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建設業許可の不要な附帯工事とは

建設業許可は、建設業法に基づき、建設工事を請け負う場合に、国土交通大臣または都道府県知事から受ける許可をいいます。

しかし、付帯工事を請け負う場合は建設業許可を受けなくてもよいことをご存知でしょうか。附帯工事は、許可を受けた業種にかかる建設工事(主たる工事)に付随して施工される許可を受けていない業種の建設工事(従たる工事)をいいます。

本記事では、この建設業許可が不要とされる附帯工事について、その要件や注意事項について解説しています。建設業に携わる方は、ぜひ参考にしてください。

1 建設業許可とは

「建設業許可」とは、建設業法に基づき、建設工事を請け負う場合に、国土交通大臣または都道府県知事より受けなければならない許可のことです。ただし、後で説明する「附帯工事」や「軽微な建設工事」については、許可を受けなくてもよいとされています

建設業許可の有効期間は、許可のあった日から5年を経過する日の前日で満了します。

建設業許可を更新する場合は、有効期間が満了する30日前までに更新の許可申請書を提出しなければなりません。

建設業の許可を受けなければならない場合に無許可で工事を請け負ってしまうと、建設業法違反として罰則が適用されるため、注意が必要です。

また、建設業許可には、以下のような区分があります。

①国土交通大臣許可と都道府県知事許可

建設業許可は、営業所の所在により、国土交通大臣許可と都道府県知事許可の2種類に区分されます。この国土交通大臣許可と都道府県知事許可の要件は、建設業法第3条に定められています。

【建設業法 第3条第1項】

  1. 建設業を営もうとする者は、…(中略)… 2以上の都道府県の区域内に営業所を設けて営業をしようとする場合にあっては国土交通大臣の、1の都道府県の区域内にのみ営業所を設けて営業をしようとする場合にあっては当該営業所の所在地を管轄する都道府県知事の許可を受けなければならない。

これを、わかりやすく説明すると、次のとおりです。

①複数の都道府県に営業所を設ける場合は、国土交通大臣の許可を受ける

(例)

営業所を埼玉県内と千葉県内の2か所に設ける場合は、営業所が複数の都道府県にまたがるため、国土交通大臣の許可を受ける必要があります。

②1つの都道府県だけにしか営業所を設けない場合は、その営業所の所在地を管轄する都道府県知事の許可を受ける

(例)

営業所が10か所あっても、すべての営業所が東京都内にあれば、東京都知事の許可を受ければよいことになります。

国土交通大臣許可が必要か、または都道府県知事許可となるかは、建設工事の施工場所とは関係がなく、営業所の所在で決まります。このため、国土交通大臣許可業者、都道府県知事許可業者のどちらも日本全国の工事を請負・施工することができます。

(例)

東京都知事の許可を受けた建設業者であっても、北海道や沖縄の工事を請け負い、施工することができます。

②一般建設業許可と特定建設業許可

建設業許可は、元請として下請に任せる金額がどの程度かにより、一般建設業許可と特定建設業許可に区分されます。

  1. 工事の発注者から直接工事を請け負う者(元請)が、1件の工事について下請代金合計額4,000万円以上(建築工事一式の場合は、1件の工事につき下請代金合計額6,000万円以上)で下請に任せる場合は、特定建設業の許可を受ける必要があります。

上記の要件に該当しないときは、一般建設業の許可を受ければよいことになります(「附帯工事」や「軽微な建設工事」を請け負う場合等に該当しない場合)。

特定建設業は、元請としての立場により一定規模以上の金額で下請に任せることが許されることから、その許可基準は一般建設業の許可と比べより厳しくなっています。

1-1 建設業の許可業種

建設業許可は、建設業法に定められた工事・業種ごとに受ける必要があります。

この建設業法に定める工事・業種は、以下の29工事・29業種です。

工事の区分 【2一式工事】
土木一式工事
建築一式工事
【27専門工事】

大工工事、左官工事、とび・土木工事、石工事、屋根工事、電気工事、管工事、タイル・れんが・ブロック工事、
鋼構造物工事、鉄筋工事、舗装工事、しゅんせつ工事、
板金工事、ガラス工事、塗装工事、防水工事、内装仕上工事、機械器具設置工事、熱絶縁工事、電気通信工事、造園工事、さく井工事、建具工事、水道施設工事、消防施設工事、
清掃施設工事、解体工事

業種 【2業種】
土木工事業
建築工事業
【27業種】
大工工事業、左官工事業、とび・土木工事業、石工事業、
屋根工事業、電気工事業、管工事業、
タイル・れんが・ブロック工事業、鋼構造物工事業、
鉄筋工事業、舗装工事業、しゅんせつ工事業、板金工事業、ガラス工事業、塗装工事業、防水工事業、内装仕上工事業、機械器具設置工事業、熱絶縁工事業、電気通信工事業、
造園工事業、さく井工事業、建具工事業、水道施設工事業、消防施設工事業、清掃施設工事業、解体工事業

(注)「土木一式工事」、「建築一式工事」は、専門工事を複数組み合わせた総合的な土木工事または建築工事をいいます。

  1. 建設業法が定める工事区分では、一式工事が土木一式工事と建築一式工事の2工事で、その2工事に対応する業種が土木工事業と建築工事業の2業種です。また、専門工事は大工工事以下の27工事で、その27工事に対応する業種が大工工事業をはじめとする27業種となっています。

建設業の許可は、上表の工事区分に対応する業種ごとに受ける必要があります。例えば、東京都内と埼玉県内にそれぞれ営業所を持つ会社が、神奈川県で大工工事と左官工事を請け負う場合は、大工工事業と左官工事業それぞれについて国土交通大臣許可を受けることになります。

2 建設業許可が不要な工事

建設工事には、建設業の許可が不要な工事があります。ここでは、建設業許可が不要な工事についてみていきましょう。

2-1 附帯工事

建設業許可が不要なケースの1つ目は、附帯工事を請け負う場合です。建設業の許可は、すでにみてきた29の業種ごとになされます。したがって、許可を受けた業種以外の建設工事は、許可を受けていない業種の工事となるため、原則として請け負うことができません。

例えば、大工工事業の許可しか受けていない業者は、屋根工事や建具工事を請け負うことはできません。

しかし、実際の建設工事が単体の専門工事だけで構成されることは極めて稀で、多くの場合複数の専門工事で構成されています。この場合、発注者がそれぞれの専門業種の許可を受けた業者と個別に請負契約を結ばなければならないとすると、発注者と請負業者双方に煩雑な負担を強いてしまいます。

そのため、建設業法では、許可を受けた業種の建設工事を請け負う場合に、その工事に附帯する他の業種の建設工事も請け負うことができると定めています。

【建設業法 第4条】

  1. 建設業者は、許可を受けた建設業に係る建設工事を請け負う場合においては、当該建設工事に附帯する他の建設業に係る建設工事を請け負うことができる。

建設業法第4条では、許可を受けた業種の建設工事に附帯する工事であれば、許可を受けていない業種の工事であっても請け負うことができると定められています。

この「許可を受けた建設業に係る建設工事に附帯する他の建設業に係る建設工事」を附帯工事といいます。附帯工事は、許可を受けた業種にかかる建設工事(主たる工事)に付随して施工される許可を受けていない業種の建設工事(従たる工事)です。すなわち、附帯工事は、主たる工事の目的を達成するために行われる付随的な工事であり、それ自体が独立した使用目的を持たないものです。

この附帯工事としての要件を満たしていれば、該当業種の建設業許可がなくても、工事を請け負うことができるのです。

2-2 軽微な建設工事

建設業許可が不要なケースの2つ目は、軽微な建設工事を請け負う場合です。建設業を営もうとする人は、原則として、国土交通大臣または都道府県知事の建設業許可を受けるとされています。

しかし、この原則には例外があり、一定の規模に達しない工事のみを請け負う場合は、建設業の許可を受けなくてもよいことになっています。

【建設業法 第3条第1項】

  1. 建設業を営もうとする者は、…(中略)… 許可を受けなければならない。ただし、政令で定める軽微な建設工事のみを請け負うことを営業とする者は、この限りでない。

建設業法第3条第1項では、政令で定める「軽微な建設工事」のみを請け負う営業であれば、建設業許可は不要と定められています。それでは、政令=建設業法施行令で定める軽微な建設工事とはどのような工事なのでしょうか。

【建設業法施行令 第1条の2】

  1. 法第3条第1項ただし書の政令で定める軽微な建設工事は、工事一件の請負代金の額が500万円(当該建設工事が建築一式工事である場合にあっては、1,500万円)に満たない工事又は建築一式工事のうち延べ面積が150平方メートルに満たない木造住宅を建設する工事とする。

すなわち、この政令で規定されている軽微な建設工事は、以下の工事をいいます。

  1. ①建築一式工事
    ・工事1件の請負金額が1,500万円未満の工事
    ・延べ面積が150㎡未満の木造住宅建設工事
  2. ②建築一式工事以外の建設工事
    ・・工事1件の請負金額が500万円未満の工事

(注)金額は、材料費込みの税込金額です。

  1. 政令で定める軽微な建設工事とは、建築一式工事の場合は、工事1件の請負金額が1,500万円未満の工事、または、延べ面積が150㎡未満の木造住宅建設工事をいいます。
    また、建築一式工事以外の建設工事では、工事1件の請負金額が500万円未満の工事をいいます。

上の区分で、「建築一式工事」とは、総合的な企画、指導、調整のもとに建築物を建設する工事で、専門工事が複数組み合わさった建築工事をいいます。すなわち、個々の専門工事では施工が難しい大規模かつ複雑な建設工事で、具体的には、建築確認を要する新築工事や増改築工事、大規模修繕工事などが建築一式工事に該当します。

また、電気や配管などの工事で、個別の専門工事として施工するのが難しい規模の工事も建築一式工事となります。

さらに、「延べ面積が150㎡未満の木造住宅工事」は、

  1. ①主要構造部分が木造であること
  2. ②住宅、共同住宅および店舗等との併用住宅で、延べ面積の2分の1以上を居住の用に供するものであること
  3. ③建築基準法の延べ面積の定義に準拠し、建築物の各階の床面積の合計が150㎡未満であること

の要件を満たすことが求められます。

これらの基準を満たした工事が建設法上の「軽微な建設工事」であり、その軽微な建設工事のみを請け負う場合は建設業許可が不要となります。

2-3 完成を請け負わない工事

建設業許可が不要なケースの3つ目は、「完成を請け負わない工事を行う場合「です。

物理的にみると建設工事であっても、その完成を請け負わない工事は、建設業法における建設業が行う工事に該当しません。

建設業法には、建設業の定義が規定されています。

【建設業法 第2条第2項】

この法律において「建設業」とは、元請、下請その他いかなる名義をもつてするかを問わず、建設工事の完成を請け負う営業をいう。

  1. 建設業法によると、建設業とは、建設工事の完成を請け負う営業であると定義されています。建設業法は、この「建設工事の完成を請け負う建設業」を対象にしていることから、物理的には建設工事であっても、その完成を請け負うのでなければ、建設業法上の建設業が行う工事とはみなされず、建設業許可の対象にはなりません。

例えば、以下の工事はその完成を請け負うものではないため、建設業法上の建設工事ではなく、建設業許可の対象となりません。

  1. ①委託されて施工する工事
    委託は、請負のように工事を完成させることを目的として契約するのではなく、工事の進行過程で必要な業務を依頼される契約形態です。

このため、委託を受けて施工する工事はその完成を請け負っているわけではなく、建設業が行う建設工事に該当しないことから、建設業許可の対象ではありません。例えば、委託を受けて行う建物の修理では、建物修理作業の一部について委託されているため、その完成を請け負っているわけではないのです。

  1. ②自分のために自分で施工する工事
    自分のために自分で施工する工事は、契約相手に対して工事の完成を請け負っているわけではないため、建設業が行う建設工事には該当せず、建設業許可の対象とはなりません。

例えば、

  1. ・自分で自分の倉庫を建てる工事
  2. ・不動産会社が自社で建売住宅を建設する工事
  3. ・社員が自社工場の外壁を塗装する工事

などは、いずれも建設業許可の対象とはなりません。

2-4 建設工事に該当しない作業

元々、建設工事に該当しない作業は、建設業許可の対象にはなりません。建設業法では、「建設工事」の定義を規定しています。

【建設業法 第2条第1項】

  1. この法律において「建設工事」とは、土木建築に関する工事で別表第1の上欄に掲げるものをいう

この「別表第1の上欄」とは、すでにみてきた29種類の工事のことです。

工事の区分 【2一式工事】
土木一式工事
建築一式工事
【27専門工事】
大工工事、左官工事、とび・土木工事、石工事、屋根工事、電気工事、管工事、タイル・れんが・ブロック工事、鋼構造物工事、鉄筋工事、舗装工事、しゅんせつ工事、板金工事、ガラス工事、塗装工事、防水工事、内装仕上工事、機械器具設置工事、熱絶縁工事、電気通信工事、造園工事、さく井工事、建具工事、水道施設工事、消防施工事、
清掃施設工事、解体工事

そのため、建設工事に関係する作業でも、この29種類の工事に該当しなければ、建設業法における建設工事に該当せず、建設業許可の対象にはなりません。

具体例をあげると、建設業許可の対象にならない作業には、以下のものがあります。

  1. ①建設用地の整備
    ・清掃
    ・道路清掃
    ・除雪
    ・樹木伐採
    ・草刈
  2. ②建設工事に関連した作業
    ・測量、地盤調査
    ・土砂運搬・建設用機械搬入出
    ・建設資材搬入出
    ・建設現場養生
    ・建設用機械
    ・器具保守点検
    ・建設現場警備

3 附帯工事の実例

それでは、上の建設業許可が不要な工事の中の附帯工事について、その実際の例をみていきましょう。

附帯工事の主な例をあげると、次のとおりです。

①建物の電気工事に付随する内装工事

まず、建物の電気工事を施工する場合に付随する内装工事をあげることができます。この場合、主たる工事は建物の電気工事ですが、電気の配線は屋根裏・床下や壁面内を通っていることから、電気工事を施工するためには天井や床、壁板などを剥がす必要があります。また、主たる工事である電気工事を行った後に、天井や床、壁などを元通りの状態に復旧するための内装工事が一連・一体的な附帯工事として必要となります。

この例では、電気工事業の許可を受けていれば、内装工事業の許可がなくても内装工事を含めた全体の工事を請け負うことができます。

②建物の外壁塗装工事に付随する足場工事

建物の外壁塗装工事を施工する場合に付随する足場工事は、附帯工事に該当します。

この場合、主たる工事は外壁塗装工事ですが、外壁塗装を施工するためには職人が上がる足場を組む必要があります。また、外壁塗装工事が完了したら、足場を解体しなければなりません。

足場工事は、主たる工事である外壁塗装工事と一連・一体的な工事として施工されます。

足場工事は、とび・土工・コンクリート工事に分類されますが、この例では、塗装工事業の許可を受けていれば、とび・土工・コンクリート工事業の許可がなくても足場工事を含めた全体の工事を請け負うことが可能です。

③住宅の建具工事に付随する左官工事

住宅の建具工事を施工する場合に付随する左官工事も付帯工事となります。例えば、主たる工事として住宅の玄関ドアを交換する場合、玄関ドアの枠がコンクリート土間に埋まっているため、コンクリート土間の一部を壊す必要があります。

そのため、主たる工事として玄関ドアを交換した後は、玄関土間を元通りの状態に復旧する左官工事が一連・一体的な附帯工事として必要となります。

この例では、建具工事業の許可を受けていれば、左官工事業の許可がなくても左官工事を含めた全体の工事を請け負うことができます。

④住宅の屋根・外壁の補修工事に付随する塗装工事

住宅の屋根・外壁の補修工事を施工する場合に付随する塗装工事が、付帯工事となります。

この場合、主たる工事は屋根・外壁の補修工事ですが、屋根・外壁を補修した後は、屋根・外壁を元通りの状態に復旧する塗装工事が一連・一体的な附帯工事として必要となります。この例では、屋根工事業の許可を受けていれば、塗装工事業の許可がなくても塗装工事を含めた全体の工事を請け負うことができます。

⑤エアコン設置工事に付随する熱絶縁工事

エアコン設置工事を施工する場合に付随するエアコン設備の熱絶縁工事は、付帯工事となります。主たる工事はエアコン設置工事ですが、その際に熱絶縁工事が一連・一体的な附帯工事として必要となります。

この例では、管工事業や電気工事業の許可を受けていれば、熱絶縁工事業の許可がなくても熱絶縁工事を含めた全体の工事を請け負うことができます。

4 附帯工事の要件

次に、附帯工事として認められるための要件についてみていきましょう。

附帯工事として認められるための要件は、次のとおりです。

  1. ①主たる建設工事の目的を達成するための工事であること
  2. ②主たる建設工事と一連・一体の工事施工が必要・相当であること
  3. ③主たる建設工事の工事金額より低いこと

4-1 主たる建設工事の目的を達成するための工事である

附帯工事として認められるためには、主たる建設工事の目的を達成するための工事であることが必要です。

附帯工事は、主たる建設工事に付随して行われる従たる工事ですが、「主たる建設工事に付随して行われる」とは、主たる工事の目的を達成するために行われる付随的な工事という意味で、それ自体が独立した使用目的を持たないということです。

すなわち、附帯工事は、主たる建設工事に対して異なる目的を持たず、主たる建設工事と同じ目的で施工される必要があるのです。

例えば、屋内の電気配線を修理するために、壁紙・壁板を剥がし配線修理工事を施工し、その後、壁板・壁紙の復旧工事を行うケースがあるとします。

この場合、

  1. ①主たる建設工事=電気工事
  2. ②附帯工事=内装工事(壁板・壁紙の剥がし・復旧工事)

となります。

このケースで、合理的な理由がないにもかかわらず、屋根・外壁の補修個所とは直接関連がない他の部分も一緒に新しく塗装したとしたら、補修個所と関連がない部分の塗装工事は、主たる工事である屋根・外壁補修工事とは別の目的を持つと理解されても仕方がありません。したがって、主たる建設工事の目的を達成するための工事であるという附帯工事の要件を満たすことが難しくなってしまいます。

このことからも、附帯工事としての要件を満たすには、主たる建設工事の目的を達成するために行われ、それ自体が独立した使用目的を持たないことが求められます。

4-2 主たる建設工事と一連・一体の工事施工が必要・相当である

2つ目の要件は、主たる建設工事と一連・一体の工事施工が必要・相当であることです。

国土交通省の「建設業許可事務ガイドライン」には、次のように、附帯工事の判断基準が示されています。

附帯工事の具体的な判断に当たっては、建設工事の注文者の利便、建設工事の請負契約の慣行等を基準とし、当該建設工事の準備、実施、仕上げ等に当たり一連又は一体の工事として施工することが必要又は相当と認められるか否かを総合的に検討する。

すなわち、附帯工事の具体的な判断に当たっては、次の2つの視点からの必要性・相当性が求められていることが示されています。

①注文者の利便を基準にして、一連・一体的な施工が必要・相当であること

まず、注文者の利便性や請負契約の慣行等からみて、主たる建設工事と従たる附帯工事の一連・一体的な施工の必要・相当性についてです。

例えば、屋内の電気工事で天井や壁板を剥がした場合、天井や壁などを元通りの状態にする内装工事も行わなければなりません。この場合に、電気工事だけを行い天井や壁板を剥がしたままの状態で、復旧の内装工事を別途後日に行うことは、特殊な事情でもない限り注文者に不便を強いることになります。

このような場合には、主たる電気工事と復旧のための内装工事を一連・一体的に施工することで、注文者の利便を図ることができます。このことから、天井や壁板を復旧する内装工事は、注文者の利便を基準にすると、主たる工事である電気工事との一連・一体的な施工が必要・相当であると判断できます。

②請負契約の慣行等を基準にして、建設工事の準備、実施、仕上げ等にあたり一連・一体的な施工が必要・相当であること

次は、請負契約の慣行等からみた必要・相当性です。

通常、工事では、時系列で以下のような作業が必要となります。

  1. ㋐資材・機材の準備
  2. ㋑現場への移動
  3. ㋒資材・機材の搬入
  4. ㋓現場養生
  5. ㋔施工
  6. ㋕仕上げ・検査
  7. ㋖残材・機材搬出・清掃
  8. ㋗現場からの移動

この場合、上で例示した屋内電気工事と内装工事2つの工事の準備、実施、仕上げ等について、別個のものとして行うと作業の2度手間となりコストも余計にかかるため、建設業者、注文者双方に無駄な負担がかかることになります。

この2つの工事を無駄な費用をかけずに効率的に行うためには、工事の準備・実施・仕上げにあたって、内装工事を主たる工事である屋内電気工事と一連・一体的に施工することであり、そうすることが請負契約の慣行にも適合しています。

しかし、2つの工事が、主たる工事とその目的を達成するための附帯工事ではなく、「屋内電気工事と屋根工事」のように関連性が認められない別個の工事である場合は、①注文者の利便の視点からも、②請負契約の慣行等の観点からも、一連・一体的な施工が必要・相当であると判断することはできず、どちらの工事も附帯工事としての要件を満たすことはできません。

4-3 主たる建設工事の工事金額より低い

3つ目の要件は、附帯工事の請負金額が、主たる建設工事の工事金額より低いことです。

国土交通省による「建設業許可事務ガイドライン」の判断基準には、請負金額の記述がありませんが、原則として、従たる工事である附帯工事の請負金額が主たる工事の金額を超えることはありません。

「建設業許可事務ガイドライン」によると、

附帯工事とは、

  1. ①主たる建設工事を施工するため
  2. ②主たる建設工事の施工により

必要を生じた他の従たる建設工事であり、それ自体が独立の使用目的に供されるものではない

とされていることからみても、附帯工事の請負金額が主たる建設工事の工事金額を超えることがないのは、当然のことと判断されます。

5 附帯工事にかかる注意事項

次に、付帯工事として認められるための、また、付帯工事を施工する場合の注意事項についてみていきましょう。

5-1 建設業許可を受けている場合は附帯工事として扱われない

建設業許可を受けている場合は、主たる建設工事に付随して行われる従たる工事が、附帯工事として扱われることはありません

附帯工事は、主たる建設工事に付随して行われる従たる工事で、一定の要件を満たせば、従たる工事にかかる建設業許可がなくても請け負うことができる建設工事です。

この場合に、元々、従たる工事にかかる建設業許可を受けている場合は、法的に附帯工事として取り扱う必要がありません。

5-2 軽微な工事は附帯工事として扱われない

主たる建設工事、または主たる建設工事に付随して行われる従たる工事が、建設業法上の軽微な建設工事の場合は、従たる工事は付帯工事として扱われません

すでに説明したように、軽微な建設工事とは、

  1. ①建築一式工事の場合
    ・工事1件の請負金額が1,500万円未満の工事

    ・延べ面積が150㎡未満の木造住宅建設工事

  2. ②建築一式工事以外の建設工事の場合
    ・工事1件の請負金額が500万円未満の工事

のことをいいます。

この軽微な建設工事のみを請け負う営業形態であれば、建設業許可は不要とされています。

したがって、

①主たる建設工事が軽微な建設工事に該当し、併せて従たる工事を行う場合

または、

②主たる建設工事は軽微な建設工事に該当しないが、併せて行う従たる工事が軽微な建設工事に該当する場合

は、従たる工事にかかる建設業許可の有無が問われることはないため、附帯工事として扱う意味がなくなります

5-3 一式工事は附帯工事に該当しない

建設法上の一式工事も、附帯工事に該当しません

一式工事とは、総合的な企画、指導、調整のもとに施工する建設工事で、専門工事が複数組み合わさった工事をいいます。すなわち、一式工事は、個々の専門工事では施工が難しい大規模かつ複雑な建設工事です。

したがって、一式工事が、主たる建設工事に付随して施工される附帯工事に該当することはありません

5-4 500万円以上の附帯工事は専門技術者の配置が必要

軽微な建設工事に該当しない附帯工事を施工する場合は、「専門技術者」を配置する必要があります。具体的には、請負金額が500万円以上の附帯工事を施工する場合は、専門技術者を配置しなければなりません。

【建設業法 第26条の2 第2項】

  1. 建設業者は、許可を受けた建設業に係る建設工事に附帯する他の建設工事(第3条第1項ただし書の政令で定める軽微な建設工事を除く。)を施工する場合においては、当該建設工事に関し第7条第2号イ、ロ又はハに該当する者で当該工事現場における当該建設工事の施工の技術上の管理をつかさどるものを置いて自ら施工する場合のほか、当該建設工事に係る建設業の許可を受けた建設業者に当該建設工事を施工させなければならない。

上の条文中、「当該建設工事に関し第7条第2号イ、ロ又はハに該当する者で当該工事現場における当該建設工事の施工の技術上の管理をつかさどるもの」を専門技術者といいます。

また、ここで定義されている「建設業法第7条第2号イ、ロ又はハに該当する者」は、一般建設業許可で営業所に配置する専任技術者と同等の資格・経験を有する技術者のことです。

一般建設業許可における専任技術者の要件は、建設業法で定められています。

【専任技術者の要件(一般建設業許可)】

  1. ①一定の国家資格を保有する者
  2. ②高等学校・中等教育学校在学中に許可を受けようとする建設業の指定学科を修め、卒業後5年以上の実務経験がある者、または、大学・短大・高等専門学校在学中に許可を受けようとする建設業の指定学科を修め、卒業後3年以上の実務経験がある者
  3. ③許可を受けようとする建設業の建設工事に関して10年以上の実務経験がある者
  4. ④国土交通大臣が上記の者と同等以上の知識・技術または技能を持っていると認定した者

①の一定の国家資格を保有する者とは、主な業種を例にあげると以下のとおりです。

①土木工事業

  1. 1級建設機械施工技士、2級建設機械施工技士(第1種~第6種)、1級土木施工管理技士、2級土木施工管理技士(土木)、技術士試験(建設・総合技術監理(建設))、技術士試験(建設「鋼構造物及びコンクリート」・総合技術監理(建設「鋼構造物及びコンクリート」))、技術士試験(農業「農業土木」・総合技術監理(農業「農業土木」))、技術士試験(水産「水産土木」・総合技術監理(水産「水産土木」))、技術士試験(森林「森林土木」・総合技術監理(森林「森林土木」))、

②建築工事業

  1. 1級建築施工管理技士、2級建築施工管理技士(建築)、1級建築士、2級建築士

③大工工事業

  1. 1級建築施工管理技士、2級建築施工管理技士(仕上げ)、2級建築施工管理技士(躯体)、1級建築士、2級建築士、木造建築士、技能検定(建築大工)、技能検定(型枠施行)

④電気工事業

  1. 1級電気工事施工管理技士、2級電気工事施工管理技士、技術士試験(建設・総合技術監理(建設))、技術士試験(建設「鋼構造物及びコンクリート」・総合技術監理(建設「鋼構造物及びコンクリート」))、技術士試験(電気電子・総合技術監理(電気電子))、第1種電気工事士、第2種電気工事士(3年以上の実務経験必要)、電気主任技術者(1種・2種・3種、5年以上の実務経験必要)、建築設備士(1年以上の実務経験必要)、1級計装士(1年以上の実務経験必要)

⑤塗装工事業

  1. 1級土木施工管理技士、2級土木施工管理技士(構造物塗装)、1級建築施工管理技士、2級建築施工管理技士(仕上げ)、技能検定(塗装・木工塗装・木工塗装工)、技能検定(建築塗装・建築塗装工)、技能検定(金属塗装・金属塗装工)、技能検定(噴霧塗装)、技能検定(路面表示施工)

この専門技術者を配置できない場合は、自社で附帯工事を施工することはできないため、附帯工事にかかる業種の建設業許可を受けている業者に施工を依頼する必要があります。

なお、上の条文で、附帯工事が軽微な建設工事である場合は、専門技術者の配置が不要とされています

軽微な建設工事とは、

  1. ①建築一式工事の場合
    ・工事1件の請負金額が1,500万円未満の工事
    ・延べ面積が150㎡未満の木造住宅建設工事
  2. ②建築一式工事以外の建設工事の場合
    ・工事1件の請負金額が500万円未満の工事

ですが、上の区分の①建築一式工事は附帯工事として認められていないため、結局、建築一式工事以外の建設工事で工事1件の請負金額が500万円未満の附帯工事を施工する場合に専門技術者の配置が不要ということになります。

わかりやすく書くと、請負金額が500万円未満の附帯工事を施工する場合は、専門技術者の配置は必要ないということです。

5-5 建設業許可が不要でも資格・登録が必要な工事がある

建設業の許可が不要な附帯工事を請け負う場合でも、建設業法とは別の法規により、専門の資格や登録が必要な工事があります

主な例をあげと、以下のとおりです。

①電気工事

電気工事業を営むためには、電気工事士の資格を取得することが必要です。

また、「電気工事業の業務の適正化に関する法律」に基づき、国または都道府県に電気工事業者の登録を行う必要があります。

電気工事業の登録は、営業所が1つの都道府県内にある場合は、その営業所所在地を管轄する都道府県に、営業所が複数の都道府県にある場合は国に登録・届出することになります。

②消防設備工事

消防設備工事を請け負うためには、消防設備士の資格を取得しなければなりません

消防設備士は、資格の種類が多肢に分かれていますが、消防設備工事を行うには、消防設備士甲種の資格が必要です。

③解体工事

解体工事を請け負う場合は、「建設リサイクル法」に基づき、請負金額にかかわらず、解体工事を請け負い、または施工しようとする区域を管轄する都道府県に「解体工事業の登録」を行わなければなりません

解体工事業の登録は、解体工事現場の区域を管轄する都道府県ごとに登録を行う必要があります。例えば、東京都と神奈川県で解体工事を施工する場合は、それぞれの都道府県に登録を行わなければなりません。

5-6 建設業許可が不要でも建設業法は適用される

すでに説明したように、主たる工事に付随する附帯工事を請け負う場合は、建設業の許可を受ける必要はありません

しかし、建設業許可が不要な附帯工事を請け負う場合でも、建設業法は適用されます。

建設業法は、次の目的を有しています。

  1. ①建設工事の適正な施工を確保し、発注者を保護する
  2. ②建設業の健全な発達を促進し、公共の福祉の増進に寄与する

この場合の建設業とは、元請、下請その他いかなる名義をも問わず、建設工事の完成を請け負う営業であるとされています。このため建設業法では、建設業の許可制度以外にも、

  1. ①建設工事の請負契約の適正化
  2. ②建設工事の施工技術の確保

などを目的とする様々な「きまりごと」が規定され、それらに違反した場合の罰則も定められています。

このように、仮に請け負う工事が建設業許可の対象にならなくても、建設業者であれば建設業法が適用されることは念頭に置く必要があります。

5-7 建設業許可が不要でも許可を受ければメリットがある

これまでみてきたように、主たる建設工事に付随する附帯工事であれば、建設業の許可を受けていなくても請け負うことが可能です。

しかし、建設業許可が不要な工事を請け負う場合でも、建設業の許可を受けておくことは様々なメリットに繋がります。その理由は、建設業許可が不要な工事であっても、許可業者は無許可業者に比べ、社会的・技術的な信頼度や信用度が上回るからです。

建設業の許可は、どのような建設業者でも受けることができるわけではありません。建設業許可を取得するためには、建設業者が満たさなければならない一定の基準があります。建設業の許可を受けるための基準は、建設業法に定められていますが、どのような業者でもクリアできるものではないのです。

建設業許可を受けるためには、適正な経営体制やしっかりとした財産的基礎(金銭的信用)を確保していることが求められます。また、営業所ごとに専任技術者を配置するなど人材面・技術面での体制も要請されます。

このように、建設業の許可を受けるには、建設業法で定める厳格な基準をクリアしていることが必要であるため、建設業の許可を受けていることが、社会的・技術的に一定の信用を得ることに繋がります

建設業許可が不要な工事であっても、無許可業者に依頼するよりも、社会的・技術的に信用が置ける許可業者に任せる方が安心・安全な施工ができると多くの発注者が考えても不思議ではありません。

また、建設業許可業者自身も、自社が許可業者であることを対外的・社内的にPRすることで、建設工事の受注実績や社員の士気の向上に繋げていくことができます

例えば、電気工事業の建設業許可を持つ建設業者であれば、先の例であげた屋内電気工事を受注する機会が多いことから、屋内電気工事の附帯工事となる内装工事業の許可を取得しておくのも方法の一つです。

発注者からみれば、電気工事業の許可しか持たない業者に頼むと、天井や壁の復旧内装工事の仕上げ等が不安になりますが、電気工事業と内装工事業両方の許可を有する業者に依頼することができれば、安心度や信頼度が遥かに勝ります。

以上のように、建設業許可が不要な工事を請け負う場合であっても、建設業許可を受けていれば、多くのメリットが期待できるのです。

6 まとめ

附帯工事は、許可を受けた業種にかかる主たる建設工事に付随して施工される従たる工事です。すなわち、附帯工事は、主たる工事の目的を達成するために行われる工事であり、それ自体が独立した使用目的を持たないものです。

附帯工事として認められるためには、①主たる建設工事の目的を達成するための工事であること、②主たる建設工事と一連・一体の工事施工が必要・相当であること、③主たる建設工事の工事金額より低いことの3要件を満たすことを念頭に入れておくことが大切です。

また、重要なのは、請負金額が500万円以上の附帯工事を施工する場合は、専門技術者を配置しなければならないことです。この専門技術者は、一般建設業許可で営業所に配置する専任技術者と同等の資格・経験を有する技術者とされています。このように、付帯工事を請け負うには、人材面での体制整備が必要であることも注意が必要です。

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