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建設業許可の廃業届の提出方法は?

建設業許可を取得したあと、様々な事情で事業を廃業する場合や廃業事由に該当した場合は、廃業届を提出する必要があります。廃業届は、廃業時もしくは廃業事由の発生後30日以内に提出しなければならないため、正しい提出方法を確認しておくことが大切です。

この記事では、建設業許可の廃業届の提出方法、廃業届提出時の留意点等、廃業届の提出方法および注意点を解説します。また事業の廃業自体も視野に入れるケースもあるため、経営者保証ガイドラインという破産・民事再生をすることなく事業を廃業できる手法についてもご紹介します。

1 建設業の廃業届の提出方法・廃業になる事由は?

建設業は、国土交通大臣または都道府県知事の許可を受け行う仕組みとなっています。そのため、建設業を廃業する際にも「廃業届」の提出義務があります

廃業したことに関しては、国土交通省や都道府県のホームページ上やその他の方法で公開される一方、廃業届の未提出はペナルティの対象になることもあるため、注意が必要です。

1-1 建設業許可の廃業届提出が必要なケース・必要資料

建設業許可の廃業届が必要な主なケースは、自主的に廃業、建設業許可を返上し規模を縮小、支店撤退・許可業種を減らす場合と、様々な事情で事業自体を廃業せざるを得ないケースの2パターンです。

意外と誤解されがちですが、建設業自体を辞める以外のケースでも、上記の通り事業縮小などで廃業届を出すことも少なからずあります。そのため、廃業届提出=建設業の業務事態を辞めるというものではありません

自主廃業のケースは、廃業時に管轄の国土交通大臣もしくは都道府県知事に廃業届を提出するだけです。一方、廃業の届出事項に該当する場合は、該当した日から30日以内に廃業届を管轄の国土交通大臣もしくは都道府県知事に提出する必要があります。

注意すべき点は、建設業許可を取得した後、有効期限を過ぎたにもかかわらず更新も廃業もしないケースです。

特に更新をする必要もないから、そのままでいいと考える事業者もあるかもしれません。しかし、更新をせず放置、結果として建設業許可の抹消という事態に至ると、今後改めて許可を取得しようとした際に、許可取得の制約になってしまう可能性が高くなります

仮に業況が良くなり、再度建設業許可を取得しようとした際に、許可取得に影響が出たり、建設業許可の期間や実績が認められないということも起こりえます。

そのため、有効期限が切れるからそのままでいいと放置しておくのではなく、きちんと手続きを行うことが必要です。

なお、確認資料の印鑑証明書、商業登記簿謄本、履歴事項全部証明書は発行後3か月以内のものである必要があります。

ちなみに、令和3年1月1日の押印手続廃止に係る建設業法規則改正を受け、印鑑証明書は「原則」不要となりました。

ただし、廃業届の提出時の本人確認資料として提出を求められるケースはありえます。そのため、廃業届を提出する前に、担当窓口に実印・印鑑証明書の必要性を事前に確認することが望ましいと言えます。

廃業の届出が必要になる事項 届出を行う事が必要な人・企業 確認資料
許可を受けた個人の事業主が死亡したとき 個人事業主の相続人(例:配偶者、直系尊属、子) 届出者の印鑑証明書および戸籍謄本(個人事業主の死亡および届出者が相続人であることが確認できるもの)
法人が合併により消滅したとき 法人の役員であった者(代表取締役・取締役など) 役員個人の印鑑証明書および当該法人の役員であったことが分かる商業登記簿謄本または閉鎖登記簿謄本、閉鎖事項全部証明書
会社が破産手続開始の決定により解散したとき 原則として破産管財人(破産手続を終了している場合は上記2の要領による) 1 裁判所発行の「破産管財人および印鑑証明書」または2 裁判所発行の「破産管財人資格証明書」および破産管財人本人の印鑑証明書
法人が合併または破産手続き開始の決定以外の事由により解散したとき 清算人 当該法人の清算人であることが分かる商業登記簿謄本または履歴事項全部証明書および法務局に登録済の清算人の印鑑証明書
許可を受けた建設業を廃止したとき <法人>代表者(申請人) 原則不要
ただし、商号、所在地、代表者氏名および代表者印に変更があるときは事前に変更届を提出(代表者印変更のときは、印鑑証明書を提出)
代表者(申請人)以外の役員(上記代表者で届出できないとき) その役員個人の印鑑証明書および当該法人の役員であることが分かる商業登記簿謄本または履歴事項全部証明書
<個人事業主>本人 原則不要
ただし、住所、氏名に変更があるときは事前に変更届を提出

なお、ここで定義されている役員は、持分会社の業務執行社員、株式会社の取締役、委員会設置会社の執行役または法人格のある各種の組合等の理事等を指します。

上記以外の書類でも、直近の申請・届出で法人番号が未確認の場合、提示資料として法人番号指定通知書の写しまたは国税庁法人番号公表ページでの検索画面コピーが必要となるケースがあります。

加えて、上記に示された各確認資料は、「一般的なケースで最低限必要とされるもの」となっています。提出された資料で確認ができない場合は、更に他の確認資料が必要となることについて、留意しておく必要があります。

1-2 建設業の廃業届の期限について

前述の通り、廃業事由に該当した日から30日以内が廃業届の期限です。長崎県など複数の県では、変更届の提出遅延があると、「なぜ遅れたか」という遅延理由を記した始末書を提出するケースがあることに加え、事情によっては罰則など、遅延によるペナルティが発生する可能性があります。

始末書を記載する場合は、都道府県で所定様式がある場合はそれに沿うように記入、自由記入の場合は、始末書に必要な要素を織り込んで記入する必要があります。

  1. ●社名、代表者名で今回の事態に対する謝罪の言葉を記入
  2. ●遅延理由、経緯などを、時系列で記入
  3. ●今後同じようなことがないようにすることを宣言、一部廃業などの場合は今後の防止策など、これからは同じような不備は起こしませんということを明確に宣誓
  4. ●改めて謝罪の言葉を記入

以上の通り、廃業する場合でも、今後も一部の建設業を行ったり、建設業許可業者ではなくなるものの、建設業の軽微な仕事を行っていくケースなどでは、特に今後のためにも、きちんとした始末書を記入することが重要です。

そのためには、廃業届が必要になった場合、できるだけ早く準備を行い、期限通りに提出することが大切です。

1-3 廃業した事業者は公開、法人化で個人が廃業するケースも

建設業の登録を行うと、国土交通省もしくは都道府県のサイトで公開されるのと同様、廃業時も各種事項が公開されます。

公開される内容は、以下の通りです。

  1. ●処分をした年月日
  2. ●許可番号
  3. ●商号または名称(代表者名)
  4. ●代表者氏名
  5. ●主たる営業所の所在地
  6. ●全部廃業または一部廃業
  7. ●取り消した許可

なお、下記のような注記もされており、決して問題があって取り消したわけではないことや、軽微な工事はできること、一部の業種だけ廃業した場合は、取り消していない業種は引き続き行えるなどの注記がなされています。

  1. ●廃業届とは,建設業許可の要件を欠いた場合に許可を有する業者等が許可行政庁へ提出するもので,これが提出されることにより,許可行政庁は満了日を待たずに建設業許可を取り消します。したがって,違法行為等に基づく許可取消とは異なります。
  2. ●掲載されている建設業者は,建設業許可の要件を欠いた建設業者であり,事実上の営業を継続している業者も含まれます。建設業法上,建設業許可が無くとも軽微な建設工事(工事1件の請負金額が500万円に満たない工事(建築一式工事であれば1,500万円に満たない工事または延べ面積が150平方メートルに満たない木造住宅工事))を行うことはできます。
  3. ●掲載されている建設業者には,一部廃業した業者(建設業許可の29業種のうち,一部の業種について許可要件を欠いた業者)も含まれます。したがって,取り消していない許可業種については引続き許可を有しています。

また、個人業で許可を受けた方が、その後、法人(会社)を設立した場合は、個人業の廃業届の提出とともに、改めて法人としての新規許可申請が必要です。そのため、「法人化するので建設業を廃止する」というケースが少なくないことに関しても留意する必要があります。

1-4 借金があって廃業できないという時の制度

建設業を経営する社長・個人事業主の中には、廃業に関して「辞めたいけれども借入があるから辞められない」「自身が会社の借入の連帯保証人になっている」「自身が建設業経営のために借り入れしている」など、様々な事情で事業を高齢になっても続けている方もおられます。

「事業を廃業したいが、借入が多くあり、すぐには返せないため事業を続けている」というケースに関して、「経営者保証に関するガイドライン」という制度が存在します。

この制度は、経営者の個人保証について、下記の通り扱うことで、多額の個人保証がある事業の事業再生や円滑な廃業を支援できるようになっています。

  1. 1.法人と個人が明確に分離されている場合などに、経営者の個人保証を求めないこと
  2. 2.多額の個人保証を行っていても、早期に事業再生や廃業を決断した際に一定の生活費等(従来の自由財産99万円に加え、年齢等に応じて約100~360万円)を残すことや「華美でない」自宅に住み続けられること
  3. 3.保証債務の履行時に返済しきれない債務残額は原則として免除すること

上記を定めることにより、経営者保証の弊害を解消し、経営者による思い切った事業展開や、早期事業再生等を応援する仕組みです。第三者保証人についても、上記2と3については経営者本人と同様の取扱いとなります。

なお、経営者保証ガイドラインを利用する際は、下記の条件を全て満たす契約にのみ適用されます。

  1. ●債務者が中小企業であること
  2. ●保証人が個人であり、主債務者である中小企業の経営者等であること
  3. ●主債務者である中小企業と保証人であるその経営者等が、弁済に誠実で、債権者の請求に応じて負債の状況を含む財産状況等を適切に開示していること
  4. ●主債務者と保証人が反社会的勢力ではなく、そのおそれもないこと

「経営者保証ガイドライン」は、企業だけでなく、個人事業主にも適用されるため、個人事業の親方や一人親方であっても活用できます

この経営者保証ガイドラインに関して、新規に対する融資の扱いと、既存の融資や連帯保証に対する扱いの2パターンがありますが、廃業に関わるのは、既存の融資の部分となりますので、この「既存の融資」における廃業に関する扱いを整理します。

ガイドラインによる保証債務の整理は、主債務者が事業継続を図る場合、廃業等により清算を行う場合のいずれの場合にも利用することができるようになっています。廃業の際に、大きな借入があっても、破産手続を用いない方法で整理を行う事ができる可能性があります。

通常の破産、および経営者の自己破産の場合、以下のデメリットが生じます。

  1. ●信用情報機関に事故情報が掲載され、5年~10年借入ができなくなる
  2. ●家や車など多くの価値を持つ財産は処分される
  3. ●官報に住所・氏名が掲載される
  4. ●当然クレジットカード契約、分割契約、携帯の割賦契約などは極めて難しくなる

その他にも、社会的に「破産した人」というイメージを持たれますので、対外的にも非常に辛いものがあります。

一方で、ガイドラインを利用した保証債務の整理では、経営者保証を行った経営者に対しては、以下のようなことが認められます。

一定期間の生計費や華美でない自宅を残すことを債権者である金融機関に申し出ることが可能になります

保証人である経営者が早期に事業再生や清算の決断を行い、債権者である金融機関にとって一定の経済合理性が認められる場合には、経営者の申し出を受けて経営者の手元に残せる残存資産に一定期間の生計費に相当する額や、華美でない自宅を含めることが、金融機関により検討されます。

このほか、一定期間の生計費は、標準的な生計費(1カ月33万円)を、雇用保険の給付期間(90~330日を月換算)に掛け合わせた額が基準となり、自己破産で手元に残せる現金99万円よりは、大きな額が手元に残せます。

なお、自宅が店舗・事務所を兼ねていて資産の分離が難しい場合でも、事業継続等に必要な「華美でない自宅」を残すことが、債権者である金融機関により検討されます。

また、保証債務の履行時に返済しきれない債務残額は原則として免除することとされるため、後の心配をせずに廃業できます

実際の手続に関しては、下記のステップとなります。

  1. 1.取引をしている金融機関や近くの中小企業基盤整備機構地域本部、商工会・商工会議所等へ問い合わせ
  2. 2.支援専門家(弁護士・公認会計士・税理士等)への相談
  3. 3.一時停止(返済猶予)の要請(全ての金融機関に同時に要請)
  4. 4.弁済計画の策定

1-5 経営者保証ガイドラインに関する疑問と回答

「経営者保証ガイドライン」について、「このケースの場合は適用できるのか」など、いろいろな疑問が出てくると思います。

実際に事業全体の廃業を前提として、全国銀行協会が出しているQ&Aをベースに、経営者保証ガイドラインを活用したいと思う方が疑問に思うであろう部分をまとめます。

Q 「中小企業・小規模事業者等」は、どのような者が含まれるのか。また、「個人事業主」は含まれるのか。

A ガイドラインの主たる対象は中小企業・小規模事業者とされているが、中小企業基本法に定める中小企業者・小規模事業者に該当する法人に限定していない。その範囲を超える企業等も対象になり得る。また、前述の通り個人事業主についても対象に含まれる

Q 「経営者」の具体的な定義は?

A 経営者は、中小企業・小規模事業者等(以下「中小企業」という。)の代表者をいうが、以下のような者も含まれる。
・実質的な経営権を有している者
・営業許可名義人
・経営者と共に事業に従事する当該経営者の配偶者
・経営者の健康上の理由のため保証人となる事業承継予定者等
そのため、必ずしも経営者本人だけと限られるわけではない

Q 保証人が、破産手続・民事再生手続といった法的手続により保証債務を整理する場合とガイドラインにより整理する場合では、どのような点が違うのか

A 法的手続による保証債務の整理の場合、破産においては債務整理案に対する債権者の同意は不要。民事再生(小規模個人再生)においては債権者の過半数または債権額の2分の1以上の反対がなければ、全ての債権者に対して債務整理は有効。ただし、どちらのケースも保証人が破産・民事再生をしたことは、官報に掲載される。

ガイドラインによる保証債務の整理の場合、債務整理の成立には全ての対象債権者の同意が必要となるというハードルがあるが、保証人が債務整理をしたという情報は公開されない。

Q 保証人がガイドラインを利用する上で、取引先の金融機関に事前に相談する必要はあるのか

A ガイドラインの利用に当たり、保証人は十分な時間的余裕をもって取引先の金融機関に事前に相談することが望ましいとはしているが、必ずしも相談しなかったからと言って、ガイドラインの利用要件に当てはまらないわけではない。

Q 「対象債権者」とは、どのような債権者のことを指すのか

A 中小企業に対する金融債権を有する金融機関等であって、現に経営者に対して保証債権を有するもの、または将来これを有する可能性のあるものが「対象債権者」の定義。信用保証協会(代位弁済前も含む)、既存の債権者から保証債権の譲渡を受けた債権回
収会社(サービサー)、公的金融機関等も含まれる。
なお、保証債権が、長期延滞等の事情で債権回収会社(サービサー)等に売却・譲渡される場合においても、ガイドラインの趣旨に沿った運用が行われることが、方向性として期待されている。
ただし、すでに保証履行、つまり連帯保証人が代わりにお金を債権者に返して、結果として求償権を有することとなった保証人は含まれない。

Q 「金融債権」の定義は?

A 銀行取引約定書等が適用される取引、その他の金銭消費貸借契約等の金融取引に基づく債権を指す。

Q 「弁済について誠実」や「財産状況等(負債の状況等を含む。)について適時適切に開示」という条件があるが、債務整理着手前や一時停止前に、債務不履行や財産状況等の不正確な開示があった場合は、ガイドラインは適用されなくなってしまうのか。

A 主たる債務者および保証人の双方が、弁済について誠実であること、財産状況等について適時適切に開示していることという要件は、債務整理着手後や一時停止後の行為に限定されるものではない
債務整理着手後や一時停止後における適時適切な開示等の要件は、厳格に適用されるべきものとする。
一方で、債務整理着手前や一時停止前において、主たる債務者または保証人による債務不履行や財産状況等の不正確な開示があったことなどをもって直ちにガイドラインの適用が否定されるとは限らない。
債務不履行や財産の状況等の不正確な開示の金額およびその態様、私的流用の有無等を踏まえた動機の悪質性といった点を総合的に勘案して判断すべきとされる。

Q 廃業を検討していたところ、昔連帯保証人になった先が、法的倒産手続の申立てを行ってしまった。そのため、金融機関から、連帯保証人として、全額を代わりに返せと言われてしまった。
このような「保証債務の履行」を求められた後においても、保証人は保証債務の整理の申し出を行うことができるか。

A できる。対象債権者から保証債務の履行を求められた後においても、保証人は保証債務の整理の申し出を行うことが可能

Q 実際にガイドラインを利用するにあたり、対象債権者が同意しなくても致し方ないという「合理的な不同意事由」というのは、具体的にどのようなものがあるか

A 保証人が適格要件を満たさない、一時停止等の要請後に無断で財産を処分した、必要な情報開示を行わないなどの事由等、借りた側・保証人側の問題で、債務整理手続の円滑な実施が困難な場合をいう。

Q 大部分の対象債権者が保証債務の弁済計画案に同意したものの、一部の対象債権者の同意が得られないときは、どうなるのか

A 法的債務整理手続と異なり、ガイドラインに基づく債務整理においては、全ての対象債権者の弁済計画案への同意が必要なため、一部の対象債権者から弁済計画案について同意が得られない場合、債務整理は成立しない
ただし、ほとんど全ての対象債権者が合意したにもかかわらず、ごく一部の対象債権者の同意が得られない場合において、これらの債権者を対象債権者から除外した上で、弁済計画に与える影響が軽微なときは、同意しない債権者を除外することにより債務整理を成立させることが可能。
そのため、大口債権者が反対した場合、債務整理は無理だが、全体の中で少額の債権しか持たない者が反対している場合は、その反対する者を省いて行える。

Q 返済等の一時停止等は、いつから開始されるか

A 一時停止等の要請が、保証人、支援専門家等の連名した書面で行われた場合は、対象債権者が当該要請を応諾したときから開始される。

Q 返済等の一時停止等は、いつから開始されるか

A 一時停止等の要請が、保証人、支援専門家等の連名した書面で行われた場合は、対象債権者が当該要請を応諾したときから開始される。

一時停止等の要請が、債権者集会等において行われた場合においては、当該集会に参加した全ての対象債権者が当該要請を応諾したときから開始する

Q 一時停止等の要請後に、保証人が、資産の処分や新たな債務の負担を行った場合はどうなるか

A 対象債権者は、保証人に対し説明を求めたうえで、当該資産の処分代金を弁済原資に含めることを求めることや、処分を行ったことを「合理的な不同意事由」として、当該資産の処分等を行った保証人に関する債務整理に同意しないこと等が考えられるため、勝手に処分しないこと

Q 対象債権者は、一定期間の生計費に相当する額や華美でない自宅等を保証人の手元に残すことのできる残存資産に含めることを検討することとなるとしているが、具体的にはどのような資産が検討の対象となり、どのような判断により残存資産に含めることを確定するのか。

A 経営者たる保証人が、一定期間の生計費に相当する現預金や華美でない自宅等を残存資産に含めることを申し出た場合、対象債権者は、利害関係のない中立かつ公正な第三者の意見も踏まえつつ、当該申出の応否や保証人の手元に残す残存資産の範囲について検討する。

なお、残存資産の範囲の検討においては、以下のような目安となる(当事者の合意があれば、個別の事情を勘案し、回収見込額の増加額を上限として、以下のような目安を超える資産を残存資産としても差し支えない。)

保証人の年齢 給付期間
30歳未満 90日~180日
30歳未満 90日~180日
30歳以上35歳未満 90日~240日
35歳以上45歳未満 90日~270日
45歳以上60歳未満 90日~330日
60歳以上65歳未満 90日~240日

「生計費」については、1月当たりの「標準的な世帯の必要生計費」として、民事執行法施行令で定める額(33万円)を参考にする。

ベースとしては上記の考え方を踏まえ、保証人の経営資質、信頼性、窮境に陥った原因における帰責性等を勘案し、個別案件毎に増減を検討されることとなる。

Q 対象債権者は、回収見込額の増加額を上限として、経営者の安定した事業継続、事業清算後の新たな事業の開始等(以下「事業継続等」という。)のため、一定期間の生計費に相当する額や華美でない自宅等を保証人の手元に残すことのできる残存資産に含めることを検討することとなるが、華美でない自宅等に抵当権を設定している場合はどのような扱いになるか。

A 原則は、ガイドラインに基づく保証債務の弁済計画の効力は保証人の資産に対する抵当権者には及ばない。したがって、当該抵当権者は、弁済計画の成立後も、保証人に対して抵当権を実行する権利を有することとなる

ただし、ガイドラインに基づく弁済計画においては、当該計画の履行に重大な影響を及ぼす恐れのある債権者を対象債権者に含めることが可能とされている。

例えば、自宅等に対する抵当権の実行により、弁済計画において想定されている保証人の生活の経済的再建に著しく支障を来すような場合には、抵当権の実行、つまり抵当に入った土地家屋が競売等で処分されず、今後も住めるような措置が行われる余地が、条件付きながらある。

保証人が、当分の間住み続けられるよう、抵当権者である債権者を対象債権者に含めた上で弁済計画の見直しを行い、抵当権を実行する代わりに、保証人が、当該資産の「公正な価額」に相当する額を抵当権者に対して分割弁済する内容等を当該計画に記載することで、抵当権者に一定の額を分割で弁済することを条件に、自宅等の競売処分が免れるケースがある

なお、弁済条件については、保証人の収入等を勘案しつつ、保証人の生活の経済的再建に支障を来すことのないよう定めることとする。

Q 保有する資産を換価・処分して弁済に充てる内容の弁済計画案とする場合、保証人は、全財産を手放さないといけないのか

A 必ずしもそうではない。

ガイドラインを利用した場合、保証人は全財産を手放す必要はなく、少なくとも、債務整理後に以下のような自由財産を手元に残すことが可能。

  1. ・債務整理の申出後に新たに取得した財産
  2. ・差押禁止財産(生活に欠くことのできない家財道具等)
  3. ・現金(99万円)
  4. ・破産法第34条第4項に基づく自由財産の拡張に係る裁判所の実務運用に従い、通常、拡張が認められると考えられる財産

以上は手元に残すことができる。

また、自由財産に加えて、経営者の安定した事業継続等のため、一定期間の生計費に相当する額や華美でない自宅等についても、残存資産とすることが検討される。

Q 「保証債務の弁済計画は(原則5年以内)」とありますが、5年超の弁済計画も、必要に応じて認められるか

A 個別事情等を考慮して、関係者間の合意があれば、5年を超える期間の弁済計画を策定することも可能。

Q 「処分・換価の代わりに「公正な価額」に相当する額を弁済する」とありますが、「公正な価額」はどのように算定されるか

A 関係者間の合意に基づき適切な評価基準日を設定し、当該期日に処分を行ったものとして資産価額を評価する。

具体的には、法的倒産手続における財産の評定の運用に従うことが考えられます。

Q 保有する資産を換価・処分して弁済に充てる内容の弁済計画案とする場合、債権額20万円未満の債権者は、対象債権者にはならないのか

A 対象債権者間の合意により、対象債権者となる場合があり得る。

例えば、20万円未満の債権者の数が多い場合において、これらの全ての債権者に対して全額を弁済すると、対象債権者に対する返済原資が減り、対象債権者に対して破産手続による回収の見込みを下回る弁済しかできず、ガイドラインに適合した弁済計画案が作成できなくなるおそれがある可能性が出てくる

この場合、破産手続による回収の見込みを下回ることがないよう20万円未満の債権者も対象債権者として、全額の弁済を行うのではなく、保証債務の免除を要請することが考えられる。

以上、この経営者保証ガイドラインに関する点は、難解な点が多いですが、難しい部分は弁護士などの専門家の説明を受けることが重要です。

2 まとめ

今回は、事業廃業のケースを主体に、廃業の上で倒産・民事再生以外の手法で軟着陸ができる、経営者保証ガイドラインについても重点的に解説しました。建設業の廃業に関しては、事業そのものを廃業するケースと、建設業許可の返上はするが、事業は続けるという2つのケースがあります。

事業そのものを廃業したくても、様々な事情があってできないという場合、経営者保証ガイドラインの活用等を検討するのも一つの手段と言えます。

建設業許可申請が全国一律76,000円!KiND行政書士事務所:東京