建設業で禁止されている中抜きとは?
元請けが受注した工事を下請けに丸投げする「一括下請け」が問題視されています。工事を丸投げした元請けは楽して儲かりますが、下請けや依頼者は大きな損失を被ることになります。
そのため、一括下請けは「建設業法」に違反する犯罪行為として禁止されているのです。不正が発覚すれば、重い制裁を受けることになりますが、元請けが受けるのはもちろんのこと、下請けも制裁を受けなければなりません。
今回の記事では、建設業で禁止されている一括下請けについて詳しく解説します。法律違反を犯すことがないよう、元請けも下請けも建設業法について理解しておくことが大切です。一括下請けについて詳しく知りたい方は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
1建設業の構造
建設業界の構造は特有で重層下請け構造となっています。まずは、その構造について解説いたします。
1-1重層下請け構造とは
建設業界の構造は、ゼネコンなどの建設会社が受注者(元請け)となり、その受注者が下請け会社に発注し、またその下請け会社がさらに下請けに発注といった形で、ピラミッド型で複数の企業が関わる構造となっています。このことを重層下請け構造といいます。建設業界では、最初の受注者が総合的な管理役となり、工事全体の工程管理や品質管理、安全管理などを担います。
1-2重層下請け構造となっている理由
建設業において多く工事は重層下請け構造を採用しています。建設業の工事は多岐にわたり専門性が深いです。建設業の業種は29種類に分けられており、工事によっては、必要であったり、不要であったりする業種もあります。建設業では、そのような無駄を省くため・効率を向上させるためにも、各業者が専門分野に特化した形で、工事全体を補完する仕組み(重層下請け構造)を採用しています。
重層下請け構造は、下記のメリットがあります。
〇建設工事の効率化
前述した通り、建設業の業種は29種類あります。29種類の仕事を1つの会社で対応するには、専門の技術者や設備等を常備する必要があり、莫大な費用がかかります。加えて、工事の業種によっては、発注が多かったり、逆に全く発注がなかったりと、需要と供給の調整をすることが難しく、非常に効率が悪くなります。重層下請け構造では、それぞれの専門業者がそれらを担うため、全体的に効率が良くなります。
〇工事完成度の向上
建設業の業者は専門性が特化しているため、その分野において生産性が非常に高くなります。また、常にその業種の工事をこなすため、経験値も貯まり、生産性がさらに高まります。ます。したがって、1つの会社が工事の全てを請け負うより、重層下請け構造の方が、工事全体の完成度も高くなります。
1-3重層下請け構造の問題点
重層下請け構造は、それぞれの得意を出し合いながら施工する良い仕組ですが、「下請けになるほど、利益が少なくなる。買いたたかれる」等の問題点が指摘されています。
重層下請け構造は、ピラミッド構造であるがゆえ、下請けに行けば行くほど、利益が少なくなりやすい構造となっております。また、仕事を発注する側がどうしても権力をもってしまうため、買いたたき等も発生しやすくなります。
1-4重層下請け構造の問題に対する対応策
前述した通り重層下請け構造には、様々な問題が発生しやすいリスクを含んでいます。そこで、国としては法整備をすることにより、問題が起きないように対策をしています。
〇一括下請負は禁止
建設業法により、全ての業務を一括して下請け会社に委託することは禁止されています。
これは利益を得るだけの不要な重層化を防ぐ役割があり、何もしていない業者が利益だけをとることを禁止しているもので、下請け会社を守る制度となっています。一括下請負を認めてしまえば、中間搾取、工事の質の低下など、様々弊害を生む可能性があります。また、責任もどちらの会社が負うのかが不明確になります。
一括下請負の判断基準に関しては、平成28年10月14日付で国土交通省が報道発表で公表しています。判断基準の詳細は下記の通りです。
元請会社が果たすべき役割 | 下請会社が果たすべき役割 | |
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施工計画の作成 |
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工程管理 |
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品質管理 |
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安全管理 |
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技術的指導 |
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その他 |
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元請会社は、上記項目を全て行うことが求められます。下請会社は上記項目を主として行うことが求められます。
この他にも、建設業法上、元請会社と下請会社間には、様々な取り決めがあります。
下記の国土交通省のホームページにて、建設業法令遵守ガイドラインが掲載されていますので、詳細を知りたい場合は下記ホームページをご覧ください。
2 建設業許可とは
建設業は業種ごとに建設業許可が必要になります。建設業許可の業種は29業種あり、細かく分類をされています。このことからも建設業の業種は広く、そして専門性が求められます。建設業許可について順に解説いたします。
2-1 建設業許可の種類
建設業許可には2つの区分分けがされています。
○国土交通大臣許可と知事許可
建設業を営む営業所の場所と数で建設業許可の管轄が違います。
大臣許可 | 2つ以上の都道府県に営業所を設けて営業しようとする場合 |
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都道府県知事許可 | 営業所が1つの都道府県内にある場合 |
営業所が全て同じ都道府県内の場合は、都道府県知事許可が必要になります。また、建設業と関係のない業種の営業所は、このなかに含める必要はありません。
○一般建設業許可と特定建設業許可
請負代金の金額で建設業許可の区分は違います。請負代金が4、500万円(建築一式工事の場合は7、000万円)を境に一般建設業許可と特定建設業許可に分かれます。
特定建設業の許可 | 発注者から直接請け負う1件の建設工事について4、500万円以上(建築一式工事にあっては7、000万円以上)となる下請契約を締結する場合。 |
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一般建設業の許可 | 上記以外 |
なお、許可の有効期間は、許可のあった日から5年間です。有効期間満了後も引き続き建設業を営む場合は、満了する30日前までに建設業許可の更新手続きを行う必要があります。
2-2 建設業許可が不要な場合
軽微な工事の場合、建設業許可が不要な場合があります。建設業許可が不要なケースは下記の通りです。
○建築一式工事
(1)と(2)のどちらかの条件を満たせば、建設業許可は不要です。
- (1)請負代金が1、500万円未満の工事
- (2)木造住宅で延べ床面積が150㎡未満の工事
※請負代金の額は税込み金額で判断される。
○建築一式工事以外の工事
- 請負金額が500万円未満の工事であれば建設業許可は不要です。
※請負代金の額は税込み金額で判断される。
2-3 建設業の業種
建設業の業種は29業種に区分されています。広汎にはなりますが、それぞれ見ていきましょう。
【建設業の29業種】
建設工事の種類 | 具体的な内容(告示) |
---|---|
土木一式工事 | 総合的な企画、指導、調整のもとに土木工作物を建設する工事 |
建築一式工事 | 総合的な企画、指導、調整のもとに建築物を建設する工事 |
大工工事 | 木材の加工または取付けにより工作物を築造し、または工作物に木製設備を取付ける工事 |
左官工事 | 工作物に壁土、モルタル、漆くい、プラスター、繊維等をこて塗り、吹付け、またははり付ける工事 |
とび・土工・コンクリート工事 |
|
石工事 | 石材(石材に類似のコンクリートブロック及び擬石を含む。)の加工または積方により工作物を築造し、または工作物に石材を取付ける工事 |
屋根工事 | 瓦、スレート、金属薄板等により屋根をふく工事 |
電気工事 | 発電設備、変電設備、送配電設備、構内電気設備等を設置する工事 |
管工事 | 冷暖房、冷凍冷蔵、空気調和、給排水、衛生等のための設備を設置し、または金属製等の管を使用して水、油、ガス、水蒸気等を送配するための設備を設置する工事 |
タイル・れんが・ブロツク工事 | れんが、コンクリートブロック等により工作物を築造し、または工作物にれんが、コンクリートブロック、タイル等を取付け、またははり付ける工事 |
鋼構造物工事 | 形鋼、鋼板等の鋼材の加工または組立てにより工作物を築造する工事 |
鉄筋工事 | 棒鋼等の鋼材を加工し、接合し、または組立てる工事 |
舗装工事 | 道路等の地盤面をアスファルト、コンクリート、砂、砂利、砕石等により舗装する工事 |
しゆんせつ工事 | 河川、港湾等の水底をしゆんせつする工事 |
板金工事 | 金属薄板等を加工して工作物に取付け、または工作物に金属製等の付属物を取付ける工事 |
ガラス工事 | 工作物にガラスを加工して取付ける工事 |
塗装工事 | 塗料、塗材等を工作物に吹付け、塗付け、またははり付ける工事 |
防水工事 | アスファルト、モルタル、シーリング材等によって防水を行う工事 |
内装仕上工事 | 木材、石膏ボード、吸音板、壁紙、たたみ、ビニール床タイル、カーペット、ふすま等を用いて建築物の内装仕上げを行う工事 |
機械器具設置工事 | 機械器具の組立て等により工作物を建設し、または工作物に機械器具を取付ける工事 |
熱絶縁工事 | 工作物または工作物の設備を熱絶縁する工事 |
電気通信工事 | 有線電気通信設備、無線電気通信設備、ネットワーク設備、情報設備、放送機械設備等の電気通信設備を設置する工事 |
造園工事 | 整地、樹木の植栽、景石のすえ付け等により庭園、公園、緑地等の苑地を築造し、道路、建築物の屋上等を緑化し、または植生を復元する工事 |
さく井工事 | さく井機械等を用いてさく孔、さく井を行う工事またはこれらの工事に伴う揚水設備設置等を行う工事 |
建具工事 | 工作物に木製または金属製の建具等を取付ける工事 |
水道施設工事 | 上水道、工業用水道等のための取水、浄水、配水等の施設を築造する工事または公共下水道若しくは流域下水道の処理設備を設置する工事 |
消防施設工事 | 火災警報設備、消火設備、避難設備若しくは消火活動に必要な設備を設置し、または工作物に取付ける工事 |
清掃施設工事 | し尿処理施設またはごみ処理施設を設置する工事 |
解体工事 | 工作物の解体を行う工事 |
上記が29業種となります。分類の詳細は、下記国土交通省のホームページにて確認ができます。
3 建設業の企業の種類
建設業の企業形態をまとめると以下の通りです。
ゼネコン | ゼネコンは、設計・施工・研究の3つの事業を自社で実施している総合建築業者です。企業規模も大きく、大型の工事であれば、ゼネコンが元請会社として、工事の指揮・管理といったまとめ役を担います。 |
---|---|
サブコン | サブコンは、元請会社(ゼネコン等)から工事の一部を請け負う業者です。電気工事や空調設備工事などの専門分野の工事を請け負う業者になります。 |
工務店 | 工務店は営業所のある地域に密着した建築会社です。戸建て住宅を請け負う身近な建築会社です。 |
ハウスメーカー | 工務店が地域密着型というのに対して、ハウスメーカーは全国展開している住宅メーカーです。ハウスメーカーは自社ブランドを持っていることと、対応できる地域が工務店と比較して幅広いことが特徴です。 |
設計事務所 | 設計事務所は、建物を設計する建築家がいる事務所です。設計事務所は自由度の高い・独自性のある設計ができることが特徴です。 |
4 建設業で禁止されている一括下請けの概要
建設業で禁止されている一括下請けの概要は下記の通りです。
- ・一括下請けとは
- ・中抜きと一括下請けの違い
- ・一括下請けが禁止されている理由
- ・建設業法とは
それぞれ詳しく見ていきましょう。
4-1 一括下請けとは
一括下請けとは、工事を受けた企業が下請けに工事を丸投げし、利益を得る行為を指します。依頼された仕事を丸投げすることで、元請は工事をせずに楽して利益を得られます。
そして、安価な報酬ですべての仕事を任される下請けが苦労するという構図です。官公庁が依頼する工事は、民間企業よりも高値で設定されているため、一括下請けをすると大きな利益を手にすることができます。
適正な報酬を得られない下請けは手抜き工事を行い、工事の質を落とす恐れがあります。この一括下請けが、今でも問題視されています。
4-2 中抜きと一括下請けの違い
一括下請けと似た言葉に「中抜き」があります。中抜きとは、取引の間に仲介者が入って手数料を得ること、仲介者を省略して直接取引する行為を指します。
取引の間に多くの中間業者や仲介者が関わり、手数料が高額になることを非難する意味で中抜きと呼ばれています。
一括下請けも中間に入って利益を得ているという点では同じですが、中抜きでは仕事を丸投げするという意味では使われません。
4-3 一括下請けが禁止されている理由
一括下請けが禁止されている主な理由は、依頼者が大きな損を被る恐れがあるからです。一括下請けによって下請けが手抜き工事をすれば、工事全体の質が低下し、重大な事故につながる恐れがあります。
依頼者の立場から考えれば、安くない依頼料を支払って欠陥工事をされたのではたまったものではありません。そのため、発注者が不利益を被ることがないように、「建築業法22条」によって一括下請けが禁止になりました。
内容は下記の通りです。
建設業法22条
- 1. 建設業者は、その請け負つた建設工事を、いかなる方法をもつてするかを問わず、一括して他人に請け負わせてはならない。
- 2. 建設業を営む者は、建設業者から当該建設業者の請け負つた建設工事を一括して請け負つてはならない。
- 3. 前二項の建設工事が多数の者が利用する施設または工作物に関する重要な建設工事で政令で定めるもの以外の建設工事である場合において、当該建設工事の元請負人があらかじめ発注者の書面による承諾を得たときは、これらの規定は、適用しない。
- 4. 発注者は、前項の規定による書面による承諾に代えて、政令で定めるところにより、同項の元請負人の承諾を得て、電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であつて国土交通省令で定めるものにより、同項の承諾をする旨の通知をすることができる。この場合において、当該発注者は、当該書面による承諾をしたものとみなす。
制裁を科されるのは丸投げした元請けだけでなく、下請けも対象です。元請けから仕事を丸投げされても受注しないように注意しましょう。
4-4 建設業法とは
建設業法とは、建設業を営む上で守らなくてはならないルールが定められた法律で、29種類の業種が該当します。建設業法の目的は「公共の福祉の増進」で、建設業を営む者の資質の向上や、建設業の健全な発展を促進しています。
この建設業法が、一括下請けなどの不正行為を正す役割を担っています。元請けより弱い立場にある下請けは、建設業法によって守られています。そのため、一括下請けを行うと、建設業法により重い制裁を受けることになります。
5 なぜ一括下請けはなくならないのか
一括下請けは禁止されている行為なのに、なぜなくならないのでしょうか。その背景について見ていきましょう。
- ・何もしなくても利益を得られる
- ・ノウハウがなくても入札に参加できる
- ・在籍証明の確認が甘い
5-1 何もしなくても利益を得られる
元請けからすれば、仕事を丸投げすれば利益を得られることが背景にあります。そのため、多少のリスクは覚悟のうえで、一括下請けをして儲けようという心理が働きます。
また、主任技術者に工事に必要なノウハウがなくても、打ち合わせに参加しておけば施工管理をしていると言えてしまいます。楽して儲かるのに不正が発覚しにくいことが、今なお建設業から一括下請けがなくならない原因の一つです。
5-2 ノウハウがなくても入札に参加できる
工事に必要なノウハウがなくても、入札参加条件さえ満たしていれば入札に参加できるため、一括下請けが横行しやすいと考えられます。多くの場合、入札参加条件は資格を持っていることです。
資格さえ持っていれば良いため、有資格者の名義を借りて入札参加が行われていることもあります。
ノウハウがなくても入札には参加できるため、下請けに仕事を丸投げしようと考える建設業者もいるということです。
5-3 在籍証明の確認が甘い
一括下請けがなくならないのも、不正が発覚しにくいという背景があります。在籍証明の確認が甘いのです。
主任技術者の資格や保険証などの証明は求められますが、それ以外で書類を求められることは多くありません。在籍証明さえできれば、実際に施工するのはすべて下請けというケースもあります。
元請けによっては在籍証明を偽造しているケースもあります。従業員として在籍していることを確認するのは容易ではないため、一括下請けが横行しています。
6 工事を一括下請けするリスク
工事を一括下請けすると、下記のようなリスクがあります。
- ・元請が全責任を負う
- ・工事でトラブルが起きても対応できない
- ・発覚したときの制裁が重い
一括下請けは発覚しにくいですが、発覚した場合は重い制裁が待っています。一つずつ解説します。
6-1 元請けが全責任を負う
一括下請けが発覚した場合、全ての責任を負うのは元請けです。元請けが監督責任を果たさず発生した不良施工を、下請けに責任を取らせることはできません。違約金や再施工などの損失を被る恐れがあります。
下請けに仕事を依頼した責任を取るのは元請けです。「下請けがやったミスなんだから自分達に責任はない」というわけにはいきません。下請けに工事を発注した以上は、元請けは責任を持って工事に携わる必要があります。
6-2 工事でトラブルが起こっても対応できない
工事に必要なノウハウを有していないにもかかわらず一括下請けすると、工事で事故が起きる可能性が高いです。というのも、一括下請けした下請けがトラブルを起こしても、元請けにノウハウがないと適切に対応できないためです。資格を持っているだけの主任技術者がいるだけでは、仕事を受注するリスクも高くなります。
6-3 発覚したときの制裁が重い
一括下請けは発覚しにくいために横行しているのが現状ですが、発覚したときの制裁は重いです。建設業法では、禁止されている一括下請けを行った建設業者には「15日以上の営業停止処分」を科すと定めています。
また、営業停止処分を科されるだけでなく、不正が発覚することで社会的信用を失うリスクもあるのです。
指名停止の措置を取られるようなことがあると、会社の経営危機となります。一括下請けは建設業法で定められている犯罪行為であるため、違反することがないようにしましょう。
7 合法とされる一括下請け
一括下請けは基本的に違法ですが、合法とされる一括下請けもあります。それは、元請けが下請けの工事に関与していると認められれば合法です。ただし、工事に関与していると言うには、企画、施工、管理などの全ての工程において、主体的な役割を担う必要があります。
また、下請けはできても監督義務がないわけではありません。建設業法に定められている監理技術者や主任技術者を設けなければ、合法な下請けとは見なされません。
7-1 建設リサイクル法に注意する
建設工事を下請けする場合、「建設リサイクル法」の適用があります。建設リサイクル法とは、建設工事で発生する建築廃棄物を適切に処理し、リサイクルを促すために定められた法律です。建設リサイクル法では、工事請負契約書に下記の点を記載するように定めています。
- ・解体工事に要する費用
- ・再資源化等に要する費用
- ・特定建設資材の分別解体等の方法
- ・再資源化等をするための施設の名称及び所在地
特定の建設資材は、アスファルトやコンクリート塊等の建設資材や木材のことです。建設リサイクル法の対象になる工事の規模は以下の通りです。
工事の種類 | 工事の規模 |
---|---|
建築物の新築、増築 | 床面積500㎡以上 |
建設物の解体 | 床面積80㎡以上 |
建築物以外の解体、新築等 | 請負代金500万円以上 |
建築物の修繕・模様替え | 請負代金1億円以上 |
分別解体やリサイクルを行うのは、工事の施工者となります。実施状況に関する記録を作成し、発注者に書面で報告を行う義務があります。
7-2 建設業では労働者を派遣するのは禁止されている
建設業を営む上で注意しておきたいのは、建設業では労働者を派遣するのは禁止されているということです。これは、派遣労働者の安全な環境を支えるための法律である「労働者派遣法」により禁止されています。
禁止されている理由は下記の通りです。
- ・派遣労働者の雇用関係を明確にするため
- ・建設業では派遣労働者の雇用を守るのが難しいため
複数の下請け業者と工事を行うことの多い建設業では、どの事業主に責任があるのかが不明確になりやすいため、労働者の派遣を禁止しています。
また、建設業では常に工事の仕事があるとは限らないため、安定して仕事ができる保証がありません。建設業では、派遣労働者のように雇用が不安定な立場の労働者は、仕事がなくなると雇用を切られる可能性もあります。
そのため、派遣労働者の雇用を守るため、建設業においては労働者を派遣するのは禁止されています。くれぐれも、労働者を他社に派遣しないよう注意しましょう。
7-3 下請けの見積もりには一定の期間が必要
元請けが下請けに見積りを行う場合、一定期間を設ける必要があります。短期間で見積もりすることを迫り、安価な工事代金で依頼することを防ぐためです。具体的に下請けに与える見積もり期間は下記の通りです。
工事の規模 | 見積もり期間 |
---|---|
500万円未満 | 1日以上 |
500万円以上、5,000万円未満 | 10日以上 |
5,000万円以上 | 15日以上 |
8 まとめ
元請けと下請けの間には、力関係に差があります。それが原因で下請けは不当な契約を迫られ、適正な報酬額で仕事を受けることができない場合が少なくありません。
適正な報酬額で工事ができないと、手抜き工事をしてしまい、施工の質が低下することが問題となっています。そのような背景から、建設業法は一括下請けを禁止しています。
元請けは一括下請けを行わないのはもちろん、下請けは不当な工事を受けてはなりません。一括下請けが発覚した場合、元請けだけでなく下請けも被害を被るからです。法律に違反する一括下請けを行わないようにしましょう。