建設業で解体工事業の許可を得るにはどうすればいい?

建設業の許可は、建設業法に基づいて業種ごとに許可を受けることになっており、現在は29業種に分かれています。従来28であった建設業許可の業種が現在の29業種になったのは、「とび・土工工事業」に含まれていた「解体工事業」が平成28年6月1日に独立し、1業種として追加されたことによります。
このように、制度改正で新しく追加されたこともあり、解体工事業にかかる建設業許可関連については、未だ正しく理解されているとはいえない状況にあります。
そこで本記事では、解体工事業で建設業許可を取得するための要件や許可の申請手順について解説しました。解体工事業で建設業許可の取得を検討されている方は、ぜひ参考にしてください。
目次
1 建設業許可とは
「建設業許可」は、建設業法に基づき、一定規模以上の建設工事を請け負う場合に国土交通大臣または都道府県知事から受ける許可をいいます。法律で定められた一定規模以上の建設工事について、許可を得ずに工事を請け負ってしまうと、建設業法違反となるため十分な注意が必要です。
【建設業許可が必要な一定規模以上の建設工事】
- 〇建築一式工事
・工事1件の請負金額が1,500万円以上の工事
・延べ面積が150㎡以上の木造住宅工事
- 〇建築一式工事以外の建設工事
・工事1件の請負金額が500万円以上の工事
(注)金額は、材料費込みの税込金額
建設業許可の有効期限は、許可された日から5年を経過する日の前日で満了しますが、許可を更新する場合は、有効期限が満了する30日前までに更新の申請書を提出することになっています。
工事1件の請負金額が500万円未満の工事など、上記金額に該当しない建設工事は「軽微な工事」とされ、建設業許可を受ける必要はありません。
なお、解体工事については、500万円未満の工事を請け負う場合は、建設業許可は不要ですが、「解体工事業の登録」を行う必要があります。解体工事業登録は、建設業許可とは別の建設リサイクル法に基づく制度で、解体工事を請け負い、または施工しようとする区域を管轄する都道府県に事前登録を行うものです。
この解体工事業の登録は、解体工事現場の区域を管轄する都道府県ごとに登録を行うことになっています。すなわち、東京都、神奈川県、埼玉県のそれぞれで解体工事を施工する場合は、それぞれの都道府県に事前登録を行う必要があります。
1-1 建設業許可と業種
建設業許可を受けることとされている工事・業種は、以下の通りです。
【建設業許可を受けることとされている工事・業種】
工事区分 | 業種 |
---|---|
土木一式工事 建築一式工事 |
土木工事業、建築工事業 (以上2業種) |
専門工事 | (解体工事業、大工工事業、左官工事業、とび・土工工事業、石工事業、屋根工事業、電気工事業、管工事業、タイル・れんが・ブロック工事業、鋼構造物工事業、鉄筋工事業、舗装工事業、しゅんせつ工事業、板金工事業、ガラス工事業、塗装工事業、防水工事業、内装仕上工事業、機械器具設置工事業、熱絶縁工事業、電気通信工事業、造園工事業、さく井工事業、建具工事業、水道施設工事業、消防施設工事業、清掃施設工事業 (以上27業種) |
(注)一式工事は、専門工事を複数組み合わせた総合的な工事
建設業許可を受けることとされている工事区分で、一式工事は「土木一式工事」と「建築一式工事」の2工事であり、それらに対応する業種は、土木工事業と建築工事業の2業種とされています。
また、専門工事は「解体工事」以下の27工事で、対応する業種は解体工事業以下の27業種となっています。
なお、平成28年に建設業許可業種に「解体工事業」が追加される制度改正がされた関係で、平成28年6月1日時点で「とび・土工工事業」の許可を受けて解体工事業を営んでいる方は、令和元年5月31日までは解体工事業の許可を受けずに解体工事を施工することができました(平成28年6月1日時点で、すでに許可を受けている方に限る)。
しかし、現在この経過措置は期限を過ぎているため、「解体工事業」としての建設業許可を受けなければ、所定の解体工事を請け負うことはできません。
1-2 解体工事業とは
それでは、解体工事業とは、どのような業種なのでしょうか。解体工事業は、建築一式工事や土木一式工事で作った建築物や工作物の解体工事を行う業種です。
ここで、どのような場合に解体工事業の建設業許可が不要で、どのような場合が必要かをみていきましょう。
【解体工事業の建設業許可が不要な場合】
- ①元請業者が古い住宅を解体して更地にした後、新しい住宅の建設を行う場合は、古い住宅の解体工事、新しい住宅の建設工事ともに一連の「建築一式工事」とみなされます。この場合は、「建築工事業」の許可があれば、「解体工事業」の許可を受ける必要はありません。
- ②建築一式工事や土木一式工事以外の専門工事(26工事)で作られたものを解体する工事は、「それぞれの専門工事」とみなされます。したがって、「それぞれの専門工事にかかる業種」の許可があれば、「解体工事業」の許可は不要です。
例えば、水道施設を解体する工事は、「水道施設工事」とされるため、「水道施設工事業」の許可があれば、「解体工事業」の許可は必要ありません。
【解体工事業の建設業許可が必要な場合】
- ①元請業者が、古い住宅を解体して新しい住宅の建設を行う工事を請け負い、古い住宅の解体工事のみを下請けに出した場合は、この下請業者が行う工事は「解体工事」となります。
そのため、下請業者は、「解体工事業の建設業許可」(請負金額が税込500万円以上の場合)、または「解体工事業の登録」(請負金額が税込500万円未満の場合)を受ける必要があります。
以上から、建設業許可における解体工事を整理すると、次のようになります。
- ①解体工事とは、「建築一式工事」や「土木一式工事」で作った建築物や工作物を解体する工事
したがって、各専門工事で作ったものを解体する工事は、解体工事とみなされません。 - ②解体工事とは、「建築一式工事」や「土木一式工事」に含まれない工事
建築物や工作物の解体であっても、総合的な企画・指導・調整のもとに行われる一連の建築一式工事や土木一式工事に含まれる工事は、解体工事とみなされません。
2 建設業で解体工事業の許可を取得する要件
次に、建設業で解体工事業の許可を取得するには、どのような要件を満たす必要があるかについてみていきましょう。
なお、元請として1件の工事について下請代金合計額4,000万円以上(建築工事一式の場合は、1件の工事につき下請代金合計額6,000万円以上)で下請に出す場合は、特定建設業の許可を受ける必要があります(この要件に該当しないものは、500万円未満の軽微な工事の請負を除き一般建設業許可が必要)。
一般建設業の許可と特定建設業の許可では、「営業所に置く専任技術者」および「財産的基礎」の許可基準が異なっています。
ここでは、一般建設業許可と特定建設業許可の両者に共通する基準、および異なる部分について解説していきます。
建設業法第7条および第15条では、建設業の許可を行うための基準が定められています。
【建設業許可の基準】
- ①適正な経営体制を有しており、適切な社会保険に加入していること
- ②営業所ごとに専任技術者を置くこと
- ③請負契約に関して不正または不誠実な行為をするおそれが明らかな者でないこと
- ④請負契約を履行するに足りる財産的基礎または金銭的信用を有していること
2-1 経営業務の管理責任者がいること
建設業許可の基準①の「適正な経営体制を有しており、適切な社会保険に加入していること」を満たすには、まず、建設業に関し一定の経験を持つ者を配置し適正な経営体制を確保することが求められます。この①の基準は、一般建設業許可、特定建設業許可ともに同じです。
建設業の許可を受けようとする者は、「経営業務の管理責任者」を配置する必要があります。具体的には、
- ・法人の場合は、「常勤役員」のうち1人が
- ・個人の場合は、本人または支配人のうち1人が
以下の①~⑤のいずれかに該当しなければいけません。
なお、「常勤」とは、原則として、主たる営業所において、休日その他勤務を要しない日を除き、一定の計画のもとに毎日所定の時間中その職務に従事することをいいます。
また、「役員」とは、次のような地位にある者をいいます。
- ・株式会社の取締役
- ・合名・合資・合同会社の業務を執行する社員
- ・委員会設置会社の執行役
- ・法人格のある各種組合等の理事など
①建設業に関し経営業務の管理責任者としての経験が5年以上あること
②建設業に関し「経営業務の管理責任者に準ずる地位」にあって経営業務を管理した経験が5年以上あること
「経営業務の管理責任者に準ずる地位」とは、法人の場合は営業所長・工事部長など役員に次ぐ地位、個人の場合は配偶者や子など専従者として事業主を支える者が該当します。
この基準に該当するには、経営業務を執行する権限の委任を受けていたことが必要です。
③建設業に関し経営業務管理責任者に準ずる地位にあって経営者を「補佐」した経験が6年以上あること
「補佐」とは、法人では役員に次ぐ者、個人では共同経営者、妻子などが該当します。
また、上の①~③の経験がない常勤役員等でも、次の④または⑤の経験があり、かつ、「常勤役員等を直接補佐する人」を別に配置することで、経営業務の管理責任者の基準を満たすことができます。
④常勤役員等が、建設業に関し2年以上役員としての経験を有し、かつ、5年以上役員等または「役員に次ぐ職制上の地位」にある者(財務管理・労務管理・業務管理の担当に限る)としての経験を有していること
「役員等に次ぐ職制上の地位」とは、企業内で役員等に次ぐ役職上の地位にある者をいいます。
⑤常勤役員等が、5年以上役員としての経験を有し、かつ、建設業に関し2年以上役員等としての経験を有していること
「常勤役員等を直接補佐する人」とは、以下の者をいいます。
- ・建設業の財務管理の経験を5年以上有する者
- ・建設業の労務管理の経験を5年以上有する者
- ・建設業の運営業務の経験を5年以上有する者
建設業の経営に関する経験は建設工事の種類にかかわらず、上記の基準に該当すれば、解体工事業を含めた許可業種すべての経営業務の管理責任者になることができます。
なお、許可を受けた後に、何かの事情で経営業務の管理責任者が不在となった場合は、許可要件の欠如として許可が取り消されてしまいます。
経営業務の管理責任者としての基準を満たしているかどうかは、以下の書類を確認して判断されますが、必要書類は、国や各都道府県により異なります。
- ①組織図
- ②業務権限委譲の議事録
- ③役員期間が記載されている登記簿謄本
- ④確定申告書
- ⑤その期間の給与の支払い状況
- ⑥工事請負契約書、注文書、請求書 など
2-2 社会保険・雇用保険に加入していること
次は、基準①の「適正な経営体制を有しており、適切な社会保険に加入していること」の後段部分の要件です。この基準を満たすには、社会保険や雇用保険に適切に加入していることが必要です。
建設業の許可を得るには、健康保険法、厚生年金保険法、雇用保険法に規定する適用事業所に該当するすべての営業所について、適正に届出がされていることが求められるのです。
この社会保険・雇用保険への加入要件は、一般、特定建設業許可ともに同じです。
①社会保険に加入していること
社会保険とは、健康保険および厚生年金保険です。法人の場合は、原則として健康保険・厚生年金保険の適用事業所になります。個人の場合は、家族従業員を除く従業員が5人以上いれば、原則として適用事業所となります。
②雇用保険に加入していること
従業員を1人でも雇用していれば、原則として雇用保険の適用事業所となります。
2-3 営業所に専任技術者を置くこと
②の基準である「営業所ごとに専任技術者を置くこと」は、すべての営業所に、解体工事にかかる一定の資格や経験を持つ技術者を専任で置くことです。これは、解体工事の請負に関する見積、入札、契約の締結などは各営業所を中心に行われるため、すべての営業所に専任技術者を置く必要があるからです。
また、営業所に置く専任技術者は、許可を受けようとする建設業に関する資格や経験を持つ技術者である必要があります。この場合は、許可を受けようとする建設業が解体工事業であるため、営業所に置く専任技術者には、解体工事業に関する一定の資格や経験が求められます。
なお、この場合の「専任」とは、営業所に常勤して、専らその職務に従事することが求められる者をいいます。このため、次の人は原則として専任とは認められないので、注意が必要です。
- ・住所が勤務を要する営業所所在地から著しく遠く、常識的に通勤不可能である者
- ・他の営業所で専任の職務に就いている者
- ・建築士事務所を管理する建築士、専任の宅地建物取引士など、他の法令により特定の事務所等において専任を必要とされている者
- ・他に個人営業を行っている者、他の法人の常勤役員である者など、他の営業について専任に近い状態にあると認められる者
この②の基準内容は、一般と特定建設業許可で異なり、特定建設業許可ではより厳しくなっています。
【一般建設業許可における専任技術者の要件】
一般建設業許可における解体工事業の専任技術者の要件は、以下の通りです。
①一定の国家資格者
- ・1級土木施工管理技士
- ・2級土木施工管理技士(土木)
- ・1級建築施工管理技士
- ・2級建築施工管理技士(建築または躯体)
- ・技術士(建設部門または総合技術監理部門(建設))
- ・解体工事施工技士(建設リサイクル法の登録試験)
- ・1級とび技能士
- ・2級とび技能士(合格後、解体工事の実務経験が3年以上必要、平成16年4月1日時点で合格していた者は1年)
- ・国土交通大臣が個別の申請に基づき認定した者
②学校を卒業している解体工事の実務経験者
- ・大学・短期大学・高等専門学校等(土木工学または建築学に関する学科)を卒業後、解体工事の実務経験が3年以上ある者
- ・高等学校・中等教育学校(土木工学または建築学に関する学科)を卒業後、解体工事の実務経験が5年以上ある者
③解体工事の実務経験者
この場合、学歴や資格は必要ありません。
- ・解体工事について、実務経験が通算10年以上ある者
- ・土木工事および解体工事の実務経験の合算が12年以上あり、そのうち解体工事の実務経験が8年以上ある者
- ・建築工事および解体工事の実務経験の合算が12年以上あり、そのうち解体工事の実務経験が8年以上ある者
- ・とび土工および解体工事の実務経験の合算が12年以上あり、そのうち解体工事の実務経験が8年以上ある者
【特定建設業許可における専任技術者の要件】
特定建設業許可では、専任技術者の要件が一般建設業許可と異なっています。
①一定の国家資格者
- ・1級土木施工管理技士
- ・1級建築施工管理技士
- ・技術士(建設部門または総合技術監理部門(建設))
②一般建設業の専任技術者の要件を満たしている者で、元請として請負金額が4,500万円以上の解体工事について、2年以上の指導監督的な実務経験がある者
③国土交通大臣が①または②の者と同等以上の能力を持っていると認定した者
なお、許可を受けた後に、何かの事情で専任技術者が不在となった場合は、許可要件の欠如として許可が取り消されるため、注意が必要です。
また、平成28年6月1日の制度改正前における「とび・土工工事業」の専任技術者要件を満たす技術者を「解体工事業」の専任技術者要件を満たす技術者とみなす(解体工事業のみなし技術者)経過措置が講じられていましたが、この経過措置期限は令和3年6月30日で終了します。
経過措置期限到来後は、解体工事業のみなし技術者は、解体工事業の正規の専任技術者とは認められません。このため、解体工事業の専任技術者要件を備えた技術者を新たに選任し、所管行政庁に変更届を提出しなければなりません。変更届が未提出の場合は、解体工事業許可は取消処分となります。
さらに、解体工事業の専任技術者要件を備えた技術者を専任できないとの理由で解体工事業の許可を廃業する場合も廃業届の提出が必要なため、注意が必要です。
専任技術者としての基準を満たしているかどうかは、次の書類を確認して判断されますが、必要書類は、国や各都道府県により異なります。
- ①資格試験の合格証明書・合格通知書、資格の免許証
- ②建設業許可通知書
- ③工事請負契約書、預金通帳
- ④確定申告書、工事工程表
- ⑤住民票、健康保険証
- ⑥出向辞令、通勤経路図 など
2-4 誠実性の基準を満たすこと
③の基準である「請負契約に関して不正または不誠実な行為をするおそれが明らかな者でないこと」は、建設業の許可を受けようとする者が誠実性の基準を満たす必要があるということです。この③の基準は、一般と特定建設業許可ともに同じです。
「誠実性の基準」とは、
- ①許可を受けようとする者が法人の場合
法人、法人の役員、政令で定める法人の使用人が、請負契約に関して不正または不誠実な行為をするおそれが明らかな者でないこと - ②許可を受けようとする者が個人の場合
本人、支配人、政令で定める使用人が、請負契約に関して不正または不誠実な行為をするおそれが明らかな者でないことが基準とされています。
したがって、建設業で解体工事の許可を得るには、これらの基準を満たすことが必要です。
なお、上記の「不正な行為」とは、請負契約の締結や履行における詐欺・脅迫・横領など法律に違反する行為をいいます。
また、「不誠実な行為」とは、工事内容、工期、天災など不可抗力による損害の負担等について、請負契約に違反する行為とされています。
誠実性を満たさない場合の例としては、建築士法、宅地建物取引業法等の規定により不正または不誠実な行為を行ったことをもって免許の取消処分を受け、その最終処分から5年を経過しない場合などをあげることができます。
2-5 財産的基礎を有すること
④の基準である「請負契約を履行するに足りる財産的基礎または金銭的信用を有していること」は、建設業の許可を受けるには、建設業の請負契約を履行できる財産的な基礎または金銭的な信用を持っていることが求められるということです。
この④の基準は、一般と特定建設業許可で異なり、特定建設業許可ではより厳しくなっています。
【一般建設業許可における財産的基礎の要件】
一般建設業許可では、次のいずれかに該当することが求められます。
①自己資本の額が500万円以上であること
「自己資本」は、法人では貸借対照表の純資産合計額、個人では期首資本金、事業主借勘定、事業主利益の合計額から事業主貸勘定の額を控除した額に、負債の部に計上されている利益保留性の引当金と準備金の額を加えた額となります。
②500万円以上の資金を調達する能力を有すること
「500万円以上の資金を調達する能力」は、金融機関等から500万円以上の資金の融資を受けることができる能力をいい、例えば、担保にできる不動産等を所有しているなどをあげることができます。この資金調達能力は、取引金融機関の融資証明書、預金残高証明書などによって確認します。
③許可申請直前の過去5年間、許可を受けて継続して営業した実績を有すること
【特定建設業許可における財産的基礎の要件】
特定建設業許可を得るには、以下のすべてに該当することが求められます。
- ①欠損の額が資本金の額の20%を超えていないこと
・貸借対照表の繰越利益剰余金がマイナスの場合
欠損の額={繰越利益剰余金-(資本剰余金+利益準備金+その他の利益剰余金)}
「欠損の額が資本金の額の20%を超えていない」は、
{繰越利益剰余金-(資本剰余金+利益準備金+その他の利益剰余金)}÷資本金≦0.2
である必要があります。
・貸借対照表の繰越利益剰余金がプラスの場合
許可基準を満たします。 - ②流動比率が75%以上であること
流動比率=流動資産÷流動負債×100
「流動比率が75%以上である」は、
流動資産÷流動負債×100≧75%
である必要があります。 - ③資本金の額が2,000万円以上であり、かつ、自己資本の額が4,000万円以上であること直近決算の貸借対照表で、資本金が2,000万円以上、自己資本の額(純資産合計)が、4,000万円以上計上されている必要があります。
なお、許可を受けた後に、財産的基礎の基準を満たさなくなっても、その時点で許可が取り消されることはありません。
ただし、建設業許可の更新時点では基準を満たしていることが必要であるため、注意しましょう。
2-6 欠格要件に該当しないこと
建設業の許可を受けようとする者が、以下に該当する場合は、欠格要件として許可を受けることができません。
欠格要件は、一般と特定建設業許可ともに同じです。
①許可申請書や添付書類の重要な事項について、虚偽の記載がある、または重要な事実の記載が欠けている場合
②以下のいずれかに該当する場合
- ・破産手続開始の決定を受けて復権していない者
- ・不正の手段により許可を受けたこと、または営業停止処分に違反したことなどによりその許可を取り消されて5年を経過しない者
- ・許可の取消処分を免れるために廃業の届出を行い、その届出の日から5年を経過しない者
- ・許可の取消処分を免れるために廃業の届出を行った事業者について、許可の取消処分にかかる聴聞の通知の前60日以内に当該法人の役員等もしくは政令で定める使用人であった者または個人の使用人であった者で、当該届出の日から5年を経過しない者
- ・営業停止を命ぜられ、その停止の期間が経過しない者
- ・営業を禁止され、その禁止の期間が経過しない者
- ・禁固以上の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、またはその刑の執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
- ・建設業法、または一定の法令の規定に違反して罰金の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、またはその刑の執行を受けることが受けることがなくなった日から5年を経過しない者
- ・暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律第2条6号に規定する暴力団員または同号に規定する暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者
- ・心身の故障により建設業を適正に営むことができない者として国土交通省令で定めるもの
- ・営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者で、その法定代理人(法人の場合は、その役員)が上記のいずれかに該当する者
- ・暴力団員等がその事業活動を支配する者
3 建設業許可の申請手順
次に、建設業許可の申請手順についてみていきましょう。
3-1 建設業許可の申請方法
建設業許可には、国土交通大臣許可と都道府県知事許可の2種類があります。
②都道府県知事許可
建設業許可申請者の営業所が特定の都道府県だけにしかない場合は、その営業所の所在地を管轄する都道府県知事の許可を受ける必要があります。
建設業許可の申請は、国土交通大臣許可と都道府県知事許可により、手続きが異なります。
①国土交通大臣許可の申請手順
建設業許可申請書は、主たる営業所の所在地を管轄する国土交通省地方整備局に、持参または郵送することとされています。申請書の受理後に、申請内容の審査が国により行われますが、審査期間は90日程度かかります。
審査の結果、許可基準を満たすと判断された場合は「許可通知」が、許可基準を満たさないと判断された場合は「許可の拒否通知」が申請者あてに送付されます。
②都道府県知事許可の申請手順
建設業許可申請書は、主たる営業所の所在地を管轄する都道府県庁や土木事務所の建設業担当課に提出します。申請書の提出先が都道府県の本庁か土木事務所か、また、提出方法が持参か郵送かなどは、各都道府県で異なるため直接問い合わせる必要があります。
申請書の受理後に、都道府県による申請内容の審査が行われますが、審査期間は30日程度と国より短くなっています。審査の結果、許可基準を満たすと判断された場合は許可され、許可基準を満たさないと判断された場合は不許可処分となります。
3-2 建設業許可の申請費用
建設業許可の新規申請手続きに要する費用は、次の通りです。
【建設業許可の新規申請手続きに要する費用】
区分 | パターン | 費用 |
---|---|---|
国土交通大臣許可 | 一般建設業許可または特定建設業許可を申請する場合 | 15万円 |
一般建設業許可と特定建設業許可の両方を申請する場合 | 30万円 | |
特定建設業の許可 | 一般建設業許可または特定建設業許可を申請する場合 | 9万円 |
一般建設業許可と特定建設業許可の両方を申請する場合 | 18万円 |
(注)上記の他に、新規申請の場合は、行政書士手数料が10~20万円程度かかります。
4 まとめ
建設業許可は、平成28年6月1日に制度改正が行われ、「解体工事業」が「とび・土工工事業」から独立したことにより、現在の29業種になりました。この制度改正で「解体工事業」が新設され、また、それに伴う経過措置が講じられたことなどから、解体工事業にかかる建設業許可制度の内容について、未だ広く完全に理解されているとはいえない状況にあります。
特に、①平成28年6月1日時点で「とび・土工工事業」の許可を受けていれば、引き続き所定の解体工事を請け負うことができるとの経過措置が、令和元年5月31日に期限切れとなったこと
②解体工事業のみなし技術者にかかる経過措置が、令和3年6月30日に期限を迎えることなどは、注意が必要です。
また、様々な請負工事の形態で、どのような場合に解体工事業の建設業許可が必要・不要であるかについても、より一層の理解が求められます。
さらに、500万円未満の解体工事を請け負う場合は、「軽微な工事」として建設業の許可は不要ですが、建設リサイクル法に基づく「解体工事業の登録」を行わなければならないことも、常に念頭に置いておく必要があります。
建設業界における「解体工事」というジャンルは、需要が大きく必要不可欠な分野であるだけに、建設業許可制度の正しい理解と運用が重要と言えるでしょう。