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【建設業者向け】産業廃棄物の排出事業者とは?排出事業者の役割と責任についてと、許可の必要性

建設現場では、産業廃棄物が出ます。建設業において、産業廃棄物を適切に処理する責任は『排出事業者』にあります。そして、建設業での排出業者は依頼者から仕事を受注した元請業者になります。

建設工事では、元請業者とその元請業者から依頼をうけて実際の工事をおこなう下請工事業者など多数の関係者が登場します。そのため、建設廃棄物の処理における責任があいまいになっていました。あいまいだったのは、元請業者が工事の全てないしは明確に分けられた期間において行われる工事を下請け業者が一括して請け負う場合でした。この場合、下請け業者が排出事業者として認められるケースがあったからです。

このあいまいさを是正するため、平成22年の廃棄物処理法が改正されました。法改正によって、工事の依頼を請けて実際の工事を下請け業者に依頼することで建設工事全体を統括する立場にある元請業者を排出事業者とし、元請業者が処理責任を負うことが明確化されました。(廃棄物処理法第21条の3第1項)。

一部特例はありますが、元請業者から仕事を請け負う下請業者であっても産業廃棄物処理の許可がない場合には産業廃棄物処理とされる収集運搬と処分が実施できません。仮に、許可がない下請け業者などが産業廃棄物を処理すると、本来責任がある元請業者も無許可で処理した業者も罰せられてしまいます。

この記事では、産業廃棄物と建設業における産業廃棄物の処理、元請業者=排出事業者の役割や責任など、建設工事を行う際に必要となる廃棄物処理について解説するので、ぜひご参考にしてください。

1 建設業と産業廃棄物

建設業と産業廃棄物

建設工事や解体工事においては、産業廃棄物が出ます。産業廃棄物とは、経済活用によって発生する再生利用ができない不要なモノをいいます。また、人間の活動の結果発生する不要なモノを、一般廃棄物といいます。また、建設現場で発生する廃棄物を建設廃棄物といいます。

建設廃棄物には、以下の4つの特長があります。

建設廃棄物の4つの特長

  • ①廃棄物が様々な場所で発生する
  • ②廃棄物の発生する量が多い
  • ③廃棄物の種類が多いうえに混合状態で排出される。一方で、再生利用ができるものが多い点からは、分別が求められる
  • ④建設業の重層下請構造により、建設廃棄物を処理する業者が多数存在する

そのため、建設廃棄物は不適正な処理が行われていた過去があります。
建設業界としては不名誉な事ですが、廃棄物の不法投棄の7割が建設廃棄物でした。そのため、2007年を前後して建設廃棄物の不法投棄は各地で社会問題化しました。問題化に対応するため、都道府県それぞれで、建設工事現場で現場指導が強化されました。

建設廃棄物を適切に処理するためには、以下が求められました。

  • ・建設廃棄物事態を発生させない
  • ・発生する場合であっても、極力その排出量を減少させ、かつその再利用を促進する

1-1 産業廃棄物の処理

産業廃棄物の処理

廃棄物に対する処理や清掃の方法について規定されている法律が、廃棄物処理法になります。廃棄物処理法は、正確には廃棄物の処理及び清掃に関する法律といいます。

廃棄物処理法では以下の3つの基礎となる事項があります。

廃棄物処理法の3つの基礎

  • ・物の区分
  • ・業の許可制度
  • ・排出者

この3つを適切に抑えることで、廃棄物処理について全体を正しく理解することができます。

〇物の区別

物の区別

廃棄物処理法の観点からは、物は金銭に変えられる価値がある『有価物』と価値がない『廃棄物』に区分されます。さらに、廃棄物は『一般廃棄物』と『産業廃棄物』に分けられます。

産業廃棄物は、20種類の廃棄物が廃棄物処理法で規定されています。同じ、事業活動によって発生した廃棄物であっても規定された20種類の廃棄物以外の場合は、事業系一般廃棄物に分類され、産業廃棄物ではなく一般廃棄物になります。

⦅産業廃棄物となる20種類の廃棄物⦆

1)燃え殻 モノを燃やすことで発生する廃棄物になります。石炭がらや焼却炉の残灰など焼却残さなどがあります。
2)汚泥 建設工事に関わる堀削り工事によって発生する泥状の堀削物や泥水など、排水処理後などに排出される泥状のものをいいます。
3)廃油 潤滑油、洗浄油、切削油、など
4)廃酸 鉄骨を溶かす為に利用される廃硫酸などの液体状の産生廃液です。p H2.0以下の激しい腐食性の廃酸は特別管理産業廃棄物となり、異なる処理方法が必要になります。
5)廃アルカリ コンクリートカッターから排出されるカッター廃水など
6)廃プラスチック類 新築建設工事の梱包材や解体工事時の塩ビ管など
7)ゴムくず 天然ゴムを主原料とするゴムくずをいいます。合成ゴムくずは、廃プラスチック類に分類されます。
8)金属くず 鉄骨鉄筋くずや金属加工くずや足場パイプや保安堀くずをいいます。
9)ガラスくず、コンクリートくずおよび陶磁器くず ガラスくずやタイル衛生陶磁器くず、耐火連がくずなどをいいます。
10)鉱さい 不良石炭や粉炭かすなどをいいます。
11)がれき類 建築物の撤去時に発生するコンクリート破片や道路舗装などの補修工事で発生するアスファルトがらなどをいいます。
12)ばいじん モノが燃えた際に発生する微細な物質で、大気汚染防止法で規定されている「ばい煙」の一種です。ススやホコリやチリもばいじんとして取り扱われることがあります。
13)紙くず 新築や改築や除去により発生する紙くずなどをいいます。
14)木くず 同上の木くずなどをいいます。
15)繊維くず 同上の繊維くずなどをいいます。
16)動植物性残さ 食料品製造業や医薬品製造業などで原料として使用した動物性や植物性の固形状の不要物をいいます。
17)動物系固定不要物 発生元がと畜場、又は食鳥処理場となる食鳥に係る固形状の不要物をいいます。
18)動物のふん尿 畜産農業から排出される動物のふん尿をいいます。
19)動物死体 同上の動物の死体をいいます。
20)産業廃棄物処理のために発生する、上記1)〜19)の産業廃棄物項目に該当しないもの

特別管理産業廃棄物とは、産業廃棄物の中でも危険度が高く特別な管理を必要とする産業廃棄物になります。特別管理産業廃棄物には以下の性状があります。

  • ・爆発性
  • ・毒性
  • ・感染性
  • ・その他(人の健康や生活環境に係る被害を生じる恐れがある)

特別管理産業廃棄物の一覧は下記になります。

廃油
廃酸
廃アルカリ
感染性産業廃棄物
廃水銀等
特定有害産業廃棄物(廃PCB、PCB汚染物、PCB処理物、指定下水汚泥、鉱さい、廃石綿等)

また、建設現場で発生する産業廃棄物を建設廃棄物といいます。建設廃棄物には、以下の種類があります。

  • ・建設工事によって排出される廃棄物
  • ・建設現場、現場事務所等から排出される廃棄物

建設廃棄物の排出事業者は、処理基準に則って建設廃棄物の種類に応じた処理をおこなうことが求められます。

建設廃棄物の処理では、建設混合廃棄物の処理に注意が必要です。
建設混合廃棄物とは、建設現場で発生する安定型産業廃棄物とそれ以外の産業廃棄物が混在する廃棄物です。安定型産業廃棄物とは、有害物・有機物の付着がなく雨水等にさらされてもその性状が安定している産業廃棄物をいいます。具体的には、がれき類やガラスくずや廃プラスチック類や金属くずなどがあります。

建設現場や現場事務所等からでる生ごみや紙くずは、同じ建設工事現場から出る廃棄物ではありますが、一般廃棄物に該当します。そのため、他の建設廃棄物とは区別して廃棄処理を行います。

一方で、同じ紙くずでも建設工事によって発生する紙くずもあります。過去は、これらの紙くずも一般廃棄物として区別されていました。しかし、他の建設廃棄物と同じ場所で混ざって出ることが多いことから、平成10年6月以降は産業廃棄物として取り扱うように変更されています。

〇業の許可制度

許可が必要となる産業廃棄物処理業には、収集運搬業と処分業の2つがあります。さらに、産業廃棄物の種類に産業廃棄物と特別管理産業廃棄物があります。
そのため、以下の4つの産業廃棄物処理業があります。

  1. ①産業廃棄物収集運版業(法第14条第5項)
  2. ②産業廃棄物処分業(法第14条第10項第1号)
  3. ③特別管理産業廃棄物収集運版業(法第14条の4第5項第1号)
  4. ④特別管理産業廃棄物処分業(法第14条の4第10項第1号)
  5. その他、一般廃棄物に対して以下の2つの処理業があります。
  6. ⑤一般廃棄物の収集運搬業
  7. ⑥一般廃棄物の処分業

廃棄物処理業は全て許可が必要であり、無許可の場合には最高刑懲役5年の罰則になっています。

〇排出者

廃棄物処理法において、排出者の定義は存在しません。しかし、概ね「事業者」が「排出者」として取り扱われています。排出事業者については、後述します。

1-2 排出事業者の元請業者の役割と責任

排出事業者の元請業者の役割と責任

廃棄物は、排出者が処理するという原理原則があります。一般廃棄物も産業廃棄物も排出者に処理を行う責任があります。これは建設廃棄物も同様です。

「廃棄物は排出者処理が原理原則」というのが、廃掃法二条の3では国民の責任として規定されています。また、同法三条で、「事業者は、その事業活動で生じた産業廃棄物を自らの責任で適正に処理しなければいけない」ことを規定しています。

そのため、建設現場で発生する建設廃棄物は、排出事業者が責任を持って処理をしなければいけません。そして、前述のとおり建設現場での排出事業者は実際の工事を行う、下請け業者ではありません。排出事業者は元請業者になります。

一般廃棄物も産業廃棄物も実際に処理をするのは排出者ではない場合が多く発生します。個人で廃棄物を処理することはなく、廃棄物処理は許可を得た業者が実施しています。

建設現場においても、元請業者が実際に処理を行う場合もあれば、元請業者から処理の依頼を請けた委託業者が処理を行う場合もあります。ただし、そのどちらの場合においても、産業廃棄物の処理が適切に行われることに対して責任を負うのは排出業者であることに変わりはありません。

そのため、排出者が守らなければいけないことは細かく規定されています。排出事業者は、以下の役割や責任を全うすることが求められます。

排出事業者の役割や責任

①処理責任

事業者は、排出した産業廃棄物を処理する責任があります。

②多量排出事業者の計画作成義務

多量排出事業者とは、事業活動によって多量の産業廃棄物を排出する事業所をもつ事業者をいいます。多量排出事業者は、産業廃棄物の『減量』と『処理』について作成した計画を、提出の義務が発生した年度の6月30日までに都道府県知事に提出しなければなりません。

提出を受けた都道府県では地域住民への情報開示や周知や、事業者の計画に基づく取り組みの促進のために、その計画内容を公表します。

多量排出事業者の定義は、産業廃棄物処理法で定められています。産業廃棄物の前年度の発生量が1,000トン以上の事業場、特別管理産業廃棄物は前年度の発生量が50トンの事業場となっています。

また各都道府県の条例でさらに発生量を別途定めている場合もあります。
例えば、複数の建設現場を持つ元請業者などは2年以上おこなう工事については建設現場毎に、2年以内の工事は該当する都道府県内で発生した産業廃棄物の前年度の合計が500トン以上の場合に、多量排出事業者とする条例などがあります。

建設業では、廃棄物の減量やその他の適切な処理を行うことが、工事現場を統括する支店ごとに処理計画等を作成することが基本とされています。

産業廃棄物の処理計画の内容は、以下の事項などを記載します。

  • ・事業場で現在行う事業に関する事項(事業種類/規模/従業員数/産業廃棄物の一連の処理工程)
  • ・産業廃棄物処理にかかわる管理体制図
  • 排出事業者はその産業廃棄物を計画的かつ適切に処理をおこなうために、本社や支店や作業現場単位で関係者の責務と役割について社内管理体制を整備することを求められます。
  • ・産業廃棄物排出の抑制に関する事項(現状と計画それぞれの産業廃棄物の種類/排出量/実施する取り組み)
  • ・産業廃棄物の分別に関する事項(現状と計画それぞれの分別する産業廃棄物の種類/実施する取り組み)
  • ・自ら行う産業廃棄物の再生利用/中間処理に関する事項(現状と計画それぞれの産業廃棄物の種類/取扱量/実施する取り組み/中間処理により減量した量*)
  • ・産業廃棄物の処理委託に関する事項(現状と計画それぞれの産業廃棄物の種類/各業者別の処理委託量と委託総量/実施する取り組み)

なお、特別管理産業廃棄物処理計画は別途記載事項があります。

③委託基準の遵守

排出事業者が産業廃棄物の処理を外部委託しようとする場合、委託基準の遵守が求められます。
委託基準の遵守のポイントの代表的な事項は以下になります。

〇委託しようとする処理業者の事業範囲を確認すること

具体的には、産業廃棄物の運搬や処分について必要な許可を持っていることと委託する産業廃棄物がその許可された品目に合致していることを確認します。

〇委託契約書を締結すること

収集運搬と処分の処理を分けて別の業者に委託する際には、それぞれの業者と2者間で委託契約を締結します。また、委託契約書にはその処理の業務によって契約書に記載しなければいけない事項があります。

【委託契約書と記載必要事項】

  • ・委託する産業廃棄物の種類/数量
  • ・運搬の最終目的地
  • ・処分又は再生の場所(所在地)/方法/施設の処理能力*
  • ・最終処分の場所(所在地)/方法/施設の処理能力*
  • ・委託契約の有効期間/料金
  • ・産業廃棄物許可業者の業務範囲
  • ・積替え又は保管の場所に関する事項(積替え保管場所の住所/保管する産業廃棄物の種類および保管する上限量など)
  • ・適正処理のために必要な事項に関する委託者が連携すべき情報(産業廃棄物の性状や荷姿/通常保管下における腐敗や揮発などの性状変化が発生する場合の情報/他の廃棄物と混ぜることで発生する支障など/委託業務の対象に石綿含有産業廃棄物が含まれる場合/委託契約期間中に廃棄物の性状が変わった場合、受託者が適切な産業廃棄物処理が継続的に実施できるように、変更の情報を伝達する方法に関する事項やその他の取扱注意事項
  • ・受託業務が終了した際、受託者が委託者へ行う報告に関する事項
  • ・契約を解除した場合に、委託された未処理の産業廃棄物の取扱いに関する事項

*処分委託業者のみ必要になる事項になります。

なお、建設廃棄物の委託契約書には、一般社団法人日本建設業連合会などが発行する『建設廃棄物処理委託契約書』があります。こちらを利用する事で必要な事項を網羅することができます。

また、契約の添付書類と保存期間が決まっています。(規則第8条の4)

  • ・委託する処理の業務範囲に必要な産業廃棄物処理業の許可証のコピー
  • ・再生利用業に関する認定証コピー
  • ・他人の産業廃棄物の処理事業をするものが、委託を受ける産業廃棄物処分がその事業範囲に含まれていることを証明する書面

契約書ならびにその添付書類は、契約修了日から5年間の保存が必要です。

〇罰則

委託基準に違反すると委託基準違反(法第26条第1号)や無許可業者への委託禁止違反(法第25条第1項第6号)などの罰則があります。最大で5年の懲役と1,000万円の罰則の両方が科されます。

④委託時の注意義務

委託業者が委託を受けて行う産業廃棄物の最終処分の終了までが、適切な処理が行われるために必要な措置を講じることが求められます。

⑤マニフェスト(管理票)交付義務

産業廃棄物の引き渡しを行う際に、マニフェスト(産業廃棄物管理票)を交付することが義務付けられています。管理票交付者は、事前に定められた一定期間のうちに産業廃棄物の予定された処理が終了したことを知らせる管理票(写し)が委託業者から受け取らなければなりません。

委託業者が管理票を渡さない場合には、措置を講じなければなりません。必要とされる措置は具体的には、不適切な委託業者との契約を解除して他の産業廃棄物処分業者に委託ることをおこないます。また、契約の解除までのあいだは新たな産業廃棄物の処理の委託を行わないようにします。

⑥委託処理が不適正であった場合の措置命令への対応

産業廃棄物処理基準に適合しない処理をおこない、かつ生活環境の保安上に支障が発生するないしはおそれがあることが認められる場合、以下の3点などに該当する排出事業者は措置命令の対象となります。

  • ・委託基準に違反
  • ・管理票の交付義務や虚偽記載や報告・保存義務など管理票に係る義務に違反
  • ・その他、産業廃棄物の処理をするうえで発生する支障の除去を行うことを実際の処分者が行わず、かつ排出事業者がその責務を怠った場合など

措置命令とは被害発生の防止措置や支障の除去などを命令することをいいます。具体的には、不法投棄などをおこなった業者に対してその撤去などを命じます。(法第19条5第1項)
その措置命令に従わない場合には、刑事処分に処されます。(法第27条2第1号~同第11号)

また、多量排出事業者に該当した年度の翌年には実施状況の報告を行う必要があります。報告は、「実施状況報告書」(規則第8条の4の6および第8条の17の3)によって定められています。報告は電子ファイルでの報告も可能です。また、報告期限は翌年度の6月30日となっていますので、一般的にはその年の計画と合わせて報告を行っています。

なお、多量排出事業者が処理計画を提出しない場合、もしくは実施状況の報告を行わない場合、あるいは虚偽の記載や報告を行った場合には、20万円以下の過料が科されます。

2 建設業の廃棄物への取り組み

建設業の廃棄物への取り組み

建設現場で発生する廃棄物処理について、排出事業者には以下の4つの責務と役割があります。

①排出事業者には、原則として元請業者が該当すること

②排出事業者は、大きく以下の2つの事項に努めること

  • ・建設廃棄物の発生を抑制する
  • ・建設廃棄物の再生利用等によって減量化させる
  • 具体的には、以下に代表する役割の履行が求められます。
  • ・廃物処理計画書を各作業所が作成し、発注者が求める場合には提出すること
  • ・建設工事に係る発注者や下請け業者や処理業者の間で円滑な運営を行わせること
  • ・建設廃棄物の性状とその処理について理解し、その処理結果について発注者に報告ならびに整理し記録と保存をすること

③廃棄物処理法を順守すること

④建設廃棄物処理を委託する場合には、以下の事項などを行うことで適正な処理を確保すること

  • ・廃棄物処理法の委託基準に従う
  • ・不足なく公正な委託費用を支払う

2-1 建設工事に係るそれぞれの責務と役割

建設工事に係るそれぞれの責務と役割

建設工事においては、建設工事の依頼を行う“発注者”ならびにその発注を直接受ける“元請業者”とその元請業者から工事の依頼を請ける“下請け業者”がいます。前述のとおり、主体的な責任を負うのは元請業者になりますが、発注者ならびに下請け業者にもそれぞれ廃棄物など対する責務と役割があります。

〇発注者の役割と責務

建設工事において、依頼者である発注者は建設工事において大きな権限を有しています。そのため、建設廃棄物に係る処理についても以下のような責務と役割を担うことになります。

  • ・建設工事を行う前のいわゆる建設予定地にあった廃棄物についても処理を行うこと
  • ・元請業者に、建設廃棄物の処理方法と処理の条件を明示すること
  • ・建設廃棄物の発生抑抑制や再生利用などを企画・設計段階で十分に考慮すること
  • ・費用面で十分な処理費用を計上すること
  • ・元請業者から廃棄物処理計画書の提出を受け、その処理が計画通り適正に行われることを確認し、処理の報告を受けること

〇下請け業者の役割と責務

実際に建設現場での工事を行うのは下請け業者になります。そのため、廃棄物の発生における実態が把握できるのは下請け業者になります。そのため、以下のような責務と役割を担うことになります。

  • ・建設廃棄物の発生を積極的な抑制を図ること
  • ・排出事業者(元請業者)への依頼を請けた自身の工事や業務によって排出される廃棄物を事前に報告すること
  • ・工事の現場において作業する作業員に対して、工事の依頼を行った元請業者が作成した廃棄物の分別方法などの処理の具体的な指示・方針を周知させること。この周知は、工事を行う以前に行うことが求められます。
  • ・下請業者が実施した建設工事によって発生した建設廃棄物の処理を自らがおこなう際には、以下の2点が必須になります。
    ①処理する内容ならびに処理する産業廃棄物にたいしての処理の許認可があること
    ②処理するより以前に、排出事業者である元請業者との処理の委託契約を書面で締結していること

2-2 建設現場での処理

建設現場での処理

排出事業者である元請業者が行う廃棄物の処理は以下の2つの処理方法があります。

①自己処理 排出事業者が廃棄物処理(収集運搬・中間処理・最終処分)を行うこと
②委託処理 廃棄物処理を行う許認可をもった業者に委託して処理をすること

詳細は後述しますが、仮に工事現場施設内であっても排出された廃棄物の処理を下請業者に実施させることも委託処理に含まれます。しかし、小規模な修繕工事等においてのみ、下請業者による運搬を収集運搬業の許可がない場合においても運搬できることとなっています。(法第21条の3、第3項)

〇自己処理

排出事業者が自ら廃棄物の処理(保管、運搬)をする場合には、各処理に定められた処理基準の遵守が求められます。また、自己処理では産業廃棄物処理の許可がなくても実施できます。

①保管

保管については、建設工事現場内と建設工事現場外の保管についてそれぞれ定めがあります。

建設工事現場内で、以下の保管基準の定めに適応した産業廃棄物の保管が必要になります。

  • ・保管する場所の周囲に囲いをつけること
  • ・掲示板(縦横60㎝以上)を設けて、『産業廃棄物の種類』とその『保管場所である旨』と『管理者名称・連絡先』と『保管の高さ』を表示すること

建設工事現場外の保管でも、囲いと表示が同様に必要になります。加えて、現場外に300㎡以上の大きさの保管場所を設ける場合には、「産業廃棄物場外保管届出」による事前の届出が必要になります。届出を行わない場合には、保管の届出義務違反になります。

②運搬

定められた以下の基準を順守して、排出事業者は自ら運搬することが必要になります。

  • ・車体表示…産業廃棄物の運搬車である旨/法人名称*を車体の両側面に表示すること
  • ・廃棄物の運搬基準…廃棄物が飛散や流出を防止するために必要な措置(シート掛けや液ダレ防止)を行うこと
  • ・運搬車両での書面保管…法人名称*/法人住所*/産業廃棄物種類と数量と積載日/積載地の名称と住所と連絡先/運搬先の名称と所在地と連絡先

*排出事業者が個人の場合には、法人名称ではなく個人氏名と事業所住所になります。

前述のとおり、下請業者であっても定められた条件に合致する場合は収集運搬業の許可がなくても運搬できます。

  • ・対象となる工事に合致していること
  • 対象の工事は、500万円以下の維持修繕工事ならびに500万円以下相当の瑕疵工事です。金額が500万円以下であっても新築や改築や解体工事は対象となりません。
  • ・1回の運搬が少量(1㎥)以下であること
  • ・特別管理産業廃棄物は除くこと
  • ・運搬の際に保管しないこと
  • ・対象となる運搬先であること
    同一県内または隣接県内である元請業者が指定する運搬先
    元請業者の監督下にあるほかの現場や資材置き場や営業所等や、元請業者が借りている置場
    元請業者が委託契約を行っている処理業者の積載保管所を含む施設
  • ・必要事項記載の別紙と、その規定に基づく運搬である旨を記載した請負契約書(コピー)

〇委託処理

委託処理は、産業廃棄物収集運搬業の許可をもって、元請業者と委託契約を交わした事業者が廃棄物の処理を行います。
建設現場で工事を実施した下請業者であっても、廃棄物処理業の許可がない事業者が運搬すると法律に違反することになります。また、仮に工事を担当した下請業者が産業廃棄物業の許可があっても元請業者と事前に委託契約を紙面で交わしていない場合も違反となります。

運搬を委託された業者は以下の運搬基準が適用されます。基本的に自己処理と同じですが、車体表示と運搬車両での書面保管の一部が異なります。

  • ・車体表示…産業廃棄物の運搬車である旨/法人名称*に加えて、産業廃棄物の収集運搬業の許可番号を車体の両側面に表示すること(自己処理では許可番号の記載は不要でした)
  • ・運搬車両での書面保管…収集運搬業の許可証コピーを携帯すること

〇委託の委託について

建設工事では元請業者から仕事を受けた下請業者が、さらに仕事を他の業者に依頼することもあります。この場合には仕事を依頼する下請業者を“2次請け”といい、2次請け業者から仕事を請け下請業者を“3次請け業者”といいます。この3次請け業者を利用する場合、2次請け業者も排出事業者とみなされます。

この場合であっても、排出者は元請業者になります。しかし、建設工事において適正ではない工事が行われた場合、排出者と2次請け業者の両者に責任が求められます。そのため、元請業者ならびに2次請け業者の両者に産業廃棄物委託基準の適用がなされ、両者が是正命令の対象となります。

3 まとめ

建設現場における排出事業者である元請業者の役割を中心に、工事の依頼者や下請け業者の建設廃棄物に対する役割や責務について解説しました。

建設現場では元請業者が産業廃棄物の処理の責任を負う事で、下請業者や依頼者や産業廃棄物を元請業者から委託を受けて処理を行う業者と共に適切に処理を行うことが求められます。

最終的には、建設工事に係る全ての事業者が産業廃棄物の処理について適切な知識と行動が求められていることになります。

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