分離発注で建設業許可回避は可能?
建設業では、工事の請負金額が500万円以上になると建設業許可が必要になります。建設業許可は簡単に取得できるものではないため、建設業許可を回避するために工事を分離発注すれば良いのではとお考えの方もいると思います。そもそも建設業の発注方式には様々な種類があり、発注方式の種類を選択することはコストや工程に大きく影響するため、種類について良く知っておくことも大切です。
今回の記事では、発注方式の種類や分離発注をすることで建設業許可を回避することができるのかを詳しく解説します。プロジェクトにあった発注方式の選択やコスト・工程管理の改善に役立ててください。
目次
1 発注方式とは
建設業における発注方式とは、設計を経て工事に至るまでの発注の仕方(業者の選定方法)を指す呼び名です。発注方式は建設業界内の業界用語といえるもので、法律等によって規定された言葉という訳ではありません。
発注方式には、随意契約、競争入札等の「業者を選定する方法」や、「工事の内容や範囲」「プロジェクト実施のための体制」「契約の方式や条件」等の各種項目の違いにより様々な種類があります。
発注方式は種類ごとに固有の特徴があります。また、それぞれにメリットがありそしてデメリットもまたあります。大事なことは、プロジェクトの目標やゴールを理解・分析をして、そして発注方式の特徴やメリット・デメリットを理解した上で、どの発注方式を採用するかということです。
2 建設業の発注方式の種類とは
かつて建設業界では「設計・施工分離発注方式」という発注方式が主流でした。令和の現在にあっては、この方式を含めた様々な発注方式を選択できるようになっています。まず、かつて主流であった設計・施工分離発注方式を皮切りに、それらの発注方式を見ていきましょう。
2-1 設計・施工分離発注方式
建設業における設計には基本設計と実施設計の2種類がありますが、分離方式ではまず設計会社を選定して基本設計と実施設計の両方を設計事務所が行うことになります。各工程を別々の業者に発注する方法なので、例えば、家を建てる時に、家を建てるのはA社に発注、電気工事はB社に発注、内装をC社に発注する形式です。
設計部分を完了させた後に施工業者を選定することから、分離方式は設計と施工とが完全に切り離された発注方式ということになります。
分離方式のメリットとして、設計事務所と施工業者が分離されているために、それぞれの役割分担と責任の所在が明確化することがあります。また設計事務所により、品質や性能、コスト等の各種項目の管理を容易にすることもメリットの一つです。そして、施工業者の選定時には設計書を元に施工業者同士に価格競争を行わせることができるため、工事価格を下げることも期待できます。
一方、デメリットには、設計と施工の両段階において業者を選定することになるため、どうしても工程が長期化することがあります。また、コスト面においても、設計が完了した後の工事費用の算出となるため、当初の予算を大幅に超える可能性があります。
また、設計事務所と施工業者との間で、技術やノウハウが同一ではない場合は、設計事務所において想定した工法が採用できない場合があります。
逆に、施工業者のノウハウを十分に活かしきれない設計となっている場合には、工期の長期化やコストの増加となることがあり、また完工時に十分な水準を満たしていないという状況になることがあります。
かつて公共工事においては、建設省より「設計施工分離の原則」が通達されていたことから、分離方式となることが事実上義務付けられていました。しかし、2014年の「公共工事の品質確保の促進に関する法律(公共工事品確法)」の改正により、公共工事においても「設計施工一括発注方式」という発注方式を選択することが可能となりました。それでは次にその設計施工一括発注方式について見ていきましょう。
2-2 設計・施工一括発注方式
設計・施工一括発注方式(以下、一括方式)は、設計と施工を一つの業者に一括発注する方式となります。1つの会社に対して全ての工事を発注するので、例えば、家を建てる時に1つの工務店に全て(電気工事・内装等)を発注できます。現在の民間工事における主流の発注方式です。
また公共工事においても、設計事務所と施工業者がグループや建設共同企業体(JV)を結成して一括受注をする、当方式の別称である「デザインビルド方式(DB方式)」と呼ばれる方式の採用が近年では増えています。
なおDB方式とは、公共工事において一括発注方式を指すときによく使われる呼称ですが、公共工事専用の呼称というわけではなく、民間工事においてもよく使われる言葉です。
一括方式のメリットとしては、設計と施工業者が同一となる(施工業者が設計を受託する)ことから、施工業者のノウハウや高い技術力を活かせることがあります。または、JVを通してJV内で設計事務所と施工業者間で連携を密に取れることから、技術やノウハウにムラを無くすことができます。
また、全工程を一括管理できることから、コストや工期を最適化することが期待できます。また、設計、施工の両段階において窓口が一本化されることから連絡が取りやすくなり、問題の顕在化や早期解決を期待できます。
デメリットには、基本設計が固まっていない段階での発注となるため、選定した業者からの提案内容を検討・変更しながらの設計となり、コストに変動が生じる可能性が高いことがあります。また、受注者側の意向が反映されやすくなり、肝心の発注者側の関与が薄くなる恐れがあるということがあります。
また、設計側と工事側の役割分担や責任の所在が曖昧になる可能性があり、そのため設計側と工事側で認識の違いが生じてしまい、工事段階の時点で追加工事の発生等のトラブルが生じるケースがあります。
さて、一括方式は更に「基本設計DB方式」と「実施設計DB方式」の2種類に分けることができます。基本設計DB方式とは、基本設計から施工までの全ての工程を施工会社により行う方式で、ここまで見てきた一括方式を表す方式となります。
対して実施設計DB方式とは、基本設計までを設計事務所が行い、実施設計から施工までを施工会社で行う方式です。
前項の分離方式も設計と施工を別の業者が受注をするというものでしたが、分離方式では設計事務所が基本設計から実施設計までを受注するのに対して、実施設計DB方式では基本設計までを設計事務所が行うことが違いです。
基本設計DB方式は初めに見た一括方式と同じ特徴となりますので、一括方式と同じメリットとデメリットを持ちます。
実施設計DB方式のメリットとしては、基本設計をあらかじめ固めた後の施工業者への発注となることから、発注者の要望を反映しやすくなることがあります。また、基本設計後に実施設計と施工を行うことから、変更が生じにくくなり、コスト変動のリスクを抑えることを期待できます。
実施設計DB方式のデメリットは、基本設計と実施設計以降とで2つの業者を選定する必要があることから、工程が長期化する傾向にあることです。また基本設計の段階において、後の実施設計以降の施工業者からの技術提供を受ける余地が少なくなるということもデメリットです。
基本設計と実施設計の両DB方式のどちらがプロジェクトに適しているかを見極めるためには、発注者側の要求や仕様を固めること、明確にすることが重要なポイントです。
発注者側の体制が十分でない場合には受注者側の都合により話しが進み、コスト面や完工物が発注者側の想定とは異なるものになる恐れがあります。
発注者が工数の長期化や予算超過等のリスクを避けるためのポイントは、明確な要求水準書を用意することです。要求水準書とは、設計や施工の対象物、工程について、適用する基準や法令、工程ごとの成果物を記載する書類です。
もし発注者側に十分な技術者や経験者がいない場合は、コンサルタントを間において調整するという選択肢があります。コンサルタントを置くことにより、質の高い要求水準書の作成や、受注者側と発注者側とのすり合わせを期待できます。
さて、発注方式には初めに見た分離方式と本項の一括方式の特徴を併せ持った「ECI方式」と呼ばれるものもあります。次項ではそのECI方式について見ていきましょう。
2-3 ECI方式
ECI(Early Contract Involvement)方式の特徴は、設計段階から施工業者が設計に関与をすることで、設計段階で施工業者のノウハウや意見を取り入れるという方法です。
一括方式との違いは、一括方式が全工程を一括してある一つの業者を選定するのに対して、ECI方式では基本設計と実施設計を設計事務所が担当するものの、実施設計の段階で施工業者が技術提供を目的として参画をするというところにあります。民間ではかねてより多く採り入れられていたこのECI方式ですが、公共工事においても法改正によりこちらの方式の採用が進んでいます。
なお、公共工事においては施工業者に報酬を支払うことが慣習化していますが、民間におけるECI方式では、施工業者にとっても設計段階で施工業者の意向や提案を取り入れてもらえるというメリットが有るため、施工業者は無償で技術協力を行うことが一般化しています。
さて、ECI方式では設計段階において施工業者が参画をすることで、発注者と設計事務所、施工業者の三者により協議が行われることになります。このことから、ECI方式には「先行発注型三者協定方式」という別称があります。
この別称中の「先行発注」についても触れておきましょう。先の一括方式は、設計事務所、施工業者とも早い段階で選定されることから(または一括して選定されることから)、先行発注を行うことが可能となる方式です。
一方、分離方式では設計事務所と施工業者が分離されることから先行発注を行うことができず、工程が長期化する、あるいは工程短縮の余地が少ない方式ということになります。
そして、ECI方式では設計段階で施工業者が参画することで早期の施工計画を立てることが可能となります。ただし、ECI方式では厳密には設計段階で施工業者が確定している訳では無いため、その場合先行発注はできないことになります。
3 各発注方式の比較
分離方式、一括方式の2種類(基本設計DB方式と実施設計DB方式)、そしてECI方式の計4つの発注方式を見てきました。次に、コスト面、施工業者の技術力の活用面、設計デザイン面のテーマ別の4つの発注方式の比較を見ていきましょう。なお、以下では基本設計DB方式を「基本方式」、実施設計DB方式を「実施方式」と略することにします。
3-1 コスト面
分離方式は設計完了後の施工業者の選定となるため、別々のコスト管理体制となり、当初の予算を超過する可能性が高くなります。
一方、分離方式では設計完了後の施工業者の選定となるため、施工業者によるコスト競争を行うことは可能です。また、設計と施工で別々のコスト体系となるため、コストの透明性は担保されることになります。
基本方式は全工程を通してただ一つの業者の選定となるため競争原理が働かず、他の方式と比べた場合にはコスト面での優位性は見込めません。また、コンサルタント等の第三者がいない場合はコストの透明性を確保することが難しくなります。
実施方式とECI方式では、実施設計段階での施工業者との関わりとなるため、一定の競争環境を残すことができることからコスト削減への道筋も残すことに繋がります。また、コスト面でも基本設計までと実施設計以降の2つに分けられることから、コストの透明性も一定は担保されることになります。
3-2 施工業者の技術力の活用面
分離方式では設計部分が完了しているため、施工業者の技術力やノウハウを活かせる余地は他の方式に比べると残されていません。
基本方式では基本設計の段階から施工業者に委託するため、施工業者の技術力を基本の部分から遍く活用することができます。実施方式でも基本方式ほどではないにせよ、施工業者の技術力が活かされる余地は大いに残されています。
ECI方式では実施設計から施工業者が関わることになりますが、実施方式と比べるとその関わり方は限定的であり、施工業者の技術力を活かせる局面もまた部分的となります。
3-3 設計デザイン面
分離方式では設計と施工が分離されていることから、設計事務所に設計デザインの全権の裁量が認められることになります。好みの問題は別として、設計デザイン性が最も高くなるのは分離方式です。
基本方式では設計から全てを施工業者に委託することになり、施工業者の施工の都合に合わせた設計になることから、設計デザイン性は最も低くなります。
実施方式では基本設計までの部分の設計デザイン性は担保されます。ECI方式では、実施設計から施工業者が参画をしてきますが、実質的に全設計の過程を設計事務所が行うことから、分離方式と同程度の設計デザイン性を期待することができます。
4 建設業許可とは
建設業許可は、建設業を営む事業所が、建設業法に基づいて適切な工事を行っていることを示す許可制度です。建設業は業種ごとに建設業許可を得る必要があります。まずは、建設業許可の種類を確認してみましょう。
4-1 建設業許可の種類
建設業許可の許可を得るためには国や地方公共団体に許可申請をする必要があります。建設業許可の業種は29業種あり、細かく分類をされています。工事をする場合は業種ごとにそれぞれ建設業許可を得る必要があります。
【建設業における業種】
建設工事の種類 | 具体的な内容 |
---|---|
土木一式工事 | 総合的な企画、指導、調整のもとに土木工作物を建設する工事 |
建築一式工事 | 総合的な企画、指導、調整のもとに建築物を建設する工事 |
大工工事 | 木材の加工または取付けにより工作物を築造し、または工作物に木製設備を取付ける工事 |
左官工事 | 工作物に壁土、モルタル、漆くい、プラスター、繊維等をこて塗り、吹付け、またははり付ける工事 |
とび・土工・コンクリート工事 |
|
石工事 | 石材(石材に類似のコンクリートブロックおよび擬石を含む。)の加工または積方により工作物を築造し、または工作物に石材を取付ける工事 |
屋根工事 | 瓦、スレート、金属薄板等により屋根をふく工事 |
電気工事 | 発電設備、変電設備、送配電設備、構内電気設備等を設置する工事 |
管工事 | 冷暖房、冷凍冷蔵、空気調和、給排水、衛生等のための設備を設置し、または金属製等の管を使用して水、油、ガス、水蒸気等を送配するための設備を設置する工事 |
タイル・れんが・ブロツク工事 | れんが、コンクリートブロック等により工作物を築造し、または工作物にれんが、コンクリートブロック、タイル等を取付け、またははり付ける工事 |
鋼構造物工事 | 形鋼、鋼板等の鋼材の加工または組立てにより工作物を築造する工事 |
舗装工事 | 道路等の地盤面をアスファルト、コンクリート、砂、砂利、砕石等により舗装する工事 |
しゆんせつ工事 | 河川、港湾等の水底をしゆんせつする工事 |
板金工事 | 金属薄板等を加工して工作物に取付け、または工作物に金属製等の付属物を取付ける工事 |
ガラス工事 | 工作物にガラスを加工して取付ける工事 |
塗装工事 | 塗料、塗材等を工作物に吹付け、塗付け、またははり付ける工事 |
防水工事 | アスファルト、モルタル、シーリング材等によって防水を行う工事 |
内装仕上工事 | 木材、石膏ボード、吸音板、壁紙、たたみ、ビニール床タイル、カーペット、ふすま等を用いて建築物の内装仕上げを行う工事 |
機械器具設置工事 | 機械器具の組立て等により工作物を建設し、または工作物に機械器具を取付ける工事 |
熱絶縁工事 | 工作物または工作物の設備を熱絶縁する工事 |
電気通信工事 | 有線電気通信設備、無線電気通信設備、ネットワーク設備、情報設備、放送機械設備等の電気通信設備を設置する工事 |
造園工事 | 整地、樹木の植栽、景石のすえ付け等により庭園、公園、緑地等の苑地を築造し、道路、建築物の屋上等を緑化し、または植生を復元する工事 |
さく井工事 | さく井機械等を用いてさく孔、さく井を行う工事またはこれらの工事に伴う揚水設備設置等を行う工事 |
建具工事 | 工作物に木製または金属製の建具等を取付ける工事 |
水道施設工事 | 上水道、工業用水道等のための取水、浄水、配水等の施設を築造する工事または公共下水道若しくは流域下水道の処理設備を設置する工事 |
消防施設工事 | 火災警報設備、消火設備、避難設備若しくは消火活動に必要な設備を設置し、または工作物に取付ける工事 |
清掃施設工事 | し尿処理施設またはごみ処理施設を設置する工事 |
解体工事 | 工作物の解体を行う工事 |
なお、許可の有効期間は、許可のあった日から5年間です。有効期間満了後も引き続き建設業を営む場合は、満了する30日前までに建設業許可の更新手続きを行う必要があります。
4-2 建設業許可が不要な場合
工事をするには建設業許可が必要ということを見てきましたが、建設業許可が不要な場合もあります。軽微な工事の場合は建設業許可が不要です。建設業許可が不要なケースは下記のとおりです。
建築一式工事 | 建築一式工事以外の工事 |
---|---|
どちらかの条件を満たせば、建設業許可は不要です。
|
請負金額が500万円未満の工事であれば建設業許可は不要です。 |
※請負金額の額は税込み金額で判断されます。
以上のことから、請負金額が少なければ、軽微な工事に該当し、建設業許可が不要となります。
4-3 建設業許可を違反した場合
次に、適切な建設業許可を所有していない状態で、軽微な工事以上のものを請け負った場合のペナルティについて見ていきましょう。建設業許可は建設業法で定められており、建設業許可を遵守しない事業者には厳しい罰則や罰金が課せられます。
【建設業許可を違反した場合のペナルティ】
- ○3年以下の懲役または300万円以下の罰金
建設業法第47条2項では「情状により、懲役および罰金を併科することができる。」と記載されており、場合によっては、懲役も罰金も両方科せられる可能性もあります。
また、その他のペナルティとして、5年間建設業許可が取得することができないリスクや、官報や行政機関のホームページなどで処分されたことが公開される可能性もあります。懲役や罰金もかなり厳しい処分ではありますが、建設業許可が取得できないことや処分されることが公表されることは、当面の間、建設業の業を継続できなくなるため、かなり厳しい処分となっています。
【上記該当条文】建設業法
第四十七条 次の各号の一に該当する者は、三年以下の懲役または三百万円以下の罰金に処する。
- 一 第三条第一項の規定に違反して許可を受けないで建設業を営んだ者
- 一の二 第十六条の規定に違反して下請契約を締結した者
- 二 第二十八条第三項または第五項の規定による営業停止の処分に違反して建設業を営んだ者
- 二の二 第二十九条の四第一項の規定による営業の禁止の処分に違反して建設業を営んだ者
- 三 虚偽または不正の事実に基づいて第三条第一項の許可(同条第三項の許可の更新を含む。)を受けた者
- 2 前項の罪を犯した者には、情状により、懲役および罰金を併科することができる。
5 分離発注で建設業許可回避は可能なのか?
建設業許可は、500万円未満(建築一式工事の場合は1,500万円未満)であれば必要ありません。そこで分離発注をすることで、工事の金額を500万円未満に抑えることで建設業許可が回避できるのか、以下の3ケースに分けて説明します。
5-1 工事の各工程を分離発注した場合
工事の各工程を別々の業者に分離発注したケースとなります。例えば、合計で600万円の工事があったとして、A工程をA社に300万円で発注。B工程をB社に200万円。C工程にC社に100万円で発注したとします。
この場合、A~Cの工程が1つの工事と判断されれば、各契約の請負金額(消費税を含む額)の合計で判断されます。このことは建設業法施行令第1条の2第2項に明確に記載されております。したがって、分割発注をしたとしても工事の合計金額が600万円だと判断され、建設業許可を持っていない場合は違反となります。
【上記該当条文】建設業法施行令第1条の2第3項
前項の請負代金の額は、同一の建設業を営む者が工事の完成を二以上の契約に分割して請け負うときは、各契約の請負代金の額の合計額とする。ただし、正当な理由に基いて契約を分割したときは、この限りでない。
5-2 材料を支給し、材料費を抜いた金額を工事として発注した場合
材料費は発注者負担で、材料費を抜いた金額で業者に発注するケースです。例えば、材料費150万円で発注者負担。工事費は400万円で発注したとします。この場合、工事費は400万円で建設業許可が必要のない軽微な工事に該当しそうですが、建設業法施行令第1条の2第3項には、材料費は発注者が用意する場合でも、工事代金に含むと記載されております。したがって、材料費が工事費に加算され、工事費が550万円となり、建設業許可を持っていない場合は違反となります。
【上記該当条文】建設業法施行令第1条の2第3項
注文者が材料を提供する場合においては、その市場価格または市場価格および運送賃を当該請負契約の請負代金の額に加えたものを第一項の請負代金の額とする。
5-3 1つの工事の工期を2つ以上に分けて発注した場合
1つの工事の工期を2つ以上に分けた場合のケースです。例えば、合計600万円の工事を○年4月~8月を第1期工事として300万円、○年11月~3月を第2期工事として、それぞれ発注したとします。この場合、契約書上は2つの工事ですが、実態が1つの工事と判断されるため、工事費が600万円だと判断され、建設業許可を持っていない場合は違反となります。
6 まとめ
結論として、分離発注で建設業許可の回避はできません。別々の工事だという正当な理由があれば認められる場合もありますが、軽微な工事であるかは書類上で判断されません。建設業許可を回避したいからという理由で分離発注をして、理由を後付けする場合、リスクも高くなります。ペナルティもかなり厳しいため、絶対にやめましょう。