建設業でSDGsに取り組むメリットや事例を紹介!
「SDGs(エス・ディー・ジーズ)」と言う単語は、インターネットやテレビなどのメディアやビジネスの間でも広く使われる単語となっています。SDGsは、持続可能な開発目標です。事業者に社会的責任がより強く求められている時代のニーズに合わせて、今後はSDGsの理解や実践が今まで以上に求められていくことが予想されます。
そのため、今回の記事では、SDGsについて概要と企業の取組、建設業が果たす役割や取り組むメリットや事例をご紹介するので、参考にしてみてください。
目次
1 SGDsと企業
SDGsは、2015年9月に国連サミットで全会一致のもとで採決されました。持続可能な開発目標「Sustainable Development Goals」の頭文字によってSDGsとなっていて、ミレニアム開発目標(MDGs)の後継目標になります。
SDGsは、「誰一人取り残さない(leave no one behind)」ことを宣言しており、活動は国や公益団体だけでなく企業や個人などの社会を構成する全ての人が取り組む前提を持っています。
そのため、近年ではSDGsに取り組む企業やその取組を評価する消費者や企業が増えています。
1-1 SDGsとは
SDGsは、2015年9月の国連サミットで採択された、国連に加盟する193カ国が2030年までの15年間での達成目標になります。
SDGsは、「Transforming Our World(我々の世界を変革する)」と文章に含まれている目標になります。上記に記載している国連で採択されたのも、この文章全体が採択されています。
●SDGsの本質はTransform
Transformは、日本語では変革と訳します。変革なので大きく変わり、現状からは大きく異なるレベルの意味になります。
そのため、SDGsの本質は17の目標を達成させれば良いわけではありません。持続可能な社会に向けて世界を本質的な改善に向けて変革していくことが求められています。
●SDGsは広く全員が対象
SDGsは、国(政府や地域)や企業などの法人や事業者、そして個人としての取組も求められます。自分達が住んでいる世界を変革することに目的があるため、関わりがない地域や組織や個人はいなく、広く地球規模で問題に取り組む目標になっています。
SDGsのスローガンには、「誰一人として取り残さない」と言うスローガンがあります。そのため、地球で生活するすべての人が対象になっています。
●SDGsの構成
SDGsは、17の目標とその目標を達成するための169個のターゲットで構成されています。
1-2 SDGsの17の目標
SDGsは2030年までに達成すべき17の目標で構成されています。その目標と大枠の意味は以下になります。
1 貧困をなくそう | すべての場所で、全ての形態の貧困を無くす |
---|---|
2 飢餓をなくそう | 飢餓を無くし、食料を安定にかくすることで栄養状態の改善を達成する。そのために必要な持続可能な農業を推進する。 |
3 すべての人に健康と福祉を | すべての人が健康的な生活が確保できるための福祉を推進する |
4 質の高い教育をみんなに | すべての人が公平になるよう質の高い教育を受けられるようにし、生涯教育の機会を促進する |
5 ジェンダー平等を実現しよう | ジェンダーの平等を実現させ、すべての女性と女児のエンパワーメントを促進する |
6 安全な水とトイレを世界中に | すべての人が安全に使用できる水やトイレなどの衛生を活用できるよう持続可能な管理を確保していく |
7 エネルギーをみんなにそしてクリーンに | すべての人が利用できる価格で信頼できる持続可能でクリーンなエネルギーへのアクセスを確保する |
8 働きがいも経済成長も | 働きがいを持てる人間らしい仕事(ディーセント・ワーク)と、すべての人のための包摂的かつ持続可能な経済成長を促進する |
9 産業と技術革新の基盤をつくろう | 強靭なインフラ整備の実現による包摂的で持続可能な産業の成長と技術革新の基盤を推進する |
10 人や国の不平等をなくそう | 国内と国同士の不平等や格差を是正していく |
11 住み続けられるまちづくりを | 都市と人々の居住地を包摂的に安全かつ強靭さを持続可能にする |
12 つくる責任つかう責任 | 持続可能な生産と消費パターンの確保をする |
13 気候変動に具体的な対策をに | 気候変動自体とその影響へ対応するための緊急的かつ具体的な対策を実施する |
14 海の豊かさを守ろう | 海洋自体と海洋資源を持続可能な環境を保全するための持続可能な海洋資源の利用を行う |
15 陸の豊かさも守ろう | 陸上生態系の保護や回復および持続可能な利用を促進し、森林の持続可能な管理と砂漠化への対策と土地劣化の阻止と回復、生物多様性損失の阻止を促進する |
16 平和と公正をすべての人に | 平和で包摂的な社会の実現を推進し、すべての人が司法へアクセスでき、効果的で責任ある包摂的な制度構築を行う |
17 パートナーシップで目標を達成させよう | 持続可能な開発に向けた具体的な実施手段を強化することで、グローバルパートナーしっぷを強化する |
●169のターゲット
ターゲットは目標をより細分化かつ具体化しているものです。SDGsの17つの目標それぞれにターゲットがあります。さらに、そのターゲットにはグローバル指標が設定されています。
例として、1つ目の目標である「貧困をなくそう」と言う目標には、5つのターゲットが設定されています。
例:2030年までに、現在1日1.25ドル未満で生活する人々と定義されている極度の貧困をあらゆる場所で終わらせる(外務省「JAPAN SDGs Action Platform」より)。
1-3 SDGsに対する取り組み
SDGsは、世界のすべての国でも取り組みが求められる目標になります。2015年から取り組みが開始されたSDGsは世界中で取り組まれていますが、その進捗状況は異なっています。
世界の国の動きを見ていると経済大国でもあるアメリカと中国の動きが目立っています。アメリカはバイデン政権になり『グリーンニューディール』気候変動に対する政策を立ち上げています。また、中国は2060年までにカーボンニュートラル(ネットゼロ)を目指す表明を発表しています。
アメリカと中国以外のそれぞれの国でも、SDGsの達成に向けて政策や推進が各国政府を主導に進められています。国別のSDGs達成度が公表されています。
直近の国別の進捗状況は毎年のレポートが公表されています。2022年10月末時点の最新レポートは『Sustainable Development Report 2022』になります。レポートでは、進捗状況がスコア化された国別のランキングもあります。
●国別のSDGs達成状況スコアランキング
SDGsでは、17の目標と169のターゲットとさらに232の指標があります。そのため、指標の進捗状況などからスコアランキングがつけられています。
2022年のランキング上位5位は以下の通りです。
()は2021年の順位になります。
- 1位はフィンランド(-)
- 2位はデンマーク(3)
- 3位はスウェーデン(2)
- 4位はノルウェー(7)
- 5位はオーストリア(6)
フィンランド、デンマーク、スウェーデンは前年と変わらず上位3位を維持しています。2021年の上位5位に入っていたドイツ(2022年は6位)とベルギー(2022年18位)はそれぞれ順位を落としています。
日本のランキングは2022年は19位で、前年度から1つ順位を落としています。163カ国中の19位はランキング上位と言えます。一方で、過去から順位の推移を見てみると年々ランキングが下がっている傾向があります。
●日本の評価と課題
日本では、国民のうち4人に1人はSDGsを認知している状況で認知度が高くなっています。評価が高い項目としては教育とイノベーションの分野などがあります。また、保険や海洋資源への取り組みなどの発展状況は評価を得ています。特に国民皆保険制度は高い評価を得ています。
また、国内外で発生する自然災害や継続して取り組むべき社会課題に対して「人とのつながり」や「助け合い」を重視した取り組みによって解決策を探す姿勢の広がりが評価を受けています。
一方で、日本のSDGsの17の目標のうち6つの目標が深刻な課題とされています。
深刻な目標は以下の6つになります。
- 目標5 ジェンダー平等を実現しよう
- 目標12 つくる責任 つかう責任
- 目標13 気候変動に具体的な対策を
- 目標14 海の豊かさを守ろう
- 目標15 陸の豊かさも守ろう
- 目標17パートナーシップで目標を達成しよう
ジェンダー平等を実現しようとする目標5では、5つある指標の1つである『国会における女性議員の割合』が深刻な課題の評価を受けています。また、過去同様に深刻な課題とされていた『賃金のジェンダー格差』についても非正規雇用の割合が男性22%に対して女性56%と高い傾向が続いており、女性の賃金が低い課題は継続しています。
つくる責任 つかう責任を実現する目標12では、『電子ごみの廃棄量』と『プラスチックごみの輸出量』の2つの指標が深刻な課題の評価を受けています。日本での電子機器の排気量は2020年時点で257万トンと世界で4位の規模となっています。また、同様に日本は世界で有数の廃プラスチック輸出国となっています。
紀行県道に具体的な対策をとする目標13では、『化石燃料の燃焼・セメント生産による二酸化炭素排出量』と『輸入にともなうに炭化炭素排出量』『CO2一トンあたりの60ユーロした時の炭素価格』の3つが遅れて居る課題です。3つの中でも日本の二酸化炭素排出量は世界5位*となっており、早急な課題解決が求められています。
海の豊かさを守ろうとする目標14では、指標5つのうちの4つ『海洋地区の保護された平均占有面積』『漁獲されすぎた、または崩壊した魚種資源から獲られた魚の割合』『輸入にともなう海洋生物多様性への脅威』『海洋健全度指数』が深刻な課題とされています。その中でもプラスチックごみがその大半を占める海洋ごみの問題があります。
陸の豊かさも守ろうとする目標15では、海の豊かさを守ろうとする指標同様に5つの指標のうち4つが深刻な課題となっています。『地上地区の保護された平均占有面積』『淡水地区の保護された平均占有面積』『輸入にともなう地上・淡水の生物多様性への脅威』『レッドリスト』のほぼすべて指標が停滞もしくは悪化している結果になっています。
パートナーシップで目標を達成しようとする目標17では、7つの指標のうち『国民総所得(GNI)に含まれる政府開発援助(ODA)の割合』『金融秘密度スコア』の2つが深刻の課題の評価になっています。日本における国民総所得に対する政府開発援助額は0.2%で世界の1/3以下になっており、OECD/DAC加盟国29か国のうち20位と低い状況**です。
*参考:外務省「二酸化炭素(CO2)排出量の多い国」より
**参考:教育協力NGOネットワーク「SDG4教育キャンペーン2020公式サイト」より
2 建設業がSDGsに果たす役割
SDGsはすべての地域とすべての組織や個人が取り組むべき目標です。そのため、建設業を営む事業者も同様に、SDGsに対して果たすべき役割があります。
建設業はもともと社会インフラの建設・維持において重要な役割を担い続けており、それはSDGsの持続可能な社会の実現と合致しています。
2-1 SDGsと建設業の関連性
建設業界は、人々の生活や社会活動の基盤となる住居や社会インフラの建設と整備を担っています。建設と整備に加えて、防災や衛生や省エネを実現するための技術開発や環境保護などにも努めています。
SDGsの17の目標の達成に向けてすべての局面に影響がある業界と言えます。だからこそ、建設業がSDGsの目標達成と持続可能な社会の実現を牽引していく業界になることが期待されています。
その中でも目標11『住み続けられるまちづくりを』や目標8『働きがいも経済成長も』、目標9『産業と技術革新の基盤をつくろう』については建設業にとって特に高い関連性のある目標になっています。
●『住み続けるまちづくりを』の実現に向けて
道路などの設備と社会インフラの建設と改善を行うことが最も大きな建設業の役割であり、できることになります。また、建設を行う際に省エネルギーな活動になることを配慮しながら、出来上がった設備や建設物そのものやその建設物を利用する人々の活動自体も省エネルギーなものなるよう考慮する役割を担うことができます。
●『働きがいも経済成長も』の実現に向けて
包摂的かつ持続可能な経済成長を実現するためには、現在においては企業活動とそれを支える消費者の消費活動が必要です。
安全かつ快適な事業施設や流通を支える交通網などは、経済成長において最も重要な要素の1つになります。これらは道路や建物の建設・整備なくして実現できないため、建設業の役割が大きくなります。
また、日本の少子高齢化に対応するためのバリアフリー施設の整備なども高齢者の労働への参加など経済成長の大きな要素になります。
働きがいや人間らしい雇用(ディーセント・ワーク)の促進も、職場環境の改善に業界を上げて取り組む建設業が果たす役割は大きくなっています。「きつい・汚い・危険」の3Kのイメージが定着している建設業の職場環境の改善活動は、働きがいやディーセント・ワークの促進と同義になります。
●『産業と技術革新の基盤をつくろう』
目標9のターゲットは、信頼できる持続可能な強靭(レジリエント)なインフラ開発が設定されています。強靭なインフラ開発を担うのは建設業になり、地方公共団体と共同してのインフラ開発が求められています。
また、資源利用効率の向上やクリーン技術及び環境に配慮した技術・産業プロセスの導入拡大を通じたインフラ改良や産業改善も同じくターゲットとして設定されています。建設や整備だけでなく、資源利用効率や環境に配慮したインフラ改良も建設業にも求められる役割になります。
さらに、木材を使った住宅建設も多い日本の建設業においては、森林伐採などの課題に対して積極的に取り組みを行うことで目標15「陸の豊かさも守ろう」に対して大きな課題を残すことになります。
2-2 建設業におけるSDGsアクションプラン
建設業では、日本政府が示したSDGsアクションプラン2021の取り組みに基づいて建設業界の取り組むべき事項を整理しています。
日本政府が示した8つのアクションプラン*からで、建設業は4つのアクションプランを優先課題として取り組むことを決めています。
4つの優先課題と取り組み内容は以下の通りになります。
成長市場の創出、地域活性化、科学技術イノベーション |
など |
---|---|
持続可能で強靭な国土と質の高いインフラの整備 |
|
省・再生可能エネルギー、防災・気候変動対策、循環型社会 |
など |
生物多様性、森林・海洋などの環境の保全 |
|
それぞれの優先課題に対する建設業のアクションプラン概要は、一般社団法人日本建設業連合会が作成した『建設業におけるSDGsアクションプランに向けて(ワークング自主研究)』で確認できます。
*SDGs推進本部作成『SDGsアクションプラン2021』資料で確認できます。
2-3 一般的な建設業者に求められるSDGsへの取り組み
SDGsはどの程度の規模の企業が取り組むべきなのか、自分の会社は始めたほうが良いのか?と感じている企業の代表や従業員の方も多いかもしれません。
結論から言えば、どの規模の企業もSDGsに取り組むべきです。特に建設業者にはSDGsの考え方を理解して、既に実施している事業活動をSDGsの考え方と合致しているものや少しの変更で合致する活動が必ず見つけられるはずです。
特に、少子高齢化と人口減少によって深刻な人材不足・人手不足になっています。また、環境問題に対応していくことも地球で事業活動をしている以上取り組みをしなければ行けない課題と言えます。
人手不足の中で人材の高齢化が進んでいる現在の小規模建設業者は、負担が大きくなっています。そんな中で環境問題や社会問題に対応していくSDGsの目標は当面の課題のように感じられないかもしれません。
環境問題や社会問題に取り組む活動自体が、社会的な価値になります。そのため、SDGsに積極的に取り組みながら事業活動を実施する企業は先々の就職希望者から見ても差別化につながります。特に、環境問題や社会問題に敏感であるとされているZ世代などの若い人材にとってはSDGsの活動に力を入れている建設業者は他の建設業者より良い影響を与える可能性が大きくなります。
●中小企業の取り組み例
木造の注文住宅を取り扱う小規模の建設業者であっても、Webサイトに『豊かな緑を守りながら、安全安心で快適な住まい造りを実現する』と言う自社の事業のあり方とSDGsの目標をリンクさせたメッセージを送ることができます。
それ以外にも、『つくる責任 つかう責任』への取り組みとして建設工事において発生する廃棄物に対してリユースやリサイクルに取り組むこともSDGsにつながる活動と言えます。また、長期優良住宅認定制度に対応する建設業者はそれだけで環境面で優位性があると言えます。
3 建設業が取り組むメリットと留意点
SDGsに取り組む建設業者としては、スーパーゼネコンや大企業のゼネコンが実施しているイメージが定着しています。もちろん、スーパーゼネコンや上場しているゼネコンはSDGsの取り組みを実施しているところが大半です。
しかし、だからといって規模の大きい会社だけがSDGsに取り組むメリットがあるわけではありません。小さな規模の会社でもSDGsに取り組むメリットはあります。
SDGsに取り組む建設業者には明確なメリットと留意点があります。既にSDGsに取り組んでいる建設業者はメリットとデメリットを理解・比較して、実施する決断をとっています。
3-1 建設業がSDGsに取り組むメリット
建設業者がSDGsに取り込むメリットは、幾つもあります。だからこそ、SDGsに取り組む義務はないにもかかわらず、SDGsへの取り組みを開始する事業者が増えています。
SDGsに取り組むメリットは大きく以下の3つが挙げられます。
●企業のイメージが向上
SDGsは地球規模の大きなかつ中長期的な課題です。そのため、ある意味においてはいまやらなくても現在の利益にマイナスな影響は少ないとも言えます。SDGsに取り組む企業の多くは、社会的責任を担うように、短期的な利益に関わらない部分を重視して活動しています。
そのような社会的責任を果たしていく企業は、社会的責任を果たそうとしない企業と比較すると企業のイメージが大きく向上できます。
企業イメージの向上は企業ブランディングにおいては大きな影響があります。企業イメージの向上は、建設業にとって規模の大きい工事依頼だからこそ「任せられる」安心感は受注にプラスの影響をもたらします。
また、採用の面でも社会的責任を果たそうとする企業には社会的責任に興味を持つ優秀な人材の目に就くきっかけになります。建設業がSDGsへの取り組みを含めた社会的責任を果たしていくためには、継続的な若い人材の採用が必須です。
これから今まで建設現場の第1線で活躍してきた60代前後の世代が引退して建設業から去っていくのは10年の単位で見ていくと必然と言わざるをえません。また、高齢化した職場環境ではイノベーションや技術革新が起こりにくく、日本国内の競合他社から遅れをとる原因になります。
世代交代を円滑に行うための若い人材の採用と活躍は、建設業社の必須課題です。SDGsに対する年齢別の認知度を見てみると、若ければ若いほど認知度が高く、年齢を重ねるごとに認知度が下がっていっています*。
これからの社会的課題に興味は、若い年齢ほど関心が強くなっているのがわかります。そんな若い人材を採用するためにもSDGsの取り組みはプラスに働きます。
*参考:電通PRコンサルティングニュース『企業広報戦略研究所が、全国生活者1万人を対象とした「2020年度ESG/SDGsに関する意識調査」結果を発表』
●新しいビジネスチャンスが広がる
SDGsの課題は、多くの地域で共通している課題になっています。そのため、課題解決のためのソリューションを提供できる企業にはチャンスが広がっています。
それは、国内で考えた時には競合他社との競争に勝る要素になります。また、海外に目を向けると技術の輸出や海外展開を成功させるための大きな要素になります。
さらに、今まで課題としていながら解決できていなかった、もしくは他社では解決できない場合には競争が生まれにくいため売上と合わせて利益も確保しやすくなります。
新たしい技術は、新しい課題を解決するために生まれることが多いため、自ら新しい課題に取り組む企業は新しい技術や新しいビジネスチャンスが広がる可能性を持っています。
●受注アップが見込める
SDGsに取り組んでいる建設業社は、直接的には受注が増えるものではありません。しかし、SDGsの必要性の認知と理解が広がることで、注文をする相手企業もしくは消費者が「SDGsに取り組んでいる企業」を選ぶことが増加しています。
同じ技術で同じ価格のサービスを持っているSDGsに取り組んでいる企業と取り組んでいない企業では、取り組んでいる企業を選ぶ企業や人が大半なのは当然です。
今後期待できる流れとしては、SDGsに取り組んでいる企業を優先的に選ぶ流れです。SDGsは社会の将来を大きく揺るがす課題に今取り組む動きを促進する目標です。
そのため、SDGsに取り組む企業を応援・支援していく企業や消費者が増えています。SDGsの認知度が上がれば上がるほど、長い期間SDGsに取り組んできている企業が応援される相乗効果が生まれてくることが期待できます。
逆に、今後はSDGsに取り組んでいない企業に対するイメージが悪化していく可能性すらあります。特に、企業への投資の観点から言えば社会的責任を果たしているかどうかの視点で投資を決める投資家が多くなっている事実があります。
早くにSDGsに取り組んでいることは取り組まない企業と比較して大きなアドバンテージになる可能性を秘めていると言えます。
3-2 建設業者がSDGsに取り組む上での留意点
SDGsに取り組む上での留意点は、『中長期的な視野』を持って行う取り組みである点です。
つまり、SDGsへの取り組みは、短期的に利益が増えるような活動ではありません。場合によっては、今まで実施していなかった活動や専門知識が必要になるため、コストが増すなど事業への負担が増える可能性が多くあります。
そのため、株式会社がSDGsに取り組むことをネガティブに捉える株主や取引先もいる可能性があるのは事実です。また、従業員からすると新しい活動自体がネガティブに映る可能性もあります。
そのため、SDGsの取り組みを開始しようとする場合に、その必要性とその活動の目的や活動内容をステークホルダーに事前に説明することが有効になります。
その上で、SDGsに取り組むには中長期的な活動であることを前提として、経営理念にまでSDGsや持続可能な社会の実現への取り組みを組み込んでの活動が望まれています。
4 まとめ
持続可能な社会の実現のために設定された17の目標であるSDGsは、将来の社会のために必要な課題です。そのため、SDGsに取り組むのはすべての組織や個人にとって当然の行動とも言えます。一方で、すべての組織や個人が取り組むべき課題であるため、できる活動を実施する無理がないただし持続できる活動が求められています。
建設業はSDGsにおいて果たせる役割が大きく、その目標の達成を率先して働きかける立場にある業界になります。SDGsを正しく理解し、持続可能な活動によって社会を1つずつ変革していける活動を行うことが大切です。