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建設業許可があっても他県で工事はできない?

建設業許可は、一定規模以上の建設工事を請け負う場合に受けることとされている許可です。この建設業許可には、国土交通大臣許可と都道府県知事許可がありますが、大臣許可は全国の工事ができ、知事許可は許可を受けた都道府県の工事しか行うことができないと勘違いされることがあります。

しかし実際は、建設業許可を受けていれば、許可の種類にかかわらず日本全国の工事を請け負って施工することができます。

今回の記事では、建設業許可における大臣許可と知事許可の違いや他県で工事施工する際の注意点について解説しています。建設業に携わる方は、ぜひ参考にしてください。

1 建設業許可とは

「建設業許可」とは、建設業法に基づき、一定規模以上の建設工事を請け負う場合に国土交通大臣または都道府県知事から受けなければならない許可をいいます。建設業許可を受けることとされる場合に許可なしで工事を請け負うと、建設業法違反として行政処分の対象となってしまいます。

建設業許可の有効期間は、許可日から5年を経過する日の前日までとなっています。許可を更新する場合は、有効期間が満了する30日前までに更新の許可申請書を提出することとされています。

なお、以下に該当する工事は「軽微な工事」として、建設業許可を受けずに請け負うことが認められています。

〇建築一式工事の場合

  1. ①工事1件の請負金額が1,500万円未満の工事
    ②延べ面積が150㎡未満の木造住宅工事
     

〇建築一式工事以外の建設工事の場合

  1. ①工事1件の請負金額が500万円未満の工事

(注)請負金額は、材料費込みの税込金額です。

建設業の許可は、建設業法に定める工事・業種ごとに受けることになります。建設業許可の対象となる工事・業種は、次の29工事・29業種です。

工事の区分 業種
土木一式工事
建築一式工事
以上の2工事
土木工事業
建築工事業
以上の2業種
専門工事
27工事
大工工事業、左官工事業、とび・土木工事業、石工事業、屋根工事業、電気工事業、管工事業、タイル・れんが・ブロック工事業、鋼構造物工事業、鉄筋工事業、舗装工事業、しゅんせつ工事業、板金工事業、ガラス工事業、塗装工事業、防水工事業、内装仕上工事業、機械器具設置工事業、熱絶縁工事業、電気通信工事業、造園工事業、さく井工事業、建具工事業、水道施設工事業、消防施設工事業、清掃施設工事業、解体工事業
以上の27業種

(注)一式工事とは、専門工事を複数組み合わせた総合的な工事のことをいいます。

建設業許可を受けることとされている工事の中で、一式工事は土木一式工事と建築一式工事の2工事があり、それぞれの工事に対応する業種は、土木工事業と建築工事業の2業種です。また、専門工事は大工工事以下の27工事で、それぞれの専門工事に対応する業種は、大工工事業以下の27業種となっています。

1-1 大臣許可と知事許可の違い

建設業で、国土交通大臣許可または都道府県知事許可が必要とされるのは、以下の場合です。

  1. ①営業所が複数の都道府県にある場合は、国土交通大臣許可が必要
  2. ②営業所が1つの都道府県だけにある場合は、営業所の所在地を管轄する都道府県知事許可が必要

この大臣許可と知事許可の要件は、建設業法第3条に定められています。

【建設業法第3条】

  1. 建設業を営もうとする者は、…(中略)…二以上の都道府県の区域内に営業所を設けて営業をしようとする場合にあっては国土交通大臣の、一の都道府県の区域内にのみ営業所を設けて営業をしようとする場合にあっては当該営業所の所在地を管轄する都道府県知事の許可を受けなければならない。

大臣許可、知事許可のいずれを受けるべきかについては、営業所が複数の都道府県にあるか否かで決まり、営業所の数は関係ありません。営業所が2か所だけであっても、それぞれが異なる都道府県にあれば大臣許可が必要となり、営業所が10か所あったとしても、すべてが同一の都道府県にあればその所在地を管轄する都道府県知事許可を受ければよいのです。

例えば、営業所が東京都と千葉県の2か所にあれば、営業所が異なる都道府県にあるため、国土交通大臣許可を受ける必要があります。

一方で、営業所が5か所あっても、そのすべてが東京都内だけにあれば、同一の都道府県内にすべての営業所があることに該当し、それらの営業所の所在地を管轄する東京都知事の許可を受けることになります。

以上のように、大臣許可と知事許可のどちらを受ける必要があるかは、建設業者の営業所がどこにあるかで決められます

また、営業所の所在以外の企業規模や経営内容、工事の施工範囲、工事施工能力などは、大臣許可と知事許可の区分とは関係がありません。「大臣許可は、知事許可より許可の難易度が高い」、「大臣許可を受けた業者は、知事許可の業者より企業の社会的な信用が高い」などの話は、全く根拠がないということを念頭に置く必要があります。

1-2 許可の種類にかかわらず他県で工事ができる

それでは、国土交通大臣、都道府県知事それぞれの許可を受けた建設業者は、地理的にどの範囲の工事を施工できるのでしょうか。結論を述べれば、大臣許可と知事許可、どちらの建設業者も日本全国の工事を請け負い、施工することができます。

よく誤解されるのが、大臣許可の業者は日本全国の工事ができるが、知事許可の業者は許可を受けた都道府県の区域内の工事しか施工できないというものですが、この解釈は間違いです。

例えば、国土交通大臣の許可を受けた業者、埼玉県知事の許可を受けた建設業者のいずれも、北海道や沖縄の工事を請け負い、施工することができるのです。

2 他県で工事施工する際の注意点

それでは、他県で工事を施工する際に、どのような点に気をつければよいかみていきましょう。

2-1 知事許可では他県で請負契約を行うことができない

既にみてきたように、大臣許可と知事許可、どちらの建設業者も日本全国の工事を請け負い、施工することができます。ただし、知事許可の業者は、他県で請負契約を締結することができないことに注意を要します。

その理由は、請負契約の締結は、建設業法上の要件を満たした「営業所」でしか行うことができないからです。

建設業法における営業所は、常時建設工事の請負契約を締結する事務所、または他の営業所に対し請負契約にかかる指導監督を行う事務所をいいます。都道府県知事許可の業者は、この営業所が特定の都道府県にしかありません。そのため、他県で請負契約を締結することができないことになります。

例えば、千葉県知事の許可業者が鹿児島県の工事を請け負い、施工しようとする場合は、
鹿児島県の現場に近い場所に現地連絡事務所を設けるかもしれません。しかし、この現地連絡事務所が、常時建設工事の請負契約を締結する事務所、または他の営業所に対し請負契約にかかる指導監督を行う事務所としての機能を持たない場合=建設業法における営業所ではない場合は、その事務所で請負契約を締結することはできないのです。

2-2 他県に営業所を新設するには大臣許可が必要である

都道府県知事許可の建設業者が、請負契約を締結するために他県に営業所を新設しようとする場合は、国土交通大臣許可を受ける必要があります

例えば、北海道の工事を請け負う予定の神奈川県知事の許可業者が、北海道で請負契約を締結するために北海道内に営業所を新設する場合は、国土交通大臣の許可を受けなければなりません。

なぜなら、従来営業所が神奈川県内のみにあったのが、北海道にも営業所を新設するため、2以上の都道府県に営業所を置くことになるからです。

2-3 営業所を新設するには要件を満たす必要がある

営業所を新設するには、建設業法で定める営業所の要件を満たす必要があります。

建設業法における営業所の要件は、以下の通りです。

①常時建設工事の請負契約を締結する事務所であること

建設業法における営業所は、常時建設工事の請負契約を締結する事務所をいいます。ただし、常時建設工事の請負契約を締結する事務所でなくても、他の営業所に対し請負契約にかかる指導監督を行うなど、建設業にかかる営業に実質的に関与する場合は営業所として認められます。

建設業法における営業所は、㋐常時建設工事の請負契約を締結する事務所、または、㋑他の営業所に対し請負契約にかかる指導監督を行うなど、建設業にかかる営業に実質的に関与する事務所をいいます。

このため、登記上は建設業者の本店であっても、上記①または②に該当しないものは、建設業法上の営業所に該当しません。

【建設業法上の営業所に該当しない例】

  1. ㋐人事・経理業務しか行わない事務所
  2. ㋑工事現場事務所
  3. ㋒作業員の休憩所
  4. ㋓資材倉庫
  5. ㋔工事重機の車庫 など

②営業所としての外観・実体を備えていること

建設法上の営業所となるには、営業所としての外観・実体を備えていることが必要です。この要件の詳細は、建設業許可を所管する行政庁によって若干異なっています。

例えば、東京都における建設業許可では、営業所(常時建設工事の請負契約を締結する事務所)とは、請負契約の締結に関する見積・入札・契約等の実体的な行為を行う事務所であり、少なくとも下記㋐~㋕に示す要件を備えているものをいうとされています。

単なる登記上の本店に過ぎないものや、建設業と無関係な支店、請求や入金等の事務作業のみを行う事務所・事務連絡所、工事作業員の詰める工事事務所や作業所等は営業所に該当しませんが、他の営業所に対し請負契約に関する指導監督を行う等、建設業に係る営業に実質的に関与する事務所であれば営業所として認められるとされています。

【東京都における営業所の要件】

  1. ㋐外部から来客を迎え入れ、請負契約の見積り、入札、契約締結等の実体的な業務を行っていること
  2. ㋑電話(原則固定電話)・机・各種事務台帳等を備え、契約の締結等ができるスペースを有し、かつ他法人または他の個人事業主の事務室等とは間仕切り等で明確に区分されている、個人の住宅にある場合には居住部分と適切に区別されているなど、独立性が保たれていることなお、本社と営業所が同一フロアである場合、同一法人であるため仕切り等は必要ないが、明らかに支店と分かるよう看板等掲示し、営業形態も別とすること
  3. ㋒常勤役員等または建設業法施行令第3条の使用人(支店等において上記㋐に関する権限を付与された者)が常勤していること
  4. ㋓専任技術者が常勤していること
  5. ㋔営業用事務所としての使用権原を有していること
  6. ㋕看板、標識等で、外部から建設業の営業所であることが分かる表示があること

資料出所:東京都 建設業許可申請・変更の手引き(令和3年度)

上で、㋒の「常勤役員等または建設業法施行令第3条の使用人が常勤していること」ですが、 建設業法の営業所は、請負契約締結の業務を行う事務所であることから、常勤役員や建設業法施行令第3条の使用人が常勤していることが求められます

建設業法施行令第3条の使用人とは、建設業許可を受けた業者の営業所で、入札参加や工事の見積り、請負契約の締結や契約の履行などに一定の権限を有すると判断される者をいいます。通常は、法人では支社長、支店長、営業所長、個人事業では支配人登録された支配人が該当します。

㋓の「専任技術者が常勤していること」ですが、

建設業許可を受けるには、すべての営業所に、許可を受けようとする業種にかかる一定の資格や経験を持つ技術者を専任で配置することが義務付けられています。

「専任」とは、営業所に常勤して専らその職務に従事することをいい、次の人は原則として専任とは認められません。

  1. ・他の営業所で専任の職務に就いている者
  2. ・他の法人の常勤役員である者や他で個人営業を行っている者など、他の営業について専任に近い状態にあると認められる者
  3. ・住所が勤務を要する営業所から非常に遠く、常識的にみて通勤不可能である者
  4. ・専任の宅地建物取引士や建築士事務所を管理する建築士など、他の法令により特定の事務所等において専任が必要とされる者

専任技術者としての要件は、次の通り、建設業法で定められています。

【一般建設業許可における専任技術者】

  1. ㋐一定の国家資格を保有する者
  2. ㋑高等学校・中等教育学校在学中に許可を受けようとする建設業の指定学科を修め、卒業後5年以上の実務経験がある者、または、大学・短大・高等専門学校在学中に許可を受けようとする建設業の指定学科を修め、卒業後3年以上の実務経験がある者
  3. ㋒許可を受けようとする建設業の建設工事に関して10年以上の実務経験がある者
  4. ㋓国土交通大臣が上記の者と同等以上の知識・技術または技能を持っていると認定した者

【特定建設業許可における専任技術者】

  1. ㋐一定の国家資格を保有する者
  2. ㋑一般建設業のいずれかの専任技術者の要件を満たしている者で、許可を受けようとする建設業に関して、発注者から直接請け負い、その請負金額が政令で定める金額(4,500万円)以上であるものについて、2年以上の指導監督的な実務経験がある者
    (ただし、指定建設業を除く)
  3. ㋒国土交通大臣が上記の者と同等以上の能力を持っていると認定した者

専任技術者としての要件は、一般建設業許可に比べ特定建設業許可で厳しくなっています。

例えば、上の㋐の一般と特定の双方にある「一定の国家資格を有する者」ですが、特定建設業許可の要件を満たす国家資格は、一般建設業許可の場合に比べ厳選された資格となっています。

【参考:一般建設業許可と特定建設業許可】

建設業許可には、一般建設業許可と特定建設業許可の2種類があります。

建設業を行う場合は、前に説明した「軽微な建設工事」のみを請け負う場合を除き、一般建設業の許可を取得することが義務付けられています。すなわち、以下のものに該当しない工事を請け負う場合には、一般建設業の許可を受ける必要があります。

〇建築一式工事の場合

  1. ①工事1件の請負金額が1,500万円未満の工事
    ②延べ面積が150㎡未満の木造住宅工事
     

〇建築一式工事以外の建設工事の場合

  1. ①工事1件の請負金額が500万円未満の工事

ただし、工事の発注者から直接工事を請け負う者が、元請として1件の工事について下請代金合計額4,000万円以上(建築工事一式の場合は、1件の工事につき下請代金合計額6,000万円以上)で下請に出す場合は、特定建設業の許可を受けなければならないことになっています。

以上のように、特定建設業許可の要件に当てはまらないときは、「軽微な建設工事」のみを請け負う場合に該当しないかぎり、一般建設業の許可を受けることになります。

㋔の「営業用事務所としての使用権原を有していること」ですが、

使用権原とは、営業所の物件を使用する正当な権利を有しているかということです。

すなわち、営業所の土地・建物が自己所有の物件か、または賃貸借契約等を結んでいることが必要です。ただし、賃貸借契約であっても、住居専用契約の場合は原則として認められません。

なお、事務所の実態が申請書上で把握できない場合や、申請書の受付後に、営業所の要件を満たしているか否かが不明な場合などは、立入り調査を行うことがあるとされています。

2-4 大臣許可でも営業所以外で請負契約を行うことができない

国土交通大臣許可の建設業者も、営業所以外で請負契約を締結することができないのは、都道府県知事許可業者の場合と同じです。

例えば、東京都と神奈川県、埼玉県の3都県に営業所がある大臣許可業者があったとします。この業者は、営業所がある東京都、神奈川県、埼玉県の3都県の営業所では請負契約を締結することができますが、それ以外の道府県ではできないことになります。

この業者が大阪府内で工事を受注する計画があり、工事施工現場に近い大阪府内に現地連絡事務所を開設しても、そこで請負契約を締結することはできません。その現地連絡事務所で請負契約を締結するためには、その事務所を建設業法上の要件を備えた営業所に整備する必要があります。

2-5 工事施工場所には技術者の配置が必要である

すでに説明したように、国土交通大臣と都道府県知事のいずれの許可を受けた建設業者であっても、営業所がない他県を含め日本全国の工事を請け負い、施工することが可能です。

ただし、工事施工場所には、技術者の配置が必要であることに注意を要します。建設業許可業者は、建設工事の適正な施工を確保するため、工事施工現場に、当該工事について一定の資格を有する者を配置しなければならないとされています。この工事施工現場に配置される技術者は、主任技術者または監理技術者と呼ばれています。

①主任技術者の配置

【建設業法第26条第1項】

  1. 建設業者は、その請け負った建設工事を施工するときは、当該建設工事に関し第七条第二号イ、ロまたはハに該当する者で当該工事現場における建設工事の施工の技術上の管理をつかさどるもの(以下「主任技術者」という。)を置かなければならない。

上で、「第七条第二号イ、ロまたはハに該当する者」というのは、一般建設業許可で営業所に配置する専任技術者と同等の資格を持つ者のことをいいます。すなわち、建設業許可業者が建設工事を施工する場合は、元請、下請、請負金額にかかわらず、工事現場に主任技術者を配置することが必要です。

②監理技術者の配置

【建設業法第26条第2項】

  1. 発注者から直接建設工事を請け負った特定建設業者は、当該建設工事を施工するために締結した下請契約の請負代金の額(当該下請契約が二以上あるときは、それらの請負代金の額の総額)が第三条第一項第二号の政令で定める金額以上になる場合においては、前項の規定にかかわらず、当該建設工事に関し第十五条第二号イ、ロまたはハに該当する者(カッコ内省略)で当該工事現場における建設工事の施工の技術上の管理をつかさどるもの(以下「監理技術者」という。)を置かなければならない。

上で、「発注者から直接建設工事を請け負った特定建設業者は、当該建設工事を施工するために締結した下請契約の請負代金の額(当該下請契約が二以上あるときは、それらの請負代金の額の総額)が第三条第一項第二号の政令で定める金額以上になる場合」とは、特定建設業許可業者が、発注者から直接請け負い、かつ下請に出す請負金額総額が4,000万円(建築工事一式の場合は6,000万円)以上になる場合という意味です。

また、「第十五条第二号イ、ロまたはハに該当する者」というのは、特定建設業許可で営業所に配置する専任技術者と同等の資格を持つ者のことをいいます。

すなわち、特定建設業許可業者の場合は、一般建設業許可業者より厳しい基準となっており、工事施工現場に、主任技術者に代えて監理技術者を配置することが必要とされています。

③専門技術者の配置

【建設業法第26条の2第1項】

  1. 土木工事業または建築工事業を営む者は、土木一式工事または建築一式工事を施工する場合において、土木一式工事または建築一式工事以外の建設工事(第三条第一項ただし書の政令で定める軽微な建設工事を除く。)を施工するときは、当該建設工事に関し第七条第二号イ、ロまたはハに該当する者で当該工事現場における当該建設工事の施工の技術上の管理をつかさどるものを置いて自ら施工する場合のほか、当該建設工事に係る建設業の許可を受けた建設業者に当該建設工事を施工させなければならない。

土木工事業または建築工事業の許可を受けた業者は、当然に、土木一式工事または建築一式工事を請け負い、施工することができます。しかし、土木一式工事や建築一式工事は非常に内容の幅が広く、その中に各種の専門工事を含む場合があります。

上の条文は、その土木一式工事または建築一式工事に含まれる専門工事について、一式工事を請け負った建設業者が自社で施工する場合は、当該工事について専門技術者を配置することが必要であるとの規程です。

その理由は、一式工事を請け負った業者は、一式工事の建設業許可は受けていますが、一式工事に含まれる個々の専門工事については、許可を受けていないからです。そのため、工事の安全性や契約の適正な履行を確保するために、一定の資格を持つ専門技術者の配置を義務付けているのです。

上の条文で、「第七条第二号イ、ロまたはハに該当する者で当該工事現場における当該建設工事の施工の技術上の管理をつかさどるもの」が専門技術者であり、その資格は、一般建設業許可業者が工事現場に配置する主任技術者と同等です。

仮に、一式工事を請け負った業者が、この専門技術者を配置できない場合は、個々の専門工事の許可を受けた業者に施工させなければなりません

例えば、建築工事業の許可業者が建築一式工事を請け負い、その一式工事に含まれる左官工事や塗装工事などの専門工事を自ら施工する場合は、この建築工事業許可業者が左官工事や塗装工事の許可を受けていないため、工事現場に専門技術者を配置しなければなりません。

その場合、建築工事業許可業者が専門技術者を配置できないときは、専門工事の許可を持っている左官工事業者や塗装工事業者に施工させなければならないということです。

【建設業法第26条の2第2項】

  1. 建設業者は、許可を受けた建設業に係る建設工事に附帯する他の建設工事(第三条第一項ただし書の政令で定める軽微な建設工事を除く。)を施工する場合においては、当該建設工事に関し第七条第二号イ、ロまたはハに該当する者で当該工事現場における当該建設工事の施工の技術上の管理をつかさどるものを置いて自ら施工する場合のほか、当該建設工事に係る建設業の許可を受けた建設業者に当該建設工事を施工させなければならない。

次は、附帯工事の場合です。建設業許可業者が、許可を受けた建設業にかかる建設工事に附帯する他の建設工事を自社で施工する場合も、工事現場に専門技術者を配置する必要があります。この「許可を受けた建設業にかかる建設工事に附帯する他の建設工事」を附帯工事といいます。

すなわち、建設業許可業者が附帯工事を自社で施工する場合も、専門技術者の配置が必要とされているのです。

その理由は、主たる建設工事に付随する附帯工事であれば建設業許可を受けていなくても施工できるため、工事の安全性や契約の適正な履行を確保するために、専門技術者の配置が必要とされているのです。

また、この専門技術者の資格は、一般建設業許可業者が工事現場に配置する主任技術者と同等です。この場合に、業者が専門技術者を配置できないときは、附帯工事の建設業許可を受けている業者に施工させる必要があります。

【参考:附帯工事】

  1. 附帯工事は、許可を受けた業種の建設工事(主たる工事)に付随して施工される許可を受けていない業種の建設工事(従たる工事)です。すなわち、附帯工事は、主たる工事の目的を達成するために行われる付随的な工事であり、それ自体が独立した使用目的を持たないものです。

附帯工事の代表的な例では、住宅の屋根の修繕工事に付随する塗装工事をあげることができます。

住宅の屋根の修繕工事では、修繕の完了後に、屋根を元通りの状態に回復するための塗装工事が必要となります。この場合、主たる工事である住宅の屋根の修繕工事に付随して施工される「従たる塗装工事」が附帯工事となります。

建設業法第4条では、許可を受けた業種の建設工事に附帯する工事であれば、許可を受けていない業種の工事であっても請け負うことができると規定されています。上の例では、屋根工事業の許可を受けていれば、塗装工事業の許可がなくても塗装工事を含めた全体の工事を請け負うことが可能です。

なお、ここで説明した工事現場への各種技術者の配置については、自社の営業所がない他県で工事を施工する場合だけでなく、自社の営業所がある県内で施工するときも同様の規制を受けることを念頭に置く必要があります。

3 まとめ

建設業許可で、国土交通大臣の許可業者は全国の工事ができ、都道府県知事の許可業者は許可を受けた都道府県の工事しか行うことができないということはありません。建設業許可を受けていれば、許可の種類にかかわらず日本全国の工事を請け負い、施工することができます

ただし、他県で工事施工する際には、①知事許可では、営業所のない他県で請負契約を行うことができない、②他県に営業所を新設するには、大臣許可への変更が必要である、③営業所を新設するには、建設法上の要件を満たす必要がある、④大臣許可でも、営業所以外では請負契約を行うことができない、⑤工事施工場所には、技術者の配置が必要であるなどに注意することが大切です。

建設業許可申請が全国一律76,000円!KiND行政書士事務所:東京