建設業許可における経営業務管理責任者とは 要件緩和についても
建設工事を請け負う場合、建設事業者は建設業法で定められた建設業許可を取得しなければなりません。その許可要件はいくつかありますが、その内の一つがいわゆる「経営業務管理責任者」の設置です。
今回はこの経営業務管理責任者(経管)がどのような存在で、どうすれば経管になれるのかという要件(条件)のほか、改正による経管の要件緩和などについて説明していきます。
この経管の要件について、その条件・基準等が分かりにくい、自社の役員等がその要件を満しているかどうか判断できない、といったことで悩む事業者などは参考にしてみてください。
目次
1 建設業許可とは
まず、建設業許可の内容とその要件について簡単に見ていきましょう。
1-1 建設業許可の概要
建設業法第3条では、建設工事を請け負って営業する場合、下記の「軽微な建設工事」を除き「建設業の許可」を受けることを義務付けています。
1)「軽微な建設工事」の内容
軽微な建設工事は、以下の2点に該当する建設工事です。
(1)建築一式工事以外の建設工事で1件の請負代金が500万円未満の工事(消費税込み)
(2)下記のいずれかに該当する建築一式工事
- ⅰ 1件の請負代金が1500万円未満の工事(消費税込み)
- ⅱ 請負代金の額に関係なく木造住宅で延べ面積が150㎡未満の工事(主要構造部が木造で、延べ面積の1/2以上を居住の用に供するもの)
以上の通り「軽微な建設工事」は小規模な工事になります。そのため、事業を拡大させれば、直ぐにその範囲を超えることとなり、建設業許可を受けなければならなくなるのです。なお、建設業許可を要する工事に対して許可を受けないで請け負った場合は罰則が適用されることになります。
また、軽微な建設工事だけに対応する事業者の場合、元請業者や金融機関などとの取引において、不利になり得るため注意が必要です。
2)建設業許可の区分
建設業許可には以下のような区分があります。
●大臣許可と知事許可
建設業許可を出す行政庁は、国土交通大臣と都道府県知事です。
- ・国土交通大臣の場合
2つ以上の都道府県の区域内に営業所を設けて営業しようとする場合 - ・都道府県知事
1つの都道府県の区域内のみに営業所を設けて営業しようとする場合
●業種別許可制
建設業の許可は、建設工事の種類ごと(業種別)に行われます。その建設工事は、土木一式工事と建築一式工事の2つの一式工事のほか、27の専門工事を含む計29の種類に分類されており、建設工事の種類ごとに許可を受ける必要があります。
●一般建設業と特定建設業
建設業の許可は、下請契約の規模等により「一般建設業」と「特定建設業」の別に区分され適用されます。
特定建設業 | 発注者から直接請け負った1件の工事代金について、4000万円(建築工事業の場合6000万円)以上となる下請契約を締結する場合 |
---|---|
一般建設業 | 上記以外 |
●許可の有効期間
建設業許可の有効期間は5年間です。従って、5年毎に更新を受ける必要があり、更新しなければ許可は失効になります。なお、この更新申請は、従前の許可の有効期間が満了する30日前までに行わねばなりません。
1-2 建設業許可の要件
建設業の許可を受けるための要件(基準)を項目で示すと以下の4つになります(建設業法第7条)。
(1)経営業務管理責任者がいること
経営業務管理責任者とは、「建設業に係る経営業務の管理を適正に行うに足りる能力を有するものとして国土交通省令で定める基準に適合する者である」と規定されています。
(2)専任技術者がいること
建設業に係る建設工事に関して学校教育等を履修し一定の実務経験年数を有するなどの技術者を専任として該当の営業所に設置しなければなりません。
(3)財産的基礎が認められること
建設工事の業務では他のビジネス以上に多くの資金が必要となるケースが多いことから財産的基礎や金銭的信用が要件として規定されています。
(4)契約に誠実性があること
許可を受けようとする者は、「請負契約に関して不正または不誠実な行為をするおそれが明らかな者でないこと」ことが要求されています。
なお、上記のほかに「欠格要件」もあり、それに該当する申請者は許可が受けられません。
2 経営業務管理責任者の要件
経営業務管理責任者の要件内容について説明しましょう。
2-1 建設業法施行規則第7条第1号の基準
建設業法施行規則第7条第1号では、建設業の経営業務について一定期間の経験を有した者が最低でも1人は不可欠であると規定され、「経営業務の管理責任者等の設置」の要件が定められています。具体的な規定内容は以下の通りです。
●許可を申請する者が、法人である場合は常勤の役員のうちの1人が、個人である場合は本人または支配人のうちの1人(以下併せて「常勤役員等」)が、次のいずれか(イ、ロ、ハのどれか)に該当しなければなりません。
【イ】
- (1)建設業に関し5年以上経営業務の管理責任者としての経験を有する者
- (2)建設業に関し5年以上経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者(経営業務を執行する権限の委任を受けた者に限る)として経営業務を管理した経験を有する者
- (3)建設業に関し6年以上経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者として経営業務の管理責任者を補佐する業務に従事した経験を有する者
【ロ】
- (1)「建設業に関し、2年以上役員等としての経験を有し、かつ、5年以上役員等または役員等に次ぐ職制上の地位にある者(財務管理、労務管理または業務運営の業務を担当するものに限る。)としての経験を有する者」(A)
かつ(+)、{常勤役員等を直接に補佐する者として、当該建設業者または建設業を営む者において「財務管理の業務経験」、「労務管理の業務経験」、「運営業務の業務経験」について、5年以上の経験を有する者をそれぞれ置く(一人が複数の経験を兼ねることが可能=同一人でも3名別々でも可)ものであること}(X) - (2)「5年以上役員等としての経験を有し、かつ、建設業に関し、二年以上役員等としての経験を有する者」(B)
かつ(+)、{常勤役員等を直接に補佐する者として、当該建設業者または建設業を営む者において「財務管理の業務経験」、「労務管理の業務経験」、「運営業務の業務経験」について、5年以上の経験を有する者をそれぞれ置く(上記ロ-(1)と同じ)ものであること}(X)
つまり、【ロ】は、{A+X(直属の補佐者)}と{B+X(直属の補佐者)}のの2つがあります。
*ここでの法人の役員とは、次の者を指します。
- ・株式会社または有限会社の取締役
- ・指名委員会等設置会社の執行役
- ・持分会社の業務を執行する社員
- ・法人格のある各種の組合等の理事
【ハ】
「国土交通大臣が上記のイまたはロに掲げるものと同等以上の経営体制を有すると認定した者」
具体的には、「外国の建設会社において役員経験を有する」といった者が該当します。
なお、「経営業務の管理責任者になり得る」ための要件を経営経験年数の視点でみると、以下のようにまとめられるでしょう。
イ
- (1)建設業に関して経営業務の管理責任者としての経験⇒5年以上
- (2)建設業に関して経営業務の管理責任者に準ずる地位(執行役等)にあって経営業務を管理した経験⇒5年以上
- (3)建設業に関して経営業務管理責任者に準ずる地位にあって経営者を補佐した経験⇒6年以上
ロ
- (1)建設業での2年以上役員等の経験かつ5年以上役員等または役員等に次ぐ職制上の地位にある者(通算5年以上)(財務管理、労務管理または業務運営の業務の担当)経験を有する者+常勤役員等に直属する補佐者(財務・労務・業務運営の各担当:兼務可能)
- (2)5年以上役員等での経験かつ建設業での2年以上役員等の経験(通算5年以上)+常勤役員等に直属する補佐者(財務・労務・業務運営の各担当:兼務可能)
2-2 要件内容・用語の意味
経営業務管理責任者の要件内容や用語を説明しましょう。
●「一定期間での建設業の経営に関する経験」
経営業務管理責任者になり得るための要件は主に「経営経験」です。この経験は主に建設業が対象となりますが、その他の業種での経験が含まれるケースもあります。
なお、この経営経験は個人事業主や会社の役員(監査役を除く)として5年以上の従事した期間が対象ですが、6年以上の経営業務を補佐した経験を有する場合等でも経営要件を満たすことが可能です。
●「常勤役員等としての経験」
この経験は、営業取引上、対外的に責任を有する地位、たとえば持分会社の業務を執行する社員、株式会社や有限会社の取締役、指名委員会等設置会社の執行役または法人格のある各種の組合等の理事等、個人の事業主または支配人その他支店長、営業所長、などにあって、建設業の経営業務について総合的に管理・執行した経験のことを指します。
たとえば、比較的小規模な企業の場合、常勤役員等としての経験等を満たす会社の社長が経管になるケースが多いです。
●常勤役員等の「常勤性」
この「常勤」とは原則として主たる営業所で、休日その他勤務を必要としない日を除き、一定の計画の下に毎日所定の時間中、その職務に従事している状態のことです。
非常勤の取締役、他社に常勤している者や常識的に通勤不可能な者等は対象者になりません。そのため、住所が勤務する営業所から著しく遠く離れた距離にある者は対象外です。
ほかには個人営業を行っている者、建設業の他社の技術者、常勤役員等(経管)および常勤役員等を直接に補佐する者や、他社の常勤役員・代表取締役・清算人等と兼ねることはできません。
なお、他の法令により専任性が要求される建築士、宅地建物取引士も経営業務の管理責任者としての常勤性は認められません。ただし、同一法人で同一の営業所である場合には、例外的に兼ねることができます。
また、報酬月額が10万円未満など過少である場合、常勤性が疑われる可能性があり、その場合は住民税の課税証明書等で確認されることもあります。
●「経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者」
これについては、建設業の経営業務の執行について、取締役会設置会社において、取締役会の決議を経て取締役会または代表取締役から具体的な権限委譲を受けた執行役員だけがイ(2)の対象者になります。その他の準ずる地位にある者はイ(3)の対象者になります。
この要件での「経営業務の管理責任者に準ずる地位」は、法人の場合は役員の下の役職で、具体的には建設業における営業所の所長や工事部長等の管理職などです。個人事業主の場合は、専従者として勤務する事業主の配偶者や子供などが対象になります。
●ロ(1)「役員等に次ぐ職制上の地位」
この地位は、建設業に関して、財務管理・労務管理・業務運営のうちいずれかに関して、役員または役員等の職制上の直下にある管理職(会社組織上の役員等に次ぐ役職であり、当該地位での経験を積んだ者)のことです。役員や代表権を有する者であることは要求されていません。
この規則に関して常勤役員等を置く場合は、建設業に関する2年以上の役員等経験およびこの期間と合わせて、上記管理職での経験が合計で5年以上となることが要求されます。
●ロ(1)と(2)の「常勤役員等を直接に補佐する者の業務経験」
このロに該当する常勤役員等の場合は、財務管理・労務管理・業務運営の各々ついて、常務役員等の建設会社等における業務経験を5年以上有する者を直属者として設置しなければなりません。
その直属者の業務経験は申請事業者にあっての業務経験であり、他社での経験は不可となります。同一人の財・労・業の複数兼務も認められますが、補佐される常勤役員等と兼ねることはできません。各業務経験の主な内容は次の通りです。
財務経験 | 建設工事を施工するにあたっての必要な資金の調達や施工時における資金繰りの管理、下請業者への代金支払いなどを担当する部署での業務経験 |
---|---|
労務経験 | 社内や工事現場に関する勤怠管理や社会保険関係の手続などを担当する部署での業務経験 |
業務運営 | 会社の経営方針や運営方針の策定、実施などを担当する部署でのそれらに関する業務経験 |
この「直属の補佐者の設置」の要件は、「他の業種で役員経験があるが、建設業の役員経験が少ない」といったようなケースでの適用が想定されるものです。従って、この規定は、建設業に精通している補佐者をつければ経験が不足する常勤役員等でも経営業務管理責任者になれることを意味しています。
なお、「直接に補佐する」とは、組織体系上および実態上において、常勤役員等との間に他者の介在がなく、その常勤役員等から直接指揮命令を受け業務を常勤で担当することです。
●専任の技術者との兼任
経営業務の管理責任者と専任技術者を兼ねることは可能です。ただし、同一の営業所(原則として本社または本店等)で担当していることが条件になります。また、両方の職務とも常勤で従事していることが必要です。
2-3 経管の個別認定制度
常勤役員等として設置する者について、その経験が経管としての経験以外の経験である場合や、その地位が経管に準ずる地位と見られる場合にあり建設業の経営業務の執行に関し権限委譲を受けた執行役員等である場合には、事前に個別認定が要求されることがあります。
個別認定が必要となる場合、その提出書類や申請方法は国交省や都道府県で異なるケースもあるため、申請先に事前に確認することが重要です。以下に令和3年1月に国土交通省関東地方整備局が発行している「経営業務の管理責任者の個別認定申請について」の内容を紹介しましょう。
*以下の個別認定制度の内容は、経管の要件を理解する上でも役立ちます。
1)個別認定制度の概要
国土交通大臣許可業者が常勤役員等として設置する者について、下記の個別認定①~⑤の内容に該当する場合には、建設業許可申請および変更届の前に「認定申請」して認定を受けなければならない、と規定しているのが国交省の個別認定制度です。
*各都道府県でも、経営業務の管理責任者を補佐する業務に従事した経験、などについて事前確認が求められるケースもあるため、早めに申請先に確認しておきましょう(許可申請前の事前相談等で)。
【個別認定①】(取締役等に準ずる者としての職制上の地位の認定)
- ①は「申請時点において、被認定者が、取締役等に準ずる地位にあって、建設業の経営業務の執行に関し、取締役会の決議を経て取締役会または代表取締役から具体的な権限委譲を受けた者(執行役員等)であることの認定」になります。
【個別認定②】(権限委譲を受けた執行役員等として経営業務を管理した経験の認定)
②は以下の2つについての認定です。
- ・「被認定者による経験内容が、執行役員等としての建設業の経営業務を管理した経験(5年以上)であることの認定」
- ・「取締役会の決議により特定の事業部門に関して業務執行権限の委譲を受け、かつ、取締役会によって定められた業務執行方針に従って、代表取締役の指揮および命令のもとに、具体的な業務執行に専念した経験であることの認定」
【個別認定③】(経営業務の管理責任者を補佐する業務に従事した経験の認定)
以下の2つの認定になります。
- ・「被認定者による経験内容が、経営業務の管理責任者を補佐する業務に従事した経験(6年以上)であることの認定」
- ・「取締役、執行役、組合理事、事業主、支配人、支店長および営業所所長等に次ぐ職制上の地位にあって、建設工事の施工に必要とされる資金の調達、技術および技能者の配置、下請業者との契約の締結等の経営業務全般について従事した業務経験を認定」
【個別認定④-1】(建設業の役員等または役員等に次ぐ職制上の地位にある者としての経験の認定)
- ・「被認定者による経験内容が、建設業の役員等の経験が2年以上あり、それに加えて建設業の役員等または役員等に次ぐ職制上の地位にある者(建設業の財務管理、労務管理または業務運営の業務に限る)の経験を3年等有する者であることの認定」
【個別認定⑤-1】(役員等としての経験の認定)
- ・「被認定者による経験内容が、建設業の役員等としての経験が2年以上あり、それに加えて役員等の経験を3年等有する者であることの認定」
【個別認定④-2、⑤-2】(常勤役員等を直接補佐する者の職制上の地位および業務経験の認定)
以下の2つになります。
- ・「申請時点において、被認定者(直接補佐者)が、個別認定④-1または⑤-1の常勤役員等に次ぐ職制上の地位におり、当該常勤役員等から直接指揮命令を受け業務を常勤で行う者であることの認定」
- ・「被認定者(直接補佐者)による経験内容が、建設業の財務管理、労務管理、業務運営それぞれの業務経験(5年以上)であることの認定」
2)個別認定申請の手続
申請者は、認定申請書および認定調書(「別紙6」)に必要事項を記入して、必要な確認資料を添付の上、関東地方整備局宛てに認可申請しなければなりません。なお、申請にあたっては、申請書類送付前の連絡が必要です。
【申請・問合せ先】
- 国土交通省関東地方整備局建政部建設産業第一課建設業係〒330-9724 埼玉県さいたま市中央区新都心2-1さいたま新都心合同庁舎2号館
電話:048(601)3151(代表)FAX:048(600)1921
(3)認定申請に必要な確認資料
認定申請には以下のような確認資料が必要になります。
【個別認定①】
●組織図その他これに準ずる書類
- ・申請時点での被認定者の地位が取締役等に次ぐ職制上の地位(取締役等の直下)にあることが確認できること
●業務分掌規程その他これに準ずる書類
- ・被認定者が業務執行を行う特定の事業部門が建設業に関する事業部門であることが確認できること
- ・業務分掌規程で確認ができない場合および社内規定が無い場合等は、その他の追加資料(決裁文書・稟議書等)を提出する必要があり、事業部門の業務内容の詳細が確認できること
- ・建設業に関する事業の一部のみ分掌する事業部門(一部の営業部門のみを分掌する場合や資金・資材調達のみ分掌する場合等)の事業執行に係る権限委譲を受けた執行役員等は認められず、そうした内容が確認できること
●定款、執行役員規定、執行役員職務分掌規程、取締役会規則、取締役就業規定、取締役会の議事録その他これに準ずる書類
- ・被認定者が取締役会の決議により特定の事業部門に関して業務執行権限の委譲を受ける者として選任されたことが確認できること
- ・被認定者が取締役会の決議により決められた業務執行の方針に従って、特定の事業部門に関して、代表取締役の指揮および命令のもとに、具体的な業務執行に専念する者であることが確認できること
【個別認定②】
●組織図その他これに準ずる書類
- ・被認定者による経験が取締役等に次ぐ職制上の地位(取締役等の直下)における経験であることが確認できること
●業務分掌規程その他これに準ずる書類
- ・被認定者が業務執行を行う特定の事業部門が建設業に関する事業部門であることが確認できること
- ・業務分掌規程で確認ができない場合および社内規定が無い場合等は、その他の追加資料(決裁文書・稟議書等)の提出が必要で、その事業部門の業務内容の詳細が確認できること
- ・建設業に関する事業の一部のみ分掌する事業部門(一部の営業部門のみを分掌する場合や資金・資材調達のみ分掌する場合等)の事業執行に係る権限委譲を受けた執行役員等は認められず、その点が確認できること
●定款、執行役員規定、執行役員職務分掌規程、取締役会規則、取締役就業規定、取締役会の議事録その他これに準ずる書類
- ・取締役会の決議により特定の事業部門に関して業務執行権限の委譲を受ける者として選任されたかが確認できること
【個別認定③】
●組織図その他これに準ずる書類
- ・被認定者による経験が、取締役、執行役、組合理事、事業主、支配人、支店長および営業所所長等に次ぐ職制上の地位(取締役等の直下)での経験を有しているかが確認できること
- ・被認定者の経験が、権限委譲を受けた執行役員等に次ぐ職制上の地位としての経験である場合には、【個別認定②】に準じて、当該執行役員等の業務執権限等が確認できること
●業務分掌規程その他これに準ずる書類
- ・被認定者の経験内容が、建設業に関する部門での経験であることが確認できること
- ・被認定者の経験内容が、建設工事の施工に必要とされる資金の調達、技術および技能者の配置、下請業者との契約の締結等の経営業務全般(一部のみは不可)に関して従事した経験であるかが確認できること
- ・業務分掌規程で確認ができない場合および社内規定が無い場合等は、その他の追加資料(決裁文書・稟議書等)により事業部門の業務内容の詳細が確認できること
●人事発令書その他これに準ずる書類
- ・経営業務の管理責任者を補佐する業務に従事した経験期間(6年以上)が確認できること
【個別認定④-1】
ⅰ)【建設業の役員等の経験】
A (役員等としての経験の場合)
●登記事項証明書
- ・建設業の役員等の経験期間(2年以上)が確認できること
●建設業許可通知書(写)
- ・証明期間において建設業許可を有していたかが確認できること
- ・許可のない期間中の軽微な工事での経験の場合は、経験期間分の工事請負契約書または注文書および請書により確認できること
B (権限委譲を受けた執行役員等としての経験の場合)
●組織図その他これに準ずる書類
- ・被認定者の経験が取締役等に次ぐ職制上の地位(取締役等の直下)での経験であることが確認できること
●定款、執行役員規定、執行役員職務分掌規程、取締役会規則、取締役就業規定、取締役会の議事録その他これに準ずる書類
- ・取締役会の決議で特定の事業部門について業務執行権限の委譲を受ける者として選任されたことが確認できること
- ・取締役会の決議で決定された業務執行の方針に基づいて、特定の事業部門に関して、代表取締役の指揮および命令のもとに、具体的な業務執行に専念する者であることが確認できること
●取締役会の議事録、人事発令書その他これに準ずる書類
- ・執行役員等の経験期間(2年以上)が確認できること
- ・被認定者の経験が取締役等に次ぐ職制上の地位(取締役等の直下)での経験であることが確認できること
●定款、執行役員規定、執行役員職務分掌規程、取締役会規則、取締役就業規定、取締役会の議事録その他これに準ずる書類
- ・取締役会の決議で特定の事業部門について業務執行権限の委譲を受ける者として選任されたことが確認できること
- ・取締役会の決議で決定された業務執行の方針に基づいて、特定の事業部門に関して、代表取締役の指揮および命令のもとに、具体的な業務執行に専念する者であることが確認できること
●取締役会の議事録、人事発令書その他これに準ずる書類
- ・執行役員等の経験期間(2年以上)が確認できること
C (令3条の使用人としての経験の場合)
●就任時、退任時の変更届出書(写)
- ・令3条の使用人の経験期間(2年以上)が確認できること
●組織図その他これに準ずる書類
- ・被認定者の経験が、取締役、執行役、組合理事、事業主、支配人等に次ぐ職制上の地位(取締役等の直下)にあるかが確認できること
- ・被認定者の経験が、権限委譲を受けた執行役員等に次ぐ職制上の地位としての経験である場合、【個別認定②】に準じて、当該執行役員等の業務執行権限等が確認できること
●業務分掌規程その他これに準ずる書類
- ・被認定者による経験が、財務管理、労務管理または業務運営のいずれかの業務に関する事業部門であるかが確認できること
- ・業務分掌規程で確認ができない場合および社内規定が無い場合等は、その他の追加資料(決裁文書・稟議書等)により(提出)、事業部門の業務内容の詳細が確認できること
●取締役会の議事録、人事発令書その他これに準ずる書類
- ・建設業の役員等に次ぐ職制上の地位にある者としての経験期間(3年等)が確認できること
【個別認定⑤-1】
ⅰ)【建設業の役員等の経験】
●【個別認定④-1】と同じ
ⅱ)【役員等の経験】
A (役員等としての経験の場合)
●登記事項証明書
- ・役員等の経験期間(3年等)が確認できること
B (権限委譲を受けた執行役員等としての経験の場合)
●組織図その他これに準ずる書類
- ・被認定者の経験が取締役等に次ぐ職制上の地位(取締役等の直下)での経験であるかが確認できること
●定款、執行役員規定、執行役員職務分掌規程、取締役会規則、取締役就業規定、取締役会の議事録その他これに準ずる書類
- ・取締役会の決議で特定の事業部門に関して業務執行権限の委譲を受ける者として選任されたかが確認できること
- ・取締役会の決議で決定された業務執行の方針に基づいて、特定の事業部門に関して、代表取締役の指揮および命令のもとに、具体的な業務執行に専念する者であるかが確認できること
●取締役会の議事録、人事発令書その他これに準ずる書類
- ・役員等の経験期間(3年等)が確認できること
【個別認定④-2、⑤-2】
●組織図その他これに準ずる書類
- ・被認定者の地位が、常勤役員等に次ぐ職制上の地位(役員の直下)にあり、当該常勤役員等から直接指揮命令を受けて業務に常勤で従事する者であることが確認できること
●業務分掌規程その他これに準ずる書類
- ・被認定者の地位が、常勤役員等に次ぐ職制上の地位(役員の直下)にあり、当該常勤役員等から直接指揮命令を受けて業務に常勤で従事する者であることが確認できること
- ・業務分掌規程等で確認ができない場合および社内規定等が無い場合等は、その他の追加資料(決裁文書・稟議書等)により(提出)、事業部門の業務内容の詳細が確認できること
*業務経験には役員としての経験も含まれますが、経験における地位・役職等の要件は求められられません。たとえば、事務担当者として従事した経験も含めることが可能です。
●人事発令書その他これに準ずる書類
- ・業務経験の期間(5年以上)が確認できること
2-4 建設業許可申請時の経管に関する書類
先ほど関東整備局の「個別認定申請時」で必要な書類を取り上げましたが、ここでは東京都における「建設業許可申請時」の必要書類を紹介しましょう。なお、書類の内容は提出先の行政庁によって異なるため、事前の確認が必要になります。
東京都の場合、書類は、本冊・別とじ・確認資料などで構成され、申請書、所定の用紙、資料などがそれらにまとめられて(とじられて)提出することになりますが、経営業務管理責任者の関係書類は以下の通りです。
●本冊
- ・役員等の一覧表
- ・営業所一覧表(新規・業種追加)
●別とじ
- ・常勤役員等証明書(経営管理責任者用) <施行規則7条イ該当>
- ・常勤役員等および当該常勤役員等を直接に補佐する者の証明書
- ・常勤役員等の略歴書 ※直接補佐者を置く場合は「別紙1」、ない場合は「別紙」
- ・常勤役員等を直接に補佐する者の略歴書 ※直接補佐者を置く場合のみ作成
●確認資料・添付資料
- ・常勤役員等の確認資料
- ・建設業法施行令第3条に規定する使用人の確認資料 ※様式第11号の提出時のみ
- ・役員等氏名一覧表 ※本冊の「役員等の一覧表」とは別の様式であるため注意
なお、確認資料の具体的な内容については東京都の建設許可申請の手引きのP55~57に以下のような内容が掲載されているのでご確認ください。
「(2)常勤役員等および直接補佐者の確認資料」
常勤役員等および直接補佐者を設置する場合、その全員について以下①~③の資料が各々必要です(更新申請においては③は不要)。
①【申請日現在での常勤性を確認できる資料】
(個人)他の事業者の社会保険へ加入していないことの証明として
- 1.健康保険証の写し
- 2.直近決算の個人確定申告書の写し
(法人)申請会社における社会保険への加入の証明として
- 1.健康保険証の写し(氏名、生年月日、事業所名の分かる有効期限以内のもの)
- 2.健康保険証に事業所名が印字されていない場合は、以下いずれかにより申請者への所属の分かる資料
*健康保険・厚生年金被保険者に関する標準報酬決定通知書、資格取得確認および標準報酬決定通知書や住民税特別徴収税額通知書、など
②【申請日現在において常勤役員等および直接補佐者の地位にあることを示す資料】
【常勤役員等】
●確認資料
(法人)役員であることを示す発行日が3カ月以内の登記事項証明書(「役員に関する事項」の分かる履歴事項証明書等)または権限移譲を受けた執行役員等であることを示す資料(株主総会や取締役会の議事録等)
(個人)他の事業者に在籍せず、事業主であったことを示す資料(個人確定申告書の写しまたは支配人である場合は、そのことを示す登記事項証明書(履歴事項証明書等)
【直接補佐者】
●確認資料
組織図等
③【経営等の経験について確認できる資料】
建設業の経営またはその補助、および業務経験の確認に当たり、各々の期間分の経験年数(1.)を積み重ねていることと、その期間が建設業に関して証明すべきものである場合、当該期間において、事業者として建設業の経営業務を管理していたこと(2.)を証明しなければなりません。
1.過去の経験年数を証明するものとして、証明期間分の以下の書類(詳細は「手引き」P56~を参照ください)
- イ(1)の常勤役員等:建設業に関し5年以上、役員であったことを示す登記事項証明書 等
- イ(2)の常勤役員等:建設業に関し5年以上、取締役会設置会社である場合に、権限移譲を受けた執行役員等であったことを示す資料(株主総会や取締役会の議事録等)(P57参照) 等
- イ(3)の常勤役員等:建設業に関し6年以上、経営業務の管理責任者に準ずる地位にあったことを示す資料(P57参照)
※(1)の常勤役員等:建設業に関し2年以上、役員または権限を委任された執行役員であったことを示す資料(イ(1)(2)と同様)。加えてこの期間と合わせて5年以上となるように、建設業に関して役員または役員等に次ぐ職制上の地位(財務・労務・業務のいずれかについて)にあったことを示す資料
※(2)の常勤役員等:建設業に関し2年以上、かつこの期間と合わせて5年以上となるように、役員または権限を委任された執行役員であったことを示す資料
直接に補佐する者:建設業に関し5年以上、申請会社で財務管理・労務管理・業務運営に携わる部署に在籍し、業務経験を積んだことを示す資料
*組織図、社員名簿、略歴書 等
2.証明期間において、建設業を経営していたことを証明する資料として、以下ア~ウ(詳細は「手引」P56~を参照ください)
- ア 証明期間において、建設業許可を有していた場合:
建設業許可通知書または受付印の押印された建設業許可申請書・変更届・廃業届等の写し - イ 証明期間において、建設業許可を有していなかった場合:
期間通年分の建設業に関する工事請負契約書・工事請書・注文書(原本提示)や請求書等の写し等 - ウ 大臣特認の場合はその認定証の写し(原本提示)
3 経営業務管理責任者の要件緩和
2020年10月1日に改正建設業法が施行され、経営業務管理責任者の要件が緩和されました。これまで確認してきた経営業務管理責任者の要件は、その改正された内容です。
ここでは経管要件の理解が進むように、改正でどう変更され、どのように緩和されたかついて確認しましょう。
3-1 経管の要件緩和の主な内容
この改正の主なポイントは、従来の経営業務管理責任者の許可要件に変更が加えられ、さらに、新たに「組織として経営業務の管理を適正に行う能力」という基準が導入された点が挙げられます。
つまり、経管の適否は、経営者などの個人に加えて、事業組織全体としての適切な経営管理責任体制を保有しているか、という点で判断されることになったと言えるでしょう。その主な改正ポイントは以下の通りです。
●主な変更点
- ・建設業許可の要件である「経営業務管理責任者」は、「常勤役員等」という名称が使用されることになった
- ・「建設業に関し5年以上経営業務の管理責任者としての経験を有する者」と規定され、「許可を受けようとする」部分がなくなった
⇒「許可を受けようとする建設業(業種)の経営経験」から「建設業での経営経験」に変更されたのです。
たとえば、とび・土工工事業2年+管工事業3年の経験や5年間の全ての業種が異なるという経験でも、改正により要件が満たせることになりました。とび・土工工事業の会社で5年の取締役経験を有する者が塗装工事の会社での経管になることも可能です。
また、改正前は「許可を受けようとする業種以外での経営経験は6年以上」必要でしたが、改正で「5年以上・業種は不問」となり1年短縮されたことになります。
●新たな導入要件
事業組織としての経営業務管理責任者の体制を確保する目的で、「一定の経験を有する常勤役員等+直接補佐者」という構成が導入されました。
これまでと異なる点は、建設業での役員経験が2年あれば残り3年は建設業以外の役員経験でも認められるという点ですが、この場合には申請会社に5年以上の財務・労務・運営業務の経験者を有する従業員の各補佐者(1人で複数兼務も可能)が必要となります(役員であることは不要)。
たとえば、
- ・A建設会社の総務部長(職制上役員に次ぐ者、財務管理を担当)の3年経験+A建設会社の常勤役員の2年経験を有する者
- ・X食品会社の常勤役員として2年の経験+Y建設会社の常勤役員として3年の経験を有する者
上記のどちらかに該当する場合、財務・労務・運営業務に関して5年以上経験者を有する従業員(その会社の)の各補佐者を置けば上記の者は経営業務管理責任者となり得るのです。新設法人での適用は不可ですが、5年以上操業している一定規模の企業などでは適用の可能性が広がるでしょう。
3-2 改正・要件緩和の注意点
経営業務管理責任者の許可要件が緩和された結果、改正以前の基準では、経営業務管理責任者に該当しなかった者が、今回の改正に伴う変更・導入で要件を満たせる可能性が拡大しました。
こうした機会を活かすためには、要件の内容を正確に把握して満たすかどうかを判断しなければなりません。条文だけでなく、国交省や都道府県の建設業許可の申請に関する手引きなどを参考にして理解を深める努力が必要です。
それでも分かりにくいと思える場合には行政書士などの専門家や行政に相談するのが望ましいです。また、経営業務管理責任者となり得る条件が拡大したため、それを満足していることを証明する確認資料等の準備の手間がかかる恐れも生じます。
なお、そうした資料は申請先の行政庁によって異なるケースも多いため、担当の行政庁やその地域の行政書士などに確認して準備することが重要です。
4 経営業務管理責任者の該当者がいない場合の対処法
改正により要件緩和が進みましたが、それでも要件を満足できない企業もおられるでしょう。経管の該当者がいない、経管がいなくなった場合などの対処法を説明しましょう。
4-1 経管の該当者がいない場合
経管となり得る者を確保するための最も単純な解決方法は、
- (1)経営者などが5年間の経営業務管理の経験等を有するまで許可申請を控える
- (2)要件を満たす者を雇う(招へいする)
の2つになります。どちらも時間がかかりますが、許可の取得が急がれる場合は(2)の選択になるでしょう。しかし、短時間に要件を満足できる適切な人材を確保するのは困難です。急ぎのあまりに適性を欠いた人材を採用すると経営に悪影響がおよびかねないため慎重に検討しなければなりません。
採用した人材に悪意があれば、入社後に自身の退職をちらつかせて経営を圧迫する行為に出ないとも限らないため、人材選定は一定の時間をかけて慎重に行いましょう。
求人広告等での募集のほか、経営者の家族・親戚・友人や関係会社などからの紹介により候補者を見つけ出すケースが多いですが、評判の良い人材派遣会社・人材紹介会社などに依頼するケースも少なくありません。
4-2 現在の経管がいなくなる場合
現在の経管が病気など一身上の都合により退職した場合に、後任者が直ぐに確保できなければ、要件欠如の状態となって許可の取消しを受けることになります(建設業法第29条第1項第1号)
そうしたケースが生じないように、事前に要件を満たす者を選任しておく、確保しておくなどの準備が必要となるのです。規模の大きな会社の場合は常勤役員等も多いため準備しやすいですが、規模の小さな会社や個人事業主などの場合は早めの一定時間をかけた準備が求められます。
小規模企業等で経管が欠如し、後任が用意できなければ廃業の危機に直面しかねないため、以下のような対策も検討しましょう。
- ・後継者等を取締役として登記しておく
- ・個人事業主の場合、家族・親戚等の中から適任者を支配人として登記しておく
- ・個人事業主から法人化して、後継者等を取締役として登記しておく
- ・個人事業主の親族を専従者として相当額の給与を支払い、青色申告決算書の専従者給与の内訳欄に記載しておく(準ずる地位としての「経管を補佐した」経験と認めてもらうため)
こうした対応について、申請する地域の行政書士等に相談しながら準備を進めるのが適切です。
5 まとめ
建設業許可を取得するための主な要件のうち、最も障壁になりやすいのが経営業務管理責任者の存在です。経管の要件が厳しいとの建設事業者の声から、これまで要件が少しずつ緩和されてきており、直近では令和2年の10月に建設業法が改正されました。
この改正により、経管の基準が経営者等の個人を対象とするほかに、新たに組織全体の管理体制を対象とする基準も加えられたのです。改正された要件内容の正確な把握は容易でないため、改正前の内容や要件を満足できる例なども参考にしてみてください。