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建設業許可を「10年以上の実務経験」で取得する方法と注意点

建設業許可を取得しようとするために必ず満たさなければならないのが“許可要件”(建設業法第7条)です。この許可要件の1つが専任技術者の設置(同法第7条第2号、同法第15条第2号)になります。

専任技術者は、建設工事を適切に契約締結と履行をしていくために、許可を受けようとする建設工事に対して必要となる専門知識を有している人を言います。また、専任技術者は営業所ごとに常駐することが求められるため、複数の営業所を開設していくためにはその営業所の数の専任技術者が必要となります。

では、どのような人が専任技術者になれるのかと言うと、一般建設業と特定建設業ではその要件が異なる上に、それぞれ要件は複数あります。その複数の要件の1つが、『10年以上の実務経験』になります。

しかし、専任技術者の要件である10年以上の実務経験があっても要件に満たないことがあります。そうなると、開設を予定していた営業所が出せないことや建設業許可が下りない事態になることもありえます。

そこで、今回は建設業許可要件と専任技術者、“専任技術者”になるための『10年以上の実務経験』と、取得後の専任技術者の注意点を解説するので、参考にしてみてください。

1 建設業許可と専任技術者

建設業を営む上で必要となるのが建設業許可になります。その建設業許可を取得・更新するためには、許可要件を満たしている必要があります。また、満たすべき要件を喪失すると建設業許可を維持することができません。

そのため、建設業を営む上で建設業許可の必要要件を理解・維持するよう留意することは必須と言えます。今回の解説のキーワードである“専任技術者”も、建設業許可要件のうちの1つです。

また、専任技術者は営業所に常駐が必要であるため退職などによって専任技術者が不在になる事態を回避しなければなりません。そのため、建設事業者には専任技術者の管理とあわせて、必要数以上の専任技術者資格者の雇用や既存従業員への専任技術者資格の取得促進などの対応が求められます。

1-1 建設業許可要件とは

建設業法は『公共の福祉の増進』を目的として、“建設工事の適正な施工を確保”と“発注者の保護”ならびに“建設業の健全な発達の促進”を実現するために1949年に制定されました。

建設業法第3条に基づき、建設工事を請け負うことを営業するには、民間工事も公共工事であっても建設業許可が必要です。そして、その建設業の許可を取得するためには、許可要件を満たす必要があります。

●建設業許可要件の背景/歴史

もともと、建設業法が制定された1949年は戦後復興需要に応じた形で建設業者が急増し、従来の建設業界に存在したバランスが崩れていきました*。その結果、以下のような問題が発生し、建設業全体の信用を失う状況となりました。

  1. ✓前払金の搾取
  2. ✓工事発注者による工事の請負代金の不当なダンピング
  3. ✓工事業者による不正工事

これらに対応するために、『登録制の導入』や『請負契約の原則の規定』『主任技術者の設置義務』などを定めた建設業法が制定されました。

その後も、社会と建設業界の変化に適応するために建設業法は定期的に改正を重ねていきました。その中で、昭和62年“建設業は、需要が低迷する中で競争が激化し、また、施工能力、資力信用に問題のある建設業者が不当に参入する”など、早急に解決すべき問題が複数発生している状況でした。

これらの当時の課題を解消するための改正が以下の3点になります。

  1. ✓指定建設業者の設定と、技術者を国家資格に限定
  2. ✓技術検定に関わる指定試験機関制度を導入
  3. ✓経営事項審査制度を導入

これらの改正により、建設業界全体の経営悪化や倒産の多発への対応と、施工能力や資金力や経営自体に問題がある不良事業者の参入を抑止することとなりました。

さらに、平成6年に管理技術者の専任制を徹底されるように、監理技術者資格者証を28業種に拡大される改正が行われました。

*建設業法の変遷などは国土交通省『建設業法の構成、変遷等』で詳細を確認できます。

●建設業許可要件

建設業の許可要件*は、過去の建設業界を取り巻く環境や建設業者の在り方について課題を解決するために求められた対応と言えます。そのため、建設業許可要件をクリアしない状況下では建設業許可が得られない仕組みになっています。

許可の要件は、建設業法第7条で定めた4つの許可要件に該当することと、同法第8条に定められた欠格要件に該当しないことが求められます。

≪許可要件≫

  1. ① 建設業に係る経営業務の管理を適正に行うに足りる能力を有する者(法第7条第1号)
  2. ② 専任技術者(法第7条第2号,法第15条第2号)
  3. ③ 誠実性(法第7条号第3号)
  4. ④ 財産的基礎等(法第7条第4号,法第15条第3号)

≪欠格要件≫

  1. ⑤ 欠格要件(建設業法第8条、同法第17条)

*建設業許可要件の詳細は、国土交通省のWebサイト『許可の要件』で確認できます。

●各許可要件の概要

専任技術者については後述しますので、それ以外の許可要件の概要を説明します。

①建設業に係る経営業務の管理を適正に行うに足りる能力を有する者

具体的には経営業務の管理責任者等(一般的には経管“ケイカン”と呼ばれています)の設置が求められます。

建設業は、地域の生活インフラを支える重要な産業であり、私たちの生活に欠かせない事業です。一方で、長期的にみると少子高齢化による就業者の高齢化・減少や事業者自体の減少など建設業には克服しなければいけない課題があります。

また、建設業が請け負う工事は工期が数年と長くなるものも多い上に、建築物のその後のメンテナンスの役割も担うため、建設事業者は継続性が求められます。そんな建設業の経営には3年から5年先を見据えた中長期的な経営ができる点などその経験に基づく安定した経営が求められます。

そのため、経営業務の管理責任者等の設置が建設業許可の要件に加えられています。経営業務の管理責任者等の設置の許可要件は、建設業の経営経験を申請業種の経営経験を5年(申請業種以外の経営経験なら7年)以上ある経営者を設置することを求めるものです。

経営業務の管理責任者等の設置要件は、建設業を5年以上長く経営できた経験を持つ人に新たに設立する建設業を任せることで中長期的な経営ができるようにするためと言えます。

③ 誠実性

建設業を営むためには、誠実性がないことを法律で規定されています。誠実性は、建設業法や関連する法律を遵守し、契約に対して不正や不誠実な行為を行わないことが求められます

このような誠実性を法律で規定している背景には、建設業者と仕事を依頼する発注者の間に信頼関係が不可欠であるためです。建設工事は、比較的工期が長く、工事請負代金も高額になり、工事請負代金の一部は前払いになるのが一般的です。

また、近年では耐震や防火など災害に対応し人命を守る機能が建築物には求められます。手抜き工事などにより人命に係る事故が発生した過去を繰り返さない、と言う社会的信用の構築のためにも法律上で規定しています。

建設業許可要件として誠実性は、支配人や支店長など工事請負契約の決裁権を所持する立場にある人に求められています

④ 財産的基礎等

財産的基礎は、建設事業の継続に必要な資金・財務力を有していることが求められます。具体的には、“請負契約を履行するに足りる財産的基礎又は金銭的信用を有しないことが明らかな者でないこと”と定められています。

建設業は、工事を実施するまでに資材や機器や工具の購入ならびに工事中には就業者の確保などが必要です。また、工事を受注するためには、営業活動なども必要です。

どの事業についても言えることではありますが、事業を開始しようとする時と事業が軌道に乗るまでには資金や資金調達力が必要です。建設業では安定した経営を実施するためにまとまった資金が必要であるため、建設業の許可要件に財産的基礎等を定めています。

請け負う工事の規模によって、必要とされる財産的基礎は異なってきます。特定建設業の工事規模は、一般建設業の規模より一般的には大きくなっていることに紐づいています。

また、特定建設業者は、下請事業者への発注した工事が引き渡し後50日以内に下請代金を支払いする義務を負うなど一般建設業とは異なる義務もあります。この義務は、特定建設業者が発注者から請負代金を受け取っているかどうかに関わらず義務の履行が求められます。

これらのことから、一般建設業と特定建設業ではその基準が異なります。

≪財産的基礎の比較≫

  一般建設業
一般建設業許可 ・自己資本*が500万円以上である
・資金調達力が500万円以上である
・資格取得をしようとする直前の5年間に建設業許可を所持して継続した営業実績を持ち、かつ現在も建設業許可がある
特定建設業(法人) 建設業許可申請を実施時から最も新しい貸借対照表**が下記に挙げるすべての条件に該当することが求められます。
・欠損の額が資本金の20%以下である
・流動比率が75%以上である
・資本金が2,000万円以上である
・自己資本が4,000万円以上である

*ここで求められる自己資本とは、建設業者が法人と個人で異なります。

法人:貸借対照表の『純資産の部』『純資産合計』の合計した金額になります。
個人:以下の計算式で算出できます。

“期首資本金”と“事業主借勘定”と“事業主の利益”から“事業主貸勘定額”を差し引いて、そこに負債の部である“利益留保性引当金”と“準備金”を加算します。

**定時株主総会にて承認を得ている貸借対照表が必要です。

⑤ 欠格要件

許可申請書と添付書類中に、以下の事項が該当する場合には許可されません。

  1. ✓虚偽
  2. ✓重要な事実の記載が欠けている
  3. ✓許可申請者や役員等もしくは第3条に規定する使用人が定められた規定*に該当する

*規定の代表的な事項は以下14項*になります。

  1. ・破産者で復権を得ない者
  2. ・一般建設業や特定建設業の許可が取り消された日から5年を経過していない者
  3. ・営業停止を命じされてから、その停止期間が経過していない者
  4. ・暴力団員などがその事業活動を支配する者など

*詳細は、国土交通省『許可の要件』にて確認ができます。

1-2 専任技術者とは

建設業の許可を得るためには、営業所毎に専任技術者を設置ならびに常勤させることが求められます。専任技術者の役割は、発注者から依頼を受けて工事に必要な技術的要素を考慮して見積書を作成し、その内容を発注者へ説明・協議し、契約の締結を行います。

発注者が工事内容について技術的もしくは見積もりなどの相談があるなど、必要に応じて質問に回答できるように一定の資格または経験がある専任技術者を営業所に常勤させることが求められます。

専任技術者は、他の営業所や他の業務や他の会社と掛け持ちは禁じられています。また、建設業許可を取得後においても専任技術者の常勤は継続して求められます。そのため、各営業所に専任技術者が不在な状態になると、許可の取り消し要件に該当してしまいます。

●専任性とは

専任技術者は専任性が求められます。基本的に、営業所が休みであるとき以外の営業時間中には勤務することが必要です。

そのため、建設業許可申請時には営業所に常に勤務していることを示す必要があります。許可申請書には営業所の住所はもちろんとして専任技術者の自宅住所を記載します。そして、営業所と自宅住所の距離が日々の通勤ができる距離かを確認されます。

具体的には、自宅から営業所までの通勤時間が概ね2時間を越えない範囲であるかなどでその常勤性を確認されます。(詳細は、建設業許可を申請する際に問い合わせをして確認します。)

もし、専任技術者の現住所が免許証などの本人確認ができる住所とで相違している場合には、申告の際には現住所を記載します。そのうえで、住所確認ができる書類*を確認したうえで提出します。

また、営業所に専属で従事していることを確認するためには、健康保険証を利用します。過去は社会保険に未加入な事業者も多くあった実態がありましたが、現在は社会保険の加入を建設業全体で推進しています。

特に申請する事業者が法人である場合には、一般的には専任技術者は社員雇用をしているため社会保険の加入は義務になります。提出を求められる用意を行って申請を行うことを推奨します。

一方で、申請する事業者が個人事業主の場合には、雇用する従業員数によって社会保険の加入義務が分かれます。義務がなくかつ社会保険に加入していない場合には、専任技術者の専属での従事を証明するために国民健康保険証を提出します。

*住所確認できる書類には、住んでいる建物の賃貸契約書や売買契約書や、水道やガスなどの公共料金の支払済領収書などになります。いずれにしても、申請窓口で事前に相談しておくことが必要です。

1-3 専任技術者の技術

建設業の取得しようとする許可によって、専任技術者に求められる技術は異なります

そのため、専任技術者として必要な技術の所有を証明する方法も異なります。具体的には、国家資格や登録証や免許証などで証明を行います。また、実務経験によってその必要とされる技術を証明することができます。

また、一般建設業と特定建設業でも専任技術者に求められる技術は異なってきます。

●一般建設業の専任技術者の技術的資格

一般建設業の許可要件に求められる専任技術者の資格は大きく以下の4つに分けることができます。

≪一般建設業における専任技術者資格要件≫

指定学科修了*+実務経験(高校卒業後5年以上または大学卒業後3年以上)
指定学科修了*+実務経験(専門学校卒業後5年以上)または実務経験と専門士(専門学校卒業後3年以上の実務経験があり、かつ専門士**もしくは高度専門士**を称する者)
建設業許可を受けようとする建設工事に関して10年以上の実務経験がある者
国家資格者***または複数業種に係る実務経験****がある者

*指定学科は、建設業許可を受けようとする建設工事によって異なります。詳しくは国土交通省のWebサイト『指定学科一覧』で確認することができます。

**専門士とは、専門学校の修業年数によって修了者に与えられる称号になります。専門士は2年制の専門学校の修了者に与えられる称号です。高度専門士は4年制の専門学校の修了者に与えられる称号です。

***専任技術者になることができる国家資格は、国土交通省作成『営業所専任技術者となりえる国家資格等一覧』で確認できます。

****複数業種に係る実務経験とは、建設業の実務において許可を受けようとする建設業だけを専業として実施したわけではなく、複数の建設工事を行ってきた者も多くいます。この複数の工事経験のある者に対してもその工事における主たる工事に係る実務経験を活かすための条項になります。

具体的な一例としては、大工工事業の複数業種に係る実務経験は以下のように定められています。

  1. ✓建設工事業および大工工事業を合計した実務経験が12年以上あり、その中で大工工事業に係る実務経験が8年以上である者
  2. ✓内装仕上工事業および大工工事業を合計した実務経験が12年以上あり、その中で大工工事業に係る実務経験が8年以上である者

これらの詳細は、国土交通省Webサイト『指定学科一覧(複数業種に係る実務経験を有する者)』で確認できます。

●特定建設業の専任技術者の技術的資格

特定建設業の専任技術者の要件は、一般建設業の専任技術者の要件と比較してより厳しく規定されています。

≪特定建設業における専任技術者資格要件≫

国家資格者*
指導監督的実務経験2年以上
一般建設業の専任技術者要件を満たしていることに加えて、建設業許可を受けようとする建設工事に関して発注者から直接請け負う形で実施する4,500万円以上の工事について指導監督的実務経験**が2年以上ある者
大臣特別認定者(建設省告示第128号対象者)
建設業法第7条第2号ハに規定されている上記2つの条件と同等以上の“知識および技術または技能”を有していると認定された者が対象となります。なお、大臣特別認定を取得しようとする場合には、建設業許可申請と並行して国土交通省への申請***を行う必要があります。

*国家資格は、国土交通省作成『営業所専任技術者となりえる国家資格等一覧』で確認できます。

**指導監督的実務経験とは、建設工事における設計から施工までの全体に対して工事現場主任や現場監督者などの資格をもって総合的に技術面を指導・監督した経験を言います。
なお、指定建設業の7業種(土木工事、建築工事、電気工事、管工事、鋼構造物工事、舗装工事、造園工事)は、実務経験による専任技術者資格要件が認められていません。

***申請には国土交通省総合政策局建築業課へ以下の必要書類をもって申請します。

  1. ・認定申請書
  2. ・履歴書(申請者)
  3. ・最終学歴卒業証明書(申請者)
  4. ・実務経験証明書
  5. ・会社パンフレットなど

2 専任技術者10年以上の実務経験の要件

専任技術者になるためには、『国家資格取得』もしくは指定学科修了を含めた『実務経験』が必要になります

専任技術者になるための要件である国家資格の取得や指定学科の修了は非常に明確です。取得しようとする専任技術者になるために求められる“国家資格の取得”または“指定学科の修了”をすればよいためです。

しかし、実務経験や必要期間の計算方法など定義の理解と証明方法について適切な対応が必要です。誤った対応をすると、必要期間が不足する事態や証明することができない事態となり得ます。

建設現場において、専任技術者の不足は経営課題の一つになっています。そのため、実務経験が豊富なスタッフを専任技術者に育てることができれば、事業拡大や新規の仕事受注につながる可能性を高めることができます。

2-1 実務経験の詳細

実務経験を理解する上で押さえたいポイントは、以下になります。

  1. ・実務経験の定義
  2. ・経験の期間計算方法
  3. ・経験の証明方法

●実務経験の定義

建設業許可で求められる実務経験は、許可を受けようとする業種の建設工事における職務経験になります。つまり、業種が一致していれば、どのような技術を活用していたのかは問われていません

建設工事の施工に関わった経験であれば、『現場監督』『職人』『見習い従事』などどの立場であっても問題ありません*。また、工事の現場だけに限らず、工事発注における設計技術者の立場で工事設計を行った実務経験も含まれます**。

逆に含まれないものとしては、建設工事の前段階における地鎮祭や施工式の準備などの雑務に分類されるものは実務経験に含められません。

*実務経験での立場に指定がないのは、一般建設業の専任技術者の場合です。特定建設業における専任技術者になるための実務経験要件には『指導監督的実務経験』の指定があります。

**建築士事務所における設計監理業務に従事した経験は含まれません。

●経験の期間計算方法

実務経験の期間は、指定学科修了の内容と有無によって、3年と5年と10年に分かれます。

≪必要な実務経験期間≫

実務経験10年 実務経験のみで専任技術者要件に該当
実務経験5年 高校卒業もしくは専門学校卒業があることで主任技術者要件に該当
実務経験3年 専門学校卒業かつ専門士/高度専門士を称する者があることで主任技術者要件に該当

また、上記の実務経験は業種ごとに分けて考えられます。具体的には、複数の業種にまたがって実務を実施していた経験であったとしても、経験は重複したものとしては認められません。

例を挙げると、大工工事と電気工事の両方の工事を重複して10年実務を積んでいた経験がある人がいるとします。(実際に工事を重複して実施している人はいます。)しかし、その人が大工工事と電気工事の両方の専任技術者になる実務経験10年を認められません。

この場合に実務経験10年を認められるのは、大工工事と電気工事のどちらか1業種になります。

・実務期間の積み上げ方

実務期間の積み上げ方は、統一されたルールがなく、各自治体が決めています。そのため、概ね以下の3つの積み上げ方が利用されています。

≪実務経験の積み上げカウント方法≫

  1. ①工事と工事の間隔が12ヶ月を超えていない場合には、実務経験としてカウントする
  2. ②1年間で1件代表する工事件名を記載することで1年間の実務経験をカウントする
  3. ③工事の工期に応じた実務経験のカウントをする

上記①、②については、非常に簡易的なカウントと言えます。また、③のカウント方法は厳格な方法で、他の二つより事前準備の精度が異なってきます。そのため、建設業許可申請の準備前に申請窓口などで実務経験期間のカウント方法は必ず確認するようにします。

・緩和措置

一部業種には実務期間について緩和措置がとられています。緩和措置の内容は以下の2つがあります。

  1. ✓一式工事の実務経験を専門工事へ振替
  2. ✓大工工事と内装仕上工事の実務経験の振替
  3. ✓一式工事の実務経験を専門工事へ振替

専任技術者になろうとする業種の実務経験が8年以上と、対象の一式工事の4年以上の実務経験専任技術者の要件に合致することになります。

できる業種と対象の専門工事の組み合わせは以下になります。

許可を受けようとする業種 対象の専門工事
コンクリート工事、しゅんせつ工事、水道施設工事、とび、土木工事 土木一式工事
ガラス工事、大工工事、熱絶縁工事、内装仕上工事、防水工事、屋根工事 建築一式工事

例としては、とびと土木とコンクリート工事のそれぞれ8年以上の実務経験がある上で、土木工一式工事における4年以上の実務経験があれば、とびと土木とコンクリート工事の専門技術者の実務経験10年以上の要件を満たすことが認められます。

  1. ✓大工工事と内装仕上工事の実務経験の振替

大工工事と内装仕上工事のみ、実務経験がどちらか1つの工事が8年、もう1つの工事が4年以上あることで、専任技術者の実務経験の要件を満たすことができます。

大工工事の専任技術者要件に合致 大工工事の実務経験が8年以上あり、内装仕上工事の実務経験が4年以上ある場合
内装仕上工事の専任技術者要件に合致 内装仕上工事の実務経験が8年以上あり、大工工事の実務経験が4年以上ある
大工工事と内装仕上工事の両方の専任技術者要件に合致 大工工事と内装仕上工事の実務経験がそれぞれ8年以上ある

●経験の証明方法

専任技術者の実務経験は、申請時に証明ができなければなりません。証明書類は、許可を取ろうとする業種に対しての実務経験が客観性と具体性をもった事実であることを証明する必要があります。

国家資格などを持っている場合は良い例です。その資格証や合格証の写しは、外部が発行している証明であるため客観性も具体性もある事実になります。これらの書類を用意すれば専任技術者になる要件を満たしていることが証明できます。

一方、実務経験の客観性と具体性をもった事実を証明することは決して簡単ではありません。過去10年間の実務を残っている書面を元に証明をしなければならないためです。

専任技術者になるための要件として、実務経験10年をもって申請する場合には以下の3つとなります。

≪専任技術者の証明に必要な書類≫

  1. ①実務経験の確認
  2. ②在籍の確認
  3. ③常勤性の確認
・実務経験の確認

実務経験は対象となる工事が、申請する業種の工事であることが明確になっていなければなりません。その上で、実務経験の確認のために利用できる書面は以下になります。

  1. ✓実務経験を積んだ工事の請負契約書
  2. ✓実務経験を積んだ工事の発注書と請負書一式
  3. ✓実務経験を積んだ工事の請求書と入金履歴一式

同じ事業者に10年間在籍して実務経験を積んでいて、その事業主が協力的に書類を用意してくれるような場合には、書類用意は比較的簡単です。経理資料や契約書などを保管していれば、必要書類を集めることで対応ができます。

実務経験の10年間の中で転職など異なる事業主に雇われていた場合などは、書類を用意する難度が一気に上がります。転職などは全て円満退社ではない場合もあり、過去の事業者から協力を拒まれてしまうケースやその事業者がすでに廃業しているケースなどもあります。

・在籍の確認

転職の場合にはその会社に在籍していたことを『年金被保険者記録照会回答票』にて証明する必要が出てきます。被保険者記録照会回答票とは、基礎年金番号に紐づいている年金加入履歴などが記載された書面であり、日本年金機構が発行しています。

この被保険者記録照会回答票には、年金加入期間中に勤務していた会社名が記載されているため、過去勤務していた会社での在籍を証明できます。被保険者記録照会回答票は、日本年金機構Webサイトもしくは年金事務所窓口やねんきん定期便専用ダイヤルなどから費用負担なく取得できます。

また、建設業許可申請時点で雇用されている場合には『雇用保険被保険者証』が求められます。また、同じく離職している場合には『離職票(雇用保険被保険者離職票)』が必要です。

離職票の交付手続きは、自身で実施できません。退職者を雇用していた事業主がハローワークに離職証明書を提出することで、ハローワークから事業主に離職票が交付されます。交付手続きが手間なので、直前に用意しようとせず、なるべく早く取得に向けて事業主への連絡を実施します。

その他、実務経験期間中に個人事業主として稼働していた場合には、所得税確定申告書(ただし、税務署受付印がある第一表と専従者給与もしくは給与支払者のどちらかの欄に内訳と氏名が記載されている書類が在籍の確認書類になります。

・常勤性の確認

常勤性は、原則本社や本店などで休日などの勤務することが必要ない日を除外して、一定の計画に則り毎日所定の時間に特定の職務に従事していることを指します。

常勤性の確認には、以下の書類を利用します。

  1. ✓健康保険被保険者証の写し
  2. ✓確定申告書…税務署の受付印が捺印された第一表が必要
  3. ✓住民税特別徴収税額決定通知書の写し*
  4. ✓住民票の写し(後期高齢者医療制度の適用者の場合のみ)

これらの書類は、一般的に補完していることが前提になりますが、書類は揃うはずです。

*住民税特別徴収税額決定通知書は、前年の所得から計算された住民税と特別徴収税の額が記載された書類です。地方自治体から事業主に送付される書類になります。

2-3 実務経験証明書の作成

実務経験証明書は、専任技術者の要件を実務経験によって証明する際に必要となる証明書になります。書類は、専任技術者となる者が積んだ実務経験を事業者が証明する書類です。そのため、国家資格保有によって専任技術者の要件を満たす場合には実務経験証明書の提出は不要です。

書類自体は提出先の自治体によって異なってきますが、その記載内容は概ね同じ事項になります。その中でも、留意点をまとめます。

≪専任技術者の証明に必要な書類≫

記入箇所 記入内容と留意点など
証明する工事の種類 建設業の許可取得申請を行う業種と同じ工事の種類を記入します。
日付 申請日を記入しますので、申請日が確定したら記入するようにします。
証明者 実務経験を積んだ事業者が証明者になります。証明者は、本店住所と事業名称(法人の場合には法人名)と代表者氏名を記入します。証明者は、原則被証明者=専任技術者の使用者*であることが求められます。もし、使用者の死亡や法人の解散などによって使用者が証明者になれない場合、使用者の証明ができない理由を相談の上、自己証明などの方法があります。使用者の証明ができない場合には、申請窓口で事前に相談を実施します。
証明者捺印 申法人の場合には登記している代表者印、個人事業主の場合には実印を捺印します。いずれの場合にも、印鑑証明を求められる場合があります。また、証明者が建設業許可申請者である場合には、その他の申請者印と同じ印鑑を使用してください。
被証明者との関係 被証明者は今回申請対象となる専任技術者になります。証明者と被証明者の関係性を記入します。申請時に雇用関係にある場合には『役員』『従業員』などと記載し、1人親方などで証明者と被証明者が同一の場合には『本人』と記入します。また、申請時に雇用関係がない場合には、『元従業員』などと記載します。
使用者の名称または商号 実務経験を積んでいた当時の使用者の名称や商号を記入します。個人事業主の場合には個人名称もしくは屋号登記を実施している場合には屋号名で記入します。
使用期間 被使用人の雇用期間を記入します。あくまで雇用期間であり、実務経験を積んだ期間ではない点には留意してください。
実務経験の内容** 試用期間内に実施した実務経験を記入します。工事件名と実務内容は具体的かつ客観的に分かるように記入します。
実務経験年数*: 上記実務経験の内容に応じて年数を記入します。なお、工事と工事の間隔が12ヶ月を超えない場合には連続した実務経験としてみなせます。

*使用者とは、法人の場合には代表者で個人の場合には事業主になります。

**実務経験の内容と実務経験年数には、前述の確認資料が必要になります。確認資料がない場合には、実務経験として認められないので注意が必要です。

3 専任技術者の留意点

建設業許可を取得して、実際に営業を開始した後も、専任技術者について留意する点があります。せっかく取得した建設業許可も、専任技術者が不在となると建設業許可の要件を欠くことになります。そうなると、専任技術者が不在となった営業所での営業ができなくなることや建設業許可の更新に支障などが発生します。

そのため、建設業許可の取得後にも専任技術者については十分に考慮した経営を実施する必要があります。

3-1 常勤性

専任技術者には、二つの常勤性が求められます。1つは、専任技術者の要件に必要となる実務経験を積んでいた期間に所属していた事業者での常勤性になります。そして、もう一つが建設業許可を取得後に求められる常勤性です。

建設業許可取得後に求められる常勤性は、建設業許可上の各営業所で専任技術者は常勤する必要があります。そのため、建設業の事業を行うにあたり常勤性が認められないケースを理解して該当しないようにしなければなりません。

≪常勤性が認められないケース≫

専任技術者の現住所が常勤している営業所住所との通勤距離が2時間以上かかるなど毎日の通勤が不可能と判断される場合
専任技術者が他の事業者の専任技術者になっている場合、ないしは同一事業者の異なる営業所の専任技術者を兼ねている場合
他の法令で特定の営業所などでの専任性が求められる者を兼ねている*場合(建築士事務所における管理建築士や宅地建物取扱主任者など)
専任技術者が他の事業を個人事業として営んでいる場合
専任技術者が他の法人において常勤の取締役となっている場合

*以下の場合には、専任性が認められます。

建設業許可を受けた営業所が他の法令で専任性が求められる事務所と同一の場所であり、かつこの事業が同一の企業体で経営されている場合

●常勤性の課題

常勤性が求められているため、建設業の事業拡大や事業継続に直接的な影響が出てきます。事業拡大を目指して新たな業種の許可を取得しようとする際には、その許可を取得しようとする業種の専任技術者が必要strong>です。

新しい事業を行う上で、その業種に必要な専門技術の習得が無ければ契約やその後の工事の完成度に影響が出てきます。そのため、建設業において専任技術者を配置することは必要な処置と言うことができます。

実際に、国土交通省が早期に検討すべき課題*として『監理技術者などの専任要件の見直し』をあげています。その背景には、大きな日本の社会情勢としての“生産年齢人口の減少”があり、技術者制度を取り巻く建設業界の現状として“建設業就業者の減少”や“若年層の高離職率に起因する技術者の高齢化による担い手不足”があります。そのために専任技術者の一部緩和の要請も挙げられています。

*参照:国土交通省『早期に検討すべき課題とその背景について』

●専任技術者のテレワークが可能化へ

国土交通省は、専任技術者のテレワークを認めるため、制度を改正する方向であることが報じられています*。新型コロナウィルスの感染拡大対策として、20年4月から開始されていた専任技術者のテレワークの特例措置が、標準的な勤務形態となれるように改正される方向で調整がなされています。

20年4月以降の特例措置においては、営業所にいる場合と同じ業務ができるテレワークであれば、その勤務も常勤性の要件を満たすことが規定されていました。

改正後も、営業所の専任技術者は契約内容の説明など対面での業務の必要性があるため、登録された営業所へ通勤圏内の必要な時に実際に営業所で勤務ができる場所でのテレワークを認める方向性です。

専任技術者のテレワークによる常勤性の一部緩和については、21年11月の第1回適正な施工確保のための技術者制度検討会(第2期)**でも課題の一つとして挙げられており、業界から緩和を要望する声に応えた形になります。

また、専任技術者には兼務特例があります。この兼務特例は、営業所に近接した現場で専任性が不要である場合には主任・監理技術者と専任着儒者の兼務ができます。関係業団体から、専任技術者のテレワークが認められるのと同時に、兼務特例における営業所と現場の距離要件の緩和を求めるなど引き続き要望を出していくことが予想されています。

建設業自体のテレワークは他の産業と比較するとあまり高くないと言う調査が2020年11月の東京商工会議所の調査によって発表されています***。この調査によると、建設業のテレワーク実施率は41%と全業種の中で最低の数値となっており、専任技術者のテレワークによる常勤性の緩和などが建設業のIT化を進めることが期待できます。

*参照:日刊建設工業新聞『国交省/営業所専任技術者のテレワーク可能に/標準的な勤務形態に、21年内運用開始』

**詳細は、国土交通省Webサイト『適正な施工確保のための技術者制度検討会(第2期)』ページで確認できます。

***東京商工会議所『テレワークの実施状況に関するアンケート調査結果』より

3-2 変更

専任技術者は、建設業の許可要件に該当しており、専任技術者の退職などが発生した場合には速やかに新たな専任技術者を立てなければなりません

もし、専任技術者を変更した場合には変更した日から2週間以内に届け出を行わなければなりません。変更届を怠ってしまうと『6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金』となります。また、変更届を提出していないと建設業許可の更新ができないことや経営事項審査の申請を受け付けられません。そのため、変更があった際には決められた期限内に届け出をしなければなりません。

●専任技術者の変更の届出が必要になる場合

専任技術者の変更の届出は以下に該当する場合に実施が必要となります。

専任技術者の欠員 死亡・退職・長期休養など
専任技術者の追加 営業所の新設や交替など
専任技術者の配置転換 専任技術者の配置転換などによる所属営業所の変更
専任技術者の氏名変更 結婚や離婚などによる氏名の変更
専任技術者の内容変更 登録している業種や有している資格区分の変更

●変更において具体的手続き

変更から2週間以内に必要書類を作成・提出しなければなりません。このスケジュールは不可能ではありませんが、初めての場合などは非常にタイトと言えます。

必要な書類は変更内容によって異なってきますが、基本的な書類は以下になります。以下、①~③は必ず必要な書類で、それ以外は変更内容に応じて必要な書類が異なってきます。

書類名称 必要条件
①変更届出書 全ての変更事項で提出が必要です。
②専任自技術者一覧表 全ての変更事項で提出が必要です。
③専任技術者証明書 全ての変更事項で提出が必要です。
④常勤性の確認書類 専任技術者の追加に際して必要です。
⑤専任技術者要件の確認書類 専任技術者の追加ならびに担当業種または有資格区分の変更に際して必要です。
⑥戸籍謄本・住民票など 専任技術者の氏名変更に際して必要です。

4 まとめ

今回の記事では、建設業許可に必要な要件の一つである専任技術者について解説を行いました。専任技術者は、建設業者と発注者との間の信頼をつなぐ非常に重要な役割を担っているポジションにあります。そのため、専門性や常勤性など信頼に足るだけのものが求められています。

信頼を勝ち得るのには、学歴や資格と同じく実務経験が重要です。同じ業種で10年間の実務経験があることは建設業界にとって人材です。そのような人のキャリアを活かす上でも、専任技術者として建設業界でハイパフォーマンスを発揮させられるためにも、証明方法や提出書類などの手続きをしっかりと理解しておくことが大切です。

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