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建設業許可、「一般」と「特定」の違いとは

建設業許可は、建設業法に基づき、一定規模以上の建設工事を請け負う場合に国土交通大臣または都道府県知事から受ける許可ですが、一般建設業許可特定建設業許可の2種類に分かれています。

一般建設業許可と特定建設業許可それぞれの許可基準や許可を受けた場合に課される義務などは、建設業法によって定められていますが、すべての方が正しく理解されているとはいえません。

そこで本記事では、一般建設業許可と特定建設業許可の違いやそれぞれの趣旨、注意点などを解説しました。建設業に就業している方は、ぜひ参考にしてみてください。

1 建設業許可の概要

「建設業許可」とは、建設業法に基づき、一定規模以上の建設工事を請け負う場合に国土交通大臣または都道府県知事から受けることとされている許可のことです。建設業許可を受けなければならない場合に無許可で工事を請け負ってしまうと、建設業法違反として行政処分の対象となるため、注意が必要です。

また、建設業許可の有効期間は、許可のあった日から5年を経過する日の前日で満了します。許可を更新する場合、有効期間が満了する30日前までに更新の許可申請書を提出しなければなりません。

なお、以下に該当する「軽微な工事」については、建設業許可を受ける必要はありません。

工事の区分 工事の内容
建築一式工事 ・工事1件の請負金額が1,500万円未満の工事
・延べ面積が150㎡未満の木造住宅工事
建築一式工事以外の建設工事 ・工事1件の請負金額が500万円未満の工事

(注)金額は、材料費込みの税込金額

1-1 建設業許可と業種

建設業の許可は、建設業法に定める工事・業種ごとに受けることとされています。該当する工事・業種は、以下の通りです。

工事の区分 業種
(2工事)

土木一式工事
建築一式工事

(2業種)

土木工事業
建築工事業

(27工事)

専門工事

(27業種)

大工工事業、左官工事業、とび・土木工事業、石工事業、屋根工事業、電気工事業、管工事業、タイル・れんが・ブロック工事業、鋼構造物工事業、鉄筋工事業、舗装工事業、しゅんせつ工事業、板金工事業、ガラス工事業、塗装工事業、防水工事業、内装仕上工事業、機械器具設置工事業、熱絶縁工事業、電気通信工事業、造園工事業、さく井工事業、建具工事業、水道施設工事業、消防施設工事業、清掃施設工事業、解体工事業

(注)一式工事とは、専門工事を複数組み合わせた総合的な工事のこと

建設業許可を受けることとされている工事の中で、一式工事は土木一式工事および建築一式工事の2工事があり、それぞれに対応する業種は、土木工事業建築工事業の2業種となっています。

また、専門工事は大工工事以下の27工事で、対応する業種は大工工事業以下の27業種とされています。

1-2 一般建設業許可と特定建設業許可

建設業許可は、一般建設業許可と特定建設業許可の2種類に区分されます。

【一般建設業許可】

建設業を行う場合は、前に説明した「軽微な建設工事」のみを請け負う場合を除き、一般建設業の許可を取得しなければなりません。

すなわち、建築一式工事では、

  1. ①工事1件の請負金額が1,500万円未満の工事
  2. ②延べ面積が150㎡未満の木造住宅工事

建築一式工事以外の建設工事では、

  1. ①工事1件の請負金額が500万円未満の工事

に該当しない工事を請け負う場合には、一般建設業の許可を受ける必要があります。

【特定建設業許可】

工事の発注者から直接工事を請け負う者が、元請として1件の工事について下請代金合計額

4,000万円以上(建築工事一式の場合は、1件の工事につき下請代金合計額6,000万円以上)で下請に出す場合は、特定建設業の許可を受けなければなりません。

この要件に該当しないときは、「軽微な建設工事」のみを請け負う場合に該当しないかぎり、一般建設業の許可を受けることになります。

上の要件を順番にみると、特定建設業許可が必要な業者は、まず、①「工事の発注者から直接工事を請け負う者」が該当します。したがって、工事の発注者から直接工事を請け負わない者、すなわち、下請業者や孫請業者は対象外です。下請業者や孫請業者として工事を請け負うのであれば、請負代金が合計4,000万円以上であっても、特定建設業許可の対象にはなりません。

また、下請業者が孫請業者に再下請に出す場合も、再下請金額に関係なく特定建設業許可の対象ではありません。これらの場合は、一般建設業の許可を受けることになります。

次に、②「元請として1件の工事について下請代金合計額4,000万円以上(建築工事一式の場合は、1件の工事につき下請代金合計額6,000万円以上)で下請に出す場合」が該当します。したがって、自社が元請として下請に出すのでなければ該当しません。

例えば、発注者からの請負金額が4,000万円以上であっても、元請業者が自分で工事を施工するのであれば、下請に出さないので特定建設業許可を受ける必要はないということです。

また、元請として下請に出す場合でも、下請代金合計額が4,000万円未満であれば、当然に特定建設業許可の対象になりません。ただし、これらの場合も、一般建設業の許可を受けることは必要です。

以上を整理すると、

  1. ①特定建設業許可は、「工事の元請として一定金額以上で下請けに発注する場合」に受けなければならない許可
  2. ②一般建設業許可は、「特定建設業許可の対象外であり、かつ「軽微な建設工事」のみを請け負うケースに該当しない場合」に受けなければならない許可
    となります。

2 一般建設業許可と特定建設業許可の違い

次に、一般建設業許可と特定建設業許可は何が異なるのか、両者の違いについてみていきましょう。

2-1 許可基準の違い

まず、1つ目は、一般建設業許可と特定建設業許可における許可基準の違いです。建設業法では、一般建設業許可と特定建設業許可、それぞれの許可を行うための基準が定められています。

〇一般建設業許可の基準(建設業法第7条)

  1. ①建設業にかかる経営業務の管理を適正に行う能力がある者として、国土交通省令で定める基準に適合する者
  2. ②営業所ごとに、次のいずれかに該当する専任技術者を置くこと
    ・一定の国家資格を有する者
    高等学校・中等教育学校在学中に許可を受けようとする建設業の指定学科を修め、卒業後5年以上の実務経験がある者、または、大学・短大・高等専門学校在学中に許可を受けようとする建設業の指定学科を修め、卒業後3年以上の実務経験がある者
    ・許可を受けようとする建設業の建設工事に関して10年以上の実務経験がある者
    ・国土交通大臣が上記の者と同等以上の知識・技術または技能を持っていると認定した者
  3. ③法人・個人、その役員、政令で定める使用人が、請負契約に関して不正または不誠実な行為をするおそれが明らかな者でないこと
  4. ④請負契約を履行するに足りる財産的基礎または金銭的信用を有しないことが明らかな者でないこと

〇特定建設業許可の基準(建設業法第15条)

  1. ①建設業にかかる経営業務の管理を適正に行う能力がある者として、国土交通省令で定める基準に適合する者
  2. ②営業所ごとに、次のいずれかに該当する専任技術者を置くこと
    ・一定の国家資格を有する者
    一般建設業のいずれかの専任技術者の要件を満たしている者で、許可を受けようとする建設業に関して、発注者から直接請け負い、その請負金額が政令で定める金額(4,500万円)以上であるものについて、2年以上の指導監督的な実務経験がある者
    国土交通大臣が上記の者と同等以上の能力を持っていると認定した者
  3. ③法人・個人、その役員、政令で定める使用人が、請負契約に関して不正または不誠実な行為をするおそれが明らかな者でないこと
  4. ④発注者との請負契約で、その請負代金の額が政令で定める金額以上であるものを履行するに足りる財産的基礎を有すること

これらの許可基準を比べると、

①建設業にかかる経営業務の管理を適正に行う能力がある、③請負契約に関して不正または不誠実な行為をするおそれがないについては、一般建設業許可と特定建設業許可で同じですが、

②営業所に専任技術者を置く、④一定の財産的基礎を有するの基準に差があることがわかります。この専任技術者と財産的基礎の基準が、一般建設業許可に比べて特定建設業許可の方が厳しくなっています。

これらを順番にみていくと、

まず、「①建設業にかかる経営業務の管理を適正に行う能力がある」については、建設業において一定の経験を持つ者を配置し、適正な経営体制を確保することが求められます。この「一定の経験を持つ者」は、「常勤役員1人」または「常勤役員1人+当該常勤役員等を直接補佐する者」とされています。

建設業における一定の経験については、下表のとおり、経験した地位・内容などにより必要年数が定められています。

資料出所:関東地方整備局「建設業許可申請・変更の手引き」

次に、社会保険に適切に加入していることが求められます。健康保険法、厚生年金保険法、雇用保険法に規定する適用事業所に該当するすべての営業所について、適正に届出がされていることが必要です。

「③請負契約に関して不正または不誠実な行為をするおそれがない」については、許可を受けようとする者が法人の場合は、法人、法人の役員、政令で定める法人の使用人が、請負契約に関して不正または不誠実な行為をするおそれが明らかな者でないことが求められます。

また、許可を受けようとする者が個人の場合は、本人、支配人、政令で定める使用人が、請負契約に関して不正または不誠実な行為をするおそれが明らかな者でないことが要件とされています。

この場合の「不正な行為」とは、請負契約の締結や履行における詐欺・脅迫・横領など法律に違反する行為のことです。

また、「不誠実な行為」とは、工事内容、工期、天災など不可抗力による損害の負担等について、請負契約に違反する行為をいいます。

①建設業にかかる経営業務の管理を適正に行う能力がある、③請負契約に関して不正または不誠実な行為をするおそれがないについては、一般建設業許可、特定建設業許可ともに同じ許可基準が適用されます。

問題は、一般建設業許可、特定建設業許可で許可基準が異なる、②営業所に専任技術者を置く、④一定の財産的基礎を有する、の2つです。

【専任技術者の基準が厳しい】

建設業の請負契約に関する見積、入札、契約の締結などは各営業所を中心に行われるため、建設業を営むすべての営業所ごとに、許可を受けようとする建設業に関する一定の資格や経験を持つ技術者を専任で配置することが求められます。

ここでいう「専任」の者とは、営業所に常勤して、専らその職務に従事することを要する者とされています。このため、次のような人は、原則として専任とは認められません。

  1. ・技術者の住所が勤務を要する営業所の所在地から著しく遠距離で、常識的に通勤不可能である者
  2. ・他の営業所で専任の職務に就いている者
  3. ・建築士事務所を管理する建築士、専任の宅地建物取引士等他の法令により特定の事務所等において専任を要することとされている者
  4. ・他に個人営業を行っている者、他の法人の常勤役員である者等他の営業について専任に近い状態にあると認められる者

上の②では、一般建設業許可、特定建設業許可ともに、営業所ごとに一定の要件を満たす専任技術者を置くこととされています。しかし、この専任技術者が満たすべき一定の要件が、特定建設業許可では一般建設業許可に比べて厳しくなっています。

まず、1つ目の一般建設業許可と特定建設業許可の両方に規定されている「一定の国家資格を有する者」ですが、数ある国家資格の中で一般建設業許可の要件は満たすが、特定建設業許可の要件を満たさない資格があります。法律の表現は同じでも、特定建設業許可では要件を満たす国家資格が厳選されています。

次に、2つ目の要件ですが、一般建設業許可では、

  1. ・学校で建設業の指定学科を修め、高等学校・中等教育学校では卒業後3年以上、大学・短大・高等専門学校では卒業後5年以上の実務経験がある者、
  2. または、
  3. ・許可を受けようとする建設業の建設工事に関して10年以上の実務経験がある者となっています。

これに対して、特定建設業許可では、

  1. ・一般建設業の専任技術者の要件を満たしている者で、許可を受けようとする建設業に関して発注者から直接請け負い、その請負金額が政令で定める金額(4,500万円)以上であるものについて2年以上の指導監督的な実務経験がある者となっています。

すなわち、特定建設業許可では、一般建設業の専任技術者の要件を満たした上で、さらに、発注者から直接請け負った請負金額4,500万円以上の建設工事について2年以上の指導監督的な実務経験が求められています。

これを整理すると、特定建設業許可業者は、次のいずれかの資格または経験を有する専任技術者を各営業所に配置する必要があります。

①資格

建設業の業種に応じた国家資格者

②経験

一般建設業許可の要件に加えて、さらに、建設業の業種に応じた工事について、元請として4,500万円以上の工事を2年以上指導監督した実務経験を有する者

なお、指定建設業である土木・建築・菅・鋼構造物・舗装・電気・造園の7業種については、1級の国家資格等が必要とされています(②の経験者では要件を満たしません)。許可を受けた後に、何らかの事情で専任技術者が不在となった場合は、許可要件の欠如として許可の取消しとなります。

【財産的基礎の基準が厳しい】

建設業の許可を受けるには、建設業の請負契約を履行できる財産的な基礎または金銭的な信用を持っていることが求められます。

上に示した④においても、一般建設業許可、特定建設業許可において建設業者が備えるべき財産的基礎の基準が定められています。しかし、この建設業者が備えるべき財産的基礎の基準が、特定建設業許可では一般建設業許可に比べて厳しくなっています。

一般建設業許可では、「請負契約を履行するに足りる財産的基礎または金銭的信用を有しないことが明らかな者でないこと」とされています。

一方、特定建設業許可では、「発注者との請負契約で、その請負代金の額が政令で定める金額(8,000万円)以上であるものを履行するに足りる財産的基礎を有すること」となっています。

両者を比べると、一般建設業許可では請負契約を履行するに足りるレベルの財産的基礎を求めているだけに対し、特定建設業許可では基準内容がより具体的で厳しいものになっています。これらそれぞれの財産的基礎の基準を詳しく説明すると、以下のようになります。

区分 基準内容
一般建設業許可 次のいずれかに該当すること
①自己資本の額が500万円以上であること
②500万円以上の資金を調達する能力を有すること
③許可申請直前の過去5年間、許可を受けて継続して営業した実績を有すること
特定建設業の許可 (27業種)
次のすべてに該当すること
①欠損の額が資本金の額の20%を超えていないこと
②流動比率が75%以上であること
③資本金の額が2,000万円以上であり、かつ、自己資本の額が4,000万円以上であること

参照:関東地方整備局「建設業許可申請・変更の手引き」

〇上表の一般建設業許可区分
①自己資本の額が500万円以上であること

「自己資本」は、法人では貸借対照表の純資産合計額、個人では期首資本金、事業主借勘定、事業主利益の合計額から事業主貸勘定の額を控除した額に、負債の部に計上されている利益保留性の引当金と準備金の額を加えた額とされています。

②500万円以上の資金を調達する能力を有すること

「500万円以上の資金を調達する能力」は、担保とすべき不動産等を所有しているなどにより、金融機関等から500万円以上の資金の融資を受けることができる能力であり、取引金融機関の融資証明書、預金残高証明書なでによって確認するとされています。

〇上表の特定建設業の許可区分
①欠損の額が資本金の額の20%を超えていないこと

「欠損の額」は、法人では、貸借対照表の繰越利益剰余金がマイナスの場合に、その額が資本剰余金、利益準備金、その他の利益剰余金の合計額を上回る額とされています。

これを式に表すと、次のようになります。

欠損の額={繰越利益剰余金-(資本剰余金+利益準備金+その他の利益剰余金)}

したがって、「欠損の額が資本金の額の20%を超えていない」とは、{繰越利益剰余金-(資本剰余金+利益準備金+その他の利益剰余金)}÷資本金≦0.2となります。

少々複雑ですが、まず、①直近決算の貸借対照表で、繰越利益剰余金の額がプラスであれば、それだけで許可基準を満たすことになります。次に、②繰越利益剰余金の額がマイナスであっても、その絶対値の額(マイナスを除いた数値)よりも、資本剰余金、利益準備金、その他の利益剰余金の合計額が上回っていれば基準をクリアできます。

上の①、②に該当しない場合は、③上の計算式を使って、欠損の額が資本金の額の20%を超えていないことを確認する必要があります。この場合、欠損の額が資本金の額の20%を超えてしまっていると、特定建設業の許可基準を満たしていない(許可されない)ことになります。

なお、個人の場合の欠損の額は、事業主損失が、事業主借勘定の額から事業主貸勘定の額を控除した額に負債の部に計上されている利益保留性の引当金と準備金を加えた額を上回る額とされています。

②流動比率が75%以上であること

「流動比率」は、流動資産を流動負債で除した数値に100を乗じた額とされ、短期的な支払い能力を表します。流動資産は、1年以内に現金化できる資産のことで、貸借対照表の資産の部における現金預金や完成工事未収入金などの合計額です。流動負債は1年以内に返済を要する負債のことで、貸借対照表の負債の部における工事未払金や短期借入金などの合計額となります。

流動比率は、流動負債に対する流動資産の割合を示すもので、次の式になります。

流動比率=流動資産÷流動負債×100

したがって、「流動比率が75%以上である」は、流動資産÷流動負債×100≧75%となります。

③資本金の額が2,000万円以上であり、かつ、自己資本の額が4,000万円以上であること「資本金」は、法人では、株式会社の払込資本金、持分会社等の出資金額であり、個人では、期首資本金とされています。直近決算の貸借対照表で、資本金として2,000万円以上の額が計上されている必要があります。

また、同じく貸借対照表で、自己資本の額(純資産合計)が、4,000万円以上計上されていなければなりません。

なお、許可を受けた後に、財産的基礎の基準を満たさなくなっても、その時点で許可が取り消されることはありません(更新時点で基準を満たしていることは必要です)。

上表で、一般建設業許可では、財産的基礎の3つの基準のいずれかを満たせばよいのに対し、特定建設業許可では3つの基準すべてに該当することが求められています。
また、個々の基準内容をみても、一般建設業許可に比べ、特定建設業許可における財産的基礎に求められる基準の方が厳しい内容になっています。

2-2 課せられる義務の違い

2つ目は、一般建設業許可と特定建設業許可それぞれに課せられる義務の違いです。

【一般建設業許可業者に課せられる義務】

まず、一般建設業の許可を受けた場合、以下の義務が課されることになります。

①行政庁への届出義務

建設業の許可を取得した後は、許可業者は、毎事業年度終了後定められた期間内に変更届出書を提出しなければなりません。この変更届出書は、決算報告として毎年提出を義務付けられるものです。また、許可の届出事項に変更が生じた場合も、報告する必要があります。

②許可票の掲示義務

建設業の許可を受けると、公衆の見やすい場所に許可票を掲示する必要があります。
許可票は標識ともいい、建設業の許可を受けた業者が建設工事を適正に行っている旨を対外的に証明するものです。

この許可票は、店舗・営業所に掲示するための許可票と建設工事現場に掲示するための許可票の2種類があり、許可業者はその両方を掲示しなければなりません。

なお、許可票は、そのサイズや記載事項は定められていますが、行政庁から配布されるものではないため、許可業者は自分で調達して掲示する必要があります。

③帳簿の備付・保存義務

建設業許可業者は、請負契約の内容を記載した帳簿を各営業所に備え付け、5年間保存する義務があります。この帳簿は、記載すべき事項や添付しなければならない書類などが細かく決められています。

④営業に関する図書の保存義務

元請業者は、各営業所に会議記録や完成図面など営業に関する図書を保存する義務があります。

この保存義務は、引渡しから10年間とされています。

⑤契約締結に関する義務

建設工事の請負契約締結にあたっては、発注者と受注者双方の公平性や契約の適正化を担保するため、様々なルールが定められています。まず、請負契約は工事の着工前に書面で締結しなければならないとの「着工前書面契約」の原則があります。

また、請負契約書に記載しなければならない事項が決められている「契約書面への記載必須事項」の義務が定められています。このように、建設業許可業者が契約締結に関する義務を負うことで、建設工事請負契約の適正化が図られています。

⑥工事現場の施工体制等に関する義務

建設業許可業者は、工事現場に主任技術者を配置する義務があります。主任技術者は、建設工事を適正に実施するため、施工計画の作成や工事の工程管理、工事資材の品質管理、工事の安全管理を行う技術者で、その資格は、一般建設業許可業者の営業所に配置する専任技術者の資格と同じとされています。

また、主任技術者の配置義務は元請・下請の区別なく課せられます。なお、請負代金が3,500万円(建築一式工事は7,000万円)以上の工事では、主任技術者は専任で配置する必要があり、他の工事現場との兼任は認められません。

⑦一括下請負の禁止義務

建設業許可業者が請け負った建設工事を一括して他者に請け負わせる「一括下請負」は、禁止されています。

⑧下請代金の支払いに関する義務

建設工事の請負代金の支払いに関しては、下請負人を保護するため様々なルールが定められています。

まず、下請代金は、1月以内に支払うこととされています。すなわち、元請人は、発注者から請負代金の支払いを受けた日から1月以内に、工事を施工した下請人に下請代金を支払う義務があります。

なお、この1月以内の期間は最長期間とされ、下請代金の支払いは可能な限り迅速に行うこととされています。また、下請代金は現金払いが原則とされています。手形払いも認められていますが、その場合も可能な限り短い手形期間を設定することとされています。

以上が、一般建設業許可業者に課される義務ですが、特定建設業許可業者には、この一般建設業許可業者に課される義務に加えて、さらに次の義務が上乗せされます。

①施工体制台帳等の作成義務

特定建設業許可業者が、元請として4,000万円以上(建築一式工事の場合は6,000万円以上)の工事を下請に出す場合は、施工体制台帳や施工体系図を作成することが義務付けられます。なお、施工体制台帳には、以下の事項を記載する必要があります。

  1. ・工事に関わるすべての業者名
  2. ・工事の内容
  3. ・工事の期間

②下請業者の指導義務

特定建設業許可業者は、工事に関わるすべての下請業者、孫請業者に対して、法令遵守の実施などについての指導を行う義務があります。下請業者や孫請業者が法令を守らなかった場合は是正指導を行うこと、指導を行っても是正されないときは行政庁に通報することが義務付けられます。

③下請代金支払の特例

一般建設業許可業者の義務として、「元請人は、発注者から請負代金の支払いを受けた日から1月以内に、工事を施工した下請人に下請代金を支払う義務がある」ことを説明しました。特定建設業許可業者の場合は、この下請代金の支払義務に特例が設けられています。

すなわち、特定建設業許可業者は、発注者から請負代金の支払いを受けたかどうかにかかわらず、工事完成の確認後に下請から引渡しの申出があったときは、申出日から50日以内に下請代金を支払うことが義務付けられています。

このため、特定建設業許可業者は、

  1. 発注者から請負代金の支払いを受けた日から1月以内
  2. ・下請による引渡しの申出日から50日以内

のいずれか早い日までに下請代金を支払う必要があります。

④工事現場への監理技術者の配置義務

一般建設業許可業者は、「工事現場に主任技術者を配置する義務がある」ことを説明しました。しかし、特定建設業許可業者が、元請として4,000万円以上(建築一式工事の場合は6,000万円以上)の工事を下請に出す場合は、主任技術者ではなく、監理技術者を配置することが義務付けられています。

監理技術者は、主任技術者の職責に加えて、工事現場で下請業者を適切に指導監督する役目を負っており、その資格は、特定建設業許可業者の営業所に配置する専任技術者の資格と同じとされています。

なお、請負代金が3,500万円(建築一式工事は7,000万円)以上の工事では、監理技術者は専任で配置する必要があり、他の工事現場との兼任が認められないのは、主任技術者の場合と同じです。

以上のように、特定建設業許可業者には、一般建設業許可業者に比べて、より厳しい義務が課されています。

3 特定建設業許可の趣旨と注意点

それでは、特定建設業許可はどのような趣旨で法制化され、その注意すべき点は何かについてみていきましょう。

3-1 特定建設業許可の趣旨

建設工事は、元請・下請・孫請など、利害関係がある建設業者が何重にも重なり合い、仕事全体を進め完成させてゆく独特の特徴を持っています。このような下請構造においては、請負代金は元請業者から下請業者へ、そして下請業者から孫請業者へと支払われます。その場合に、経営不振など何らかの事情で、元請業者から請負代金が支払われなかったとしたら、下請業者やその下の孫請業者は連鎖的に大きな被害を被ってしまいます。

このため、4,000万円以上という一定規模以上の請負金額で下請けに発注する元請業者については、あらかじめ、経営面と技術面の両面で安全性や信頼性を証明することが求められています。

この経営面と技術面の両面で安全性や信頼性を証明するためには、特定建設業の許可基準を満たすこと、特に一般建設業の許可基準より厳しく設定されている「営業所に配置する専任技術者の要件」と「申請者の財産的基礎の要件」の2つをクリアする必要があります。

すなわち、特定建設業の許可は、建設工事に関わる下請業者や孫請業者を保護するとともに、建設工事の適正な施工を担保することが目的です。

3-2 特定建設業許可の注意点

一般建設業許可に比べて、特定建設業許可の許可基準がより厳しくなっている点として、営業所に配置する専任技術者の要件と申請者の財産的基礎の要件の2つをあげました。この専任技術者と財産的基礎の2つの要件は、特定建設業許可を受けた後も引き続き注意を要するポイントです。

まず、専任技術者ですが、許可を受けた後に、専任技術者が退職するなどでそのポストが不在になってしまったら、許可要件の欠如として許可が取り消されてしまいます。

さらに、複数の営業所を持つ許可業者の場合は、この専任技術者をそれぞれの営業所に配置しておく必要があります。この場合要件を満たす人材に余裕がないと、専任技術者が不在となるリスクが大きくなってしまいます。

このため、不測の事態に備えて、資格要件を満たす複数の人材を余分に確保しておくなどの体制整備が求められます。

また、財産的基礎については、特定建設業許可においては、新規許可時だけではなく、5年ごとの更新時にも確認されることになっています。仮に、更新時に財産的基礎の要件を1つでも欠いていれば、特定建設業許可の更新ができなくなってしまいます。

このため、特定建設業の許可を取得後、一時的に財産的基礎の要件を欠くことになっても、更新前の直近会計年度では、必ず要件を満たすように経営内容を立て直しておく必要があります。

さらに、特定建設業許可を受けた場合には、工事現場への監理技術者の配置義務があることに注意しなければなりません。この点については、特定建設業の許可申請時点で見落としがちであるため、思わぬ落とし穴となりかねません。

ここで、1つの事例を紹介します。

  • A社は、建築工事業の特定建設業許可申請を検討しています。A社の営業所は県内に1か所であるため、そこに配置する専任技術者が1名必要です。また、建築工事業は指定7業種であるため、営業所に配置する専任技術者は、1級の国家資格を有する者でなければなりません。
  • そこで、A社が社内の人材を調べたところ、社員のBさんが1級建築士の資格を持っていることが確認できました。建築工事業にかかる1級の国家資格者は社内でBさん1人だけでしたが、営業所が県内に1か所だけしかないため、A社では、Bさんさえいれば営業所に配置する専任技術者の要件を満たすことができると判断したのでした。そのため、A社はBさんを営業所に配置する専任技術者に決定しました。
  • また、特定建設業許可にかかる他の許可基準=要件は、社内で検討したところ、すべて満たしていることが判明したため、A社は早速申請手続きを行い、めでたく特定建設業の許可を取得することができました。
  • これで、元請業者として4,000万円以上(建築工事一式は6,000万円以上)の工事を下請に出すことができるようになりました。
  • ここまではよかったのですが、後でA社に難題が持ち上がります。しばらくして、A社は発注者から1億円の建築工事一式を受注することができ、そのうち8,000万円を下請けに出すことにしました。
  • 工事の発注に向け準備を進める中で、A社は、特定建設業許可業者が元請として4,000万円以上(建築一式工事の場合は6,000万円以上)の工事を下請に出す場合は、工事現場に監理技術者を配置することが義務付けられていることに気付きました。
  • また、請負代金が3,500万円(建築一式工事は7,000万円)以上の工事では、監理技術者は専任で配置する必要があることもわかりました。このため、A社が下請に出す8,000万円の工事現場には、専任の監理技術者を配置しなければならないことになります。
  • なお、この監理技術者の資格は、特定建設業許可業者の営業所に配置する専任技術者の資格と同じとされています。
  • A社には、その有資格者として1級建築士のBさんがいますが、Bさんは営業所に配置されている専任技術者であるため、工事現場との兼任は認められません。また、A社には、Bさん以外に建築工事業にかかる1級の国家資格者はいません。困ったA社は、急遽監理技術者の要件を満たすことができる人材探しに奔走せざるを得ませんでした。

以上のとおり事例をみてきましたが、A社の判断ミスは、営業所に配置する専任技術者さえ確保できれば、特定建設業許可を受けることができると考えてしまったことです。特定建設業の許可を受ければ、元請として4,000万円以上(建築一式工事の場合は6,000万円以上)の工事を下請に出すことが可能になることから、その場合の工事施工体制まで見据えておく必要がありました。

このように、特定建設業では、許可基準にばかり注意が集まりがちになりますが、許可取得後の財産的基礎や工事施工体制なども見通した上で、許可を受けることが肝心です。

4 建設業許可の申請方法

次に、建設業許可の申請方法をみていきましょう。

4-1 建設業許可の申請方法

建設業許可の申請手順は、以下のとおりです。

なお、建設業許可には、国土交通大臣許可と都道府県知事許可の2種類があります。

①国土交通大臣許可

建設業許可申請者の営業所が複数の都道府県にある場合は、国土交通大臣の許可を受けます。

②都道府県知事許可

建設業許可申請者の営業所が一つの都道府県だけにしかない場合は、その営業所の所在地を管轄する都道府県知事の許可を受けます。

この国土交通大臣許可と都道府県知事許可の要件は、建設業法第3条に定められています。

〇建設業法第3条

建設業を営もうとする者は、…(中略)…二以上の都道府県の区域内に営業所を設けて営業をしようとする場合にあっては国土交通大臣の、一の都道府県の区域内にのみ営業所を設けて営業をしようとする場合にあっては当該営業所の所在地を管轄する都道府県知事の許可を受けなければならない。

①国土交通大臣許可

建設業許可申請書は、主たる営業所の所在地を管轄する国土交通省地方整備局に持参または郵送することになっています。

申請書が受理された後に、国による申請内容の審査が行われますが、この審査期間は90日程度となっています。

国による審査の結果、許可基準を満たすと判断された場合は「許可通知」、許可基準を満たさないと判断された場合は「許可の拒否通知」が送付されます。

②都道府県知事許可

建設業許可申請書は、主たる営業所の所在地を管轄する都道府県庁や土木事務所の建設業担当課に提出します。申請書の提出先や提出方法(持参・郵送など)は、各都道府県で異なるため、直接問い合わせてください。

申請書が受理された後に、都道府県による申請内容の審査が行われますが、この審査期間は30日程度となっています。都道府県による審査の結果、許可基準を満たすと判断された場合は許可されますが、許可基準を満たさないと判断された場合は不許可処分となります。

4-2 申請費用

建設業許可の新規申請手続きに要する費用は、以下のとおりです。

①国土交通大臣許可

  • ・一般建設業許可または特定建設業許可を申請する場合 15万円
  • ・一般建設業許可と特定建設業許可の両方を申請する場合 30万円
  • ②都道府県知事許可

  • ・一般建設業許可または特定建設業許可を申請する場合 9万円
  • ・一般建設業許可と特定建設業許可の両方を申請する場合 18万円
  • 一般建設業許可と特定建設業許可を同時に申請する場合は、2倍の費用が必要です。
    その他に、新規申請の場合は、行政書士費用として10~20万円程度かかります。

    5 まとめ

    一般建設業許可と特定建設業許可の違いを中心にみてきましたが、これをまとめると次の表になります。

    【一般建設業許可と特定建設業許可の違いまとめ】

    区分 一般建設業許可 特定建設業許可
    請負金額の制限 制限なし 制限なし
    元請または下請として請け負った工事を自社で施工 制限なし 制限なし
    下請として請け負った工事を再下請(孫請)に発注する場合の金額の制限 制限なし 制限なし
    元請として請け負った工事を下請に発注する場合の金額の制限 4,000万円未満(建築一式工事は6,000万円未満) 制限なし
    経営業務の管理を適正に行う能力の要件 違いなし 違いなし
    請負契約に関して不正または不誠実な行為をするおそれの要件 違いなし 違いなし
    専任技術者の要件 一定の国家資格者または一定の実務経験者 一定の国家資格者(厳選)または、一般建設業許可要件を満たした上で、元請として4,500万円以上の工事の指導監督的実務経験者
    財産的基礎の要件 次のいずれかに該当すること
    ①自己資本額(純資産合計)が500万円以上
    ②500万円以上の資金を調達する能力
    ③直近5年間、許可を受けて継続営業した実績
    次のすべてに該当すること
    ①欠損額が資本金額の20%以下
    ②流動比率が75%以上
    ③資本金額が2,000万円以上
    ④自己資本額(純資産合計)が4,000万円以上
    新規申請手続きの手順・方法 違いなし 違いなし
    更新申請における財産的基礎要件の審査 なし あり

    一般建設業許可に比べ、特定建設業の許可を取得すれば、元請として受注した大規模な工事を下請に発注することができるようになります。したがって、自社の建設業をさらに拡張・発展させようとすれば、一般業者から特定業者へと目標が上がっていくのは自然な道理であるといえるでしょう。

    しかし、許可を受けるためには、経営業務の管理を適正に行う能力があることや請負契約に関して不正または不誠実な行為をするおそれがないことに加え、営業所に配置する専任技術者や財産的基礎などの要件が厳しく定められています。特に、複数の営業所を持つ事業者の場合は、営業所ごとに専任技術者を配置することが求められます。

    また、特定建設業の許可取得後においても、元請として一定金額以上の工事を下請けに出す場合は、定められた工事施工体制=監理技術者の配置を確保する必要があります。さらに、特定建設業許可業者であれば、5年ごとの更新時に財産的基礎の要件を満たしているかが問われることになります。

    特定建設業の許可申請を視野に入れていらっしゃる企業は、許可基準のみでなく、許可取得後の工事施工体制や企業の財産的基礎なども含め、総合的に検討されることが大切です。

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