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今後の建設業界に必要な新ビジネスモデルとは

建設業は、国や民間を問わず社会が必要とする建物、道路や橋などを作ることを生業とする仕事です。建設業の主な特徴として、依頼者(施主等)からの発注を受けて仕事を進めるという受注生産方式が挙げられます(一部で見込生産方式あり)。

しかし、こうしたビジネスモデル(ビジネスの仕組み)だけでは建設業者としての成長が困難な時代になってきており、これまでの建設工事業務とは異なる新たな事業や業務システムに取り組む建設業者が見られるようになってきました。

そこで今回の記事では、建設業のビジネスモデルに着目して、建設業界の構造や事業モデルの現状・課題、新しいビジネスモデルの事例などを紹介し、今後重要となるモデルの内容や構想の仕方などを説明していきます。

建設業の課題と解決の糸口を見つけたい方、建設業でも可能な新分野のビジネスを開発したい方、新たなビジネスモデルの構想方法を理解したい方は、参考にしてみてください。

1 今までの建設業の特徴

ここでは、建設業の定義、現在の建設業の業界構造やビジネスモデルの主な内容、市場状況などを確認していきましょう。

1-1 建設業の概要

最初に建設業法で示されている定義の内容を示しておきましょう。建設業法の第2条第1項において、「建設工事」(同法の別表第一で示されている29種類の土木建築に関する工事)が規定されており、第2項で「建設業とは、元請、下請その他いかなる名義をもってするかを問わず、建設工事の完成を請け負う営業」と定義されています。

1)建設業の定義

  1. 29種類の工事とは、土木一式工事、建築一式工事、大工工事、左官工事、とび・土工・コンクリート工事、石工事、屋根工事、電気工事、解体工事などです。

従って、同法における建設工事には、建物を作る「建築工事」とともに、道路や水路等の工事を行う「土木工事」が含まれす。ただし、現実のビジネスにおいては、建設、建築、土木が区別されたり、曖昧に扱われたりするケースは少なくありません。

例えば、建築会社は建築物を作る(施工する)が、土木工事はしない企業と見られることがよくあります。一方、土木会社は家などの建物を作らないが、ダムや道路等を作る(施工する)企業として見られることも多いです。

このように建設業の捉えた方はやや曖昧な面があり、取引や就職などを考える場合、その企業の事業の実態を正確に把握して判断する必要があるでしょう。

2)建設業の事業上の特徴

建設事業の大きな特徴は、依頼者(顧客等)の注文を受けてから工事を開始していく「受注生産方式」の形態が多い点です。戸建やマンションなどの分譲は、購入者を見込んで建設し販売するといった形態になりますが、それらの開発・販売会社と建設会社が別々になっているケースが多くあります。

例えば、開発・販売会社がマンション建設の物件を企画・販売し、建設会社に建築を依頼するケースなどです。その場合、建設会社はその物件を受注して建築をスタートさせることになります。

建設業界では、個人、企業や行政など、特定の建物を作りたいという依頼者(施主)やその元請から、その物件の工事を受注して建設工事していく、という事業形態が大多数を占めています。

1-2 建設業の構造とビジネスモデル

ここでは今までの建設業界の構造やビジネスモデルの内容を説明しましょう。

1)建設業の事業構造

建設業では施主の企画書、設計書、仕様書等に基づいて施工する、施主の意向に沿って建物等を設計して施工していく、といった建設工事の形態が多いです。その場合の業務プロセスは主に、企画・設計、工事計画、施行(管理)で構成され、工事が進められていきます。

これらの業務を一手に引き受けて受注するのが「総合建設業者」いわゆる「ゼネコン(ゼネラル・コントラクター)」です。大規模な建設工事などの場合は、このゼネコンが中心となって受注するケースが多く見られます。

ゼネコンの中でも大林組・鹿島建設・清水建設・大成建設・竹中工務店の大手5社は規模が大きく実績も豊富であることから、「スーパーゼネコン」と呼ばれています。

しかし、ゼネコンは大企業や行政などから直接受注するものの、実際の工事は他の建設工事に外注するケースがほとんどです。建築工事の部分については一次下請けの建設会社へ、土木工事の部分については一次下請けの土木会社へと外注していき、各々の一次下請け会社は二次下請けへと外注していく、重層の下請構造で工事が進められます

戸建の住宅建築などの場合でも、地盤、基礎、建方・上棟、屋根・外壁、内装、電気関連、水回り、などの専門工事があり、各々の工事を得意とする専門の外注工事業者が下請として仕事を受けるケースが多いです。小規模な戸建物件の場合、下請けの重層化は少ないですが、大規模マンションなどでは下請構造は重層化しやすくなります

下請けの重層構造は製造業でも多く見られる形態ですが、建設業の場合は製造業以上にその重層化の程度が大きく、下層にある業者ほど厳しい経営環境に直面しやすいです。

2)現在の建設業のビジネスモデルと課題

建設業には以下のようなビジネスモデルでの特徴が見られます。

●受注生産方式

既に説明した受注生産方式が代表的な特徴です。現在の建設会社では、自ら企画・計画して建物等を建設して販売するという形態は少数派で、顧客等からの物件を受注して建設工事を進める形態が主流となっています。

そのため依頼者や依頼案件が多くなれば、その建設会社の業績は良くなり、少なくなれば業績が悪くなるわけです。そのことから建設会社には一般的に景気の動向や得意先の事業状況などに大きく左右される傾向が見られます。

高度経済成長期やバブル期のように不動産需要が旺盛な時代では建設案件は豊富で、受注する苦労は少なかったです。しかし、デフレ時代になると案件は減少し受注するのが困難になるほか、工事価格が下がりより厳しい状況に陥る企業が多く見られました。

既存の顧客からの注文に対応するだけの受注生産方式の経営に偏り、新たな顧客や新事業を開発しないでいると、景気の状況次第で直ぐに倒産に至るような事業構造になりかねません

●顧客の独特な購買意思決定プロセス

建設物件の依頼者が個人、企業や行政等のいずれであっても、その対象とする建設物の価格は高額・巨額となるケースが多いです。そのため依頼者の購買頻度は少なく、また、高額であることから慎重な検討を伴う複雑な意思決定を経るケースが少なくありません。

そうした傾向から依頼の相談から検討・発注の決定に至るプロセスにかかる時間は長くなりやすいです。また、依頼者が大企業や行政などになると購買の意思決定プロセスが複雑であったり、多人数の担当者が関係したりして、プロモーションなどのマーケティング活動が難しくなる傾向があります。

●新建設・メンテナンスの事業と新分野進出

建設業のこれまでの工事対象は主に新設物件でした。日本では1955年~1973年の間で高度経済成長を実現し、その後のバブル景気などを通じて建設需要は最大にまで達しましたが、バブルの崩壊以降の失われた20年という長期間のデフレ状態下でその需要は大きく低迷するに至ったのです。

新設物件の減少傾向とは裏腹に、そうした期間に建設された建物やインフラ設備などの老朽化が進み、現在ではその修繕・補修等が社会問題になるなど、メンテナンス需要は増大していくと見られています

そのため建設業界では、以前のような需要増が期待しにくい中で新設物件を確保していくという事業と、今後の増加が見込まれるメンテナンス需要を取り込む事業、さらに新分野への進出事業、などの対応が必要です。

●圧倒的多数の請負工事業と少数派の総合建設業

ゼネコンを除けば、多くの建設業者は請負工事を営んでいます。請負工事では元請等から下請会社が請負工事を受注して「請負契約」を締結するのが一般的です。しかし、その契約では下請会社は経営上のリスクを大きく負担するケースが多く見られます

下請会社は、必要となる専門の設備機器、工具・治具、材料・部品、作業員などを用意して工事を行うことから、大きな固定費が企業財務への重い負担になるケースが多いです。

こうした下請会社で、全コストのうち固定費が多くなっていくほど、工事価格のアップや仕事量の確保の必要性に迫られる事業構造になり、難しい経営を余儀なくされる傾向が見られます。

従って、下請会社は別の元請会社との取引を広げることや別の事業への進出といった取組がより重要になってくるでしょう。

一方、ゼネコンの場合、施主より直接物件を受注する営業形態で、施主は異業種や行政などであるケースが多いです。そのため下請会社と比べるとマーケティングや営業の面での力量が受注に大きく影響する可能性があります。

なお、ゼネコンは下請会社を利用する事業構造であることから、実際の工事に関する固定費を抑制しやすい点は長所と言えるでしょう。ただし、デフレ状態を脱しきれない現状では大型案件などの増加は期待しにくく、その確保が難しくなっている点はゼネコンの経営課題と言えそうです。

好景気の時の需要増、オリンピックや万博などの大型案件、SDGsの社会課題への対応、といった世の中の動きに迅速に適応して需要を取り込んでいく経営がゼネコンには特に求められるでしょう。

1-3 建設業界の現状

ここでは現在の建設業界の状況を簡単に説明します。

1)建設業界の市場規模

建設業界の市場規模の捉え方は様々ですが、国土交通省の「建設総合統計」(政府統計)が参考になるでしょう。

建設総合統計は、国内の建設活動を出来高ベースで把握することを目的とした加工統計で、下表はその建設総合統計の2003年から2021年までの民間と公共での建設工事出来高をまとめた資料です。

その出来高の動向を見ると、2003年から2011年まで下降の一途を辿り、2012年から2019年まで徐々に回復していることが確認できます。なお、日本の建設投資額は1992年度の約84兆円がピークとなりましたが、2011年にはその約半分(約42兆円)までに激減しました。

単位:億円

暦年 総計 民間投資 公共投資
2003年 564,363 318,253 246,109
2004年 533,255 323,419 209,835
2005年 532,507 333,841 198,666
2006年 531,392 350,651 180,741
2007年 509,301 338,004 171,297
2008年 492,828 324,583 168,244
2009年 454,057 276,281 177,776
2010年 430,651 258,613 172,037
2011年 420,752 260,851 159,901
2012年 425,104 257,290 167,813
2013年 465,668 280,279 185,389
2014年 475,400 280,785 194,616
2015年 474,526 285,237 189,290
2016年 491,819 297,647 194,171
2017年 516,854 312,188 204,666
2018年 521,988 316,757 205,231
2019年 529,511 316,862 212,649
2020年 520,119 295,423 224,697
2021年 523,372 300,638 222,734

出典:e-Stat 「建設総合統計」 「2013年4月から2022年5月までの推計値」のデータを加工

2)建設業界の概況

バブル崩壊以降、建設需要が落ち込み続け、2008年のリーマンショックや2011年の東日本大震災による景気の悪化に直面してさらなる落ち込みを経験したことが上表から確認できるでしょう。

その後は、東京オリンピックの開催もあり徐々に回復基調にありましたが、2020年は新型コロナウイルスの感染拡大の影響もあり減少しました。なお、ここ近年では首都圏などを中心に住宅建設、都市再開発のプロジェクトや物流拠点等の増加などあり、国内の建設投資額は拡大してきたのです。

とくに首都圏の再開発案件は多く、今後においても都内の丸の内、大手町、虎ノ門、赤坂、品川、渋谷、新宿、などで大型ビルや大型の商業施設等の建設が計画されてきました。

しかし、2020年初頭からの新型コロナウイルス感染症拡大は、建設業にも大きな影響をもたらしています。帝国データバンク社の「全国企業倒産集計2021年上半期報」(2021年1月~6月)によると、対前年比で倒産件数は減少しているものの、業種別では小売業、サービス業に次いで3番目に多いです。

また、東京商工リサーチ社のサイトでは「倒産増の兆し、建設業のコロナ破たんがジワリ増加」と題した記事が2022年03月06日に公開されました。この情報の主な内容は以下のとおりです。

  1. ・新型コロナ関連の資金繰り支援策で、2021年の建設業の倒産は1,065件(前年比14.5%減)と過去30年で最少だったが、法的手続き準備中などを含む「新型コロナ関連破たん」はジワリと増加
  2. ・工期の長期化やずれ込みに加え、資材高騰や人手不足、支援効果の薄れなどが複層的に絡み合い、小康状態の倒産が反転する兆しも見える
  3. ・こうした動きは鹿島建設、大林組、大成建設、清水建設のスーパーゼネコンにも見られる。スーパーゼネコン4社の2022年3月期連結の業績予想は、売上高が増収であるものの4社とも減益の見込みとなっており、資材価格の高騰や受注競合などの影響が増大している
  4. ・東日本大震災からの復興工事が一巡し、新型コロナの影響による景気回復の遅れの余波が建設業にも及んでいる
  5. ・コロナ関連倒産の累計が2022年3月2日に3,000件に達したが、業種別の最多は飲食業の517件(構成比17.2%)で、次いで建設業が318件(同10.6%)と全体の1割を占めた

パンデミックや大型地震などの発生は、経済活動を停滞させ景気の悪化を招くことになりますが、その悪影響が建設業でも大きくマイナスに働くことが分かります。また、昨今の物価の高騰に苦しむ建設業も多いです。

帝国データバンク社の「物価高倒産」動向調査(2022年度上半期)によると、「2022年度上半期に発生した159件を業種別にみると、「建設業」(40件)がトップで、全体の約25%を占めた」ことが報じられました。

各業種では、コロナ関連融資などを受けてコロナ禍の厳しい経営環境の中、事業を継続させてきたものの、足下の燃料、原材料、電気代、物流コストの高止まりによって収益が悪化する企業が増え倒産に至るケースが多く見られるようになったのです。

建設業ではデフレ状況が長引く中で価格競争が厳しく、収益の確保が困難になっており、昨今の物価上昇は事業の継続をより困難にさせています。

2 建設業の新たなビジネスモデルの事例

ここではコロナ禍やインフレ等による厳しい経営環境に対応し、生き残りやさらなる発展に向けて新たなビジネスモデルに取り組む建設会社の事例などを紹介しましょう。

2-1 建設業者の農業分野でのビジネスモデル

ここでは国土交通省の「建設業の新分野展開ハンドブック」(事例研究)からその建設業における農業分野に関するモデルを説明します。少し古い内容ですが、新たなビジネスモデルを発想する際の参考になるでしょう。

*この事例は「建設業と地域の元気回復助成事業」に応募および採択された協議会の取組です。

●ビジネスモデルの概要

本事例は「作物aを栽培する」といった事業モデルではありません。「作物aを栽培したいと考えている農業従事者または農業参入者」をターゲットとして、「作物aを栽培する耕作地の開墾から苗の提供、栽培ノウハウの提供、収穫物の全量買取」といった全プロセスのシステムおよびそのノウハウをワンストップで提供する「コンサルティング・サービス」の事業です。

●ビジネスモデルの特徴および構想上の重要ポイント

・的確な市場分析によるニーズの把握とターゲットの設定

当該協議会は、農業分野へ参入する多くの事業者等が、リスクが高く付加価値生産性の低い「農作物」を内製化する傾向があることを把握しました。

そして、その事実を根拠として当該協議会は「農業参入を希望する者および転作を検討する農家」をターゲットとして設定し、その栽培ノウハウをワンストップで提供する「コンサルティング」というモデルを考案したのです。

特に業界のバリューチェーン分析(事業や業務プロセスのどこで付加価値が発生するかの分析)により、事業全体での一連の流れを把握し何処のプロセスが重要で、自社と他社の資源をどう活用すべきかを検討していき、新たなビジネスモデルを作り上げました。

また、産品として選択した「作物a」は、対象地域の土壌や気候に適していることに加え、加工品として高い付加価値があり、国内産シェアの低い農産品である、といった市場価値や生産性などが適切に評価されて選定されています

・事業の水平展開

このビジネスモデルは、他の農産品にも応用できるため、事業拡大に向けた水平展開が可能であり、その推進が検討されるようになりました。

・自社資源のシナジー効果と他社資源の活用によるリスク対応

この事業プロセスの「耕作放棄地の開墾等」は、当協議会が担当できるため、建設業としての相乗効果が期待できます。また、収穫物の全量買取は農業参入者等の参入障壁を低くして集客に貢献する有効なシステムです。

しかし、専門の農業者でない建設業者が買取するにはリスクが大きくなるため、この部分は専業者に業務を委ね事業リスクの低減が図られています

2-2 建設教習分野のビジネスモデル

参考:「施工の神様」の「粗利率80%!小さな建設会社が「既得権益」に挑む“脅威的なビジネスモデル”とは?」および全国建設教習トレーニングセンターのサイトより

●ビジネスモデルの概要

土木工事を主力事業としていた本陣水越株式会社には、「ローラー(締固め用)特別教育」という資格を有する人材がいない、教習所での受講ができていない、ことにより大型案件を失注した経験がありました。

そのことで同社(現在は「株式会社JTC」)は、自社で建機の教習所*を運営しFC(フランチャイズチェーン)化も進めるビジネスモデルを考案したのです。

*現在は「全国建設教習トレーニングセンター」

●ビジネスモデルの特徴および構想上の重要ポイント

・ビジネスモデルの主な特徴

全国建設教習トレーニングセンターの事業内容は、「労働安全衛生法に基づき重機に関わるトレーニング事業」「加盟店に対してのコンサルティング事業」です。

具体的には、全国各地で重機や建設機器の資格の取得を支援するスクール事業の展開で、スクールでは玉掛け・小型移動式クレーン・フォークリフト・車両系などの技術について現役の職人から指導されるなど、資格取得のための支援が提供されています

スクール事業では加盟店を募集して事業の全国展開が進められており、同センターが加盟店に対してスクール運営のノウハウ等を提供するといったコンサルティングも行っているのです。

・業界の問題点というニーズの発見

建設業の機械等の操作や作業などには特別な技能を伴い、従事するには資格の取得が必要となるケースが多くあります。その資格を取得するために教習所で受講することも必要になりますが、開催の頻度が少なく2カ月ほど待たされるというケースも少なくありません。

つまり、受講するニーズがあるのに、対応できる教習所が少ないという状況であったため、新たなビジネスになると代表の水越氏は考えたのです。

・余剰資源を活用したビジネスモデルの構想

建設業者が資格取得を支援する教習所を開設する場合、その企業の既存の施設、建機や人員など本業の資産を有効活用(特に仕事が暇である時期など)できるというメリットが生じます。

つまり、他の建設業者がこの事業の加盟店になれば大きな投資負担を伴うことなく教習所を運営できるため、加盟者は低リスクで収益源を確保できるようになるのです。

また、同社はFC化というビジネスシステムも上記の特徴から採用しやすくなるため、新規事業として成長できると判断されました

2-3 事業再構築補助金事業の事例

事業再構築補助金とは、新分野展開、業態転換、事業・業種転換、事業再編またはこれらの活動による規模の拡大など、挑戦的な事業再構築に取り組む中小企業等を支援するための補助金のことです。

和歌山県の同補助金の採択案件(第1回公募)から建設業の新分野展開等の案件を取り上げ、その新たなビジネスモデルを簡単に紹介しましょう。

1)ECサイト構築によるリフォーム工事業から無店舗小売業への新分野展開事業

●企業名

ワケン株式会社

●事業計画の概要
  1. ・同社はリフォーム事業を営んでいましたが、新型コロナウイルス感染症の影響で対面での営業活動が困難になって売上が大幅に落ち込み、新たな収益の柱となる事業が必要となりました。
  2. ・そこで同社はコロナ後の社会変化を見越し、ECサイトを通じた建築資材の販売を始めることで、リフォーム工事業から無店舗小売業への新分野展開を進め、新たな収益源となるように取り組まれたのです。

2)家の中の引っ越し請負事業

●企業名

有限会社松房電機

●事業計画の概要
  1. ・同社は電球交換からアンテナ工事やコンセント工事等、様々な電気工事を行っている地域密着型の電気工事店で、住居に関する様々な設備、機器などを豊富に扱っています。
  2. ・同社はそうした業務での経験・ノウハウを活かして、「電気・水道・内装・大工・外壁塗装・外構の住居に関する顧客のあらゆるニーズに対応するための、相談・見積・設計・施工・アフターサービス」をワンストップサービスで提供することを計画したのです。

3)高齢者・介護者の生活と家族の安心・安全を守る事業

●企業名

株式会社杉本組

●事業計画の概要
  1. ・同社は土木工事・管工事業を中心とした建設業を営んでいますが、新規事業として介護事業への参入を進めています。
  2. ・その新規事業の計画は「お泊りデイサービスの運営」です。和歌山県岩出市などは高齢者・要介護者の人口増加が進む地域であり、既存デイサービス事業の拡大も見込まれ、宿泊施設建築・新規雇用等により運営体制を構築して対応していくことが計画されています。

4)ポストコロナ時代の新たな生活様式に対応する木製家具事業

●企業名

株式会社サンクリエーション

●事業計画の概要
  1. ・同社はコロナ渦での生活様式の変更や少子高齢化により、注文住宅の受注減が懸念されてきたため、新規事業を構想するに至りました。
  2. ・その構想内容は、顧客生涯価値(顧客がその企業と取引を開始してから終了するまでの間に、どれだけの利益をもたらすか、を表す指標)に着目し、その価値を高める事業です。

具体的には、顧客の快適な暮らしを創造するために「住空間の満足度を高める木製家具事業」を推進し、自社の収益を向させ財務の安定も図るという計画が策定されました。

3 建設業での新ビジネスモデルの内容・方向性と作成方法

ここではビジネスモデルの作成方法などを簡単に説明し、今後の建設業で重要となるビジネスモデルの内容や方向性を紹介しましょう。

3-1 ビジネスモデルの内容と構想の仕方

まず、ビジネスモデルの内容と構想方法を簡単に説明します。

1)ビジネスモデルとは

ビジネスモデルとは、端的に表現すると、その企業が営む「事業の仕組み(あるいは事業の形態)」です。例えば、建設業のゼネコンの場合は、不動産の開発・運用業者であるデベロッパーや行政などから大型の建設工事を受注し、多くの下請業者を使用して工事を完成して収益を得る、というビジネスモデルになります。

製造業なら、他社からや原材料等を購入し、それらを加工して製品化し、適切な価格や販売ルート等を通じてライバル会社等と競争しながら顧客にそれらを販売し収益を得る、といった形態になりますが、この一連の事業の仕組みがビジネスモデルになるのです。

ビジネスの基本はターゲットのニーズを商品・サービス(建設業は工事)により充足(欲求という問題を解決)することであるため、ビジネスモデルの基盤はターゲットのニーズと商品・サービスの整合性にあり、そのマッチングをいかに的確に実行できるようにすることがモデル作成の基盤になります。

そういった点からビジネスモデルの作成では以下の4つの要素が重要です。

  1. Who:ターゲットは誰か
  2. What:ニーズを何で充足するか(どのような価値=商品・サービスを提供して充足するか)
  3. How:どのように価値を創出して、どのように届けるのか
  4. Why:なぜ利益が獲得できるか(どのようにして収益が確保できるか)

事業再構築補助金の採択案件の中には、建設業によるコワーキングスペースやワーケーション施設の運用事業などが見られますが、それらは上記の要素でそのビジネスモデルの内容を整理することできます。

事業内容:

  1. ・地域の行政等と協力し、低稼働・未利用の宿泊施設、空き不動産等を探して借り受け、改修して全国の企業にコワーキングスペースやワーケーション施設として提供するという(運営)事業を行う
  1. Who:社員の福利厚生の向上や業務の生産性向上を図りたい全国の企業
  2. What:企業が必要と考える、社員の健康福祉の増進、生産性やクリエイティブ性の向上、などに役立つコワーキングスペースやワーケーション施設を提供する
  3. How:自治体等と協力して施設を確保する。コロナ禍での感染防止対策と働き方改革への対応が可能な施設とするほか、社員が仕事で必要とする事務機器やインターネット環境などのビジネスサービスを提供する。

また、就労後や休日などで地域の観光資源やコミュニティ等を楽しめる情報提供やイベント等への優待などを行う

  1. Why:自治体等の情報をもとに施設を探して適正価格で借り受け、自社がその目的に合わせてワーケーション施設等へ改修する。その後、リーゾナブルな賃料で施設等を企業に貸し出すことで収益をあげる。また、改修工事により本業の収益にも貢献させる

以上のような4つの要素を切り口にビジネスの仕組みを組み立てることが可能です。

2)ビジネスモデルのフレームワーク

ビジネスモデルは、Who、What、How、Whyなどの視点から様々な形式で独自に構想することが可能です。ただし、一般的には下記のような作成モデル(フレームワーク)を利用するケースが多く見られます。

●クロスSWOT分析

SWOT分析は、企業の内部環境(強みと弱み)と外部環境(機会と脅威)の視点から現状を把握するための分析手法です。

この4つの要因を下記のように掛け合わせて、その企業が取るべき経営(事業)の方向性、すなわち戦略を検討するのに用いるのが「クロスSWOT分析」になります。

  1. ・強み×機会:自社の強みを活かして、市場や業界の機会に対応する
  2. ・強み×脅威:自社の強みを活かして、脅威に対処する、克服する
  3. ・弱み×機会:自社の弱みを克服し、機会に対応していく
  4. ・弱み×脅威:自社の弱みを把握して、脅威を回避する、その影響を最小化する

以上の内容をもとにビジネスモデルの構想も可能です。

●ビジネスモデルキャンバス

ビジネスモデルキャンバスとは、モデルの検討にあたって必要な情報(要素)を漏れなく集め、そのビジネスの構造を整理し仕組み全体を俯瞰しながら設計するためのフレームワークです。

具体的には、以下の9項目について情報を整理し仕組みを検討していきます。

(1)顧客セグメント

創造した価値を届けたい人は誰か、そのターゲットは誰か、を書き出します。「会社員」や「建設工事会社」といった範囲の広い括りではなく、どのようなニーズや課題を有しているか、どんな購買行動をとるのか、といった細かな特徴を踏めるのが望ましいです。

(2)提供価値

自社ビジネスで顧客へどのような価値を提供するか、顧客が有するどんな問題を解決するか、を書きます。顧客にとっての価値は、新規性、効率性、マッチング性、デザイン性、ロイヤルティ・ステータス、コスト、リスクの程度、簡単さ、使いやすさ、などの視点で計ることが重要です。

(3)キーリソース

価値を顧客に提供し続けるというビジネスのために、不可欠なリソースを書き出します。人材や生産・販売等のコスト、工場やシステムなどのリソース、外注先、などです。

(4)キーアクティビティ

価値提供のために企業が実行する必要のある重要な活動を書き出します。生産・開発・製造・流通・販売などのバリューチェーンから考えると、抽出しやすいです。

(5)キーパートナー

事業上のリソースや活動の中で、外注や委託をしている場合、そのパートナーを書きます。具体的には、原材料の供給業者、加工品の外注先、運送会社などです。事業に関して、対応力、効率性やリスク低減などの点で重要度の高いパートナーなどを抽出します。

(6)顧客との関係

どのように顧客との関係を構築・維持するか、などを書き出します。着目点としては、情報提供、相談対応、アフターサポートや運用支援、などです。

(7)チャネル(販路)

顧客に自社ビジネスの価値を提供するための必要なチャネルを書き出します。なお、チャネルの評価要素は、顧客満足度、アクセス、決済、対応の迅速性、アフターフォロー、コストパフォーマンス、などです。

(8)コスト構造

ビジネスモデル上の主なリソースやアクティビティでどのくらいのコストが発生するかを書き出します。例えば、事業のインフラコスト、マーケティングコスト、オペレーションコスト、人件費、その他経費、などです。

(9)収益の流れ

顧客に提供する価値の対価として、顧客からどのように収益を得られるかを書き出します。収益ポイントを示し、その流れが理解できるように示すことが重要です。

  1. どのような価値にお金を払ってくれるか?
  2. いくらなら顧客は買ってくれるか?
  3. どのようにしたら継続購入してくれるか?

などの検討が求められます。

●9セルフレームワーク

「9セルフレームワーク」は、Who、What、Howの3つ視点を横軸に、ビジネスを作り出す「顧客価値」「利益」「プロセス」の3つの要素を多軸にとり、ビジネスの仕組みを図的に捉えて構想するためのツールです。

具体的には以下のような構造になっています。

  1. ・「顧客価値」の視点から「顧客は誰か」→「何を提供するか」→「どう提供するか」を考える
  2. ・「利益」の視点から「誰から利益を得るか」→「何で利益を得るか」→「どう利益を得るか」を考える
  3. ・上記の内容を踏まえ、「誰と組むのか」→「役割分担は」→「どのような手順で行うのか」という「プロセス」を考える

9個のセルで浮かびあがった内容をまとめることでビジネスの仕組みの組立が容易になるのです。

3-2 建設業で有望度の高いビジネスモデルのテーマ

事業再構築補助金の採択案件から、建設業において有望と評価されているテーマを紹介します。新たなビジネスモデルを構想する際の参考にしてください。

1)建設業の有望テーマ

経済産業省の「事業再構築に向けた事業計画書作成ガイドブック」(令和4年10月3日)のP39に、「統計上の有望度別テーマ(3/3)」が示されており、建設業の内容が確認できます。

この「有望度別テーマ」は、事業再構築補助金申請における事業計画書の蓄積されたデータに基づいて得られた結果(申請率と採択率による評価)です。有望度は「高」「中」「低」の3つのクラスがあり、各々の内容は次のようになっています。

  1. ・高:市場成長を背景に魅力的な事業領域
  2. ・中:市場性があるものの参入障壁が高い事業環境
  3. ・低:低成長市場/多数の事業者の参入で、厳しい競争環境

本資料のP69~には建設業の「テーマの特徴および採択事業例」の内容が示されており、その「有望度高・中テーマ一覧(一部「低」を含む)」は下表の通りです。

番号 事業テーマ名 特徴 採択事業例
1 宿泊・アウトドア事業・地域活性化 アウトドア設備等付加価値を付与した宿泊施設の展開 離島でのホテル事業
2 産業廃棄物処理・エコリサイクル事業 SDGsに関わる再利用全般での事業展開 中間処理場への展開
3 家具のデザイン・制作 家具製造技術を活かしたインテリア生産・オリジナル商品の製造等への展開 コロナ対応特注家具の製造販売
4 介護・福祉事業への展開 高齢者や障害者介護サービス事業の展開、洗濯代行等への展開 介護従事者を支援するデジタル化グループホーム事業
5 デジタル活用・DX推進 デジタル技術を活用した製造プロセスの合理化、新分野進出 IoT体感型モデルハウスを利用したIoT機器設置事業
6 ドローンの活用 ドローンを活用した点検業務の推進、ドローンスクールの運営 ドローンを利用して外壁・屋根調査
7 解体事業の展開 空き家解体参入から始まる環境循環型ビジネスモデル構築事業 古材再利用による空き家問題解決
8 ICT技術の活用 ICT技術の活用による建設や検査プロセスの合理化 ICT建機による業務体制の再構築
9 木材製品の製造・販売 木材の加工生産体制の拡充、需要が高まっている分野に進出 地元の木材を活用した在来型木造建築向け製材事業への展開
10 リフォーム事業 中古住宅や空き家のリフォーム・リノベーション事業の展開 賃貸マンションの原状回復事業の強みを活かした中古物件リノベーション事業
11 DIY事業の展開 DIYキットの製造販売やスクール運営事業の展開 DIY家具キットの販売提供
12 飲食業への転換 中古物件や古民家を活用した飲食事業の展開 ドライブスルーゴーストキッチンの賃貸・運営事業
13 カフェ・コミュニティ事業の展開 観光資源等を活用したカフェ事業の展開 ショールーム的な位置づけのカフェを新設
18 塗装事業の新展開 塗装業の強みを活かした他事業への進出等の事業展開 建築塗装の技術力を活かして工業塗装へ進出
22 体験型消費サービス DIY体験や滞在空間の提供・スクール運営 ワイン製造体験できる一棟貸切民泊施設

上表の内容から、宿泊・観光関連、レジャー・アウトドア関連、福祉・介護関連、デジタル・DX・ドローン関連、小売業関連、などの分野が建設業者での新たなビジネス(モデル)の対象分野として期待されています。

2)ビジネスモデルの構想での重要ポイント

事業再構築補助金の申請では、以下の視点が適切に盛り込まれることが必要とされていますが、一般のビジネスモデルを構想する場合でもこの視点は重要です。

●事業(再構築)の方針決定

これは、これからどのような事業をどのような理由・根拠で始めるか、の内容を示すことになります。自社を取り巻く経営環境を把握・分析し、自社の強み・弱みの観点から当該事業を選び参入する、という理由などの説明が必要です。

●新たな製品/サービスと実現する強み

この内容は、当該事業で提供する製品/サービスの内容について、その特徴、優位性などを示すことになります。

●目標設定と投資対効果の検証

ここでは、事業の目標をどのような方法で実現するか、投資に対してどれだけのリターンが得られるか、などを示すことが必要です。

●実行可能な計画の策定

これは、構想したビジネスモデルを実行するための事業計画の策定を意味します(モデルの構想後に着手ください)。ビジネスモデルの構想後、当該モデルを遂行するために、リソースを明らかにして、何故、いつ、どこで、誰が、何を、どのように、実施していくかについて、端的に示すことが計画策定で必要です。

●業種固有観点

各業種・各事業には、それぞれ独自の特徴があり、それがビジネスの成否に大きく影響するため、その内容を把握してモデルに反映する必要があります。業種固有観点は、その特徴を事業でどう活用するか、といった内容を示すことです。

3-3 ゼネコンの新ビジネスモデル

ゼネコンの新しいビジネスモデルとして、株式会社大林組の取組を簡単に紹介しましょう。同社では、社会課題の解決に向けたビジネスモデルが構想され、以下のような取組が推進されています

●「労働力不足の解決」

  1. ・トンネル現場でロボット・デジタル技術を活用した測定作業の実証(今後は地下躯体や橋梁などへ展開)
  2. ・多様なデジタル技術を活用して、北海道日本ハムファイターズの新本拠地となる「エスコンフィールドHOKKAIDO」を建設

土木DXや建築DXを従来の建設事業に導入し、労働力不足の解決や生産性向上に取り組まれています(既存市場×新技術で業務等の改革)

●「カーボンニュートラル」への貢献

  1. ・照明・空調のセンサー制御等による省エネ性能の向上、モバイル端末での消費エネルギーの見える化、外構の緑化など、環境に対し様々な配慮したビルの建設
  2. ・バイオマス発電所、原風力発電所、メガワット級グリーン水素製造プラントの建設

「カーボンニュートラルの実現」という社会課題の解決をビジネスモデルとした取組が強化されているのです(新市場×新製品・新技術等で事業拡大)

4 まとめ

今後の国内建設業では、建設需要が大幅に増加する可能性が低く、また、コロナ禍やインフレ状況等による経済活動の停滞の影響を受け、これまでのビジネスモデルによる成長が困難になってきました

そのため建設業の大手ゼネコンから末端の下請業者まで、新たなビジネスモデルの採用が迫られているのです。新たな事業の仕組みを作っていくのは容易ではないですが、上記の内容を参考の上これまで培った経験・ノウハウ、技術や人脈などの資源を活用して新ビジネスモデルを検討してみてください

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