建設業許可取得後の住所変更手続きとは
建設業を営む上で必須の建設業許可は、許可の取得後に会社住所などが変わると届け出の提出が必要になることをご存じでしょうか。建設業法で定められた期限までの届け出を怠ると、罰則があり、その後の建設業許可の更新にも影響が生じかねません。
事務所住所の変更をすると、引っ越し対応などで通常業務も煩雑になることがあります。そのため、届出を忘れる事態にならないよう手続きの概要と手順を把握しておく必要があります。
今回は、建設業者の住所移転にまつわる届出の概要と手続きとポイント、その他の届出必要事項などについて解説するので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
1 建設業の住所移転
建設業許可申請時に申請した情報に変更があった場合には、届出を行います。営業所を移転した場合には、届け出を行うことは共通していますが、その手続きは変更された実態に即して変わってきます。
- ✓移転が本店(主たる営業所)なのか支店(従たる営業所)か
- ✓移転前後で住所がある都道府県が変わったなど
1-1 住所移転の届出は30日以内に
変更届出を行うプロセスや手続きは異なってきますが、住所移転の届出の期限が30日以内であることは共通です。期限の誤認や忘れていると対応ができません。まずは、提出期限を必ず押さえることが大切です。
住所変更の届出対象は、登記上の本店所在地と営業所になります。そのため、本店所在地でも営業所でもない、建設現場の資材置き場や作業員のための仮設事務所などは設置・移転ともに届出の必要はありません。
●登記上の本店所在地
登記上の本店所在地は、会社設立時に登記した会社住所になります。詳細は後述しますが、本店住所を変更した場合には、登記住所の変更が事前に必要です。
建設業許可を取得する際に主たる営業所を登録しています。主たる営業所とは、事業者の中心的な営業所で、営業業務に加えて事業全体を管理・監督・指示する機能や権限を有する組織を有する営業所です。
建設業者が法人の場合には、登記されている本店所在地が主たる営業所の所在地と同一になります。一方で、建設業者が個人事業主の場合には、事業を行っていることが証明できる住所が主たる営業所になります。
●営業所
営業所の定義は建設業法に定められています。常時建設工事の請負契約の見積もりや入札、契約締結を行う事務所など、『建設業に係る営業に実質的に関与』するものを言います。
主たる営業所以外の営業所を、従たる営業所と言います。本店に対して支店の位置になります。主たる営業所は建設業許可時に必須で登録が必要になりますが、従たる営業所はあれば登録が必須ですが、従たる営業所はない場合もあり、ない場合には登録の必要はありません。
この主たる営業所と従たる営業所のどちらの住所がどのような変更かによって、変更更届出の方法が変わってきます。
●建設業許可の仕組み
建設業許可は、主たる営業所と従たる営業所の全てが一つの都道府県にある場合、都道府県知事が許可を行います。一方で、複数の都道府県に営業所がある建設業許可は国土交通大臣が承認します。
そのため、建設業許可を受けた都道府県からの移動ではなければ、変更届申請先は許可を受けた都道府県で行えます。
一方、以下のようなパターンでは建設業許可を出していた都道府県とは異なる申請先になり、手続きが単なる変更届出とは異なります。
- ✔︎主たる営業所のみ(他に営業所がない)建設業者が、営業所を今まで異なる都道府県に移動するケース
- ✓主たる営業所と従たる営業所の全ての営業所が同じ都道府県1つにまとまっていた事業者が、全ての営業所が丸ごと他の都道府県にまとめて移動するケースやいくつかの営業所が異なる都道府県に移動して複数の都道府県をまたいだ営業所が存在するようになったケース
1-2都道府県が変わらない場合
前述の通り、以下のパターンは住所変更の届出先は建設業許可の届出先と変わりません。
- ✓主たる営業所のみ(他に営業所がない)建設業者が、同じ都道府県内で移動する
- ✓主たる営業所と従たる営業所の全ての営業所が同じ都道府県1つにまとまっていた事業者が、同じ都道府県内で主たる営業所もしくは従たる営業所が同じ都道府県内で移動するケース
- ✓主たる営業所と従たる営業所が異なる都道府県にあり、建設業許可を国土交通大臣が承認している建設業者が、主たる営業所や従たる営業所の移動で複数の都道府県に営業所がある状態が継続するケース
上記のパターンの場合には、変更届を管轄する窓口に提出します。変更届を提出する動きは変わりませんが、主たる営業所が移転してかつ登記上の住所変更が必要になる場合は手続きが増えます。
●主たる営業所の移動のケース
法人の建設業が主たる営業所が移動する場合、建設業者としての主たる営業所の移転と同時に法人の登記上の本店所在地も移転することが多くあります。法人が建設業許可における住所変更の届出時点には、登記事項証明書を添付します。
この場合、登記事項証明書の本店所在地を変更する必要があります。もし、登記事項証明書の本店所在地を変更せずに建設業の変更届出を実施すると、主たる営業所は移転しているのにもかかわらず登記上の本店住所は移転していない状況となります。そのため、事実の不整合が発生します。
また、登記上の本社所在地が移転などによって変更された場合、20日以内の変更が必要です。そのため、スケジュールとしても登記上の本店所在地の変更登記を行った後に、建設業許可の主たる営業所の住所変更の届出を行います。
主たる営業所の移動でも、主たる営業所が登記上の本店所在地と一致しないケースもあります。具体的には、個人事業主の場合には登記はしませんし、法人であっても本店所在地と主たる営業所の住所が異なる場合もあります。会社設立から長く経過した法人は、創業時の住所を登記上の本店所から変更していない場合などがあります。
このような場合には、会社の登記事項証明書の本店所在地は事実上も登記上も移動していないことが正しくなります。そのため、主たる営業所が移動したことを証明できる書類も併せて添付します。この場合の証明書類は、新しい主たる営業所がある事務所の賃貸借契約書などが一般的です。また、自社ビルなどの自己所有の事務所に移転した場合にはその建物の登記簿謄本や直近の固定資産税納税通知書表紙と課税物件明細書コピーなどを提出します。
●従たる営業所の移動のケース
従たる営業所の移動に対する手続きも、登記事項証明書に登記されている支店に該当するかどうかで手続きが変わってきます。
従たる営業所を登記簿謄本に支店登記している場合、支店の登記住所変更が優先です。これは、主たる営業所と登記上の本店所在地と同じ理由です。
また、登記簿謄本に未登記の支店は移動した従たる営業所が入っている事務所の賃貸借契約書等を添付します。自己所有の事務所の場合には、前述の通り建物の登記簿謄本等を提出します。また、賃貸でも自己所有でもなく、個人が所有する住居などを法人が無償で借りている場合には、建物の使用貸借契約書の写しと承諾者への申立書が必要です。
1-3 都道府県が変わる場合
建設業許可を取得した事業者の主たる営業所がその許可を取得した都道府県と異なる都道府県に住所を変更した場合には、『許可換え新規』の申請が必要になります。
●許可換え新規とは
許可換え新規は、建設業許可の許可を承諾する者(=許可権限者)を変更するための申請です。許可換え新規は、新たに許可を申請・取得することになります。そのため、今までの建設業許可番号を引き継ぐことができません。また、新たな許可を取得した時点で、過去の許可は取消になります。
また、新たな建設業許可を取得するまでは今までの許可は有効になります。一方で、その新たな営業所で建設業許可が必要な行為はできません。つまり、住所を移転した場合には、過去の住所で建設業として営業することはできても、新しい営業所の住所で営業することができません。
主たる営業所は変わらず同じ住所で事業を行いながら他の都道府県に新たに営業所を開設する場合、許可換え新規の申請中は主たる営業所での営業行為は可能です。既存の建設業許可によって営業ができます。
一方で、新たに開設した営業所は許可換え新規申請によって新たに建設業許可を取得するまでは営業活動ができません。
許可換え新規が変更届と異なる点は、申請に手数料がかかる点です。許可権限者と取得する許可によって費用が変わってきます。一般的な方法は収入印紙を添付します。そのため、申請する際には事前に収入印紙の準備が必要です。
<建設業許可換え新規の申請手数料>
許可権限者 | 取得する許可 | 申請手数料 |
---|---|---|
都道府県知事許可 | 一般建設業または特定建設業許可どちらかを取得 | 9万円 |
一般建設業および特定建設業許可を取得 | 18万円 | |
国土交通大臣許可 | 一般建設業または特定建設業許可どちらかを取得 | 15万円 |
一般建設業および特定建設業許可を取得 | 30万円 |
●許可換え新規申請が必要なケース
許可換え新規申請が必要になるケースは以下になります。
- ✓主たる営業所のみしかない建設業者の、主たる営業所住所が許可時点で申請していた住所の都道府県から異なる都道府県へ移動する場合⇒新しく移動した先の都道府県知事が新たな許可権限者になります。
- ✓主たる営業所のみしかない建設業者が、主たる営業所がある都道府県以外の別の都道府県に従たる営業所を新たに設立する場合⇒2つの都道府県に営業所ができる状態となるため、国土交通大臣が新たな許可権限者になります。
- ✓建設業許可を国土交通大臣からの承認を得ていたが、営業所の統廃合・移動によって営業所の住所が1つの都道府県の身になった場合⇒まとまった営業所の住所がある都道府県知事が新たな許可権限者になります。
許可換え新規は、その手続きに必要な事項は新規の建設業許可とほぼ同じです。そのため、作業単位の手間は増えます。一方で、過去の建設業者としての実績を示すことができるため、純粋な建設業許可取得と比較すると建設号許可の取得は新規取得より簡易的な場合もあります。
都道府県を移動しただけであれば、過去に建設業許可を取得した際の提出書類一式を提出することで手続きが済む場合もあります。逆に、過去の建設業者として欠格要件に該当している事実がある場合には、許可を受けらえません。
2 届出の手続き
ここからは建設業者の移転などによる営業所住所の変更届出の手続きの詳細を解説します。
建設業の営業所住所変更の手続きは大きく、『変更届出の提出』と『許可換え新規』のどちらかの手続きをとることになります。
<建設業の営業所住所変更の手続き>
許可権限者 | 取得する許可 |
---|---|
対応方法 | 対応が分かれるポイント |
変更届出 | 建設業許可をした許可権限者に変更がないケース |
許可換え新規 | 建設業許可をした許可権限者が変更するケース |
ここでは、変更届出と許可換え新規の手続きの詳細を見ていきます。
2-1 変更届出の手続き
変更届出書は、提出先が各都道府県と国土交通大臣のそれぞれで異なります。しかし、その申請内容は大きく変わらず、変更届出書が都道県知事でも国土交通大臣への提出でも共通フォーマットを使用します。
変更届出書は、郵送または直接窓口に提出します。郵送の場合には、発送した日ではなく窓口の受付を実施した日になります。もし、住所変更から30日の期間が迫っている場合には、窓口に直接持っていくほうが確実です。提出先は、許可権限者によって異なります。
許可権限者 | 提出先 |
---|---|
都道府県知事 | 主たる営業所を管轄する市区町村が運営する土木事務所や行政庁主管課になります。 |
国土交通大臣 | 主たる営業所を管轄する許可行政庁(北海道開発局と各地方整備局)**になります。 |
許可換え新規 | 建設業許可をした許可権限者が変更するケース |
*詳細は、管轄する市区町村にお問い合わせください。
**許可行政庁の管轄都道府県や住所などは国土交通省のホームページ『許可行政庁一覧表』で確認できます。
●変更届出書(第一面)の提出
都道府県に変更届出書を提出する場合には、変更届出書と共に以下の添付書類を添付します。
- ✓商業登記簿謄本
- ✓変更のあった営業所の写真(ただし、閉鎖の場合には必要ありません)
主たる営業所の変更に伴う記載事項は、変更届出書の第一面を使用します。第一面に記載する事項は以下の通りです。
記載事項 | 内容 |
---|---|
宛先 | 変更届出書の宛先を記載します。例として埼玉県知事が許可権限者の場合には『埼玉県知事』と記載します。 |
届出者 | 届出を行う建設業者の住所/法人商号/代表者氏名の記載と法人印の捺印をします。(個人事業主の場合には、個人事業者の住所と名称と個人氏名と個人印の捺印をします。) |
許可番号 | 許可番号では、以下の事項を記載します。
|
許可年月日 | 建設業許可を受けた年月日を記載します。なお、建設業許可は5年で更新が必要になるため、変更届出を実施しようとするタイミングから5年以上前の建設業許可しかない場合には、期限切れになっていることになります。 |
届出事項 | 『営業所の所在地』と記載します。 |
変更前 | 変更する前の主たる営業所の所在地住所を記載します。 |
変更後 | 変更した後の主たる営業所の所在地住所を記載します。 |
変更年月日 | 住所が変更された年月日を記載します。この変更年月日から30日以内に変更届出の実施が必要です。 |
主たる営業所の所在地 | 建設業者の主たる営業所がある所在地の都道府県と市区町村名、番地以下を記載します。 |
主たる営業所の郵便番号と電話番号 | 主たる営業所の所在地の郵便番号と電話番号を記載します。 |
連絡先 | 担当者の所属部署名/担当者氏名/担当部署電話番号/担当部署FAX番号を記載します。 |
従たる営業所の変更に伴う記載事項では、主たる営業所の変更に伴う記載事項は同様に変更届出書の第一面を記載します。ただし、変更された営業所は従たる営業所になるので、『変更前』と『変更後』に記載する住所は従たる営業所のものになります。
それ以外に第二面があります。第二面は住所変更する従たる営業所について記載します。第二面にも許可番号などを記載する部分はありますが、記載すべき事項は変更届出書(第一面)と同じになるため割愛します。
記載事項 | 内容 |
---|---|
従たる営業所の名称 | 従たる営業所の名称とフリガナを記載します。例えば、『関西支店』などと記載します。 |
従たる営業所の所在地 | 従たる営業所がある所在地の都道府県と市区町村名、番地以下を記載します。 |
従たる営業所の郵便番号と電話番号 | 従たる営業所の所在地の郵便番号と電話番号を記載します。 |
営業しようとする建設業 | 従たる営業所で営業する建設業許可区分を住所変更の前後それぞれを記載します。 |
第二面は、複数の従たる営業所の情報を記載できるようになっています。しかし、変更があった従たる営業所の情報のみを記載します。複数の従たる営業所の住所変更する場合、1枚にまとめて記載できます。
●国土交通大臣への提出
国土交通大臣が許可権限者の場合でも、用意する書類は都道府県と同様です。ただし、提出先が異なり、許可を受けた許可行政庁(北海道開発局と各地方整備局)に提出します。許可行政庁の住所や所在地・電話番号などは、国土交通省のホームページ『許可行政庁一覧表』で確認できます。
2-2 許可換え新規の手続き
許可換え新規は、もともと建設業の許可を持ち建設業を営んでいた事業者が、許可をする権限者が変更になった時に行う手続きになります。
許可権限者が変更になるため、その手続きは変更届出を提出するだけで済んだ前述のやり方より大幅に必要書類が増えます。それでも、住所変更からの届出期限は30日で変わりません。また、提出後に許可が下りるまでには以下の標準処理期間が必要です。
<申請先別標準処理期間>
申請先 | 標準処理期間 |
---|---|
国土交通大臣への申請 | 120日 |
都道府県知事への申請 | 45日 |
標準処理期間とは、行政庁が定める処理に必要な標準的な期間になります。上記の期間には土日祝日は含まないため、国土交通大臣への申請は半年近い長い月日が必要になります。
そのため、許可換え新規の申請をする場合には、新たな許可が承認されるまでは今までの営業所で営業を行うことが一般的です。許可換えが必要になる場合には、その申請を先に実施して許可が下りてから営業機能を移動する手順をとれば営業活動を停める必要がありません。
許可換え新規の場合には、新しい許可が下りるまでは既存の許可は有効です。そのため、新しい許可が下りるまでは既存の営業所での営業を継続できます。
そして、新しい許可が下りた後にするに新たな許可が承認された営業所での営業を準備しておきます。一方で、新しい許可が承認された以降は、変更前の営業所での許可を必要とする建設業の営業行為はできなくなります。
営業所の移転をする際には、変更前と後の両方の事務所の開設実務もあり、多くの対応が必要になります。全体を総括してスケジュールならびにタスク管理を行う必要があります。
●建設業許可換え新規申請書と添付書類
許可換え新規申請に必要な書類は以下になります。記載方法や追加添付書類などが既存の事業状況に応じて発生します。必ず、事前に申請先の窓口に相談を行うようにします。
<許可換え新規申請書類一式>
様式番号 | 書類名称 | 内容 |
---|---|---|
第1号 | 建設業許可申請書 | 建設業許可換え新規になるので、既存の建設業許可について申請します。また、申請する建設業者の以下の基本場情報を記載します。
|
第1号(別紙) | 役員一覧表 | 代表者や法人取締の役職名称と氏名などを記載します。 |
同別紙2 | 役員一覧表 | 代表者や法人取締の役職名称と氏名などを記載します。 |
第1号 | 建設業許可申請書 | 建設業許可換え新規になるので、既存の建設業許可について申請します。また、申請する建設業者の以下の基本場情報を記載します。 |
同別紙2 | 営業所一覧表 | 主たる営業所と従たる営業所の名称・所在地等を記載します。 |
同別紙3 | 収入印紙など | 前述の申請に必要な料金分の収入印紙を添付します。 |
同別紙4 | 責任技術者一覧表 | 専任技術者の配属営業所名称と氏名と専任工事の種類を記載します。 |
第6号 | 誓約書 | 建設業許可の要件の一つである“欠格要件”に該当していないことを誓約します。 |
第7号 | 経営業務の管理責任者証明書 | 経営業務の管理責任者の氏名・住所・経営業務の管理の経歴年数などを記載します。また、その経営業務の管理責任者を証明する証明者の氏名・住所・捺印します。別紙で経営業務の管理責任者の経歴書が必要です。 |
第8号 | 責任技術者証明書 | 専任技術者の氏名・住所などを記載します。 |
第9号 | 実務経験証明書 | 専任技術者としての要件を実務経験で満たす場合に必要な証明書です。 |
第10号 | 指導監督的実務経験証明書 | 指導監督者の要件として4,500万円以上の建設工事に特定建設業の元請技術者の立場で2年以上指導監督的実務経験を証明のための証明書です。 |
第11号 | 建設業法施行第3条規定の使用人一覧表 | 支店毎の責任者の氏名・所在地などを記載します。 |
第12号 | 許可申請者の住所・生年月日などに関する調書 | 許可換え新規を申請する者の氏名・住所・生年月日・役職・賞罰などを記載します。 |
第13号 | 建設業法施行第3条規定の使用人住所・生年月日などに関する調書 | 支店の使用人(支店や営業所の代表者・支店長や営業所長など)の氏名・住所・生年月日・役職・賞罰などを記載します。 |
第14号 | 株主調書 | 建設業許可を受ける建設業者が法人の場合で、その法人における5%以上の議決権を有する者もしくは5%以上の出資を行っている者の氏名・住所などを記載します。 |
第15号 | 貸借対照表* | 建設業施行規則の規定に沿った財務諸表を提出します。 |
第16号 | 株主資本等変動計算書* | 建設業許可を受ける建設業者が法人の場合、その法人の純資産の変動を株主資本等計算書にまとめ、提出します。『注記表』と『付属明細書』を添付します。 |
第17号 | 株主資本等変動計算書* | 建設業許可を受ける建設業者が法人の場合、その法人の純資産の変動を株主資本等計算書にまとめ、提出します。『注記表』と『付属明細書』を添付します。 |
第20号 | 営業の変革 | 事業者の創業からの許可取得や更新状況、賞罰などの沿革を記載します。 |
第20号(2) | 所属建設業者団体 | 事業者が所属する建設業者団体について記載します。 |
第20号(3) | 健康保険などの加入状況 | 健康保険や厚生年金保険、雇用保険などの加入状況とそれを証明できる登録番号などを記載します。 |
第20号(4) | 主要取引の金融機関名称 | 取引を行っている金融機関を記載します。 |
*個人の場合には、第18号と第19号の建設業施行規則に則った財務諸表と損益計算書を作成します。
以上が、建設業許可換え新規申請書一式になります。これに加えて、以下の添付書類も必要です。添付書類は、各要件の証明になります。そのため、各添付書類が必要な証明に不足する場合には、証明書類の追加が必要です。
<許可換え新規追加書類>
書類名称 | 内容 | |
---|---|---|
1 | 経営業務管理責任者についての要件証明書類 | 証明書類は以下の書類になります。
|
2 | 代表者や法人取締の役職名称と氏名などを記載します。 | 専任技術者についての要件証明書類
|
3 | 身分証明書・登記していない証明書 | 身分証明書とは、申請者と役員となる人間が被後見人/被保佐人/破産者に該当しないことが確認できる書類で、対象者の本籍地市町村役場で取得できます。同じく登記されていない証明書を提出します。 |
4 | 定款* | 法人の根本原則が定められた『法人の憲法』と言える定款を添付します。建設業許可申請時にも確認された事項で、事業目的に建設業に関する事業が入っていることが求められます。 もともとの許可時点から定款に変更した部分が無ければ前回の時点で事業目的に建設業を行うことは定められています。一方で、建設業許可の業種が増えている場合にはそれらすべてが事業目的にて記載がある必要があります。 |
5 | 登記簿謄本の事業目的に建設業に関する事業が入っていることが求められます。また、許可がある全ての建設業の業種が含まれていることが必要です。 | |
6 | 納税証明書 | 許可権限者によって、添付書類が異なってきます。
|
7 | 社会保険などへの加入状況を確認する書類 | 社会保険への加入が証明できる書類を添付します。
①社会保険加入を証明する書類として以下の書類のいずれかを添付します。
②雇用保険加入を証明する書類として以下の書類のいずれかを添付します。 |
8 | 取引金融機関の残高証明書 | 自己資本が500万円を下回っている際に、取引金融機関に500万円を上回る残高を証明するために残高証明を添付します。 |
9 | 取引金融機関の残高証明書 | 主たる営業所ならびに従たる営業所を利用していることを証明する書類を提出します。 書類は、各営業所の所有または賃貸を示す以下の書類のいずれかが必要です。
<所有>
<賃貸> 賃貸している場合で、かつ有期限でありながら更新についての記載などがない場合には、継続性を確認できる書類の追加提出を求められる場合があります。 |
10 | 営業所の写真とフロア図 | 営業をしていることを示す各営業所の写真を提出します。写真は各営業所の以下の3つを示す写真が必要です。
提出する写真に枚数制限はないため、求められるものが示せるだけの多めの写真を提出します。 |
11 | 営業所所在地の略図書 | 営業所の所在やその最寄り駅からの道順など、各営業所の略図を提出します。 |
*申請者が法人の場合にのみ必要です。
必要書類ならびに添付書類の一覧を見て分かるように、許可換え新規は用意する書類が変更届出と比較すると圧倒的に多くなっています。
●許可換え新規申請提出先
許可換え新規の許可申請の提出先は、変更届出と同様で許可権限者によって異なります。
許可権限者 | 提出先 |
---|---|
都道府県知事 | 主たる営業所を管轄する市区町村が運営する土木事務所や行政庁主管課になります。 |
国土交通大臣 | 主たる営業所を管轄する許可行政庁(北海道開発局と各地方整備局)**になります。 |
*詳細は、管轄する市区町村にお問い合わせください。
**許可行政庁の管轄都道府県や住所などは国土交通省のホームページ『許可行政庁一覧表』で確認できます。
2-3 変更届出義務違反の罰則
変更届出を行わないことは建設業法に定められた義務違反となり罰則の対象であり、建設業許可の更新ができません。建設業許可をもって建設業を行うためには、変更届出は必須事項と認識しなければいけません。
●罰則
建設業法は、変更届出を義務化しています。届出すべき変更事象が発生しているにもかかわらず、届出をしないと罰則が課されます。
建設業法では「変更届の懈怠*(放置)」(第50条)で、変更届出の義務違反に対する罰則を規定しています。
ここで規定されている罰則対象は以下の2点です。
- ✓未提出
- ✓虚偽の記載
また、罰則は以下の2点のいずれかもしくは両方が科されます。
- ✓懲役:6か月以下
- ✓罰金:100万円以下
最も注意しなければいけないのは懲役刑が科された場合、建設業許可要件の欠格要件に該当する点です。欠格要件に該当すると、罰則以外に建設業許可の維持ができなくなります。
建設業許可の維持ができなくなるのは、具体的に以下のように建設業許可の取消とその後5年間の新規取得の制限があります。
- ✓現在の建設業許可が取消になります。
- ✓取消から5年間は新たな建設業許可を取得できません。
この対象は、取消になった建設業者の取締役全員が対象となります。つまり、変更届出の義務違反は建設業許可の取消となり、建設業の継続ができなくなってしまう可能性もありえます。また、欠格要件に該当した時点で取り消しになるため、事業が急にできなくなるため会社ならびにその会社に勤める従業員や取引先にも大きな影響が発生するリスクがあります。
*ケタイと読み、怠けるという意味です。
● 建設業許可の更新ができない
建設業許可は、5年に1回の更新が必要です。
更新時には、登録情報が正しいことが必須です。また、許可のあった5年間に以下の2点の実施が求められます。
- ✓申請内容と実態が合致していること
- ✓決算変更届出(5期分)が提出されていること
申請内容と実態の合致は、登録時の情報が正しいことと、そこから変更の届出事項に合致することが発生した場合には変更届出をする必要があります。
登録時の情報は各証明書を添付するため、正しく登録されることが一般的です。しかし、変更届出は建設業者側が正しく行動をしなければ登録がなされません。そのため、建設業許可の更新やその事前相談のタイミングで、変更届出を実施していないことが露呈することも少なくありません。
●外部の専門家の活用
変更届出申請書類作成ならびに手続きや行政窓口とのやりとりなどを行政書士等の専門知識を持つ外部のリソースを活用することも検討した方が良い場合も多くあります。
行政書士への相談などは許可権限者や依頼範囲によってその費用も異なりますが、概ね20万円前後からが相場になっています。
3 その他の変更届出
前述の通り、建設業許可を持つ建設業者がその変更届出の義務を果たさない場合には建設業許可の維持・更新ができなくなるリスクがあります。営業所の住所変更に伴う変更届出について説明をしてきましたが、変更届を申請する必要がある事項は他にも複数あります。
また、営業所の住所移動以外の変更届出についても期限や義務は変わらずあります。そのため、ここでは変更届出について解説します。
3-1 届出期限は3パターン
変更届出を提出するものは、期限と対象をあわせて把握する必要があります。期限は、3つのパターンしかありません。そのため、まずは期限の種類を頭に入れておくとその後の理解が簡単になります。
<届出期限>
期限 | 説明 |
---|---|
年1回(定期) | 事業年度終了変更届出を、決算終了後の4ヶ月以内に提出します。事業年度の変更は、毎年実施するため定期的な提出になります。 |
変更後2週間以内 | 建設業の変更事項の中でも重要な事項は、変更発生後2週間以内に届出が必要になります。ここに該当するのは、建設業運営における重要な人物の変更に関わる部分が該当します。具体的には以下の事項が該当します。
|
変更後30日以内 | 事業者組織に関する変更事項が該当します。 |
3-2 変更届出必要事項詳細
変更届出の期日が異なる3つのパターンのそれぞれの詳細を解説します。
●年1回(定期)の事業年度終了変更届
事業年度終了変更届は、期が締まる毎に提出が必要です。事業年度終了変更届は『決算変更届』とも言い、事業年度毎の工事実績や財務状況と言った事業状況を報告するための届出になります。
事業年度毎の決算報告は概ね以下の書類などを提出します。届出先によって若干内容は異なりますので、実際に提出の際には行政庁に問い合わせを行うようにします。
<事業年度終了変更届提出書類>
書類 | ||
---|---|---|
1 | 事業年度終了報告書表紙 | 表紙になります。 |
2 | 工事経歴書 | その期に受注・施行した工事について以下の事項を一覧に取りまとめて記載します。
|
3 | 事業年度終了報告書表紙 | 表紙になります。 |
1 | 工事施工金額 | 直近3期分の工事施工とその施行金額を記載します。 |
4 | 使用人一覧 | 建設業法施行令第3条に規定する使用人(従たる営業所の支店長や営業所長などの代表者)の職名や氏名などの一覧を作成します。 |
5 | 財務諸表 | 締まった事業年度の貸借対照表と損益計算書を提出します。 |
6 | 株主資本等変動計算書及び注記表 | 株主資本の変動を一覧で記載します。また、注記表では以下の事項を記載します。
株主資本等変動計算書は、貸借対照表や損益計算書と連動します。3つの書類共に全ての法人に作成が求められています。 |
7 | 事業報告書 | 事業報告書は、定時株主総会で株主に報告される書類になり、事業年度における会社の事業状況を報告する書類です。(本書類が求められるのは株式会社のみになります) |
8 | 付属明細書 | 株式会社が事業年度毎に作成する書類の一つになります。貸借対照表や損益計算書などの計算書類に係わり、計算書類の内容を補足する事実を表示するための書類になります。資産や引当金、販売費および一般管理費などの各項目についての明細などを記載します。 |
9 | 事業税納付済額証明書 | 納税を適切に実施しているかを示す書類になります。 |
10 | 健康保険などの加入状況 | 従業員の健康保険や厚生年金保険や雇用保険等への従業員の加入状況を記載する書類になります。 |
11 | 定款 | 法人でかつ求められた場合には定款の写しを提出します。 |
事業年度終了変更届は、上記の通り決算に係わる書類(財務諸表や株主資本等変動計算書及び注記表)があります。そのため、その提出期限は事業年度終了後の4ヶ月以内と提出期間は長めに設定されています。しかし、実際には決算を締めて、財務諸表などを作成して定時株主総会で承認を得る期間が必要となるため、実態として多く時間はありません。
また、決算書の作成が提出期間内に作成できない場合には届出ができないため、建設業者は決算を締めるために慎重なスケジューリングが必要です。
法人は概ね3月末が事業年度の締めである“決算月”になっていますが、事業年度は各法人で設定することが可能です。一方で、個人事業主は年度が1月1日〜12月31日に終了することが決められています。
提出された事業年度終了変更届は、誰もが閲覧をできるようになっています。これは発注者の保護を目的としています。提出された書類を確認すれば、その建設業者の経営状況や事業実績が明確に把握できます。また、仮に提出がなされていない場合、義務違反をしている事業者であることが明確になります。
なお、事業年度毎に提出が必要な事業年度終了変更届は各自治体でテンプレートや手引きがあるため、各事業者で作成が可能になっています。しかし、毎年の事である点や誤りがあると期限を超過するリスクがある点などを考慮して外部の専門知識がある行政書士などに依頼する建設業者もいます。
事業年度終了変更届を行政書士に依頼する費用は、法人や事業規模によって異なってきますが、5万円前後になります。
●変更後2週間以内の重要な人物に係わる事項
建設業許可を取得するために必要な人物がいます。その人物は、経営業務の管理責任者と専任技術者ならびに従たる営業所の支店長などになります。
経営業務の管理責任者は、法人おいては役員*に該当する役職で、建設業の経営業務を総合的な管理責任を担い、営業取引においては対外的に責任を有する地位にある人を言います。
また、専任技術者とは建設業法で定められた各営業所に対して専任出の配置が求められている『建設業に関する一定の資格または経験がある技術者』を言います。専任技術者は、建設業許可に基づく建設工事と請負契約が適切に契約されてその履行がされることを確保する役割を担います。
そのため、営業所に常勤することが求められ、見積もり作成や契約説明と締結や注文者からの依頼をやり取りする役割を担います。
経営業務の管理責任者と専任技術者は、建設業許可要件に含まれます。そのため、これらの役割を担う人物が退職すれば建設業許可が取り消される可能性があります。また、変更などがあった場合には、速やかにその内容を届出する必要があります。
建設業法施行令第3条に規定されている使用人とは、従たる営業所の支店長営業所長などになります。支店長や営業所長は、その営業祖の代表者としての役割ならびに権限を委任された責任者になります。
代表者の立場での業務を行うため、建設業法施行令第3条に規定されている使用人の立場で6年間の実務経験を積むことで経営業務の管理責任者になる要件を満たすことができます。
これらの、建設業の運営において重要とされる人物の変更などが発生した場合には、2週間以内に変更届出を行う必要があります。
*この場合の役員には執行役員や監査役や会計参与などは含みません。
●変更後30日以内 事業者組織に係わる変更事項
事業者組織に係わる変更事項は、具体的に以下の事項になります。
<変更後30日以内の変更届出期限事項>
1 | 商号 | 法人における会社の名称が商号になります。商号は法人の登記事項になります。 |
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2 | 営業所名称 | 営業所につけられた名称が変更になった場合には届出が必要です。 |
3 | 営業所所在地と電話番号と郵便番号 | 営業所の所在地や郵便番号、電話番号が変更になった場合には届出が必要です。一般的には、営業所の住所が移動すれば所在地や郵便番号や電話番号が変更になります。 一方で、所在地に変更がなく電話番号のみが変更する場合でも届出が必要です。 |
4 | 営業所の新設と廃止 | 営業所の新設と廃止についても変更届出が必要になります。 |
5 | 資本金額の変更 | 資本金額の変更があった場合には変更届出が必要になります。 |
6 | 支配人・役員の変更 | 登記された支配人や役員に変更があった場合には、変更届出が必要になります。 |
4 まとめ
建設業の営業所の移転などによる住所変更に伴う変更届出、ならびにその手続きやその他の変更届出必要事項について解説しました。
変更届出には義務があり、その義務を怠ると6ヶ月以下の懲役または100万円以下の罰金が科されます。また、最終的には建設業許可の取消や更新時の許可が下りないなどの事業継続に致命的な影響が発生する事態になりかねません。
変更届出が必要な事項をすべて把握し、それぞれの期限に間に合うように変更前の段階から必要手続きについて準備を怠らないようにすることが大切です。