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2020年10月施行の建設業法改正の内容解説!

2020年(令和2年)10月1日に建設業法改正内容の一部が施行されます。今回の施工される建設業法の改正は、『新・担い手三法』として日本の生活インフラや経済の基盤インフラの建設や維持を担う建設業界の次の担い手を確保することを目的としています。そこで、この記事では建設業法ならびに新・担い手三法について施行の背景とその施行内容を中心に解説していくので、ぜひご参考ください。

1 新・担い手法施行背景

建設業が担う役割は、日本の国民生活や社会経済にとって非常に大きなものになります。具体的には、以下の役割を建設業が担っています。

  • ・地域社会における道路や学校などの社会インフラや住宅、オフィスビル等の建設並びに建築物の整備や耐震化等を通じて国民生活の向上や経済の持続的成長のサポートする役割
  • ・東日本大震災や熊本地震などの災害発生時に応急復旧や復興工事など1日でも早い被災からの安全な生活をするためのインフラや住宅の再建に寄与する役割

その建設業を担う建設業者が遵守すべき法律が建設業法になります。建設業法は、『公共の福祉の増進』を究極的な目的の実現を目指して1949年(昭和24年)に制定されました。建設業法は、『公共の福祉の増進』を実現するために、以下の3つの目的の実現を測ることとなっています。

  • ・建設工事の適正な施工の確保
  • ・発注者(公共、企業、個人など)の保護
  • ・建設業の健全な発達の促進

そして、これらの目的を実現するための手段が、『建設業を営む者の資質の向上』と『建設工事の請負契約の適正化』等になります。

建設業法制定当時、戦後復興需要にのって建設ニーズの急激な高まりをうけて建設業者は急増していました。その結果、過当競争状態になり受注のダンピングや不適切な施工工事や工事代金の支払い遅延などが問題化していました。その問題に対して、『登録制導入』や『請負契約原則規定』や『主任技術者の設置義務』などの対策を講じています。

その後も建設業法は、その時代に発生した課題や問題に取り組むために法改正を行ってきました。

1-1 建設業の現状

建設業の現状

建設業法の近年の重要課題が、労働力人口の減少を原因とする担い手確保となっています。その課題に対して建設業に従事する者に対する働き方を意識した制度設計や生産性向上を意識した制度設計が課題とされています。また、建設業への参入状況が変化した結果、地域によっては建設業の供給量が不足する事態への対応も必要とされています(参考|国土交通省「建設業法の構成、変遷等」より)。

●日本国内の建設市場の動向

建物や構造物への建設工事を行う投資額を建設投資といいます。この建設投資は、建設市場の規模を表す指標の一つです。

建設投資のピークは、バブルが崩壊する1992年(平成4年)で約84兆円でした。リーマン・ショックがアメリカで発生した翌年の2010年(平成22年)の建設投資は約42兆円まで半減していました。その後は、増加に転じて2016年(平成28年)に約59兆円で、ピークと比較して約30%程度の減少まで回復しています。

また、地域の建設投資状況を見ると都市部に投資が偏っています。地方では公共事業の依存が高く住宅などの民間投資が低い状況です。

今後の建設投資は、横這いに推移していくことが見込まれています。インフラ整備は、国民生活や社会経済活動の基盤の役割を担っており、安定的かつ持続てきな公共投資ニーズへの対応が求められます。とくに、公共と民間双方に維持や修繕などの既存建築物などへの工事の割合が増加していますが、道路やトンネルなどの公共土木構造物やマンションや住宅などの民間の大規模修繕工事が増加する見込みになります。

一方で、少子高齢化により経済並びに財政状況は中長期的には縮小していく傾向が予想できます。そのため、建設工事においても効果的かつ効率的な公共サービスを長く提供できる質が求められて生きます。

●建設業許可業者数

建設業を営むための許可業者数は1999年(平成11年)末が、約60万社業者とピークでした。その後は、減少傾向が継続し2016年度末には1999年から23%減少した約47万業者になっています。近年の建設業の景気は回復傾向の影響もあり、許可業者数の減少幅は少ないものの減少傾向は継続しています。

企業規模とその収益性を比較したときに、大企業の2016年度の営業利益率が6.2%に対して、中小企業の同営業利益率はその半分以下の2.9%となっています。

また、建設投資と同様に、建設業者数も値域別の傾向は都市部に比べて地方の減少が大きい傾向になっています。とくに、市町村単位まで区分けをした場合に、許可業者が1社のみしかいないなどの地方も発生しています。近年は、地方部の中小企業は、苦しい経営もあり後継者不足と代表者の高齢化に伴い事業の廃業が懸念されています。

●現状の課題

建設業界のニーズは拡大しないものの同じ規模の維持は求められるというのは、前述のとおりです。しかし現在の建設業界では、建設技能労働者の年齢別構成が、高齢者が若手より2倍以上多いという状況になっています。10年後にはリタイヤすることが見込まれる60才以上の建設技能労働者が82.8万人で全体の25.2%を占めています。一方で、29才以下の若手労働者は36.5万人で全体の11.1%しかありません。また、24才以下の建設業への入職者数を過去と比較すると、約80%の激減状態となっています*。そのため、今後建設現場の労働力不足が深刻化するという問題が懸念されています。

*平成4年と平成21年の若年入職者(24才以下)の比較

平成4年 平成21年 差異
25.0万人 5.2万人 ▲19.8万人/▲79.2%

(参照|厚生労働省「雇用動向調査」

この問題の背景にある課題は以下の3つになります。

問題の背景にある課題は以下の3つ

  1. ①建設現場の労働時間の長期化
  2. ②社会保険の未加入
  3. ③給与水準の低さとキャリア形成の難しさ

①建設現場の労働時間の長期化

全産業の2016年の年間実労働時間1,720時間に対して、建設業は2,056時間となっていて約1.2倍長く働いていることになります。また、全産業は2007年の年間実労働時間から87時間減少しているのに対して、建設業は9時間しか減少していないことから労働時間の減少が進みにくいことが分かります。同様に年間出勤日数も全産業が222日に対して、建設業が251日と1.1倍多く出勤していることになります。

その結果、建設業は長時間労働かつ休日が少ない状況になっています(参考|国土交通省「建設業における働き方改革」)。

②社会保険の未加入

社会保険(雇用保険・健康保険・厚生年金)の加入状況は2011年の84%の加入率から2018年には97%まで改善しています。ただし、下請企業になればなるほど加入率が低い状況が継続している実態があります。2018年の状況で、元請は98.4%の加入状況に対して3次請けは90.5%と10社に1社は未加入の状況になっています(参考|国土交通省「新・担い手三法の成立など最近の建設業を巡る状況について」)。

③給与水準の低さとキャリア形成の難しさ

建設業の男性全労働者の年間賃金総支給額は2018年度が571万円で2012年と比較すると18.2%の上昇率となっています。全産業の男性労働者の同金額が558万円、同上昇率が5.4%となっていますので、大きく改善しています。

一方で、管理者や技術労働者を除く建設現場で従事する建設業男性の生産労働者の年間賃金総支給額は462万円で、製造業男性生産労働者の同金額が476万円となるので、製造業と比較して低い水準といえます。

また、年齢階層別にみると建設業の生産労働者の賃金は45~49才がピークになっています。これは体力のピークと重なっており、労働時間と連動した所得が増える構造になっています。熟達度やマネジメント能力の評価を十分に反映できていないため、キャリア形成が難しい状況となっています(参考|国土交通省「新・担い手三法の成立など最近の建設業を巡る状況について」)。

現状の課題をまとめると、建設現場の労働時間や社会保険への加入状況などの改善余地を残しています。また、給与面では上昇してはいるものの製造業などと比較するとまだ低く、体力に応じた賃金評価になっている状況でキャリアパスが描きにくいということになります。その結果、日本全体の少子高齢化も影響していますが、建設現場における労働力の高齢化と若い労働力の建設業離れが進んでいる現状といえます。

そのため、建設業界全体で『建設業の働き方改革』と『建設現場における生産性向上』ならびに『持続可能な事業環境の確保』を目的として改正が行われました。

目的 方法概要
建設業の働き方改革 長時間労働や休日の少なさなどの常態化された労働環境を、適正な工期などを通じて実現を目指す
建設現場における生産性向上 建設業における限りある労働力を最大限有効に活用することで実現を目指す
持続可能な事業環境の確保 社会インフラの整備や災害時の地域の復旧・復興を担う建設事業が維持できる環境を確保することを目指す

1-2 担い手三法

担い手三法

2014年(平成26年)に、以下の3つの法律を一体として改正がおこなれました。この3つの法律の一体としての改正を担い手三法といいます。

担い手三法

品確法 「住宅の品質確保の促進等に関する法律」が正式な法律名称になります。住宅性能表示制度や新築住宅における瑕疵担保(無償保証)期間10年間の義務化や住宅専門の紛争処理体制をつけることなどについて定めている法律になります。
入契法 「公共工事の入札および契約の適正化の促進に関する法律」が正式な法律名称になります。入札や契約の適正化を基本原則として、透明性の確保や公正な競争の促進や適正な施工の確保するために、発注者の義務やガイドラインなどについて定められている法律になります。
建設業法 前述のとおり、建設工事の完成を請け負う場合に適用される法律になります。

担い手三法の改正は、建設業の担い手の中長期的な育成・確保のための基本理念や具体的措置を規定しています。具体的には、以下の施策が盛り込まれています。

  • ・建設工事に関わる建設業者が適正な利益が得られるように予定価格の適正な設定などを行うこと
  • ・市場の実情などを的確に積算した設計金額の一部を予定価格から控除する”歩切り”の根絶
  • ・公共工事等の分野で予定価格より著しく低い価格での受注する”ダンピング”の対策

建設業の就業者数の継続的な減少が食い止められたことなど担い手三法が施行されてから5年で成果を上げてきました。一方で、災害が頻発におこる状況から建設業には「地域の守り手」という役割が強く求められており、また前述の建設業の担い手の中長期的な育成・確保を引き続き課題として残っていました。

1-3 建設産業政策2017+10

建設産業政策2017+10

建設産業政策2017+10とは、10年後の建設産業が生産性を向上させながら現場力を維持するために、建設業関連制度の基本的な制度や枠組みを検討する2017年に実施された建設産業政策会議の取りまとめになります。

建設産業政策2017+10では、以下の視点をもって建設産業政策の課題を提言しています。

建設産業政策2017+10

人材投資へのインセンティブの付与 働き方改革を促進していく企業が価格競争に不利益が発生することや計環境が苦しい状況下で人材やその育成への投資は後回しになることが多いことから、各企業の自主的な努力にゆだねることには限界があります。建設業界は”人”で成り立つことを前提に、適切な賃金支払いや長時間労働の是正や社会保険への加入など「働き方改革」取組企業が評価される競争環境の整備の必要性があります。
情報の非対称性の解消 建設工事の発注者には、一生に1度の発注を行う個人消費者や個人事業主がいます。このような個人消費者や個人事業主が建設工事の事業者選定の際に十分な有益な情報を得ることは簡単ではない「情報の非対称性」が原因でトラブルや問題が発生した場合に受ける影響が大きくなりやすい傾向があります。そのため、この情報の非対称性の解消によって安全かつ安心して発注を行える環境を構築していくことが求められます。
産業全体での生産性向上 建設を行う上では、発注者と建設企業と設計者とコンサルタントなどの建設関連業者の相互関係で成立しています。そのため、発注を行う時期に偏りがある場合や設計書の質に問題があった場合には建設工事全体の生産性を阻害する要因になりえます。また、建設会社同士も受注量や受注時期によって人材や資材などのリソースの過剰や不足が発生している企業が同じ時期に発生する非効率さがあります。さらに、各種システムやICTの導入・活用を個々の企業で実施する場合には産業全体でみると相互企業の互換性が下がる要因になります。必要な制度インフラ整備の推進と、建設産業全体での競争力を強化していくことが求められます。
長年の常識の打破 建設産業では気象条件に影響を受ける現地野外生産の特性を考慮して、月45時間・年間360時間を時間外労働の上限とする時間外労働規制の適用除外になっていました。また、同じ特性の影響で建設業での週休2日の実行が不可能という前提で各制度や働き方が定着しています。今後の政府主導の働き方改革実行計画によって、建設業においても時間外労働規制が適用されます。そのため、時間外労働が上限なくできるという長年の”常識”や”慣習”を前提にした受発注者間や元請け下請け間の商慣習や制度自体に変革が求められます。

(参考|建設産業政策会議「建設産業政策2017+10~若い人たちに明日の建設産業を語ろう~」)

1-4 新・担い手三法

新・担い手三法

担い手三法や建設産業政策会議2017+10の提言をうけて、継続的に取り組みを必要とする課題と、新たに発生した課題に取り組むために『新・担い手三法』が2019年6月に公布されました。新・担い手三法で取り扱われる主な課題は以下の4つになります。

。新・担い手三法で取り扱われる主な課題4つ

課題 課題の内容
①働き方改革の推進 被害が大きく発生する頻度が増加する災害に対して”守り手”としての期待(新しい課題)
②生産性向上への取組 建設現場で働く生産労働者を主とした建設業の長時間労働是正のための働き方改革促進(継続的課題)
③災害時の緊急対応強化(持続可能な事業環境の確保) 「ICTの全面的な活用(ICT土木)」などの導入による建設現場のIT化を目指す取組=i-Constructionを促進する等を通して生産性の向上(継続的課題)そして、これらの課題を具体的に新・担い手三法改正によってそれぞれの課題の解消を目指します。
④調査・設計の品質確保 建設工事自体の品質確保をするために、その上流部分の調査や設計の品質の確保を目指します。

なお、新・担い手三法は、以下の2つの改正法で構成されています。

品確法の改正法
建設業・入契法の改正法
それぞれの改正法により、上記3つの課題に対する具体的措置が規定されています。

それぞれの課題と法律別の改正概要は以下になります。

品確法 建設業法・入契法
働き方改革の推進 〇発注者と受注者の責務の適正化
≪発注者≫
・休日や準備期間や天候等を考慮した工期設定の適正化
・債務負担行為や繰越明許費の活用などによる施行時期の平準化
≪受注者≫
・下請契約締結時の請負代金や工期の適正化
〇工期の適正化
・中央建設業審議会による工期基準の作成と勧告
・著しく短い工期による請負契約締結の禁止と、違反が発生した場合には国土交通大臣が違反業者への勧告と公表の実施
・公共工事の発注を行う者は、必要な工期確保と施行時期の平準化に対して必要な措置を講じる努力の義務化
〇建設現場の処遇の改善
・社会保険加入を建設業許可要件への組み込み実施
・労務費相当額の下請代金は現金払いとする
生産性向上への取組 〇情報通信技術の活用などによる生産性向上を発注者と十駐車の責務とする 〇技術者への規制合理化
・管理技術者:補佐者(
技師補)の配置を行う際には、兼任を容認
・主任技術者(下請):定められた要件に合致する場合には配置を免除
災害時の緊急対応の充実強化(持続可能な事業環境の確保) 〇発注者責務の明確化
・緊急性に照らし合わせた適切な入札や契約方式(指名競争入札や随時契約など)の選択
・災害が発生した場合の各種応急復旧活動における自治体と民間事業者などの関係機関で締結する災害協定の締結と発注者間の連携
・労災補償に必要な保険費用などを予定価格に織り込んでおくことや、災害時見積徴収の利用
〇『災害時における建設業者と地方公共団体などとの連携の努力義務化』を建設業者団体などの責務に追加
〇持続可能な事業環境の確保
・経営管理責任者:規制を合理化
・建設業許可に係る承継:規制整備
調査・設計の品質確保 〇調査・設計の品質確保
・「公共工事に関する測量、地質調査その他の調査(点検および診断を含む。)および設計」を基本理念と発注者と受注者の責務の各規定の対象に追加
該当なし

*繰越明許費とは、歳出予算を繰越する制度をいいます。成立済みの予算の中で年度内に支出がすべて行われない場合、あらかじめ議決をえて翌年度に繰り越して支出を行います。

●施行時期

新・担い手三法の改正の施行は3回に分かれて実施されます。1回目の施行時期は2019年(令和元年)9月1日に施行を完了しています。そして、2回目の施行が2020年(令和2年)10月1日で、3回目が2021年(令和3年)4月1日になります。

1回目施行部分
・建設業従事者への責務追加(建設業法第二十五条の二十七)
・建設業者団体等への責務(災害時の建設業者の連携の努力義務化)追加(建設業法第二十七条の四十)
・工期の適正化における中央建設業審議会の審議事項追加(建設業法第三十四条)
・工期の適正化における公共工事の入札と契約の適正化措置の努力義務における指針事項追加(入契法第十七条)

2回目の主な施行部分
・工期の適正化における著しく短い工期による請負契約締結の禁止(建設業法第十九条の五)
・技術者への規制合理化における監理技術者の兼任の容認(建設業法第二十六条)
・技術者への規制合理化における定められた要件に合致する場合には下請負人の主任技術者の配置を不要とすることの追加(建設業法第二十六条の三)

3回目の主な施行部分
・技術検定における見直し(建設業法第二十七条)と以下の事項など
受検手数料(建設業法第二十七条の十六)
検定種目の名称変更(建設業法施行令第第三十四条)

2 2020年10月1日の主たる施行内容

前述のとおり、すでに新・担い手三法の改正の一部は施行しています。そして、今回第2回の施行が2020年(令和2年)10月1日に施工されます。2020年10月の施行概要はすでに記載しましたが、ここではその中身の詳細について説明をしていきます。

2020年10月の施行は、すでに施行されている前述の4つの施行内容と2021年の技術検定制度見直し以外はすべてこの2回目の施行に含まれています。そのため、量の部分では最も多い施行の段階がこの第2回目となります。2020年10月に施行事項は以下になります。

1.建設業の働き方改革の促進
  • ・後期の適正化
  • ・平準化の促進
  • ・下請け代金の支払い
2.建設現場の生産性向上
  • ・管理技術者の専任緩和
  • ・主任技術者の配置義務見直し
  • ・建設資材製造業者等への勧告等
  • ・知識及び技術または技能向上 など
3.持続可能な事業環境の確保
  • ・許可基準見直し
  • ・事業継承規定の整備
  • ・不利益取扱いの禁止
  • ・災害時の対応
  • ・工事現場に掲げる標識

2-1 建設業の働き方改革の促進

建設業の働き方改革の促進

●工期の適正化

建設工事を依頼する注文者は、『著しく短い工期』での建設工事の完成を依頼する請負契約を締結することを禁止しています。
一般的に、工事の納期は工事の内容や工法や工事に投入する人材や資材の質や量などによって変わってきます。そのため、『著しく短い工期』を一律に設定・判断することは難しい状況です。そのため、中央建設審議会が作成する工期に関する基準が定める事項が考慮しているかを確認することならびに、過去の類似工事における実績と比較することや建設業者が作成・提出する工期見積もりを精査するなどして許可行政庁が工事毎に個別の判断をすることとしています。
なお、工事に関する基準はすでに国土交通省から明示されています。それによると、前提として工期に関する基準は定量的なものではなく、工期設定を行う場合に考慮することを必要とする定性的な事項を定めることが想定されています。定めることが想定されている定性的な事項は以下の通りです。

全工期共通 ・多雪や多雨や寒冷や強風などの自然的要因
・週休2日や祝祭日や年末年始や夏季休暇などの休日
各工期個別 準備 ・用地の買収や建築確認、道路管理者との調整する期間
・工事場所周辺環境および近隣状況や規制等を確認する期間
・仮説工作物の設置や資材および器材の製作する期間や調査や測量を行う期間
施行(基礎工事) ・地下水及び地下埋設物の存在を調査期間
・堀削土の搬出期間
施行(躯体工事) ・コンクリート打設から型枠を外す養生期間
施行(内装仕上げ工事) ・工事中の仮設電気から契約者名義の電気に切り替える“受電”の時期
・設備の総合的な試運転の調整期間
後片付けなど ・官公署の完了検査や工事完成検査の期間
・仮設工作物の撤去や清掃などの期間
その他 ・過去の同種類似工事における工期実績
・工事別の特性
例)
新築工事の場合には、地下水及び地下埋設物の存在
改修工事の場合にはアスベスト除去工事
再開発工事の場合には保留床の処分時期など

参考|国土交通省「中央建設業審議会 工期に関する基準の作成に関するワーキンググループ(仮称)の設置について

なお、違反をした場合はその元々の発注工事が公共工事か民間工事かによってその措置が異なってきます。

≪公共工事の場合≫
建設工事の元請(受注者)が下請業者と締結する下請契約において「著しく短い工期」である場合は、当該工事の発注者は当該受注者の国土交通大臣や都道府県知事の建設許可を管轄する許可行政庁にそのことを通知することが求められます。

≪民間工事の場合≫
「著しく短い工期」で請負契約を締結した場合、建設工事の請負代金が500万円(建築一式工事の場合には1,500万円)以上の際には国土交通大臣や都道府県知事の建設許可を管轄する行政庁から発注者へ工期の変更を行うよう勧告が行われます。(建設業法十九条の六第二項)。この勧告に従わない場合には、企業名が公表されます。

また、建設工事の注文者が建設業者である場合、通常と同様に国土交通大臣等は勧告(建設業法第41条)や指示処分(同法第28条)を行います。

改正によって建設工事の注文者はその工事の中で「工期等に影響を及ぼす事項」がある場合、請負契約締結までに情報提供を行うことが求められます。これは、建設業者が事前に認識することで工事等における手戻りを防ぎ、結果的に適切な工期に近づけるためになります。

国土交通省令で規定が予定されていますが、想定される事項は以下のように土地取得の過程や近傍の事象から注文者が認識できる可能性が高い事項になります。

地中の状況等に関する事項 ・支持地盤深度
・地下水位
・地下埋設物
・土壌汚染 など
設計に起因する調整に関する事項 ・設計図書との調整
・設計間の整合 など
周辺環境に関する事項 ・近隣対応
・騒音振動
・日照阻害 など
資材の調達に関する事項 具体的事項記載なし

参考|国土交通省「新・担い手三法について~建設業法、入契法、品確法の一体改正について~

●平準化の促進

各建設工事の工期の適正化が図れたとしても、年間スケジュールで考えた時に繁忙期と閑散期が分かれてしまう場合には適正な工期を確保することが出来なくなります。そのため、公共工事においては工事時期の平準化に関する事項を追加しています。
具体的な手段としては、発注者の責務として繰越明許費や国債の債務負担行為の活用や発注見通しの作成と公表を品確法によって明示をしています。これらを行うことで、公共工事の施工時期をできるだけ平準化することで、建設現場の生産性の向上を目指しています。この試みにより、公共工事の施工時期の平準化率は約9割に到達しています。

●下請代金の支払い

建設業法の改正によって、元請負人は下請け業者に対して下請金の支払いのうちで労務費用相当額は、現金支払いなどの適切な配慮を行うことが求められます。同様に品確法の改正によって、公共工事の当事者は請負代金を可能な限り速やかに支払いすることや、公共工事従事者の賃金に対する配慮を基本理念として規定しています。
また、公共工事の実施者は、技術者や技能労働者など賃金や労働環境が適切になるよう、市場の労務取引価格を反映した適正価格の請負代金を定めた下請契約の締結を行うことが求められます

●工期を施工しない日や時間帯を請負契約書面に記載事項とする

注文者と建設業者は、建設工事において工期を施工しない日や時間帯を定める場合、建設工事請負契約に記載の上締結を行うことが必要となります。

2-2 建設現場の生産性向上

建設現場の生産性向上

●管理技術者の専任緩和

管理技術者の専任が緩和されます。管理技術者とは、今まで下請契約の請負代金総額が3,500万円(建築一式工事の場合には7,000万円)以上の場合に工事現場に専任として配置することが義務付けられていた施工技術管理をつかさどる技術者です。管理技術者は、施工計画の作成や工程・品質・その他の技術上の管理および工事施工に従事する者の指導監督の役割が職務となっています。

そのため、主任技術者よりより厳しい資格や経験が必要とされていました。改正前において、個人住宅を除くと、公共工事と民間工事の大多数の工事が対象となっていました。

これが改正後には、管理技術者の上記職務を補佐する者を専任で現場に配置することで、管理技術者の兼務を認めることとなりました。なお、この補佐をするものは、新しく創設される技士補制度における1級技士補でかつ主任技術者の資格を持つものを政令によって定める者とすることが検討されています。

なお管理技術者が兼務をできる現場は、当面の予定としては2つまでになります。そして、管理技術者は2つの現場の兼務を行いながら、以下の建設工事が適切に実施されるための責務は従前どおりになっていくことになります。

  • ・建設工事施工計画の作成
  • ・工程や品質やその他の技術の管理

管理技術者は、その責務を適正に実施するために補佐する技士補を適切に指導することが必要とされます。

≪専任について≫
改正前は、管理技術者は請負金額3,500万円(建設一式工事の場合は7,000万円)以上の建設工事において工事現場ごとに専任であることが義務付けられていました。専任とは、以下の要件を満たすことを意味していました。

  • ・他の工事現場の職務を兼務せず、常時継続的に当該工事現場への職務のみに従事する。
  • ・現場施工の稼働中に常時継続的に当該工事現場に滞在するといういわゆる常駐を必要としない。

改正後は、前提条件*を満たして留意事項**に注意したうえで当該工事現場に専任される管理技術者が短期間工事現場を離れることを許容することを明確化しました。なお、工事現場を離れることが許容されるのは、以下を代表例とする合理的な理由がある場合と規定されています。

  • ・技術研鑽の為の研修や講習や試験等への参加
  • ・休暇の取得

*前提条件は、以下の例のような適切な施工を可能とする体制の確保とその体制の注文者の了解が必要です。

  • ・必要な資格をもつ代理の技術者を配置する
  • ・建設工事における品質確保などに支障がない範囲で連絡がとれ、かつ必要がある場合には現場に戻ることができる体制の確保

**留意事項は、以下になります。

  • ・管理監督者等が離れている状況下でも、管理技術者が当該建設工事の施工技術上の管理をつかさどる者になる。
  • ・管理技術者等が担う役割は支障が発生しないように考慮する。
  • ・管理技術者の研修などへの参加や休暇取得などが現場に戻る体制確保が取れないことなどの理由から不要に妨げられることがないようにする。
  • ・管理技術者等が育児などを理由に短時間現場を離れることができる体制の構築などのワークライフバランスの推進や働く女性の活躍の観点に考慮する。

●技術検定制度の見直し

1級技士補は、改正後に新たに付与される称号になります。1級技士は、改正前は『学科試験』と『実地試験』のそれぞれの試験を合格した場合に付与されていました。改正後には、『第1次検定(施工技術の基礎知識が中心)』と『第2次検定(施工技術の実地経験による技術管理や指導監督の知識や能力を判定)』を合格した場合に付与される形に変更になります。そして、この第1次検定を合格すると“1級技士補”の称号が付与されることになります。

●主任技術者の配置義務見直し

主任技術者は、建設工事を適正に行うために施工計画の作成や工程や品質などの管理を行い、工事施工に関わる者の技術上の指導監督が職務になります。なお、主任技術者は、元請や下請け共に原則請負工事の金額にかかわらず配置義務がありました。

改正前は、1次下請け会社Aが労働者の不足を補うことを目的にB社(2次下請け)ならびにC社(3次下請け)やD社(3次下請け)に同じ内容の仕事を依頼する場合で、かつ1次下請けA社の主任技術者の配置により適正な施工確保できる状態にあってもB~D社のそれぞれに主任技術者の配置義務がありました。

改正後は、上記同様の場合では1次下請けA社が配置する主任技術者がA~D社の主任技術者の役割が行うことを4社が合意する場合には、B~D社の主任技術者配置の義務は無くなります。同様に元請会社の主任技術者が同じ仕事を行う複数の下請会社の主任技術者を一括で施工管理することも可能になっています。

≪運用の対象≫
主任技術者の配置義務が見直される対象の工事は、下請代金の金額が一定金額未満である建設工事のうち政令で定められた特定専門工事に限定します。

≪主任技術者の配置義務緩和の要件≫

対象となる工事 以下の条件に合致する工事になります。
・土木工一式工事と建設一式工事以外の建設工事
・施工技術が画一的で、施工技術の管理効率が図る必要がある現在の想定する工事は、『鉄筋工事』と『型枠工事』になります。
下請契約の請負代金 主任技術者の専任義務が発生する請負契約の金額3,500万円(建築一式は7,000万円)以上を踏まえ、規定予定となります。
配置する主任技術者 上位下請(一次下請)の主任技術者は以下の要件に合致することが求められます。
・当該特定専門工事と同種の建設工事で1年以上指導監督の実務経験がある
・工事現場に専任として配置される
手続き 1次下請けと2次下請けの間で以下の事項が記載された書面で合意していることが必要です。
・特定専門工事の工事内容
・上位下請会社が配置する主任技術者の氏名
・その他、国土交通省令が定める事項
これらとは別に、1次下請け会社は注文者との書面で承諾を得る必要があります。
再下請の禁止 本制度を利用して主任技術者を配置しないことにした下請業者は、その下請負を行う建設工事をさらに下請契約を締結することは出来ません。(違反者は監督処分の対象)

●建設資材製造業者などへの勧告

耐震補強工事の落橋防止装置などの部材において、調査を行った約7割に溶接不良を原因とする亀裂が発見され、製造会社が意図的に工程を省略した製品を納品した疑いや検査会社の不正の可能性が判明しました。

これらの問題について、原因究明や再発防止策を求めるために許可行政庁が『勧告』や、勧告にしたがらない業者の『公表』や『命令』を行うことができるようになりました。

●知識及び技術又は技能の向上

改正によって、建設工事の従事者は建設工事を適正に実施するために必要な知識や技術や技能の向上の取り組みの実施が求められるようになりました。具体的な取り組みは、以下になります。

  • ・技能労働者や技術者に対する講習や研修参加
  • ・ウェブ研修プログラム『建設技能トレーニングプログラム』の活用
  • ・登録基幹技能者資格の取得
  • ・技術検定の受験 などがあります。

2-3 持続可能な事業環境の確保

持続可能な事業環境の確保

●許可基準見直し

今後、持続可能な事業環境の確保の視点から、経営能力の基準を見直して経営能力の担保が可能な体制である場合には基準に適合できることとしています。具体的には、経営業務管理責任者要件-『建設魚の経営に関する一定の経験を有する者』が、1名以上常勤役員等である)-という要件が変更となります。

改正前は、建設業の許可は以下の4つの基準に合致することが求められていました。

  • ・経営能力
  • ・財産的基盤
  • ・技術力
  • ・誠実性

その中で、経営業務管理責任者は個人の経験が能力の担保の根拠とされていました。改正後は、これを組織の中で経営業務の管理を適正に行うことができる能力を有することに変更されています。具体的には以下のように『必要とする経験の拡大』や『経営経験の対象業種の拡大』が織り込まれた経営業務管理責任者の基準に変更される予定です。

≪経営業務管理責任者の新基準≫

1.建設業に係る経営業務管理を担当する常勤役員を、以下のいずれかの者を置くこと
①建設業経営に関する経験が5年以上ある者(改正前と同様)
②建設業経営に関する経験または管理職経験が通算で5年以上ある者(経験の拡大)
③建設業以外の業種で経営に関する経験が5年以上ある者(対象業種の拡大)
②と③の場合には、役員の補助者の配置が必要…建設業の経営業務の補佐経験がある者などを役員補佐として相応の地位に配置することが必要です。
2.適切な社会保険への加入
健康保険や厚生年金保険や雇用保険において、加入義務が課されている保険へ加入していること

●事業継承規定の整備

改正前は、建設業者が『会社の合併』『会社の分割』『事業譲渡』を行った場合には、その行った後の会社で新たに建設業許可を取得することが必要でした。そのため、新たな許可を取得するまでの期間に建設業を行うことが出来ない不利益が発生していました。

改正後は、事前に許可行政庁に事業譲渡等の認可を申請し、許可を受ければ建設業の許可を承継できることになりました。また、事業譲渡等の日に、許可の有効期間が更新されることとなっています。また、以下のように承継規定があります。

  • ・異業種間の承継は可能です。
  • ・同一業種で区分(一般と特定)が同一の場合は承継が可能です。
  • 例)承継元が鉄筋業(特定)の許可を持っているとして、承継先が鉄筋業(一般)の許可がある場合には、今回の承継制度の対象外になります。もし、承継先の鉄筋業(一般)を事前に廃業にしたうえで申請した場合には、今回の制度の対象となります。
  • ・一部のみの承継は出来ません。

●不利益取扱いの禁止

下請業者が元請業者の違反行為を許可行政庁や公正取引委員会や中小企業庁長官に通報した場合、元請業者はそのことを理由に該当下請業者に不利益な扱いを行うことを禁止しました。これは以下のような下請け業者が不利になる違反行為を通報できる仕組みとなっています。

  • ・不当に低い請負代金の禁止
  • ・不当な使用資材等の購入強制の禁止
  • ・下請け代金の期間内の支払い義務
  • ・期間内の検査および引き渡しを受ける義務
  • ・特定建設業者の下請代金の支払い義務

●災害時の対応

災害時の対応を想定し、公共発注者と建設業者団体と建設業者が『平時の対応』と『災害発生時の対応』をそれぞれ適切に定めておくことが求められます。

平時の対応 ・地方公共団体と建設業者団体との災害協定の締結
・災害時の資材や建設機械の調達方法
・復旧工事の施行を行う建設業者と地方公共団体等の関係機関との連絡調整
災害発生時の対応 ・緊急性に応じた随時契約や指名競争入札の実施

●工事現場に掲げる標識

改正前は、発注者から注文を受ける元請業者は建設業許可証と施工体系図の作成が義務付けられていました。また、一次下請や二次下請の建設業者も建設業許可証の掲示が必要とされていました。

改正後は、建設現場に掲示する建設業許可証は、元請のみでよいこととなりました。しかし、下請け業者にどのような業者が契約締結していることを確認することからも、許可証と施工体系図の記載事項については改正を検討しています。

3 まとめ

今回の建設業法の改正は、建設現場の労働環境の改善と生産性の向上を目指して、建設業界の現状と課題の改善につなげることが目的となります。そのため、現在建設業界で活躍されている企業にも、これから建設業界へ働こうする方や進出や起業をしようとする場合でも大きく関わっていきます。

実際の運用や施行の影響に留意しながら、新・担い手三法の施工によって建設業界の担い手の確保ができるよう建設業界全体ならびに各社の前向きな取り組みが求められます。

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