建設業許可が不要な工事とは?

建設業者が工事を行う上では、「建設業許可」がどのようなケースでも必要という訳ではありません。一定の条件に当てはまれば、建設業許可を取得していなくても工事に携わることができます。ただし、建設業許可を取得していないことで、事業が制約を受けることもあるため、一定の注意も必要です。
そこでこの記事では「建設業許可が不要な工事」及び、建設業許可の取得に関するメリット・デメリット・注意点について解説するので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
1 建設業許可が不要な工事の条件
一般的な原則としては、建設に携わる事業者(法人・個人事業主)は、公共工事・民間工事を問わず、工事を行う場合は、建設業法3条に基づき、建設業許可を受ける必要があります。
しかし、「軽微な建設工事のみ」を請け負う場合には、建設業許可がなくても、建設工事を行うことができます。まずは「軽微な建設工事」の具体的な内容を見て行きましょう。
1-1 建設業許可が必要な工事の基準は?
建設業許可が必要な工事の基準は下記の通りです。
①建築一式工事については、工事1件の請負代金の額が1,500万円以上の工事または延べ面積が150㎡以上の木造住宅工事
②建築一式工事以外の建設工事については、工事1件の請負代金の額が500万円以上の工事(①、②とも消費税込みの金額)
そのため、一般的な住宅を建築する場合は、多くのケースで建設業許可が必要になります。下請けとして携わる場合も、建設業許可が必要です。
1-2 建設業許可なしで工事できるケースは
建設業許可なしで工事できるケースは、1-1と正反対になります。
①建築一式工事については、工事1件の請負代金の額が1,500万円未満の工事または延べ面積が150㎡以上の木造住宅工事
②建築一式工事以外の建設工事については、工事1件の請負代金の額が500万円未満の工事(①、②とも消費税込みの金額)
注意すべきは、金額の面だけでなく、木造住宅以外の住宅(鉄筋コンクリート等)などは建設業許可が必要となるという点です。
また、消費税に関しても見落とされがちですが、上記の金額に含まれるので注意が必要です。2020年8月現在の消費税の金額は10%ですので、本体価格+消費税で判断する必要があります。
なお、注文者が材料を提供してくれて、請負代金の額に材料価格が含まれない場合は、市場価格及び運送費を加えた額となります。そのため、よほど軽微な工事でない限りは、500万円という基準に抵触することが想定されます。
建設業許可が必要な金額の場合、建設業許可の注文書を分割し、請負金額以下にしようとすることもできません。正当な理由がない限りは、分割した金額の合計額を請負額とみなすため、いわゆる「裏技」的な回避策を取る事はできない仕組みになっています。
いずれにせよ、建設業許可がないと建設工事に携われるケースは限られると留意しておくべきでしょう。
1-3 建設業許可取得における留意点
建設業許可に関しては、取得時・取得後の留意点があります。
①建設業許可の取得費用・更新費がかかる
まず、知事や大臣の許可などで、9万円以上の費用がかかります。また、建設業許可を専門とする行政書士に依頼する場合は、5万~10万円程度の手数料がかかります。
建設業許可の書類作成は煩雑ですので、多くのケースでは行政書士に依頼することとなる可能性が高いと思われます。後でも述べますが、住所の移転や役員変更など、様々な局面で変更手続きが必要になります。
そのため、手続き漏れをなくすという観点では、行政書士に一任し、積極的なコミュニケーション(こういう変更がありましたが、手続きは必要ですか、もし必要なら、代理でお願いします)を取る必要があると言えます。
②会社・事業主の経営体制が整わないと取得できない
建設業許可を取得するためには、財務体質が健全であること(貸借対照表に500万円以上の純資産が存在・もしくは500万円以上の残高証明書の提出)や、実務経験のある役員の配置など、様々な要件が必要とされます。特に実務経験・財産要件に関しては、様々な意味でハードルが高くなります。
また、代表者や代表取締役が、過去に何らかの犯罪を行い、有罪判決を受けていた場合は、その判決の内容・期間によっては、許可が受けられないパターンもあります。もちろん、反社会的勢力と付き合いがある場合なども、許可を受けることができません。後から発覚した場合は、罰則や許可の取り消しなど厳しい処分があります。
また、仮に内容を偽って許可を取得できたとしても、不正が判明した時点で許可が取り消しとなります。
加えて、各地方整備局のホームページに、法人名・屋号・氏名・住所・処分内容・理由などが掲載されてしまい、事業者の信頼失墜だけでなく、今後建設業許可を再取得することは相当厳しくなることも想定できます。
それだけ、建設業許可の取得は手続き面・要件面でもハードルが存在すると言う事を念頭に置くと良いでしょう。
1-4 軽微な工事であっても必要なこととは
軽微な建設工事だけを請けようとする場合、建設業許可の必要がなく、建設業法の拘束・罰則もないのではないかと思う人もいるかもしれません。確かに許可の必要はないとしても、法律に関する拘束に関しては、建設業許可の有無を問わず対象となります。
建設業を営む限りは、建設業法に則って建設工事を行う必要があり、違反があれば処分対象になります。建設業法において、建設業の定義は、「元請、下請その他いかなる名義をもつてするかを問わず、建設工事の完成を請け負う営業をいう。(建設業法第2条2項)」とされているからです。
つまり、建設業許可の取得の有無にかかわらず、建設工事に携わっている限りは、建設業とみなされ、各種建設業に関する法令を遵守する必要があります。
1-5 建設業許可取得の有無が信頼性を分ける
建設業許可が不要な工事は確かにあるとはいえ、相当な制限を受けることになります。建設業許可を取得しているか否かは、工事の規模・業務範囲だけでなく、事業に関する信頼性や融資のしやすさ、信頼度など様々な面に影響すると言って良いでしょう。
これは建設業だけでなくリフォーム業なども同じです。ある程度大きな規模の業務を受けられるか否かは、建設業許可の有無に大きく左右されます。そのため、建設に関わることが想定される業種であれば早いうちに、建設業許可の取得を積極的に考えたほうが良いでしょう。
2 建設業許可の必要性と注意点、未許可のデメリット
次は、建設業許可を有しない事によるデメリット、許可の必要性や注意点をそれぞれ挙げていきます。
2-1 未許可では規模の大きい仕事を受けられない
下記4つの「いずれか」に該当する工事、つまり大抵の中規模以上の工事に下請けの立場としても関与できないこととなります。
- ①工事1件の請負代金の額が、建築一式工事1,500万円以上の工事
- ②延べ面積150㎡を越える
- ③木造素材以外を使った住宅工事
- ④建築一式工事以外の建設工事で500万円以上の工事
また、意図的でないケースであっても、上記の事業に関する下請け契約を結んだ場合は、元請の建設業者も建設業法違反になり、監督処分・営業停止処分などの対象となってしまいます。
もちろん、上記のような大きい工事を請けてしまった事業者自体にも罰則がありますので、元請仕事を提供してくれるクライアントに対しても、大きな迷惑をかけてしまう恐れがあるわけです。
もし、上記のような下請け契約をしてしまったり、規模の大きい工事に関与してしまうと無許可営業とみなされます。具体的には、許可を受けないで建設業を営む者の不正行為等に対する監督処分要領第1第1項第3号により、原則として3日以上の営業停止処分となります。
3日以上の営業停止、とだけ考えると一見軽そうに誤解されるかもしれませんが、営業停止中は、「全ての契約している業務を解除」しないといけません。つまり、一気に仕事が全てなくなるわけです。
また建設業法第47条の規定に基づき、3年以下の懲役又は300万円以下の罰金に処せられることになるため、営業停止に加え、代表者などへの刑事処分など厳しい罰則が適用されます。
加えて、金融機関や取引先などの関与先も、相当厳しい目で見てくること、時には取引停止や融資の見直し等の可能性も考えたほうが良いでしょう。
2-2 建設業許可の必要性
ここまで、建設業許可を取得しないでできる工事に加え、許可を取得しないことのデメリットを多く述べてきました。建設業を取得しない状態でいることは、やはり事業を進めるにおいてハンディがあります。
逆に、建設業許可を取得した場合は、どのようなメリットがあるのでしょうか。建設業許可取得のメリット及びデメリットを挙げます。
①事業の信頼性の向上
建設業許可を取得するプロセスでは、財産的要件や役職員の実務経験、重大な犯罪を犯していないことなどに加え、反社会的勢力との関与がないことが条件になりますので、コンプライアンスが厳しく求められる現在、「建設業許可を取得している」ことは、事業の信頼性を強く高める一因になります。
特に、反社会的勢力の関与の有無に関しては、あらゆる企業との関わりにおいて重大な要素となります。(反社会的勢力の定義としては、いわゆる暴力団、暴力団員、暴力団準構成員、暴力団関係企業など、暴力団関連そのものだけでなく、暴力団員でなくなった時から5年を経過しない者、総会屋等、社会運動等標ぼうゴロまたは特殊知能暴力集団等、その他これらに準ずる者なども反社会的勢力として定義されます)
反社会的勢力と定義される人間が、口座開設をしたり、家族の名義で車を購入するなどして逮捕されることが、時折報道されます。警察を始めとする行政サイドだけでなく、あらゆる企業において、企業が反社会的勢力との関与することを問題視しています。
企業の多くは、反社会的勢力の人間が社内にいる企業だけでなく、反社会的勢力と関与している企業とも取引を行いません。企業・個人が反社会的勢力と関与があるかを確認するサービスまであるくらいです。
加えて、多くの企業と契約したり、金融機関で口座開設・融資を行う場合、「反社会的勢力と関与がないことの誓約書」に署名を依頼されるケースが多いかと思います。
例えば金融機関であれば、「反社会的勢力と関与していないこと」に加え、「反社会的勢力と関与があることが後から判明した場合は、
- ・預金口座の停止・強制解約
- ・銀行に損害を生じさせた場合は損害額の支払い
- ・融資の場合は、期限の利益(約束した返済期間までは、返済を行わなくてよい)を喪失し、借りたお金を一括で返済しなければならない
- ・口座開設時に各種契約書で、反社会的勢力と関与がないことを確約しているのに、実際は関わりがあったということで、詐欺などの刑事事件に発展したり、民事で損害賠償を請求される可能性もありうる
など、大きなペナルティがあります。
警察の指導もあり、それだけあらゆる企業は、反社会的勢力と絶対に関与しないという強い姿勢を示しているのです。
建設業許可を取得していると言うことは、取得のプロセスで反社会的勢力と関与の有無が厳しく問われますので、いわゆる「反社チェック」を実質的に受け、基本的に問題がないと国・都道府県が認めた事とも言えます。
なお、反社会的勢力に関する毅然たる対応は、建設業の適正な運営の上で極めて重要です。後ほど詳しく、反社会的勢力への対処法なども説明します。
②財産的基礎があることの証明
建設業許可の取得のためには、
- ・直近の事業年度における決算書において、貸借対照表の純資産の部合計額が500万円以上である
- ・500万円以上の金額が記載された残高証明書が存在する
上記のように、500万円以上の現預金・純資産を有する事が条件の一つです。
建設業許可を取得していることは、「500万円以上の資産は有しており、経営面では安定しているであろう」ということの間接的な証明になります。
この500万円に関しては、実は純資産が500万円に満たないというケースであっても、「残高が500万円以上ある銀行残高証明書」を利用することもできます。
月末など売掛金が入金されると同時に、銀行残高証明書を作成するという方法でも大丈夫ですが、東京都をはじめ、一般的には「発行日から1ヶ月以内」の残高証明書が必要になる点は注意した方が良く、この場合は特に残高証明書の日にちに注意しながら、話を進めていく事が望ましいと言えます。
③金融機関からの融資が受けやすくなる
建設業という業態は、設備投資などで額の大きい固定資産が必要となるケースや、運転資金が必要になるケースが多くあります。その場合、建設業許可を取得しているということは、事業を行うに当たり、人・お金など重要な要件を満たしていることの証明になりますので、プラスに働きます。
また、融資の際に建設業許可証の証明の写しを提出することで、融資審査や融資金額の面で大きくプラスに働くことが想定されます。
④時間が経つほど建設事業者としての信用が積み上がる
建設業許可の場合、「神奈川県知事許可 般-○○ 第○○○○○○○○号等」のように、取得年と番号が併記されます。
以前から建設業許可を得ている場合は、建設業許可番号を見るだけで、大きな問題も起こさず、継続して建設業を続けているなと言うことがわかります。
やはり、ビジネスというのは信用の蓄積、加えて建設業の場合には「ご安全に」という言葉が多用されるように、安全への配慮や労災の防止が求められます。
建設業許可を取得していても、致命的な事故やトラブルを起こすなどすると、許可が取り消されてしまう事があります。それ故に、番号が変わらず、前から建設業を続けていると言うことは、これまで安全第一で、誠実に事業の成果を積み上げてきた証明になると言えます。
⑤公共事業(公共工事)に入札できる
公共事業への入札には、経営事項審査(経審)を受けている事が前提となります。また、経営事項審査の評点が高いほど、当然入札時に有利になります。
経営事項審査を受けるためには、建設業許可を取得していることが必要となり、必然的に、「公共事業への入札=建設業許可の取得及び経営事項審査を受けている」ということが要されます。(当然、経営事項審査で高い評点を取る事も求められます)
公共工事に関しては、収益性という観点で見ると、近年の行政のコスト削減などもあり、民間工事に比べると、必ずしも収益性が高いとは限らない事業もあるかもしれません。
しかし、公共工事を手がけ、完成させた実績というのはけして軽視できません。特に、地方では、建設業の公共工事で見事な実績を挙げた事例などは表彰されることがあります。
このような表彰を受けると、地域によっては新聞などに掲載されることもあり、一般的な広告よりもさらに強い広告効果・信頼度向上が期待できます。
建設業許可取得のデメリット・注意点
①事業・会社として組織をしっかり固めるためのコストがかかる
まず、これはデメリットではなく注意点であり、「大変な反面、望まく、本来あるべきことだ」という前提を元に説明します。
建設業許可を取得するための、人的・資本・内部体制の整備のコストは相当な物があります。
また、厚生年金・労災保険・雇用保険など社会保険の加入や労働安全衛生に関する事項の整備など、「安全のために大切だけれどもコストがかかること」を積極的に行っていく必要があります。
特に事業立ち上げ当初は、よほどのコネクションがない限り、人・物・お金などのリソースが限られるため、なかなか体制の整備・各種社会保険への加入など、「確かに必要だけれども、そこまでリソースを回す余裕が作りにくい」という事情もあるでしょう。
しかし、組織を拡大したり、事業を継続的な物にしていくためには、経験豊富な人材の採用や人材の育成なども考えていかないといけません。
ここで、職人・一人親方的思考から、経営者・人材採用・人の育成など、「経営」というフェーズに入る必要が出てきます。
どんな事業であっても、自分の事業という観点から、組織で行う事業というシフトチェンジが求められます。建設業の場合は、「職人」→「経営者」へのシフトチェンジを求められるフェーズが、他の事業より早い(加えて、工事の精度・安全確保のためにチームワークが要求される)と考えておいた方がよいでしょう。
②コンプライアンス遵守の徹底、反社会的勢力との関与の排除が厳しく要される
建設業許可を取得することだけでなく、事業を健全に行うという観点で重要なのが、「コンプライアンス遵守」の徹底です。コンプライアンス遵守に関しては、けしてきれい事ではなく、事業を着実・継続的に続ける上で重要な、「守備」の側面と言えます。
まず、役員や専任技術者など主要役職員の法令遵守は重要です。加えて、人の面で、「反社会的勢力、もしくは反社会的勢力との密接交際者を採用しない」、「反社会的勢力と接点を持たない・利益供与をしない」などの点も重要になります。
飲み屋だけでなく、一般のビジネスを行う上で出会った人であっても、「実は反社会的勢力の一因であった」「依頼をしてきたクライアントが実は反社会的勢力や、反社会的勢力との強いつながりが存在する人物であった」という可能性は、けして皆無とは言えません。
プライベートの接点からビジネスの領域に入り込んでくる可能性もありますので、軽視しない方が良いでしょう。
一般の会社でも、反社会的勢力との関与を疑われるだけで、事業として致命的なダメージをうける恐れがあります。ただ、建設業の場合は、事業そのものの根幹である建設業許可の取り消しという、より恐ろしい事態に繋がる可能性があります。
建設業許可を取得している会社で反社会的勢力との関与や利益供与が発覚すると、免許取り消しやその他の罰則、関与している会社からの損害賠償請求など、致命的な問題に発展しかねません。(もちろん、暴力団員や、暴力団を脱退してから5年を経過しない者を雇用している場合は、暴力団員と密接な関係を有する扱いとなります)
改めて反社会的勢力につけいられないようにする上で、反社会的勢力が接近してきたときの対応指針を整備しておくことは重要と言えます。
神奈川県暴追センターのホームページでは、暴力団や半グレなど、反社会的勢力と対峙する際の重要ポイントが挙げられています。中でも、普段から気をつけておきたいことをピックアップします。
・常に記録、録音、複数で対応
まず、全ての対策の大前提として、常に記録(メモ)、録音(堂々とICレコーダーを置いても、あるいは反社会的勢力相手の場合は隠し録音でもOK)、一人で対応すると相手のペースに飲まれますので、複数で対応することが要されます。
・相手の要求の把握
相手に対し金品や利益供与を直接的な言葉で求めるのは、犯罪に当たるため、相手側は「誠意を見せろ」など曖昧な言葉で、金品や利益供与を求めてきます。その際は、「誠意とは具体的にどのようなことでしょうか」と、あえて言うのも一つの策です。
「お前が考えろ」などボールを返してくるかもしれませんが、「いえ、当方の考えに齟齬があってはいけないので、具体的におっしゃっていただけますか」など、あえて道化を演じ、相手方を退散させるか、もしくは少しでも金品・利益供与の要求を匂わす言動があれば、警察・都道府県の暴力団追放センターに連絡する必要があります。
・念書、一筆書けなどの要求は断固拒否
念書、詫び状など、あらゆる書面に関しては、署名を要求されても断固拒否してください。
また、団体によっては、白紙や名刺などに署名・押印をさせるパターンもあるようですが、後から何かを書き込まれ、不当な目的で利用される場合があります。
そのため、これも「自社の規定で書面への一筆や白紙・名刺などへの署名・捺印は禁止されている」など、「あくまで決まり」として押し通します。
それでも強要してくる場合は、#9110の警察相談ダイヤルや、各都道府県の暴追センターへ電話し、このような要求を受けた旨伝えてください。
他にも、反社会的勢力への対応については注意すべき点が多々ありますので、各都道府県の暴追センターのホームページを確認し、平常時から対応を整備しておくと良いでしょう。
暴力団と関与すると、様々な手口で徹底的に吸い尽くされる恐れがあります。
③建設業許可の取得・維持にかかるコスト
①とも重なる部分がありますが、建設業許可の取得・維持にかかる費用・手間などのコストはどうしても生じてしまいます。
建設業許可を取得する費用として、単一の都道府県だと知事許可で9万円(2020年現在)、複数の都道府県にまたがる場合は国土交通大臣許可で15万円がかかります。
また、建設業許可取得後に、管理責任者・役員・営業所・専任技術者など各種変更があった際に届け出ることが義務づけられています。また、毎年の決算報告届も、決算終了時から4ヶ月以内に届け出る必要があります。
加えて、1年に1回、前事業年の工事実績などを報告する義務もあります。工事実績については、日頃から適切な記録を行う必要があります。
手続きを忘れてしまうと6か月以下の懲役または50万円以下の罰金があります。
また、人の常として、建設業許可の更新作業というのは、どうしても後回し・ギリギリになってしまうものです。そんなときに、変更届が出ていないという事態が生じると、「まずは変更届の提出・受理」となるため、場合によっては建設業許可の更新ができなくなってしまうケースも想定されます。
そのため、建設業許可の維持には、費用だけでなく、手間・人的コスト(手続きの手間・建設業の実務要件を満たす人材の採用)・費用コストなどがかかることが想定されます。
建設業の取得・更新や変更の手続きについては、会社の体制が整うなどしない限りは、建設業を得意とする行政書士に依頼し、各種手続きを一切委任する形を取ることが確実かと思われます。
2-3 建設業許可の取得を積極的に考える
ここまで、建設業許可の取得のメリット・デメリット・注意点などに関し述べてきました。
建設業許可の取得・維持は一定の手間がかかる反面、建設業許可を取得することによる事業の広がりや信頼性の担保、公共事業への入札など、メリットの面も相当大きいと言えます。
実際問題として、ある程度大きな規模の工事になると、下請けの立場でも建設業許可が必要になりますし、元請事業者側も、「建設業許可が必要ない工事」であっても、「建設業許可を得ている事業者の方が信頼できる」と考える傾向にあります。
ですので、建設に携わる仕事をしているにもかかわらず、建設業許可を取らないでいると言うことは、事業の成長の機会を放棄しているのに近い状態と言えます。
ぜひ、建設業許可の取得に対する前向きな考えを持ち、行動に移す必要があるかと思います。
3 まとめ
建設業許可を取得しなくても、軽微な工事は可能ですが、事業を拡大したり、公共事業を受注したり、大きな規模の仕事に元請け・下請けとして関わる場合など、様々な局面で建設業許可の有無が影響します。事業の拡大のためにも建設業取得を前向きに考えて行くことが望ましいでしょう。