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建設業法ってどんな内容? 現場に携わる人なら知っておきたい建設業法15のキホン

建設業は、作業する現場の人だけでなく、発注者・利用者・第三者に対し、最大限の安全に配慮をして業務を行う必要があります。しかし、安全・確実な作業を行う上で、法律・指針など一定のルールが存在することは重要です。

建設業に携わる人にとって、「どのように安全に配慮するのか」ということが事業側にとってもわかりにくくては不便ですし、場合によっては、罰則がないから手を抜いてしまおうというケースも想定し得ます。

そのため、「建設業法・各種関連法・ガイドライン」によって、様々な規制や建設業の規制に関するさまざまな法律の規制が存在し、また、実務者の指針ともなっているといえます。建設業法の規制は、とても量が多いです。専門家・建設業務の専任担当者であっても、国土交通六法や各種建設業などの手引きを確認しないと、把握しきれない面もあります。

この記事では、建設業法・その他関連業法で、特に押さえておきたいポイントを15点に絞り、解説するので、ご参考ください。

1 建設業法とは?全体像と押さえておきたい15のキホン

建設業法とは?全体像と押さえておきたい15のキホン

まず、建設業法の基本的なところについておさえてみましょう。そもそもなぜ、「建設業法」が存在するのかですが、まず過去の状況を表にしてみましょう。

建設業の過去の課題とは?

・以前は規制が薄かったため、反社会的勢力、ブローカー的業者・中抜き業者などの関与があったと言われている
・建設業は、業態の大きさ=力のため、中小の事業者や職人ほど、理不尽な要求でも従わざるを得なかった
・労働災害などが多く存在したり、昔は石炭・鉱山などの事故で重篤な負傷・障がいを負う人も相当いた
・建設の業務・支払いにかかる約束が曖昧で、口約束や、言った言わないの問題が生じることもありえた
・コスト削減のための手抜き工事が横行していたり、廃棄物の処理が適切になされないケースもあった
・きちんとした作業をしたり、財務状況が健全な事業者を明確にしたりなど、業者の客観的な健全性の基準がなかった
・中抜きなど中間搾取をなくす必要があった

など、この他にも多くの課題がありました。

戦後の復興期は、ともかく「建てよう!」の一辺倒でした。

ですので、工事をし、建設物を完成させることのみに目が行き、作業現場の安全や、建設物そのものの安全が後回しになってしまうこともあったかもしれません。

しかし、この状況が続くことは、さまざまな点で問題をはらみます。
建設業自体の社会的地位の問題、依頼者の保護、環境問題、現場に関わる人の保護など、様々な意味で、「規制」をすることで正しい方向に導く必要があったと言えます。

そこで、建設業法や関連法、ガイドラインでは、下記の点などに配慮しています。

・根本的に、建設業の業界全体を健全化する
・建設業界は、ピラミッド構造であり、どうしても上が強い、下が弱いという構図があるけども、元請けから下請けに対し、不当な要求がされないように規制が必要
・工事が適切に行われ、作業が安全にされ、利用者・労働者にトラブルや事故がないよう、しっかりと決まりを作る
・工事に関するプロセスや契約を明確に書面にすることを法律で義務づけ、あとで言った言わないを無くす
・きちんとした建設事業を行い、財務状況も健全な事業者を全国一律基準の、経営事項審査(経審)で評点付けをし、財務・構成役職員を評価し、健全かつ技術のある事業者を優遇する

他にも、さまざまな点が建設業法では定義されていますが、根本には、「建設業の健全な発展と公共の福祉の増進」の観点が存在するといえましょう。

もし、健全な発展と公共の福祉がないがしろにされ、下請け側が不当に安い金額での作業を要求されたと仮定します。

費用が少ないことにより、スキルが不十分な作業員による工事や、コストを見えない部分で削減した手抜き工事が横行して、結果施設の倒壊などで設備・施設利用者の安全や作業者の安全がおびやかされることも想定されます。

つまり、まわりまわって、利用者に不利益が出ることも想定されるのです。そのため、建設業の規制に関しては、様々な面で厳格になっています。

1-1 建設業法の全体像

建設業法の全体像

建設業界というのは、下記のような重層構造になっています。
(ピラミッドをイメージしていただけると、わかりやすいかと思います)

建設業者の重層構造

力の順 該当する事業者
頂点 スーパーゼネコンと呼ばれる建設最大手
2 ゼネコンと呼ばれる大手
3 地場の有力建設会社
4 地域の下請けの事業者
5 建設・水道工事・クロス貼りなどの専門技術を持つ職人
6 ガードマンなど直接建設に携わらない人

当然、上に行けば行くほど、受ける事業の規模も、金額も大きい反面、下に行けば行くほど、規模が小さい、現場労働重視という形になってきます。

建設業法は、特に下請けの事業者や職人などを保護する仕組みをつくる一方、各事業者に資金や人員、5年ごとの許可の更新などさまざまな手続きを行うことや書類作り、元請業者の下請け業者への教育などを要請しています。

建設業法関係の法令は、「建設業の健全化」という観点を含有するため、法律、規制の量が膨大です。

そのため、建設業法のキホンを15のポイントに絞って、解説していきます。

1-2 建設業を行うには許可を受けないといけない

構築物の建築については、簡易な倉庫など一部簡単なものであれば、許可が不要なケースもあります。

ただ、原則として、建設業を行うには、都道府県(2都道府県以上にまたがる場合は国土交通省)の許可を受ける必要があります。

なお、軽微な建設工事とは、下記3つの条件を全て満たすものです。

軽微な建設工事の条件 備考
建築一式工事にあっては、1,500万円に満たない工事 「請負代金の額」の算定にあっては、

  • ・2以上の契約に分割して請け負うときは、各契約の請負代金の合計額
  • ・注文者が材料を提供する場合は、その材料費等を含む額
  • ・単価契約とする場合は、1件の工事に係る全体の額
  • ・消費税及び地方消費税を含む額
延べ面積が150平方メートルに満たない木造住宅工事
建築一式工事以外の建設工事にあっては、500万円に満たない工事

カーポート設置などの簡単な工事であれば別ですが、建物・家屋などの建設になると、この範囲から外れるケースが多いと想定されます。そのため、通常建設業を行う場合は、都道府県知事・国土交通大臣より許可を得る必要があるものと考えておいた方がよいでしょう。

(許可手続きは、自社もしくは建設業の許認可に精通した行政書士に依頼するケースが多いです)

1-3 一般建設業と特定建設業の2種類が存在する

一般建設業と特定建設業の2種類が存在する

一般建設業と特定建設業についても表にしてみましょう。簡潔に言えば一般建設業の業態を大きくしたものが特定建設業と言えます。

一般建設業と特定建設業

一般建設業 特定建設業
建築一式工事にあっては、1,500万円を超える工事が可能 一般建設業の工事に加え、発注者から直接工事を請け負い、かつ4,000万円(建築一式工事の場合は6,000万円)以上を下請契約して工事を施工することが可能(ただし、下請けの事業者に関しては、特定建設業の許可は必要ない)
延べ面積が150平方メートルを超える木造住宅工事が可能
建築一式工事以外の建設工事にあっては、500万円に満たない工事

通常の建設業は「一般建設業」と定義されます。

一方、右のように規模が大きい「特定建設業」に関しては、より厳格な要件を満たす必要があります。

気を付ける点は、「発注者から直接工事を請け負う」という前提がある一方、元請けが発注者から請け負う金額に制限はないということです。そのため表でも触れておりますが、あくまで元請けが受けた仕事を請け負う、下請けの事業者に関しては、特定建設業の許可は必要ないということに留意する必要があります。

1-4 建設業の許可を得るには、いろいろ厳しい要件がある

建設業の許可を受けるためには、「4つの許可要件」を全て充足し、かつ、これに該当してはだめ、という「欠格事項」に全て該当しないことが求められます。

まず、4つの許可要件についてみていきましょう。

4つの許可要件

許可要件 詳細
経営業務の管理責任者を置くこと
  • ・法人→常勤役員のうち一人以上
  • ・個人事業主→本人か支配人のうち一人以上
  • が、経営業務に関して一定の実務経験を有することが必要
  • 具体的には、下記のどれかを満たすこと
  • ・許可を受けようとする建設業の業種に関して、5年以上、経営業務の管理責任者として関わった経験を有すること
  • ・許可を受けようとする以外の建設業以外の業種に関し、6年以上、「経営業務の管理責任者としての経験を有する」か「管理責任者に準ずる地位を有する」こと
  • ・許可を受けようとする建設業に関し、経営業務の管理責任者に準ずる地位にあり、かつ「権限委譲を受け5年以上の執行役員(肩書きは役員だが、従業員の側面も持つ)等として5年以上建設業の経営業務を管理した経験」か「6年以上経営業務を補佐した経験」
営業所に専任技術者を設置する 非常勤・他の業務と兼任などではダメで、あくまで営業所に常駐する専任技術者であること
誠実性があること 役員が下記に該当する場合は、誠実性の条件に当てはまらないとされる

  • ・建築士法、宅地建物取引業法等、建設に関する業務の規定により、不正または不誠実な行為を行ったことをもって免許等の取消処分を受け、その最終処分から5年を経過しない者
  • ・暴力団の構成員である場合または暴力団による実質的な経営上の支配を受けている者、反社会的勢力と密接な関与がある者
財産的基礎(自己資本額など)が要件を満たすこと 【一般建設業の場合】
下記の「いずれかに」該当すること

  • ・直前の決算において自己資本が500万円以上
  • ・500万円以上の資金調達能力があることとその証明書類
  • ・許可申請直前の過去5年間に国土交通大臣・都道府県知事の建設業許可を受けて継続して営業した実績のあること(更新の際)

【特定建設業の場合】
申請日の直前の決算において下記の「すべての」要件を満たすこと

  • ・欠損の額が資本金の20%を超えないこと
  • ・流動比率が75%以上
  • ・資本金が2,000万円以上
  • ・自己資本が4,000万円以上

なお、許可が取り消されるケースもあります。

許可が取り消されるケース
許可取得後、該当者が退職して後任がいない空白期間ができたことが判明した場合
労働災害事故で取り消しというケースはあまり見られないが、労働災害の隠蔽など、労災隠しのような悪質な行為が見られた場合
許可を受けようとする者が、欠格要件(書類への虚偽記載、重要な事実の記載の抜け落ち、その他建設業者として不適切な事項)に一つでも該当する場合
許可を得た後、営業所の所在地が覚知せず申出が30日間ない、管理責任者・取締役の懲役刑(執行猶予含む)などが確定した、他不適切な行為・事象など

上記のとおり、許可取得や更新、問題事項発生の際の取り消しなど、取得前・取得後とも厳しいチェックがあります。

1-5 工事現場には、主任技術者または管理技術者の配置が必要

工事現場には、主任技術者または管理技術者の配置が必要

工事を行う上では、現場に主任技術者または管理技術者を置く必要があります。

主任技術者 管理技術者
請負金額の大小にかかわらず必要 元請けで4,000万円(建築一式工事の場合は6,000万円)の場合
当初は上記の条件に当てはまらなかったものの、工事内容の変更や様々な理由で、管理技術者を設置する請負金額になった場合は、その際に管理技術者を配置する必要
主任技術者・管理技術者共に、建設会社との、直接かつ恒常的な雇用関係が要され、出向や派遣社員、短期雇用という形は認められない

1-6 専任の管理・主任技術者が必要なケースがある

建築物について、多くの場合、工事の安全かつ適正な施工を確保するために専任の管理・主任技術者の配置が要されます。

工事現場ごとに専任の技術者を置かなければならないケースと条件
公共性のある施設か、工作物、多数の者が利用する施設若しくは工作物に関する重要な建設工事。個人の住宅を除くほとんどの工事(公共事業・民間とも)
工事一件の請負金額が3,500万円(建築一式工事の場合は7,000万円)以上のもの
営業所の専任技術者などとの兼任はできない
原則は、1現場に1人主任者を配置する必要がある

1-7 現場代理人設置の必要性

現場代理人に関しても、要点をまとめてみましょう。
現場代理人は、公共工事で必要とされるポジションです。

現場代理人について
本来は法律で設置が義務づけられている存在ではなく、あくまで事業実施主体との契約に基づき設置されている
公共工事においては、契約上現場代理人を置き、工事現場に常駐させる必要
現場代理人の工事現場における運営、取締り及び権限の行使に支障がなく、かつ、発注者との連絡体制が確保される状態で、発注者が認めた場合においては、常駐を要しないケースもある。(テレビ電話など通信手段があること)

1-8 元請け・特定建設業者には厳格な責務がある

元請け・特定建設業者には厳格な責務がある

元請け・特定建設業者は、前にも述べたとおり、大規模な金額の工事を請け負う事業者です。責務については、下記の通りです。

・元請け・特定建設業者の責務
・下請け業者が、建設業法、建築基準法、労働基準法、労働安全衛生法などの法令に違反しないよう指導に努めなければならないという規定
・現場で事故が発生し、それが元請けのわからないところで下請けが起こしていた、という事故であっても、元請けの責任
・元請業者は、「全ての下請負人に法令の規定を周知」「法令違反に関する早期是正の仕組みをつくる」必要がある
・下請負人が指導に従わない場合、元請け事業者の責任で、行政庁にその旨を通報する必要があり、通報を怠ると、元請業者、つまり特定建設業者自身が、監督処分を受ける場合がある。

上記のように、元請業者は、下請け業者をきちんと管理していく責務を有しています。

1-9 公共工事の丸投げは全面NG!民間工事も原則NG

まず、大前提として工事の丸投げ、つまり請け負った業務をそのまま下請け業者に請け負わせる、「一括下請負」という制度は禁止されています。この一括下請負に関しても、表で整理してみましょう。

一括下請負について 備考
公共工事ではNGで、民間工事でも、発注者の書面による事前承諾がある場合を除き、丸投げはNG 丸投げをした側だけでなく、受けた側も監督処分の対象になる

さらに、丸投げ(一括下請負)の問題やペナルティについても整理してみましょう。

一括下請負の問題 具体例
なぜ一括下請負が問題か ・一括下請負が横行すると、ある大手業者が事業を受託し、そこから自分の利益を引き、そのまま下請けへ・・、と繰り返していくと、建設を依頼したクライアントや下請けの末端の事業者・職人の利益が大きく損なわれる
そもそも御社に頼んだのに、御社は何もせず下請けに丸投げとは!と建設業全体への不信を生じさせる
どの業者が責任を取るかが曖昧となり、トラブル時に誰が責任を取るのか、工事の手抜きなどが発生しうる
中抜き(中間搾取)を目的に、技術がないのに営業だけ強い、ブローカー業者が横行してしまい、不健全な業界になる
一括下請負に対するペナルティについて 国土交通省は丸投げ(一括下請負)に対し、「原則営業停止処分」という厳しいペナルティを設けている
経営事項審査でも、丸投げ分は実績に入れないとしている

1-10 施工体制台帳の完備

建設業者は、工事により、施工体制台帳の完備が義務づけられています。条件を整理してみましょう。

施工体制台帳について 備考
発注者から直接請け負った建設工事を施工するために締結した下請契約の総額が4,000万円(建築一式工事の場合は6,000万円)以上になる場合は作成義務づけ
  • ・公共事業・民間工事問わず、上記の要件に当てはまる場合は作成し、工事現場ごとに備え置く必要
  • ・公共事業の場合は、金額にかかわらず、受注した建設業者が下請契約をするときは、金額にかかわらず施工体制台帳を作成し、写しを発注元に提出する必要
なぜ施工体制台帳を作成するのか
  • ・元請業者がきちんと現場の施工体制を把握する必要があるため
  • ・施工上のトラブルを防いだり、不適切な業者の参入を防ぐため
  • ・一括下請負などの業法違反がないようにするため
  • ・安易な多重下請けを防ぐため
施工体制台帳の保存義務
  • ・工事終了後も5年間保存の義務(民間住宅は10年)
  • ・公共事業では写しの提出、民間工事では発注者から閲覧要求があった場合に、提示できる体制にしておく必要

1-11 見積もりの依頼の適正化

見積もりの依頼の適正化

建設業務にかかる契約においては、元請け・下請けという関係はありますが、対等な立場でなされる必要があります。

見積もり依頼のポイント 備考・具体例
大原則として、

  • ・見積もりの依頼は書面で(口頭はNG)
  • ・見積もりに当たっては具体的内容を提示

という点が求められる
契約書に記載することが必要な重要事項は、13種類と多岐にわたり、工事内容についても、最低限8つの事項が明示されている必要

工事内容(最低限の事項)
  • ・工事名称
  • ・施工場所
  • ・設計図書
  • ・下請け工事の責任施工範囲(どこまでやり、どこまで責任を負うのか)
  • ・下請け工事の工程及び全体工程
  • ・見積もり条件、他工種とどう関わるか、特殊部分など
  • ・施工環境、制約について
  • ・材料費、労働災害を防止する対策や産業廃棄物処理に関する、元請けと下請けの間での費用負担区分
契約書に必要な重要事項
  • ・工事着手及び完成時期
  • ・前金・出来高払いで支払いをする場合は、支払時期・方法
  • ・設計変更・延期・中止などの場合の変更・損害負担や算定方法に関する定め
  • ・天災その他不可抗力の際の納期・損害負担・算定方法
  • ・価格等の変動・変更に基づく請負代金の額・工事内容の変更について
  • 工事施工により第三者が損害を受けた場合(例えば、ビル工事をしていたら強風で看板が落下し、歩行者に直撃した)の賠償金負担の定め
  • ・注文者が資材提供や建機その他を貸与するときは内容、使用法に関する定め
  • ・注文者が工事の完成を確認するための検査時期・引き渡し時期(全部または一部)
  • ・工事完成後における請負代金の支払時期及び方法
  • ・工事目的物の瑕疵担保責任(つくったものに問題があったらどうするか)または責任の履行に伴う保険証券契約の締結を行うときは、その内容を記載
  • ・各当事者の履行遅滞その他債務不履行の場合における遅延利息、違約金、その他の損害金など、争いや工事の遅れ・現場の投げ出しが生じた場合どうするか
  • ・契約に関する紛争の解決方法
  • ・見積期間の規約や現場の説明など

また、合理的な根拠なしに、原価に満たない安い代金で下請け業者に工事を無理矢理押しつけることは建設業法違反となり、大きな問題となる恐れがあります。この点、元請け・下請け共に注意することが大切です。

1-12 請負契約書の重要性と帳簿の記載事項等

建設業というのは、大きなお金が動く業種となりますので、見積契約書だけでなく請負契約書他帳簿書類も重要な存在となります。

請負契約書について 備考
記載事項は上記の見積もりに近い内容
公共工事・民間工事とも、

  • ・契約書
  • ・注文書・請書+基本契約書
  • ・注文書・請書+基本契約約款

のいずれかの書面を作成し、元請け・下請けが相互に署名捺印するか、相互に上記の書類を交付しあう必要

帳簿の記載事項は、

  • ・営業所の代表者の氏名及びその就任日
  • ・注文者と締結した建設工事の請負契約に関する以下の事項
  • ・請け負った建設工事の名称、工事現場の所在地
  • ・注文者との契約日
  • ・注文者の商号、住所、許可番号
  • ・「注文者から受けた完成検査」の年月日
  • ・「工事目的物を注文者に引き渡した」年月日
  • ・発注者と締結した住宅の新築工事の請負契約に関する
    当該住宅の床面積
    建設業者の建設瑕疵負担割合
    発注者に交付している住宅瑕疵担保責任保険法人
  • ・下請契約に関する事項
    下請負人に請け負わせた建設工事の名称
    工事現場の所在地
    下請負人との契約日
    下請負人の商号、住所、許可番号
    下請工事の完成を確認するために「自社が行った検査」の年月日
    下請工事の目的物について「下請業者から引き渡しを受けた」年月日
請負契約書の保存義務 5年間の保存義務(新築住宅の場合は10年間)の保存義務
特定建設業の許可を受けている事業者が、一般建設業者に下請負をした場合に追加で記載が必要なケース
  • ・支払った下請代金の額、支払った年月日及び支払手段
  • ・支払手形を交付したときは、その手形の金額、交付年月日、手形の満期
  • ・代金の一部を支払ったときは、その後の下請代金の支払残額
  • ・遅延利息の額・支払日(下請負人から引き渡しの申出から50日を経過した場合に発生する遅延利息(年14.6%)の支払に係るもの)

台帳に関しては、より深く記載しようとすると、相当なボリュームになりますが、ざっくりと「さまざまな事項をあらかじめ決めておくことが必要なのだな」と捉えておいていただければと思います。

1-13 請負契約書の重要性と帳簿の記載事項等

元請け事業者と下請け業者の代金支払いトラブルに関して、国土交通省・都道府県ともに、厳しい目線を向けています。

下請け業者への代金支払いに関して 理由その他備考など
建設業法では、工事の適正な施工、下請負人が健全に事業を行うための利益保護を目的とし、下請代金に規定を定めている 代金が適正に払われなかったり、支払時期が不当に遅い、安い金額での買い叩き等のトラブルがあると、

  • ・建設現場のモラル低下
  • ・下請負人の経営への悪影響
  • ・手抜き工事・無理な予定や低予算による事故発生・遅延など様々なトラブルが想定されるため
注文者から請負代金の出来高払いまたは竣工払いを受けたときは、その支払対象となった工事を施工した下請負人に対して、相当する下請代金を1ヵ月以内(できるだけ早い期間内)に支払わなければならない規定 建設業は、材料・職人の工賃など先に出ていくお金も大きい。これが、「支払いは半年先ね、イヤならうけなくていいから」とされてしまっては、受注する事業者も相当な負担になり、最悪の場合、資金ショートで工事ストップや連鎖倒産ということも想定されるため
請代金はできる限り現金払い、手形の場合も120日以内で 原則として、請負代金の支払は現金(振り込み)で、手形を利用することはできるだけ避ける、現金・手形併用の場合でも、少なくとも労務費は現金で支払うこととされている
前払金を受けたときは、下請負人に対して、資材の購入、労働者の募集その他建設工事の着手に必要な費用を前払金として支払うよう配慮する必要 元請け人が既に前払いでお金をもらっている場合は、下請け業者に対し、材料費や人件費を先に払って、という規定。建設業の中でも、材料費・人件費は相当な量を占める。その中で、元請業者先にお金をもらいつつも、下請け業者には前払い金を払わないというのは酷なので、建設業法で明確に、「既にお金をもらっていたら、下請けにもお金を前払いするべき」
特定建設業者は、下請負人(特定建設業者または資本金額が4,000万円以上の法人を除く。)からの引渡し申出日から起算して50日以内に下請代金を支払う必要がある 特定建設業者の制度趣旨の一つは、特定建設業者という大きい事業者から、「下請け業者の中小・零細業者・職人の保護をすること」「大きな事業は、下請けにとっても動くお金も大きい」から、支払いがスムースに行われないと、下請け業者の経営に大きな影響、最悪の場合連鎖倒産など可能性も否定できない。そのため、特定建設業者については、注文者から支払いを受けたか否かにかかわらず、工事完成の確認後、下請負人から工事目的物の引渡しの申出があったときには、申出の日から50日以内に下請代金を支払うという規定を設定している

1-14 建設業者には、指導・監督など、ルール違反時の厳しい処分がある

建設業者には、指導・監督など、ルール違反時の厳しい処分がある

建設業は、行政による厳格な監視があり、大きく分けて「行政指導」・「監督処分」の2つのペナルティがあります。

国土交通省・都道府県によるペナルティをまとめます。

「行政指導」・「監督処分」の2つのペナルティ

行政指導 指導・助言・勧告 行政のペナルティの中では軽い部分に入る。行政から「これは問題ですよ」と注意が入るもの
監督処分(建設業者の経営にも関わる重い処分。処分業者名・内容の公表のほか、公共事業の指名停止措置などを受けることがある 指示処分 建設業法違反時の処分で、監督行政庁より命令を受ける
営業停止処分 指示処分に従わない場合、監督行政庁より営業停止処分を受けるケースがあるまた、一括下請禁止規定の違反や独占禁止法、刑法などの他法令に違反した、重大なケースの場合などには、指示処分を飛ばしていきなり営業停止処分がかけられることがある。営業の停止期間は1年以内。監督行政庁が判断して、決定
許可取消処分 建設事業を行う事業者にとっては、ある意味建設市場からの「退場処分」に等しい、重いペナルティ不正手段で建設業の許可を受ける、営業停止処分に違反して営業するなど、「行政庁を完全に裏切る行為をしている」ケースでは、監督行政庁によって、建設業の許可の取り消しがなされる一括下請禁止規定の違反や独占禁止法、刑法などの他法令に違反した場合などで、情状が特に重いと判断された場合も、指示処分や営業停止処分を飛ばして、いきなり許可取消処分となるケースがある

また、監督処分は官報、各種広報などで公告されたり、「建設業者の不正行為等に関する情報コラボレーションシステム」や地元の新聞などを通してあっという間に広まりますので、実質市場から退場、廃業を迫られるのに等しいと言えましょう。

1-15 建設業法で禁止されているNG行為

建設業法では、禁止されている行為を行うことで、監督処分を主体とした重いペナルティが下されるケースがあります。

建設業法の禁止行為 罰則
経営事項審査の虚偽記載 公共工事に関する経営事項審査書類(経審)に虚偽、不正があった場合、営業停止処分
施工体制台帳等の不作成 台帳、施行体系図の不作成や虚偽作成は、7日以上の営業停止処分
無許可業者との下請け契約 7日以上の営業停止処分

営業停止というのは、単純に一定期間営業をしてはいけないということだけでなく、今受けている仕事も「全部手放し、他に譲る」などしなければいけません。

たった1週間でも、営業停止処分を受けるということは、回っている仕事全てがなくなるわけです。それゆえに、建設業法で禁じられた行為は、くれぐれも行わないよう注意する必要があります。

1-16 経営事項審査(経審)とは

先に経営事項審査というワードが出てきましたが、そもそも経営事項審査は、業界内では経審(けいしん)と呼ばれています。

公共工事を受注する上で、経営に関する客観的な事項に関し、審査を受ける必要があります。

経営事項審査は、経営状況分析と、経営規模等評価の事項について、全国一律基準の数値評価で行われ、都道府県ごとにばらつきがでない仕組みとなっています。

経営状況分析は国土交通大臣の登録を受けた経営状況分析機関が審査し、経営規模等評価は建設業の許可行政庁が審査するシステムとなっております。

経営事項審査(経審)で確認される項目
(非常に複雑ですが、実務上は専門事業者に依頼するパターンが多いので、ざっと見ていただければ十分です)

経営規模(X) X1-工事種類別完成工事高X2-自己資本額(=純資産合計額)  平均利益額(利払前税引償却前利益=営業利益+減価償却費)
経営状況(Y) 純支払利息比率負債回転期間総資本売上総利益率売上高経常利益率自己資本対固定資産比率自己資本比率営業キャッシュフロー(絶対額)利益剰余金(絶対額)
技術力(Z) 技術職員数(業種別)工事種類別元請完成工事高(業種別)(CIIC・建設業情報管理センターなど外部機関が、全国統一の基準で認定を行う)
その他の審査項目(W) 労働福祉の状況建設業の営業継続の状況防災活動への貢献の状況法令遵守の状況建設業の経理の状況研究開発の状況建設機械の保有状況ISO登録の状況
総合評定値(P)が、各事項を踏まえて算出され、公共工事入札の評価対象になる。

数年ごとに改正が行われ、評価基準もその都度変化するため、詳細の説明は省きますが、点数が高いほど公共工事の受注等で有利となります。

2 まとめ

以上、建設業法の中で重要な15点に関して概要をまとめてきました。建設業は大きな産業である反面、規制も厳格で、一見事業者側からすると負担になることも多い側面が多くあります。

しかし、このような規定があることで、大手から中小・職人の方まで、円滑に建設業に取り組めるという側面もあるといえましょう。

建設業は、作ったものが何十年、時に百年単位で残ることもある、「日本のもの作りの本流」といえます。

メイド・イン・ジャパンの存在を確かにするためにも、規制の存在は、「いいものをつくり、適正にビジネスを行うためのルールだ」と受け止め、建設業法や関連法、ガイドラインを遵守していくことが大切といえます。

建設業許可申請が全国一律76,000円!KiND行政書士事務所:東京