建設業の2025年問題とは?今後の展望や対策のポイントは?
2025年問題とは、戦後第一次ベビーブームとなった1947~1949年に生まれた団塊の世代が、2025年になると後期高齢者である75歳以上となり、福祉・社会保障の負担の急増が懸念されている問題のことです。
近年の日本では少子高齢化社会が続いており、高齢化率21%以上と超高齢化社会となっていますが、2025年頃になると団塊の世代の全てが75歳を迎え、4~5人に1人は後期高齢者である75歳以上となるため、更なる超高齢化社会を迎えることとなります。
建設業界においても高齢化がすすんでおり、55歳以上が約34%、29歳以下は約11%となっています。高齢化が進む建設業界では、健康管理や安全対策も同時に考え、高齢になっていく建設業従事者にも長くは働いてもらうことを考えなければなりません。
また、建設業界では2025年になると約90万人の人手不足となるとされており、建設業界の課題として人材の確保が重要とされています。
今回の記事では、建設業の2025年問題や今後の展望、対策のポイントについて解説するので、参考にしてみてください。
目次
1 2025年問題と2035年問題、2040年問題それぞれの違い
2035年問題とは、団塊の世代が後期高齢者である75歳以上となり、日本全体の人口の1/3が高齢者になることで起こる社会問題です。
2025年問題と比べると、高齢者の増加がさらに進むことにより、医療負担がより拡大するとされています。
経済産業省によると、2035年には295万人の介護職員が必要なのに対し、供給は227万人となるとされており、人材の需給バランスは68万人の差があることが報告されています。
一方、2040年問題とは、日本国民の4人に1人が後期高齢者である75歳以上の、超高齢化社会となる未来で起こる社会問題です。
2025年問題と比べると、人口の減少が進み、医療の需給バランスが崩れるとされています。
2040年には約2,500万人の人口が75歳以上を迎えますが、それを支えていかなければならない現役世代の20~64歳の人口は約5,500万人となると見込まれています。
このことから、2040年の日本では今までの高齢化社会よりもさらなる超高齢化社会を迎えることになり、2040年問題を解決するには2025年問題・2035年問題の解決が必要不可欠といえます。
2 2025年問題が社会的に与える影響とは?
2025年問題が与える社会的影響のひとつとして、医療費や介護費が増えること懸念されるとともに、それに伴う現役世代の負担の増大があります。
後期高齢者である75歳以上の一人当たりの医療費は93万9000円となり、75歳未満では平均22万2000円なのに対し、約4倍と大きく増加しています。
社会の基盤となってきた世代が支えられる立場になることで、年金などの社会保障給付費は、2018年の約121兆円から、2025年には約141兆円になると言われています。
一方で、年金・介護・医療などサラリーマンの保険料率は、2025年には31%の増加を見込まれており、現役世代の負担をどれだけ軽減するかが大きな課題となります。
2025年問題の対策として、政府では「全世代型社会保障検討会議」を設置し、労働・年金・医療・介護などの各分野での改革のために議論を行っています。
年金については、一部法改正をして厚生年金の加入条件緩和を検討しており、パートなどの短時間労働者が厚生年金に加入しやすく、非正規雇用者の年金の引き下げ対策になることも期待されています。
労働については、高齢者の就労促進が議論されてきましたが、2021年4月1日から「高年齢者雇用安定法」の一部が改正されています。
この改正は、70歳までの定年年齢の引上げを義務付けるものではなく、個々の労働者の多様な特性やニーズを踏まえて、70歳までの就業機会の確保を多様な選択肢を法制度上整え、事業主としていずれかの措置を制度化する努力義務を設けるものです。
医療分野では、後期高齢者である75歳以上の病院などでの負担額を、原則1割負担から、一定の所得以上の人は2割負担に引き上げる方針で進められています。
3 2025年問題で建設業界に起こる事とは?
建設業界の人手不足問題は、少子高齢化の影響を受けて非常に大きな問題となっています。
建設業界での人手不足の原因として、以下のことが挙げられます。
3-1 人手不足の原因
- ● イメージの悪さ
若者離れにつながる人手不足の原因として、建設業界のイメージの悪さがあります。
社会から持たれている、今までの建設業界のイメージ「3K(きつい・汚い・危険)」に加え「厳しい・帰れない・給料が安い」の意味もあると言われています。
「きつい」については、残業時間の上限がないことや、他業種と比べて長時間労働で休日が少ないことが考えられます。
というのも、建設業界は他の全産業との比較でも、年間300時間以上も長時間労働をしているというデータがあります。さらに建設業生産労働者(技能者)の賃金は、45~49歳でマックスとなっています。
また、建設業界では日給制というところも多いですが、日給制は遅刻や早退。欠勤による給料の変動があるため、収入が不安定である傾向があります。
このような状況から、若年層の建設業界への就職に大きな影響があるといえます。
一方で、建設業界にも以下のような良い点があります。
- ● 絶対になくならない仕事
- ● スキルにより給料が上がる
建設業がなくならない理由として、人が生きていくためには建設物が必要不可欠であるということです。建設業界は将来も仕事がなくなることはないので、安心だといえます。
また、スキルが身につけば高い給料をもらうことができるため、稼ぐことも可能です。ベテランの技能者のなかには、年収800万円以上の収入を稼ぐ人もいます。また、資格を取得することで手当てをもらうことができます。
せっかく働くのであれば、スキルを磨きあげることで、他社との技能の差を図ることができますし、やりがいを見出すことでモチベーションにも繋がるといえます。
3-2 人手不足の解消方法
建設業界の人手不足の解消方法として、以下のことが挙げられます。
- ● イメージの改善
- ● 労働環境の改善
- ● 生産性の向上
- ● SNSを活用した採用活動の強化
- ● ホームページでのPR
- ● 求職サイトの利用
それぞれ詳しくみていきましょう。
● イメージの改善
前述でもお話したとおり、建設業界のイメージは良くないのが現状です。建設業界の人手不足を解消するために必要なこととして、若年層の求職者が建設業界に興味を持ってもらえるようなイメージづくりをすることが大切です。
例として、建設業界の「3K(きつい・汚い・危険)」のイメージを払拭するために、会社それぞれの新しい3Kの定義を掲げている会社があります。
そのなかのひとつでは「3K(カッコイイ・稼げる・けっこうモテる)」を新しい3Kの定義をつくりあげるために施策を行っています。
この会社では「カッコイイ」にフォーカスを置き、機能性とファッション性を重視した作業着のリニューアルの実施を行い、社員のモチベーションと一体感を高めると同時に、建設業界へのイメージ向上への取り組みを行っています。
● 労働環境の改善
- ・長時間労働
- ・給料が低い
- ・収入が不安定
- ・休みがない
経営にも関わる給料の引上げは簡単に変えることはできないですが、長時間労働や休みに関しては、適切な工期の設定をすることや生産性の向上に努めることで改善できる可能性があります。
また、2024年4月から建設業の労働時間の上限規制が設けられることになるため、人手不足の解消だけではなく、法律に伴う労働環境の改善が必要になります。
● 生産性の向上
建設業界ができる生産性向上の方法は以下のとおりです。
- ・ロボットによる溶接
- ・内装ボード貼りロボットの導入
- ・移動式吊り足場
このように、ひとの手をかりない自動溶接機や内装ボード貼りロボットなどの導入による生産性の向上や、品質の平均化ができると同時に、人手不足や作業環境の改善に繋がるとされています。
ただし、ロボットの導入にはメリットデメリットがあるため、しっかりと把握したうえで導入を検討する必要があります。
● SNSを活用した採用活動の強化
近年では、SNSによる採用活動を行う企業が増えてきています。実際に、TikTokを用いた採用活動を行っている企業もあり、無料コンテンツのみで2ヶ月に15名の応募があった工業会社もあります。この応募では2名の採用が決定されています。
● ホームページでのPR
自社のホームページを活用して求職者へのPRをする方法です。実際に、リフォーム会社での人材獲得のため、求人ページを作成して約2ヶ月で求人獲得に成功した例があります。
ホームページの活用は、自分の会社を知ってもらうことができるというメリットや広告費の削減もできるため、効率的かつ有効な採用活用といえます。
● 求職サイトの利用
求職サイトのよる採用活動では「マイナビ転職」「エン転職」「リクナビNEXT」といった正社員向けの求人サイトや、「an」「バイトル」といったアルバイト向けの求人サイトがあります。
また、建設業界に特化した求人サイトには「建設転職.com」「職人さんドットコム」などがあります。利用者数は、正社員向けのリクナビNEXTと比較すると少ないですが、建設業に特化していることから、建設業経験者や転職を考えている人・建設業で働くことを目指している人が見ている場合が多いです。
4 空き家問題から起きる建設業界への影響は?
2025年以降、空き家の数は加速的に増えるとされています。その理由として、団塊の世代が所有する戸建住宅や分譲マンション・別荘などの不動産財産の相続ラッシュがはじまることにあります。
それに伴い、空き家になる自宅の売却件数も増加すると見込まれています。
このことから、ハウスメーカーなどの一部の建築業界や建設業界・不動産業界にとって、人材不足と同様に深刻な問題となるのが、空き家の増加による不動産価格・住宅価格の下落です。
また、新築住宅を購入する世代も現役世代が中心となるため、現役世代が減少することで、さらに住宅が売れにくくなるとも言われています。
このような場合では、リフォームのニーズは高まる可能性があります。
5 働きやすい職場づくりのための施策(建設業向け)
建設業界の労働環境の改善から人材の確保をしていくために、働きやすい職場をつくることが重要とされています。しかし事業主が働きやすい職場づくりをするには、資金や知識が必要となります。
建設業界の労働環境の改善から人材の確保をしていくために、働きやすい職場をつくることが重要とされています。しかし事業主が働きやすい職場づくりをするには、資金や知識が必要となります。
そこで、国土交通省と厚生労働省が「建設業の人材確保・育成に向けて」と題している建設業界向けの施策を紹介していきます。
5-1 現場の安全管理を徹底
国土交通省では熱中症対策の講習会の実施、厚生労働省では墜落や転落災害防止対策普及のための研修会の実施をしています。講習会や研修を受けることで、現場での安全な労働環境づくりを行うことがでるようになります。
5-2 雇用管理の知識の習得
国土交通省は、中小企業事業主を対象にした雇用管理制度導入のコンサルティングやセミナーを行っており、コンサルティングやセミナーを受けることで、中小建設事業主は雇用管理の知識を習得することができます。
5-3 人材育成に関する助成金
事業主が行う対策のひとつとして、人材育成があります。厚生労働省では建設業界の人材確保や育成に向けた取り組みとして以下の制度を活用して従業員の人材育成をすることができます。
- ・工業高校等への出前講座、または現場見学会の開催で必要な経費を助成
- ・技能訓練に必要な経費や、訓練期間中の賃金の助成
- ・賃金体系や研修制度等の雇用管理制度を導入する際の助成
- ・65歳以上が働きやすい環境作りを行う企業に対しての助成や、建設業の人材確保育成に対する助成金
6 建設事業促進のための助成金とは?
行政では、建設事業主や建設事業団体などが取り組む、労働者の雇用の改善や技能の向上に対して助成金を用意しています。適用可能な助成金があれば、雇用問題の解決に活用することができます。
6-1 人材確保等支援助成金
人材確保等支援助成金は、雇用環境の改善など、人材の定着を目的としてつくられた制度です。この制度には、以下の3つのコースがあります。
● 雇用管理制度助成コース
雇用管理制度助成コースでは「諸手当等制度・健康づくり制度・研修制度・メンター制度」の導入をし、従業員の離職率の低下や若年層・女性労働者を増やすことに取り組んだ場合の助成金です。
助成金の適用には、入職率が5.5%以上又は、雇用管理制度の計画開始時の従業員数を超えている場合に、57万円の支給を受けることができます。また、生産性を満たしている場合には、72万円の支給を受けることができます。
● 若者者及び女性に魅力ある職場づくり事業コース
若者者及び女性に魅力ある職場づくり事業コースは、雇用保険料率が1,000分の12である建設事業を行っている企業のなかでも、雇用管理責任者の選任が済んでいる企業に向けた助成です。
若年層や女性にとって魅力ある職場づくりに事業として取り組んだ場合に、中小建設事業主が使用した経費は5分の3、中小建設事業主以外が使用した経費は20分の9を、助成金として最大1年間支払われます。
また、職長研修や雇用管理研修は助成の対象となる研修となり、研修を行った場合は労働者1人あたり、1日8,550円が支払われます。生産性を満たしている場合は増額されます。
作業員宿舎等設備設置助成コース
作業員宿舎等設備設置助成コースは、被災3県の岩手県・福島県・宮城県を対象としたコースとなります。雇用保険料率が1,000分の12である建設事業を行っている企業のなかでも、雇用管理責任者の選定が済んでいる企業向けの助成です。
この助成では、被災3県の岩手県・福島県・宮城県の所在する工事現場で、作業員宿舎・作業員施設・賃貸住宅の賃借をする場合に、支給対象費用の3分の2が支給されます。ただし、賃貸住宅の場合は月額3万円が上限となっています。
6-2 人材開発支援助成金
人材開発支援助成金のなかでも、建設業界向けの助成金に建設労働者認定訓練コースがあります。
建設労働者認定訓練コースの助成は、中小建設事業主で雇用管理責任者の選定が済んでいる企業が対象となります。
都道府県から認定を受けている、訓練助成事業費補助金・広域団体認定訓練助成金の交付を受け、認定訓練を行う場合に、訓練にかかった6分の1を助成として受けることができます。
6-3 トライアル雇用助成金
若年層や女性の建設業界への雇用促進のためにつくられたのが、トライアル雇用助成金です。
この助成金は、中小建設事業主に対して35歳未満の若年層の男性や女性を試行雇用した場合に、1人あたり毎月4万円を3ヶ月間助成する、若年・女性建設労働者トライアルコースとなります。
ただし、就労した日数が予定の日数よりも少ない場合には、減額になる場合があります。
このように、建設業界に若年層や女性の労働者を増やそうと取り組む施策はたくさんあります。しかし、実際の環境がしっかり整っていなければ、せっかく入職しても離職してしまうことになりかねません。
これまでの建設業界のイメージを変え、若年層が建設業界に興味を持ち、受け入れてもらえるような労働環境の改善をし、安心して長く働いてもらえることが大切となります。
7 2025年問題が一般企業に与える影響とは?
2025年問題では、建設業界だけでなく、一般企業にも「人材不足」「事業承継問題」といった大きな影響があります。
● 人手不足
少子高齢化により、建設業界においては特に人手不足による問題があります。
そのひとつに若者離れが例年続いており、イメージの悪さが今でも続いていることが挙げられます。
建設業界の仕事は、きつい・汚いに加え、その割に給料が安いなどのイメージが強く、今の時代の働き方・考え方とは逆行していることから、若者が積極的に働きたいと言えない職業になってしまっていることが原因のひとつです。
また、厚生労働省の調査によると、全産業の年間の総実務労働時間は1741時間であるのに比べ、建設業界では2078時間と30時間多いのに加え、他業種と比べて休日も少なく週休2日ない会社も少なくありません。
建設業界では日給制のところも多いですが、日給制は遅刻や早退・欠勤によって給与に変動があるため、収入が不安定とされていることも人手不足の原因のひとつだといえます。
● 事業承継問題
2025年問題では、経営者の高齢化のよる廃業をいかに防ぐかが大きな課題となっています。
高齢となった経営者が廃業せずに会社や事業をつづけるには、子や従業員・第三者に事業承継が必要となります。
しかし、2025年までに中小企業・小規模事業者の経営者の約245万人が、70歳を超えるとされていますが、そのうちの127万人は後継者がまだ決まっていません。
従業員の高齢化が進んでいる今、後継者がいないなどの事業承継問題があり、簡単に事業承継ができない企業があります。このように事業承継者問題に対しての対策を行わないと、廃業する中小企業が急増してしまい、経済的にも大きな損失が生じると言われています。
8 企業が今すぐ備えておく事とは?
2025年問題に対して企業ができる対応策のポイントを解説します。
人材不足の解消のポイントは以下4つです。
- 1. 人材確保
- 2. 生産性向上
- 3. 離職防止
- 4. 事業承継サポート
それぞれ詳しくみていきましょう。
8-1 人材確保
外国人や女性、シニアの雇用を増やすことで人材不足への対策としてすぐに取り組むことができます。それぞれの人材獲得には以下のようなことが挙げられます。
<外国人雇用の促進>
2018年の改正出入国管理法で、建設・農業・介護など14業種で外国人労働者の受け入れが拡大しています。
しかし、高齢化による人材不足は日本だけの問題ではなく、経済成長で待遇改善が進む国も多ことから、そうした他国との労働力獲得の競争は今後さらに激しくなるとされています。
【外国人を増やすポイント】
- ・働いて生活をする場の魅力を磨く
- ・受け入れの拡大ペースを維持する
<働く女性の獲得>
女性労働者のうち、第一子出産後に就業を継続する割合は、最新の調査では53.1%と、半数以上が出産を機に離職していることがわかっています。
さらに、妊娠前の雇用形態がパートだった女性の74.8%は、出産後に離職しており、正社員に比べて保育支援が充実していないことが原因となっているとされています。
近年では男性育休の制度の普及も増えてきており、2021年度の男性育休取得率は過去最高の13.9%となっていますが、未だに20%未満と低いのが現状です。
女性労働者を増やすためには、女性のみに育児の負担をかけないための支援や制度の導入など、労働環境の整備が必要です。
【女性労働者を増やすポイント】
- ・保育支援の充実
- ・男性の育休制度の検討・取入れ
<シニア労働者を増やす>
高齢化社会にともなって、働くシニアは年々増加傾向にあります。現在仕事をしている60歳以上の約8割は、70歳くらいまで働きたい・働けるうちは働きたいなど、高齢期を迎えても働き続けたいと思っている人が多くいます。
【シニア労働者を増やすポイント】
- ・テレワーク・時短制度などの多様な労働条件
- ・ニーズに応じた柔軟で多様就労形態
- ・非就業者に意識改革を促す支援
8-2 生産性向上
生産性の向上を図り省力化することで、人材不足の対応策となります。
20年度の平均でみると、中小企業は製造業・非製造業ともに労働生産性が低下していることがわかっています。
テクノロジーの活用により、業務を効率化することで少ない人数で業務を進めることが可能になります。
【生産性向上のポイント】
- ・ICTやAI、RPAなど、ロボットによる業務の自動化、テクノロジーを活用する
8-3 離職防止
介護や病気、モチベーションの低下などによる離職を防ぎ、現在在籍している方には長く働いてもらうことが重要です。
長く働いてもらうために重要なことは、従業員の健康です。ここで注目されているのが健康経営の概念です。
経済産業省では健康経営とは「従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実施すること」と説明しており、平成28年度に「健康経営優良法人認定制度」の創設をしています。
【離職防止のポイント】
- ・健康経営を行う
- ・就業者のキャリア形成支援
- ・労働環境の改善
- ・ライフスタイルに合わせた就労継続が可能な環境づくり
8-4 事業承継のサポート
「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律(経営承継円滑法)」の施行により、税制支援及び金融支援の前提となる認定を受ける、遺留分に関する民法の特例を適用するなどで、事業承継の負担を減らせるようになりました。
後継者を育成することを含めると、事業承継には約5~10年の準備期間が必要とされているため、経営者が60歳を迎えるころから準備を始めるのが適当だと判断できます。
ただし、事業承継には法律や税務に関する専門知識が必要となります。税理士や専門家、金融機関、コンサルタント、商工会などからサポートを受けましょう。
9 2025年問題向けた政府の対応は?
2025年向けた政府の対応として以下が挙げられます。
- ● 地域包括ケアシステム
- ● 低所得者・高所得者の保険料の見直し・公平化
- ● 介護人材の確保
それぞれ詳しくみていきましょう。
● 地域包括ケアシステム
地域包括システムとは、高齢者を支えるサービスを地域一体で提供するシステムのことです。
国だけではなく、地域が主体となって医療や介護などの生活支援サービスをし、高齢者が住み慣れた町で自分らしい生活を最期まで送れるように支援をします。
地域包括システムの実現には、医療関係者や介護職など多種職の連携が必要になり、その仲介役である地域包括支援センターやケアマネージャーが重要となります。
現在、国では介護サービスの主体を国から自治体への移行を考えており、地域包括システムの導入はそのための体制づくりともいえます。
また、全国的に介護施設が不足していることから、国はケアの場を施設から住居へ移すことを重視していますが、このことからもシステムの導入は国の意向が背景にあるといえます。
● 低所得者・高所得者の保険料の見直し・公平化
各世帯の所得を見直し、低所得者からの国民健康保険などの保険料を軽減し、高所得者からの保険料の引き上げをして公平化を図ることです。
3年に1度の介護保険法改正のたびに、低所得者の国民健康保険などの保険料の負担軽減は考慮され、細かい部分でも調整されてきましたが、今後さらなる見直しが必要になるかもしれません。
● 介護人材の確保
介護職員の不足がすすんでいくなか、介護職員の人材確保を図るために以下のような策が講じられています。
- 1.大学や専門学校の介護職希望者に対する普及、啓発活動
- 2.介護離職者に対する復職支援(給付金の支給・子育て中でも働きやすい柔軟な勤務体制の構築など)
- 3.外国人労働者の受け入れ(経済連携協定(EPA)、技能実習制度の適用)
10 まとめ
2025年問題は、医療や福祉だけの問題ではなく、建設業界や一般企業にも大きな影響があり、決して避けることはできないことです。それぞれに合った対応策を遂行することで、人材不足や事業承継という大きな問題を最小限にとどめることは可能です。
建設業界の現状は、需要があるものの働き手が足りていない状況であることから、建設業界のイメージアップや労働環境の見直し・生産性の向上に取り組むことで、人手不足の解消に取り組む必要があると考えられます。
また近年では、SNSやホームページなどを用いた採用活動もあるので、積極的に採用活動を行うことも大切です。