています

●新しい労働力は働き方の推進

建築・土木を含めた建設業界全体の課題である労働者の「高齢化」「若年層の流入減少」から人材不足に対応するために、新しい労働力の確保が急務になっています。

新しい労働力が確保できずに、高齢化した労働力がリタイヤしていけば、日本の社会インフラを支える建設業界が社会に求められる需要に対応できない事態が起こりえます。

特に、建築業では建築補修(改装や改修)の需要が年々大きくなっていることが分かります。仮に、新築需要に対応できずに補修が必要な家や学校や病院などの公共機関やビルなどが増えてしまうと、安全で快適な生活を守れない事態になりかねません

建築業の労働者不足の解決策の1つとして、外国人労働者の積極的な活用が挙げられます。政府とともに深刻な労働力不足に対応するため外国人労働者の活用増加を進めています。

建設現場で働く外国人の技能実習生は2015年から新型コロナ感染対策が広がる以前の2020年までで1万9千人から7万7千人の4倍に急増していました。

さらに、2019年から中長期的な人手不足に対応することを目的に、新しい在留資格制度である特定技能が開始されました。2023年までに特定技能による建設分野で働く外国人労働者人数目標を4万人に設定しています。

特定技能制度によって建設分野で働く外国人労働者はまだまだ多くなく、2023年の目標は捉えられない可能性が高くなっていますが、それでも政府とともに建設業・建築業は外国人労働者の受け入れを強化していく方向は変わりません

また、国内の労働力にアピールするため、新しい労働条件の確立も進めています。過去の建設・建築業界では、長時間労働や休日が他の業界に比べて少ないなど過酷と言える労働環境がありました。

また、それに加えて製造業などと比較して給与の上昇のピークアウトを迎える年齢が早く、キャリアが描きにくい業界構造がありました。

これらの労働環境や業界構造を変革するために、政府と業界が連携して進めているのが、『建設業働き方改革加速化プログラム』になります。

これに加えて、テレワークやドローンなどのIT技術を活用したDX化が進められて生産性の向上や女性労働力の活用なども進められています

官民共同で、土日休みや残業を減少させる動きとともにキャリア形成ができる環境整備を進めています。

1−2 建設業とは

建設業は、前述のとおり建築業と土木業の2つの業種を合わせた業種になります。そのため、土木業で取り扱うトンネル、橋、道路、ダム、河川整備、港整備や埋立、公園や都市開発、森や林の整備などと建築工事などを含めたすべての工事事業が建設業には含まれてきます。

農地や森や林の整備などの自然物の加工を含めて、人の暮らしをより良くするために加工を行なっていくのが建設業の共通点になります。

建設業が工事を通して提供するのは、安全と快適性になります。そのため、建設業が社会に果たす役割は大きく、かつ恒久的なニーズに根ざしていると言えます。

●建設業で働く人

建設業では、大工やとびや電気工事士などの建築業に従事する人たちと合わせて、土木作業員や塗装業や造園業などの土木業に従事している人たちがいます。

他の業種と比較して、多くの職種がある点が建設業で働く人の特徴です。もちろん、建物の販売や建設事業者を陰で支える事務員なども建設業で働く人たちになります。

●建設業の規模

建設業の規模は、前述した建設市場の見通しでは建築業と土木業の2つの事業規模を合計したものになります。土木業は2010年19兆円から2022年24兆円と1.2倍に伸びています

建築業が同期間で1.9倍に増加し、建設業としては2010年42兆円が2022年67兆円となって約1.6倍に増加しています。2010年505兆円から2022年546兆円と約1.1倍増加している日本のGDP成長率*と比較すると、建設業全体としては大きく成長を続けている市場と言えます(内閣府『国民経済計算(GDP統計)』より)。

●建築業の今後

建設業の今後について、建築業の今後は前述の通り順調に推移することが予想されています。また、建設業の中の規模で言うと概ね65%程度が建築業、35%が土木業になっています。

そのため建設業の今後は、就業労働者の課題は残るものの安定した需要が見込める建築業に引っ張られて順調に推移することが予想できます。

●土木業の今後

建設業や建築業は順当に推移していく中で、土木業の今後についても順調に推移することが見込まれています。

元々、土木業は社会インフラの整備を行う役割を担っています。社会インフラがなければ、社会生活や経済活動がままならなくなってしまうため、需要が消えにくいという点があります。

インフラを建設すると、その後には保守・メンテナンスが必要になります。この保守メンテナンスも土木業に求められる重要な仕事になります。

そのような土木業の今後へ影響を与える要素は以下の通りです。

<今後の建築業界へ影響がある主たる要素>

  1. ・大阪万博やリニア新幹線などの大型インフラ整備
  2. ・防災関連工事
  3. ・女性活躍やDXなどによる人材不足解消

●大阪万博やリニア新幹線などの大型インフラ整備

2025年開催予定の大阪万博は、「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマに海と空を感じられるか会場を、カーボンニュートラルやデジタル技術の活用など先端技術を活用して未来社会を感じされるシステムを実装する「未来社会のショーケス」を目指して作成されています。

2020年から開始された大阪市の土地造成工事から、会場内基盤やインフラ整備から協会警備施設などの工事は2024年まで続けられる予定で、開発費は建設全体として2,000億円と想定されています。

これ以外にも会場の夢洲と舞州をつなぐ世界初の浮体旋回稼働橋(夢舞大橋)の建設、舞州からの此花大橋を4車線から6車線への拡張工事、大阪メトロと地下鉄中央線を伸ばした新駅新設などの複数の関連工事もあります。

2027年開業予定のリニア中央新幹線建設関連工事の総工費は、東京ー名古屋間で5.5兆円と言われています。その後に、名古屋ー大阪が2045年開業に向けて工事が予定されています。

リニア中央新幹線は、東京と名古屋と大阪の3大都市圏が一体化して、日本のGDPの約6割をカバーする巨大経済圏を繋ぐ役割を担います。リニア中央新幹線の開業と併せて周辺の関連工事があるため、中期的な土木工事需要が見込まれています

●防災関連工事

土木工事は、災害発生時の復旧・復興においても欠くことができない業界です。過去でいえば、東日本大震災から熊本や北海道の地震、集中豪雨などによる水害や自然災害が継続しています。

今後も南海トラフ地震や首都直下型大地震などの懸念があり、国土交通省が策定した「国土強靭化基本計画」の実行を土木業が担っていきます。災害に対応するための公共インフラ整備の需要は、土木業に安定した需要をもたらします

●女性活躍やDXなどによる人材不足解消

土木業は、建築業同様に少子高齢化と女性の入職者が少ない点などから人材不足という大きな課題があります。女性活躍に向けては、平成26年に国土交通省と5つの建設業の連合会によって『もっと女性が活躍できる建設業行動計画』が策定されています。

具体的には、女性専用トイレや男女使用可能なシャワー室の整備、専門器具や工具の軽量化などに取り組んでいます

また、土木業のDX化が進められています。具体的には、工数管理やプロジェクト管理の見える化によって作業効率や安全性向上を進めています。高齢化した人材の引退によってノウハウ継承ができなくなる懸念点についても3Dデータの活用などを通してナレッジやノウハウ継承が実行されています

これらのDX技術にはクラウド・IoT・5Gなどが活用されており、現状では大手ゼネコンの活用がメインになっていますが、今後中小企業も活用が広がることで人材不足解消につながることが期待されています。

1−3 建築業と建設業の相違点

建築業と建設業の違う点といえば、建築が家屋やビルなどの建物を建てる業種であるのに対して、建設は建物とそれに付随する土地やインフラの整備や、川や海などの自然物自体の整備やそれに付随するインフラ整備など広い意味を持つ点が挙げられます。

業種で言えば、建築業と土木業の2つの業種を統合した業種が建設業になります。そのため、建設業は建築業を含んでいる部分が同一部分になります。一方で、建設業における土木業部分は建築業と異なる点になります。

●建築は土木と切り離しにくい

建築業には電気・水道・ガスの整備も含まれているため、一見すると建築業のみで建物の工事が完遂できると思う方もいます。しかし、実際には建物の建設には土地整備が必須です。

パソコンやスマホでは物理的な機器としてのハードとその機能部分を決定する触れない部分のソフトがありますが、建設業でいうと建物がハードであり土地整備がソフトに該当します。

すでにあるビルの改修や増築において土木工事を必要としない建築工事はありますが、概ね建築業が土木業と分離して単独で仕事を完遂できるものではありません

●土木は建築と切り離しも可能

逆に、土木業は建築業と切り離した工事が存在します。例えば、道路工事です。道路を造る場合には家屋は必ずしも必要とは限りません。また、トンネル開通や前述のリニア新幹線などもその工事自体には建物を造る工事は必要ありません。

トンネルやリニア開業後には、インフラ環境の変化などによって周辺地域に街や商圏ができることで家や商業施設やビルの建築需要が後からついてきます。

●建設業許可

建設業では、建設業許可が必要です。建設業を行う上では、国土交通大臣の許可もしくは都道府県知事の許可のいずれかが必要です。建設業許可が必要な工事を、許可を受けずに実施すると法律によって罰せられます

一方で、建設業の一部である建築業には許認可が必要ない工事もあります。軽微な建築業工事については建設業許可は不要です。なお、土木業はその工事の規模に関わらず、建設業許可が必要です。

建設業許可が必要ない軽微な建築工事とは以下の通りです。

  1. ・建築工事において、工事請負代金が500万円未満の工事
  2. ・建築一式工事において、工事請負代金が1,500万円未満の工事もしくは延べ面積が150㎡未満の木造住宅工事

2 求められるスキル

建築業と建設業で求められるスキルとはどんなものがあるのでしょうか。建築業と建設業のそれぞれで求められるスキルと共通で求められるスキルを紹介します。建築業や建設業でこれから働こうとする人やそれぞれの業界でスキルアップを目指していくときに役立つスキルを紹介します。

2−1 建築業で求められるスキル

建築業は、建築物を建てる業種です。そのため、建築業で働く人に必要とされるのは、建築物を利用する人になって内装やデザインなど求められる安全性や機能性などを実現できる能力になります。

また、家やビルなど建築物を建てるプロセスには、大きく『デザイン・設計』と『建てる』という2つのプロセスがあります。それぞれのプロセスにおいて求められるスキルやスキルに合った資格があります。

●具体的な資格

建築業で求められる主な資格は以下のような資格があります。

  1. ・建築士
  2. ・建築整備士
  3. ・建築施工管理技士など

●建築士

建築士とは、建築物の設計や工事管理を実施する国家資格になります。建築士には、1級と2級の2つの等級があります。1級建築士と2級建築士の違いは、設計する建物の制限の有無になります。

建築物には、家族で住む戸建てのような建物から国が主催する大規模イベント会場などその規模の大小には大きな幅があります。また、規模によって求められる構造形式や材料、考慮すべき安全性や機能性が変わってきます

1級建築士には、建築設計の制限がありません。そのため、なんでも設計するために、意匠や構造や設備など高い知識が求められます。

そのため、さらに専門的な技術が求められる『構造設計一級建築士』『設備設計一級建築士』などになる場合には、1級建築士の資格取得が必要条件になっています。

2級建築士は、戸建て住宅規模の設計・管理を対象とする資格になります。木造建築なら3階建までが基本となります。

年間85万戸の住宅工事が実施されており、家族の生活の安全性や機能性を支える2級建築士は大きな役割を担っています

●建築設備士

建築設備士は、建築設備全般の知識と技能を持って、建築士への建築設計や工事管理に関する助言を行う資格者になります。

建築設備士の資格では、建築士のように設計・工事管理はできません。しかし、近年の複雑化・高度化した建築設備と建築に対する安全意識の高まりによって、建築士に対して高度な助言が発注者からも実際の現場からも求められています。

また、建築設備資格を所有して1年以上の実務経験を積むと、一般建設業の許可要件に該当する専任技術者と主任技術者になれます。そのため建設設備士の資格のニーズが高まってます。

●建築施工管理技士

建築施工管理技士を簡単にいうと、建築現場において監督業務ができる国家資格になります。建築施工管理技士の仕事内容は、工事工程表の作成や、専門工事を行う業者に対して工事現場での指示出しを行いスムーズで安全な工事現場を実現します。

建築施工管理技士がいることで、建築工事におけるQCDSE(品質/原価/工程・工期/安全/環境)を管理することができます。

建築施工管理技士にも、1級と2級の等級があります。1級建築施工管理技士は、専任技術者になることができ、大規模な建築現場の監督をすることができます。一方で、2級建築施工管理技士は主任技術者にしかなれないものの短い実務経験などで受験資格を得ることができます

2−2 建設業で求められるスキル

建設業は、建築業と土木業を合わせた広範囲の業種になります。建設業で求められるスキルとは、前述の建築業で求められるスキルと土木業で求められるスキルを合計したスキルと言えます。そのため、ここでは主に土木業で求められるスキルを解説します。

土木業の特徴として、多くの事業は国や地方公共団体が発注者になる点や社会インフラとして安全性が何より求められる点が挙げられます。そのため、より専門的で正確な知識や技術が求められます

●具体的な資格

土木業で求められる主な資格は以下のような資格があります。

  1. ・技術士
  2. ・土木施工管理士
  3. ・建設機械施工技士
  4. ・測量士など

●技術士

技術士は、建設業で使用する科学技術分野における国家資格になります。技術士には科学技術に関して技術的な専門知識と応用能力と豊富な実務経験をベースに、建設全般や上下水道などの20の分野での監理や調査と評価などの業務をになります。

技術士試験には1次と2次の試験があり、1次試験のみに合格すると技術士補となります。

●土木施工管理士

土木施工管理士は、土木工事の現場監督を行う施工管理技士の1つです。また、建設業許可要件で求められる専任技術者や主任技術者になることができる国家資格になります。具体的な仕事としては、道路や橋の建設・舗装や河川や港湾などの建設といったあらゆる土木工事の施工計画と管理を実施します

土木施工管理士には、1級と2級があります。1級は制限なくどんな土木工事や作業工程も行うことができます

一方で、2級土木施工管理士は比較的小規模な施工管理に限定されます。また、資格が「土木」「鋼構造物塗装」「薬液注入」の3種類に分けられており、資格取得することで各種類に限定した主任技術者となれる点が異なります。

●建設機械施工技士

建設機械施工技士は、建設工事における機械施工を行う技術者の技術向上を目的とした資格です。建設機械施工技士になることで、建設業許可要件で求められる専任技術者や主任技術者になることができる国家資格になります。

具体的には、建築機械を使用した施工計画の作成と管理、工程管理、品質管理、安全管理などを実施します。建設機械施工技士は、一定規模以上の工事現場では専門建設機械の使用には設置が義務化されているため、需要がなくならない資格です。

建設機械施工技士にも、1級と2級の等級があります。1級は、各種の建設機械を取り扱った施工に関して指導や監督業務を実施できます。

2級建設機械施工技士は、1種から6種までそれぞれの機械の指導や監督業務を実施できます。種類は以下の通りになります。

  1. 1種:ブルドーザー
  2. 2種:油圧ショベル
  3. 3種:モータ・グレーダ
  4. 4種:ロード・ローダ
  5. 5種:アスファルト・フィニッシュ
  6. 6種:アースオーガ

●測量士

行う前段階で必ず測量を行うため、測量の需要は建設工事がある限り継続的に発生する専門家です。また、測量業務を行う事業者は営業所毎に測量士もしくは測量士補を設置することが義務付けられています。

測量士の具体的な仕事は、土地の位置や面積や距離などの測量を実施する仕事です。測量士の業務は、大きく「外業」と「内業」の2つに分けられます。外業は、建設現場において実際に測量する業務になります。内業は、予算管理や機器調達や測量計画や製図や測量データ分析などの内勤業務の総称になります。

また、測量計画を作成して、測量士補に外業を任せることができます。測量士と測量士補は以下のように業務上の棲み分けがなされており、視覚も異なっています。

  1. 測量士:測量に関する内業と外業の両方が実施できる
  2. 測量士補:測量に関する外業が実施できる(内業はできない)

●その他の土木業に関わる資格

土木業に関わる資格は、上記で紹介した資格以外にも取得しておくと便利な資格があります。コンクリートの劣化程度を診断できる『コンクリート診断士』やコンクリートの製造や施工技術の向上と信頼性を高めることを目的とした『コンクリート技士』があります。

また、建設現場で働く労働者の安全水準向上のために事業所の安全性指導を行う国家資格である『労働安全コンサルタント』もあります。また、土木業におけるシビルコンサルティングマネージャーとして、管理技術者や照査技術者として地質コンサルタント業務にあたる資格『RCCM』などがあります。

それでは、建築関係の資格を取得するメリットや受験資格などを以下で詳しく確認してみましょう。

3 建設業関係の資格が多い理由

建築士や土木施工管理技士、電気工事施工管理技士等、建設業では数多くの国家資格が存在します。民間資格を含めるとその数は膨大であり、建設業は専門性が求められていることがわかります。また、「国家資格」のほかに、各省庁や大臣が認定している「公的資格」、民間企業が認定する「民間資格」を含めるとその数は膨大です。建設業では、設計や土木、電気工事、配管等、幅広い作業が求められます。

建設業法により、建設業は29業種に分類されており、それぞれの業種ごとに建設業許可が必要になります。大きな施設の建設工事は、知識や実務経験を有した専任の技術者が法律上求められます。そのため、それぞれの業種に対応した資格が存在しており、結果として数多くの資格が存在しています。

4 建設業の資格を取得するメリット 

建設業の仕事には、多くの場合で資格が求められます。大きな建設工事や、国・地方自治体などの行政機関からの仕事はその傾向が強いです。そのようななか、資格をもっていれば仕事の幅が広がる上、会社からの信頼度も向上します

4-1 昇進や昇給につながる

前述しましたが、建設工事は資格が求められます。したがって、資格を持っている人の重要性は必然的に増します。したがって、資格をもっていれば、昇進や昇給などにもつながりやすいです。会社によっては、資格をとることで手当や昇給をあらかじめ確約している会社もあります。

4-2 就職や転職に強くなる

就職や転職の際にも、有資格者が求められる傾向があり、資格を持っていれば、就職活動・転職活動を優位に進めることができます。

4-3 仕事の理解が増す

資格をとるためには、たくさんの知識を習得する必要があります。この知識は、仕事をする上で必要かつ、なぜその仕事をするのか等の目的も知ることができ、仕事への理解度が向上します。

4-4 信用を獲得しやすくなる

資格があるだけで、社内や取引先からの信用も得られやすくなります。特に、難易度の高い国家資格であれば、信用度も高くなり、説得力も増します。周りからの評価が高まるため、自信にもつながります。

5 建設業で役立つ国家資格とは

建設業の国家資格は数多くあります。建設業は29業種に分かれており、それぞれ専門分野も異なります。資格は数多くありますが、自身のキャリアに即していない資格では意味がありません。まずは自身の目指すべきキャリアの方向性を決めて、自身のキャリアに合った資格を取得していくようにしましょう。

5-1 建築士(1級、2級)

建築士は住宅などの建築物の設計をする時に必要な資格です。設計の仕事をメインに考えている方は、建築士を推奨します。また、1級建築士であれば、2級建築士ではできない大規模な商業施設などの設計や工事監理もできるようになります

○1級建築士

【仕事の内容】

建築物の設計や工事管理。建築できる全ての建造物の設計をすることが可能

【受験資格】

下記のいずれかに該当すれば受験可能です。

  1. (1)大学や短大等で指定科目を履修して卒業したもの
  2. (2)二級建築士
  3. (3)建築設備士
  4. (4)国土交通大臣が上記の資格と同等と認めるもの

○2級建築士

【仕事の内容】

建築物の設計や工事管理。ほとんどの戸建て住宅の設計をすることが可能。ただし、大規模な建築物の設計はできない。

※高さが13m又は軒高9mを超えるもの、鉄筋コンクリート造等の場合は延べ面積300㎡を超えるもの、木造の場合は延べ面積500㎡を超える特殊建築物(学校、病院、映画館等)は、2級建築士で設計することは認められていません。

【受験資格】

下記のいずれかに該当すれば受験可能です。

  1. (1)大学や短大等で指定科目を履修して卒業したもの
  2. (2)二級建築士
  3. (3)建築設備士
  4. (4)7年の実務経験を有するもの

5-2 建築施工管理技士(1級、2級)

建築施工管理技士は、建築工事の施工計画や工程管理、安全管理、品質管理をするために必要な資格です。1級と2級の違いは、1級建築施工管理技士が監理技術者になれる点です。監理技術者は、請負代金が4,000万円以上の場合、必ず配置が求められるものとなり、1級建築施工管理技士は大きい工事で必要とされる資格となります。

○1級建築施工管理技士

【仕事の内容】

建築工事の施工管理。全ての建築工事で施工管理が可能

【受験資格】

学歴又は資格、そして実務経験が必要になります。学歴や資格によって、必要な実務経験が異なります。

○2級建築施工管理技士

【仕事の内容】

建築工事の施工管理。主任技術者の建築工事の施工管理をすることが可能

※2級は、資格が「建築」「躯体」「仕上げ」の3種類に分かれており、取得した種類の範囲で施工監理が可能です。3つ全ての資格を有することで全ての工事の施工管理をすることが可能です。

※監理技術者になることはできない。

【受験資格】

満17歳以上の方

※第1次検定、第2次検定を同日受ける場合は、実務経験等も必要

5-3 土木施工管理技士(1級、2級)

土木施工管理技士は、道路や上下水道、港湾といったインフラ工事の施工管理に必要な資格です。1級と2級の違いは、1級土木施工管理技士は監理技術者になれる点です。監理技術者は、請負代金が4,000万円以上の場合、必ず配置が求められるものとなり、1級土木施工管理技士は大きい工事で必要とされる資格となります。

○1級土木施工管理技士

【仕事の内容】

土木工事の施工管理。全ての土木工事で施工管理が可能

【受験資格】

学歴や資格、実務経験が必要になります。学歴や資格によって、必要な実務経験が異なります

○2級建築施工管理技士

【仕事の内容】

土木工事の施工管理。主任技術者として土木工事の施工管理をすることが可能

※2級は、資格が「土木」「薬液注入」「構造物塗装」の3種類に分かれており、取得した種類の範囲で施工監理が可能です。3つ全ての資格を有することで全ての工事の施工管理をすることが可能です。

※監理技術者になることはできない。

【受験資格】

満17以上の方

※第2次検定を受ける場合は、学歴に応じて実務経験等も必要

5-4 測量士、測量士補

測量士は、土地の面積や位置、距離などを測量する際に必要な資格です。測量士と測量士補の違いは測量計画の作成ができるかどうかです。測量士は測量計画の作成ができますし、測量士補は測量士の指示で測量の業務を行います

【仕事の内容】

土地の面積や位置、距離などの測量。測量計画の作成。

※測量計画は測量士補で作成することはできない。

【受験資格】

測量士になるには2パターンあります。

  1. (1)測量士・測量士補の試験を受験
    →誰でも受験可能です。
  2. (2)大学や短大、専門学校で測量に関する科目を履修し、かつ測量の実務経験を積んだ方
    →学歴などによって実務経験年数が違います。

5-5 電気工事施工管理技士(1級、2級)

電気工事施工管理技士は、電気工事の施工管理に必要な資格です。1級と2級の違いは、1級電気工事施工管理技士が監理技術者になれる点です。監理技術者は、請負代金が4,000万円以上の場合、必ず配置が求められるため、1級電気工事施工管理技士は大きい工事で必要とされる資格となります

○1級電気工事施工管理技士

【仕事の内容】

電気工事の施工管理。全ての電気工事で施工管理が可能

【受験資格】

学歴や資格、実務経験が必要になります。学歴や資格によって、必要な実務経験が異なります

○2級電気工事施工管理技士

【仕事の内容】

電気工事の施工管理。主任技術者として電気工事の施工管理をすることが可能

※監理技術者になることはできない。

【受験資格】

満17以上の方

5-6 電気主任技術者(第一種・第二種・第三種)

電気主任技術者は、電気設備の保安監督業務をする際に必要な資格です。第一種~第三種までありますが、電圧により取り扱うことができる工事の範囲が違います。第一種は電圧に上限がなく、全ての電気工作物の工事で保安監督業務をすることが可能です。

○第一種電気主任技術者

【仕事の内容】

電気設備の保安監督業務。全ての電気工作物の工事で保安監督業務をすることが可能です。

【受験資格】

誰でも受験可能です。

○第二種電気主任技術者

【仕事の内容】

電気設備の保安監督業務。ただし電圧が17万ボルト未満のものに限る

【受験資格】

誰でも受験可能。

○第三種電気主任技術者

【仕事の内容】

電気設備の保安監督業務。ただし、電圧が5万ボルト未満のものに限る。(出力5千キロワット以上の発電所を除く)

【受験資格】

誰でも受験可能。

5-7 宅地建設取引士

宅地建設取引士は、不動産の取引の際に、重要事項が説明できる独占業務です。建設会社によっては、自社で建築した住宅やアパートなどを販売する時がありますので、その際に力を発揮する資格となります。また、資格をもつことで説得力も増します

【仕事の内容】

不動産取引を公正・わかりやすく行うために必要な資格です。宅地建設取引士は、重要事項の説明や書類への記名押印、契約書への記名押印を独占業務としてできます。。

【受験資格】

誰でも受験可能

6 まとめ

建築業と建設業の違いについて、解説しました。建築業は建物を建てる業種であり、建設業に含まれます。建設業は、建築業と土地に関わる土木工事を合わせた業種になります。実際の建築工事では土地の測量や整理などの土木工事の実施が前提になっています。

建築や土木を含めた建設業全体として、今後も需要は引き続き継続していることが見込まれている中で就業者の減少が大きな課題です。そのため、前述した建設業で求められる資格を持った若い人材が活躍する余地が大きいとも言えます。

また、建設業は資格が重宝される業界です。自分自身のキャリアにあった資格を選択し、取得できるよう努力していきましょう。建設業界では、資格取得の努力は必ず自身のキャリアを豊かにしますので、チャレンジしてみてください

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