建設廃棄物の処理 その責任と適切な処理方法を解説!

建設現場から必ず出てくるのが廃棄物です。建設現場での建設廃棄物をめぐる特徴は2点あり、1つは様々な種類の建設廃棄物が発生することで、もう1つは産業廃棄物を発生させる業者も複数いることです。建設廃棄物は誰かが責任をもって正しく処理をしなければなりませんが、処理をする責任は誰にあるのでしょうか。
そこで今回の記事では、建設廃棄物を処理する責任のある立場とその種類と適切な処理方法について詳しく解説するので、ご参考ください。
目次
1 廃棄物処理と建設廃棄物
廃棄物処理は、不法投棄や産業廃棄物の社会問題化や温暖化や災害廃棄物の対策への強い要望があり、主に「公衆衛生の向上」「生活環境の保全」「循環型社会形成のための3Rの推進」に重きが置かれています。
これらの廃棄物処理の適正化や廃棄物に起因する環境被害の防止のために廃棄物処理に関わる法律が、廃棄物処理法になります。廃棄物処理法は1970年に制定され、その後1976年と1991年と1997年と2000年と2003年~2006年、10年と2015年の計7回の改正が行われています。
この改正の中で、悪質な処理業者の排除や不法投棄などの防止、廃棄物最終処理場周辺の土地の生活環境問題の抑止などの廃棄物処理施設を巡る問題の解決などを進めてきました。また、廃棄物の適正なリサイクル利用を促進や災害時に発生する廃棄物への対応についても進められました。
建設廃棄物においては、建設物の解体によって発生するアスベスト廃棄物の大量発生することによる処分場の不足や不法投棄への懸念が社会問題化したこともありました。
これらの産業廃棄物処理法の改正により、産業廃棄物処理の構造改革が進められてきました。その構造の改革前後は以下のようになっています。
改革前の構造:廃棄物の処理が無責任な状態で処理を行う
改革後の構造:排出した者が最後まで責任を持つという自己責任を負う中での処理を行う。
この構造改革により、将来にわたって健康で文化的な生活の確保を目指して、排出事業者が確実で適正な処理を行うという汚染者負担原則が確立されてきました。
1-1 建設廃棄物の種類
建設廃棄物とは、建設工事に伴って発生する廃棄物処理法第2条1項に規定された廃棄物をいいます。そのため、建設廃棄物も一般廃棄物と産業廃棄物の両方が含まれます。具体的には、土や泥や木材やコンクリート塊やガラスや金属くずなど様々な廃棄物があります。
建設廃棄物処理について、平成23年に『建設廃棄物処理指針(平成22年度版)』が通知されました。その中で、建設廃棄物には以下の4つの特殊性があるとして、不適正処理や不法投棄の量が多いなどの問題が発生しやすいため適切な処理が求められるとされています。
<建設廃棄物の4つの特殊性>
- ①廃棄物の発生場所が一定ではない。
- ②発生する廃棄物の量が膨大となる。
- ③発生する廃棄物の種類が多様かつ混合状態で発生するが、的確な分別により再生利用ができる廃棄物が多い。
- ④建設工事における重層下請構造により、廃棄物を取り扱う者が複数いる場合が多い。
上記指針でも指摘されている通り、建設廃棄物が含まれる建設工事によって発生する建設副産物の種類は多様です。概要は以下に分類できます。
<建設副産物の大分類>
①建設廃棄物 | 一般廃棄物…除草作業や植樹管理によって発生する刈草や枝葉など | |
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産業廃棄物 | 安定型産業廃棄物 | |
管理型産業廃棄物 | ||
特別管理産業廃棄物 | ||
②建設発生土…土砂や土地の造成の目的になる土砂に準ずるものなど | ||
③有価物…有償で売却可能なスクラップなど |
上記の中の産業廃棄物は更に詳細について、解説していきます。
●安定型産業廃棄物
安定型産業廃棄物とは、有害物質を含まず性状が安定した産業廃棄物をいいます。安定5品目ということもあります。安定型産業廃棄物に含まれる廃棄物は、以下の通りです。
安定型産業廃棄物 分類 | 廃棄物の例示 |
---|---|
廃プラスチック | 廃発泡スチロールなどの梱包材や廃ビニールや廃タイヤや廃シート類など |
金属くず | 金属加工くずや足場パイプや鉄骨鉄筋くず |
がれき類 | 工作物の新築や改築、除去の建設工事によって発生するコンクリート破片とこれに類するアスファルトやレンガ破片など* |
ガラスくずやコンクリートくずや陶磁器のくず** | ガラスくずやコンクリートくずやタイル衛生陶磁器くずなど |
ゴムくず | 天然のゴムくず |
*以下の建築資材の廃棄物は、建設サイクル法に該当する工事によって発生する特定建設資材廃棄物になります。そのため、リサイクルを行うことが義務となります。
・コンクリート(鉄筋コンクリートとアスファルトコンクリートを含む)
・木材
**工作物の新築や改築、除去の建設工事によって発生するものを除外します。
●管理型産業廃棄物
管理型産業廃棄物とは、埋め立てた際に地下水など周辺の環境を汚染してしまう可能性がある産業廃棄物をいいます。安定型産業廃棄物と特別管理産業廃棄物以外はすべてこの管理型産業廃棄物に分類されます。
管理型産業廃棄物 分類 | 廃棄物の例示 |
---|---|
木くず | 工作物の新築や改築、除去の建設工事によって発生する木くず(型枠や足場材や内装・建具工事などの残材や木造解体材など) |
金属くず | 鉛管や鉛版や廃プリント基盤など |
繊維くず | 工作物の新築や改築、除去の建設工事によって発生する紙くず(包装材や段ボールや壁紙くずなど) |
廃油 | 防水アスファルトやアスファルト乳剤などの使い残し |
ガラスくずやコンクリートくずや陶磁器のくず | 廃石膏ボード |
汚泥 | 含水率が高い泥状の沈殿物(場所打抗工法や防水シールド工法などによって発生する廃泥水) |
●特別管理産業廃棄物
特別管理産業廃棄物とは、爆発性や毒性や感染性その他人の健康や生活環境に被害が発生する恐れのある性状のある廃棄物になります。
特別管理産業廃棄物 分類 | 廃棄物の例示 |
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廃油 | 揮発油類や灯油類や軽油類 |
廃PCB等および廃PCB汚染物 | トランスやコンデンサや蛍光灯安定器 |
廃石綿 | 飛散性アスベスト廃棄物 |
1-2 建設廃棄物の処理責任
建設廃棄物の処理は、排出事業者が処理責任を負うことになります。排出事業者は誰になるのか、ということが平成23年の廃棄物処理法改正で明確になりました。この改正のポイントは以下になります。
建設業では、元請業者と下請や孫請業者等が存在している事で事業携帯の多様化と複雑化が進んでいました。そのため、建設現場で発生する建設廃棄物について処理する責任が不明瞭な状態でした。これに対して、建設廃棄物の処理責任を建設工事の依頼を直接依頼主から受ける元請業者に統一されました。
つまり、排出事業者は元請業者であるということが定められました(廃棄物処理法第21条の3第1項)。また、従業員などが不当投棄などをおこなった際にはその雇用主である事業主や法人に課される罰金の上限が1億円から3億円に引き上げられました。
元請業者は、建設廃棄物を廃棄物処理法に則った処理を行う責任を負います。排出事業者が産業廃棄物に対して複数の責務を負うことになります。
排出物処理の排出者責任(法第3条第1項) | 事業活動に伴って発生する廃棄物は、事業者自らの責任で適正処理をすることが求められます。 |
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再生利用等による廃棄物の減量に努めた努力(法第3条第2項) | 事業活動に伴って発生する廃棄物を再利用することで最終的な廃棄物として処理すべき量の削減に努めることが求められます。 |
廃棄物の適正処理に向けた情報提供(法第3条第2項) | 廃棄物の処理がどの程度困難なものかを評価して適正な処理実現にむけた準備や開発を行うとともに、適切処理の方法を情報提供するなど、廃棄物の適正処理の実現に努めることが求められます。 |
廃棄物の減量等に関する国及び地方公共団体への協力(法第3条第3項) | 事業者は廃棄物の減量や適正処理などに関して、国や地方公共団体と協力体制を構築して必要な情報を開示することが求められます。 |
1-3 排出事業者の責任
事業者が自ら建設廃棄物を運搬や処分を行う場合には、法令で定める産業廃棄物の収集や運搬や処分の基準に従うことが求められます(法第12条)。具体的には運搬や処分を行う場合には、『処理基準』の遵守が必要です。また、運搬するまで建設廃棄物を保管する場合には、『保管基準』の遵守が必要です。
建設廃棄物の処理責任は元請業者になりますが、実際の建設現場で工事や作業を行うのは下請業者や孫請業者になります。そのため、実質的に建設廃棄物の処理自体は工事を請け負う下請け業者や孫請け業者が行うことになります。そのため、実質的には運搬や処分は下請業者や孫請業者に委託する形になります。その場合には、『委託基準』の遵守が求められます。
なお、これらの基準は排出事業者自ら廃棄物を処理する場合に遵守することはもちろんですが、下請けや孫請けの業者にその処理を委託する場合にも同様に遵守したうえで処理をしているかを管理することが求められます。
1-3-1 処理基準
産業廃棄物の処理は、収集運搬基準と処分基準の二つに分けられます。
●収集運搬基準
収集運搬基準とは、産業廃棄物の収集や運搬を行う場合に遵守すべき基準になります。概要として以下の3つの義務が課せられます。
①生活環境の保全義務 | 廃棄物が飛散することや流出することがないようにする |
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悪臭や騒音や振動が生活環境へ影響をおよぼさないための対策を講じておくことが必要です | |
②運搬車の表示義務 | 廃棄物を運搬する車体には、その車体に産業廃棄物収集運搬車と排出事業者の名称をその両側に記載することが必要です。なお、収集運搬業許可を持つ事業者は事業者の名称ならびに許可番号も追加して記載することが求められます。 |
③書類の携行義務 | 廃棄物を運搬する際には、その車両に排出業者の名称と住所と運搬している建設廃棄物の種類と数量を記載した書類を携行することが必要です。 |
●処分基準
処分基準とは、産業廃棄物の処分を行う場合や定められた規模の処理施設を設置する場合に遵守すべき基準になります。なお、施設の設置は各都道府県や市区町村によってそれぞれ詳細の基準があります。検討の段階で相談を行うなどして、基準を確認することを推奨します。
処分基準は、中間処理と焼却処理に分かれたそれぞれ基準があります。ここではその基準の概要になります。
中間処理の基準
処分を行うにあたり、廃棄物が飛散や流出することがないようにすること |
処分を行うにあたり、悪臭や騒音や振動などによって生活環境の保全に支障が発生しないように必要な措置を行うこと |
焼却の基準
①焼却する際には800度以上で償却すること |
②償却に必要な空気量を確保するための通風設備があること |
③燃焼室内の温度が測定できる設備であること |
④燃焼室の温度を維持するための助燃装置があること |
⑤煙突から炎や黒煙が出ない、ならびに焼却灰や未燃物が飛散しないこと |
1-3-2 保管基準
保管基準は、事業者が産業廃棄物の運搬が行われるまで保管する場合に遵守すべき基準になります。保管の際には生活環境の保全に支障が発生しないようにすることが求められます。
保管基準の概要は以下になります。
①保管を行う場所の周囲を囲うこと |
②保管を行う場所の見やすい処に必要事項を記載した掲示板を設けること。必要事項は以下になります。 ・産業廃棄物の保管する場所である旨 ・この場所で保管している産業廃棄物の種類 ・保管の管理者責任者の事業者名称と連絡先 ・保管する産業廃棄物の最大量や積み上げる最大の高さなど |
害虫(ネズミややぶ蚊など)が発生しないよう措置を講じること |
生活環境の保全に影響を与える産業廃棄物の飛散や流出や悪臭の発散などが発生しないよう措置を講じること |
1-3-3 委託基準
排出事業者が収集や運搬または処分を自ら行わない場合にはその処理を委託します。この際に、委託を行う際に遵守しなければいけない基準が委託基準になります。
委託基準は排出事業者だけではなく、実際に産業廃棄物の収集や運搬などの処理を行う業者も詳細を理解し、その基準に則って実施することが求められます。
排出事業者は産業廃棄物の処理業者と委託する場合には以下の基準を順守することが求められます。
- ①委託契約の締結
- ②マニフェストの交付
①委託契約の締結(法第12条 令第6条の2第4号)
排出事業者と委託を受ける処理業者は、その処理を行う前に委託基準に則った契約内容を書面にて締結することが求められます。委託契約書の締結は、排出事業者の義務になります。なお、処理の委託契約には5原則があります。
2者契約の原則 | 排出業者は収集運搬業者と処分業者のそれぞれと契約の締結が必要です。ただし、収集運搬と処分の両方の許可を持つ事業者とは収集運搬と処分の両方を分けずに契約することが出来ます。 |
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書面契約の原則 | 口頭などの契約ではなく、書面契約を行います。また、契約内容に変更等が発生した場合にも書面で契約変更を行うことが必要です。 |
必要事項の網羅 | 廃棄物の処理及び清掃に関する法律の施行令および施行規則に定められた必要事項を契約に盛り込むことが必要です。また契約書のひな型は、全国産業廃棄物連合会が作成したものを利用することができます。 |
許可証とうの写しの添付 | 委託する業務に対する許可証や再生利用認定証の写しを契約書と共に提出・保管することが必要です。 |
5年間の保存 | 排出事業者は契約が終了した日から5年間契約書と添付された書面の保管が義務になります。 |
②マニフェスト制度の運用
マニフェストとは、排出事業者が委託する業者にマニフェスト制度に則って委託時に交付する産業廃棄物管理票をいいます。このマニフェストを利用して、委託業者から処理状況の報告を受けます。マニフェストも契約した日から5年間保管することが必要です。
マニフェスト制度は、産業廃棄物の委託処理において排出事業者の責任を明確にして、不法投棄など委託業者が適切な処理基準に則った処理を行うかを管理することを目的としています。マニフェストは紙マニフェストと電子マニフェストの2つの運用があります。
なお、マニフェスト制度については、日本産業廃棄物処理振興センター(JWセンター)HP『産廃知識 マニフェスト制度』で詳細が確認できます。
なお、マニフェストはその交付状況の報告を監督する都道府県知事などへ実施が義務付けられています(交付状況等の報告義務)。また、マニフェストの交付日から定められた期限(60日から180日)以内に委託業者からの返送が確認できない場合には産業廃棄物の状況把握と適切な措置を実施すること、また都道府県知事などに報告することが義務付けられています(返送等確認義務)。
2 建設廃棄物の処理の委託
建設廃棄物を排出事業者が処理する場合には、許可は必要ありません。しかし、建設現場で工事を行うのは下請け業者になります。下請け業者が建設廃棄物を処理するためには、以下の2つが必要になります。
- ①廃棄物処理業の許可があること
- ②排出業者との処理委託契約を締結していること
つまり、工事を行う業者であっても、廃棄物処理業の許可がなければ廃棄物の処理は出来ませんし、許可があっても処理委託契約を締結していないような状態で処理することも出来ません。
①廃棄物処理業の許可
産業廃棄物の処理には、以下の3つの原則があります。
- ・安全化…廃棄物の状態では有害な性状がある物質を中和することで中性化することなど
- ・安定化…コンクリート固化などの、廃棄物の性状を安定化させることなど
- ・減量化…廃棄物をより細かく砕くなど
これらのうちどれか1つに該当することで処理されたことになります。
産業廃棄物処理には、上記の最終的な処理を行うまでのプロセスの中の役割に応じて4種類の許可があります。
産業廃棄物収集運搬業(法第14条第1項) |
産業廃棄物処分業(法第14条第6項) |
特別管理産業廃棄物収集運搬業(法第14条の4第1項) |
特別管理産業廃棄物処分業(法第14条の4第6項) |
産業廃棄物の処理には、収集運搬と処分に分かれます。また、処分業は中間処理と最終処分に分けられます。
●収集運搬
収集運搬とは、廃棄物が排出された現場で廃棄物をトラックなどに積み込み(=収集)し、処分場まで運ぶ(=運搬)ことをいいます。収集運搬では、廃棄物を補完することはありません。そのため、産業廃棄物が排出された場所から処分する場所まで直行します。
産業廃棄物の収集運搬を業とする場合には、その事業を行う都道府県知事の許可が必要です。また、収集する場所と運搬先が異なる都道府県の場合にはそれぞれの都道府県知事の許可が必要になります。つまり、東京都で廃棄物を積み込んで、神奈川県の処理施設まで運ぼうとする場合には東京都と神奈川県のそれぞれの知事の許可が必要です。
●中間処理
中間処理とは、安全化や安定化や減量化する行為は、すべて中間処理で実施します。ごみ処理工場などが実際には中間処理の役割を担います。具体的な処理方法は、選別や薬剤処理や乾燥や脱水などの複数あります。
事業として産業廃棄物の中間処理を行う場合には、処理施設が必須になります。そして、その処理施設を置く都道府県知事の事業についてと処理施設の設置の両方の許可が必要です。
●最終処分
最終処分とは、中間処理を通じて安全化・安定化・減量化した廃棄物を埋め立てまたは海洋投入のいずれかを行います。日本の産業廃棄物の大きな課題の一つが、この埋め立て量の圧縮にあります。
事業として産業廃棄物の最終処分を行う場合にも、中間処理と同様に処理施設とその施設を置く都道府県知事による事業ならびに処理施設の設置の両方の許可が必要です。
②排出業者との処理委託契約を締結していること
これは、すでに排出事業者の責任の中で解説を行った通り、書面でかつ事前に委託契約を締結することが必要になります。
2-1 下請業者における産業廃棄物処理ニーズ
建設業を営む大半の事業者や法人の大半は、下請業者に該当します。そのため、産業廃棄物の排出事業者になる機会は少ないのが実態です。
それでは、下請業者になることの多い建設業者は産業廃棄物の処理の許可は必要ないのでしょうか。
建設業において、産業廃棄物の収集運搬業の許可は必要不可欠な許可になりつつあります。なぜならば、下請業者が工事現場から排出された建設廃棄物を許可なく、収集運搬した場合には5年以下の懲役または1,000万円以下の罰金もしくはその併科という罰則が科せられるからです。
但し、実際の建設現場では複数の事業者が入れ代わり立ち代わり建設作業を行っていきます。その建設作業を滞りなくスムーズに実施するためにも、排出される廃棄物を適切に処理するためにも、建設作業とあわせて廃棄物処理を行うことが求められます。
そのため、排出事業者である元請業者は建設作業を発注する立場でもあり、業者を選定する際に廃棄物処理業の許可を持っている企業を優先することは合理的です。
さらに、建設現場の合理性だけではなく、無許可業者が産業廃棄物の処分を行った場合には両罰規則となって元請業者も違反行為となります。法人の場合には1,000万円以下の罰金が科せられます。
また、例え元請業者が全く分からない状況下で下請業者などが廃棄物の処理を行った場合でも元請業者は措置命令の対象となります。つまり、元請業者にとっては産業廃棄物の処理の許可業を持たない事業主を建設現場に配置すること自体にリスクが発生するということになります。
これらの事から下請業者は、産業廃棄物の収集運搬業の許可は必須になりつつある、と言うことができます。収集運搬業の許可を持つことで受注機会を広げることも出来るというプラス面もあります。
2-2 産業廃棄物処理業者になるためには
産業廃棄物収集運搬業許可を得るためには、以下の要件を満たしている状態で申請を行うことが必要です。
欠格要件に該当しない | 欠格要件は大きく以下の2つに分類できます。 ・廃棄物処理法や水質汚濁防止法などの環境関連法に違反し、罰金刑を受けた会社またはその会社役員をしていた人間が役員をしている ・会社役員が禁固や懲役刑を受けた人間である、または欠格要件に該当して収集運搬業、または処分業の許可を取消された会社の役員を兼務している場合 |
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講習会の修了 | 産業廃棄物収集運搬業許可申請に必要な講習会を修了していることが必要になります。講習会の日程は財団法人日本産業廃棄物処理振興センターのHPから確認できます。 |
運搬に必要な施設がある | 運搬に必要な車両や運搬に必要なドラム缶などの容器など、処理する廃棄物に応じて必要とされる施設を整えておくことが必要です。 |
十分な経理的基盤 | 処理業者が資金繰り等の問題から事業を中断することで廃棄物の処理が滞ることや適切な処理を行うのに十分な事業を営むことが出来なくなることを回避するために、充分な財務状況であることが求められます。 |
財務実績・事業計画がある | 処理業者としての事業計画が、計画的でかつ実現可能であることが必要です。また、適切な処理ができるだけの処分能力のある処分先を確保していることもあわせて求められます。 |
許可申請の流れは、講習会を受講したうえで、申請書類を記入します。その後、各都道府県の申請窓口で申請を行います(郵送での申請も受け付けしている都道府県もあります)。また、申請には申請手数料が8万円前後かかります。申請後には、審査終了後に許可証の交付が行われます。
なお、審査期間は2ヶ月程度かかります。そのため、許可証が必要な時期から逆算して計画的な申請を行うように心がけることが必要です。
2-3 許可のない下請業者が産業廃棄物処理業の収集と運搬が出来る例外規定
許可がない場合でも、下請業者が産業廃棄物の収集運搬などの処理を行うことができる例外規定があります。
この例外規定は、下請け業者が排出事業者として見なされる「みなし排出事業者」となります。そのため、下請け業者を排出事業者として産業廃棄物の取り扱いの基準を順守する責任が生まれることになります。
許可のない下請け業者が産業廃棄物を処理できる場合は、以下の3つになります。
①建設工事現場内における産業廃棄物の保管を下請け業者が行う場合 | 建設廃棄物が発生したその建設工事現場内で保管する場合には、保管基準を排出事業者同様に下請け業者にも遵守することが求められます。 |
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②一定の条件に合致した中で産業廃棄物の運搬を下請け業者が行う場合 | 5つの条件*全てを満たす事で、許可のない下請け業者でも産業廃棄物の運搬が可能です。但し、運搬時には元請業者と下請け業者の署名のある環境省令で定められた廃棄物であることを証する書面と請負契約の基本契約書写しや注文証書の写しなどの書類の携行が必要です。また、限定的な特例の為、実施の際には管轄する自治体に確認を行うことを推奨します。 |
③元請業者との委託契約がない状況で、産業廃棄物の処理を下請け業者が委託を行う場合 | 元請業者が破産するなどのやむを得ない例外的な状況下においては、下請け業者がみなし排出事業者となります。 |
*5つの条件とは、以下になります。
・新築工事や増築工事や解体工事以外の建設工事などにおいて、発注者からの元請負代金が500万円以下の工事や同じく500万円以下の引き渡し後建設物の瑕疵補修工事のいずれかに該当する工事によって発生する廃棄物である
・特別管理廃棄物以外の廃棄物の運搬であり、かつ1回の運搬量が1㎡以下である
・発生した廃棄物の建設現場の所在地が属する都道府県または隣接する都道府県区域内の施設などに運搬する
・保管を伴わない運搬のみであること
・下請け業者が運搬を行うことが建設工事の請負契約で定められていること
3 まとめ
今回は、建設現場で発生する建設廃棄物についてその概要ならびに誰がその廃棄物を処理する責任があるかということを解説しました。
建設廃棄物は、その建設現場を建設する依頼を受注した元請業者にその責任があり、下請け業者を活用していても責任はなお元請業者にあることが分かっていただけたと思います。そして、もし下請け業者に産業廃棄物の処理を委託する場合には、下請け業者が処理事業の許可を持っていることと、事前に書面にて契約を締結する必要があります。
これは、下請け業者にとっては許可を保持することで受注機会が増えるきっかけにもなりえる前向きな話としてとらえるべきです。ぜひ、産業廃棄物の処理については正しく理解し、その処理を適切に実施できるよう情報収集を行いましょう。