建設業界に就職したい方必見! 建設業の仕事内容や年収、おすすめ資格
米中貿易摩擦や新型コロナウィルス感染症の影響を受け日本経済も景気の後退が危ぶまれる中、就職を希望している方にとっては業界の選択で悩むことも多いのではないでしょうか。そんな方には人手不足が深刻化している業界の1つである建設業も有力候補に入るはずです。
そこで今回は建設業の仕事内容、おすすめの職種のほか、職種別の年収や建設業界へ就職する際に役立つ資格などについて解説していきます。建設業の仕事に関心のある方、建設業関連の資格や年収などの情報が欲しい方などは是非参考にしてください。
目次
1 建設業の仕事内容
建設業の仕事には様々なタイプがあり広範囲に及びます。ここでは建設業にはどのような仕事があり、どのような内容なのかを簡単に紹介していきましょう。
1-1 建設業とは
建設業を法律的に説明すると、建設業法(第2条2項)においては建設業のことを「元請、下請その他いかなる名義をもつてするかを問わず、建設工事の完成を請け負う営業」と定めています。そして、その「建設工事」とは下表(別表第一)に示されている仕事が建設業法において該当するものです。
別表第一
土木一式工事 | 土木工事業 |
---|---|
建築一式工事 | 建築工事業 |
大工工事 | 大工工事業 |
左官工事 | 左官工事業 |
とび・土工・コンクリート工事 | とび・土工工事業 |
石工事 | 石工事業 |
屋根工事 | 屋根工事業 |
電気工事 | 電気工事業 |
管工事 | 管工事業 |
タイル・れんが・ブロック工事 | タイル・れんが・ブロック工事業 |
鋼構造物工事 | 鋼構造物工事業 |
鉄筋工事 | 鉄筋工事業 |
舗装工事 | 舗装工事業 |
しゆんせつ工事 | しゆんせつ工事業 |
板金工事 | 板金工事業 |
ガラス工事 | ガラス工事業 |
塗装工事 | 塗装工事業 |
防水工事 | 防水工事業 |
内装仕上工事 | 内装仕上工事業 |
機械器具設置工事 | 機械器具設置工事業 |
熱絶縁工事 | 熱絶縁工事業 |
電気通信工事 | 電気通信工事業 |
造園工事 | 造園工事業 |
さく井工事 | さく井工事業 |
建具工事 | 建具工事業 |
水道施設工事 | 水道施設工事業 |
消防施設工事 | 消防施設工事業 |
清掃施設工事 | 清掃施設工事業 |
解体工事 | 解体工事業 |
①建設工事の分類
建設工事は一式工事と専門工事に分かれており、前者は「土木一式工事」と「建築一式工事」の2つで、専門工事が一式工事より下に記載されてある「大工工事」や「左官工事」などの個別の専門的な工事です。
一式工事は特定の建物や土木の工事を一式まとめて行う工事であり、それを請け負う業者は総合建設業者と呼ばれ、通称「ゼネコン(ゼネラルコンストラクター)」と言われる企業が行っています。他方、専門工事を請け負う企業は専門工事業者と呼ばれゼネコン等が請け負った工事物件に加わり担当の工事を受け持つ事業者です。
大規模な一式工事になると上表にある多くの専門工事が必要となるため、請け負ったゼネコンには各種の多数の工事を同時並行的に進行させる必要もあるため高度な技術・知識のほか管理・調整能力が求められます。
②土木一式工事と建築一式工事の定義
1)土木一式工事:
土木一式工事は、原則的に元請業者の立場で、総合的な企画、指導、調整のもとに土木工作物を建設する工事(補修、改造又は解体する工事を含む)のことで、複数の下請業者によって施工される大規模かつ複雑な工事です。
具体的な一式工事では、橋梁、トンネル、油送、ダム、道路、空港、港湾、砂防、高速道路、鉄道軌道、地下鉄、団地等造成、公道下の下水道、水路などの工事を一式で請け負うことになります。
2)建築一式工事
建築一式工事は原則的に元請業者の立場で、総合的な企画、指導、調整のもとに建築物を建設する工事で、複数の下請業者によって施工される大規模かつ複雑な工事のことです。
具体的な一式工事は、建築確認を必要とする新築工事・増改築、大規模改修工事などになります。一棟の住宅を建設する工事などは建築一式工事に該当し、新築の建築一式工事には大工工事、内装工事、管工事、電気工事などが含まれそれらを一式として請け負うのです。
1-2 建設業の仕事の役割
建設業が社会にとってどのような役割を果たし、どのように評価される仕事なのかを説明しましょう。
①社会貢献性の高い仕事
建設業が担う建築や土木の工事には、個人の民家、企業の建物、地域住民の多くが利用する公共施設や商業施設などのほか、社会基盤となる道路、橋梁、上下水道やパワープラントなどのインフラが含まれます。
つまり、人々の暮らしや社会活動に不可欠なものを整備するための仕事であるため、社会貢献性の高い仕事と言ってよいでしょう。建設業の仕事量はその時の経済状況などに左右されますが、人間社会になくてはならい産業であり評価されるべき仕事です。
②仕事の結果が実感しやすいモノづくり
モノづくりと言えば製造業をイメージする方は多いでしょうが、建設業もモノづくりの産業の1つです。しかも、個人の住宅のほか、学校、病院、道路、橋やトンネルなどの公共インフラに加え、「東京スカイツリー」のような街の顔となる建築物などを作り出すこともあり、仕事の成果を実感することができます。
建物のほんの一部分の特定の工事などを担当する仕事であっても自分が携わった物件が長きに渡って存在して利用されることは誇りに感じやすいはずです。勤める業界によっては自分の家族に仕事の内容を説明しても理解しにくい場合もありますが、建設業なら家族に自慢しやすい仕事と言えるでしょう。
③他者との協力・協調が必要な仕事
一式工事はもちろんですが、専門工事においても建設業は他者との協力や協調が必要であり、その内容の善し悪しが工事の進捗や完成度に影響することも少なくありません。
他者と上手くコミュニケーションをとり連携を密にすることで自分が担当する仕事も予定通りにスムーズに完了できるようになります。他者と協力しながら仕事を進めることにやりがいを感じる方などは最適な業界になり得るはずです。
1-3 建設業の主な特徴
建設業では以下のような代表的な特徴が見られます。
①様々な職種が存在する
先の別表を見てもわかるように専門工事だけでも27種類あり、その工事の中で事務職や現場職の多様な種類の職種があります。ゼネコン企業などでは事務系と技術系に大きく分かれ、前者では営業や調達、後者では施工管理(土木・建築・設備等)、設計やエンジニアリングなどに分かれているのです。
職種によっては特定の資格が必要となることもあり、誰でも簡単に従事できるとは限らない仕事も少なくありません。そうした特定の仕事はニーズが高く高額年収になるケースも少なくありません。
②収入は全産業で中の上くらい
厚生労働省の労働統計要覧の「産業別所定内給与額(平成28年6月)」を見ると、建設業の所定内給与(365.1千円)と年間賞与(948.3千円)を他の産業と比べると中ぐらいの位置になります。建設業の収入は製造業よりも少し多めで、卸・小売業や運輸・郵便業より多いです。
建設業全般での収入は決して多いとは言えないですが、大手ゼネコン企業の社員や建築士等の特定の有資格者などでは高額収入も期待できるでしょう。
③専門的な知識や技能が求められる
多様な職種が存在することからその分野での専門的な知識や技能が必要となるケースが建設業では多いです。設計では建築士、施工管理では施工管理技士といった資格が必要ですが、各専門工事においても資格取得が求められるケースは少なくありません。
また、一式工事を請け負うゼネコン企業などの施工管理や営業等においては様々な工事分野の品質、工程、安全や積算などの幅広い知識・経験が必要です。知識・資格や技能を身に着け磨いていくことが建設業では特に重要になり、それらを少しでも確保しておくと就職で有利になるでしょう。
④状況により激務となるケースも少なくない
建設業の仕事は物件の受渡日が決まっており、守れない場合はペナルティーを科されることになるため、納期厳守が各工事で徹底されます。しかし、工事の進行過程では気象条件の悪化、自然災害や事故などが発生し予定を大きく遅らせることも少なくありません。
そうした遅延が発生した場合、その遅れを取り戻すために工事従事者は残業や休日出勤などが多くなるといった激務が強いられるケースが少なくないのです。ほぼ定量で定型的な仕事を毎日こなすといったタイプの職業と異なり建設業はハードな業務になる可能性があります。
2 建設業のおすすめ職種とは
ここでは建設業にはどのような職種があり、どの職種がおすすめになるのかを確認していきましょう。
2-1 建設業の職種
建設業の職種は多岐にわたりますが、下記の基準等が参考になります。
①日本標準職業分類(平成21年12月統計基準設定)
日本標準職業分類で確認できる建設業の職種は、大分類項目では「専門的・技術的職業従事者」と「建設・採掘従事者」が該当します。
専門的・技術的職業従事者の対象は「建築・土木・測量技術者」の3種類の技術者です。建設・採掘従事者には「建設躯体工事従事者」「建設従事者(建設躯体工事従事者を除く)」「電気工事従事者」「土木作業従事者」「採掘従事者」が含まれます。
なお、「建築・土木・測量技術者」は、「建築物・土木施設の計画・設計・工事監理・技術指導・施工管理・検査など」「測量計画の作成、測量作業の指揮など」を担う職種です。
「建設・採掘の職業」とは、主に身体を使用して実施する建設の作業、電気工事の作業、建設・土木工事現場での土砂の掘削などの作業、鉱物の採掘・採取の作業のことで、これらの職業は建設・土木工事の現場などに従事する職種になります。
そして、各工事従事者はさらに下記のように分類されています。
・建設躯体工事従事者:
型枠大工、とび職、鉄筋作業従事者
・建設従事者(建設躯体工事従事者を除く):
大工、ブロック積・タイル張従事者、屋根ふき従事者、左官、畳職、配管従事者、その他の建設従事者
・電気工事従事者:
送電線架線・敷設従事者、配電線架線・敷設従事者、通信線架線・敷設従事者、電気通信設備工事従事者、その他の電気工事従事者
・土木作業従事者:
土木従事者、鉄道線路工事従事者、ダム・トンネル掘削従事者
・採掘従事者:
採鉱員、石切出従事者、砂利・砂・粘土採取従事者、その他の採掘従事者
また、上記以外にも他の業界でも見られる営業、経理や情報システムといった職種も当然あります。
②ゼネコン企業の職種
一式工事を請け負うゼネコン企業の特徴的な仕事としては、営業、設計、施工、研究の4つが挙げられるでしょう。
1)営業
ゼネコン企業の営業は、発注者との直接的な窓口の役割を果たし、発注者から仕事を受注します。発注者のニーズを把握し自社の各部門と協力して企画書、提案書・見積書を提出し受注に努めるのが営業の仕事です。
ゼネコン企業が扱う物件は社会インフラや大規模施設なども多く工事金額が莫大な額になることも少なくありません。大きな仕事を扱い受注していく仕事は営業マンにとってのやりがいに繋がるでしょう。
なお、顧客は民間だけでなく官公庁が相手になるケースも多いです。官公庁では入札で受注するなど民間企業に対する営業とはやや異なり難しくなる点も少なくありません。
民間企業との取引では、相手の仕様に基づいた内容で受注するケースのほか、ゼネコン企業が独自のアイデアで提案し受注するケースも多いです。そのため顧客のニーズを捉えそれを反映した企画力が要求されることになります。
2)設計
設計の仕事は、発注者の要望を叶える建築物等を作ることを目的に、デザイン性や利便性を追い求めそれを具現化するための図面や模型などを作成する仕事です。自分の設計したデザインが形になる仕事であるため、クリエイティブな仕事を志向する方にはやりがいが持てるでしょう。
設計の対象としては、意匠、構造と設備に大きく分かれます。意匠は建築物のコンセプトやレイアウトを決め外観や内装の形状や間取りなどを設計することです。構造は耐震性や防風性などの安全性能や、梁や柱等の骨組みの強度などを設計することで、設備は建築物の空調、電気、水道などの専門設備を設計することを指します。
設計の仕事では建築士などの資格が必要となるケースも少なくないです。また、グラフィックデザインやCADなどの技術も重要で就職で役立つ資格もあります。
3)施工管理
建築工事で設定された施工計画の工期にあわせて、各工程の予定を決め必要となる資材の選定・発注、重機・機器等や作業員の確保などを行うのが施工管理の仕事です。作業工程の管理とともに工事の品質、安全と原価を計画通りに仕上げていくのも施工管理が担う役割になります。
建築工事の現場監督はその物件の施工管理の責任者で、施工管理技士が就きます。施工管理の仕事では建築工事での多くの知識やスキルが求められるとともに、多様な作業工程を調整し品質を維持するというマネジメント能力も欠かせません。責任の重い仕事ですが、その分やりがいがあり収入もよい仕事になるでしょう。
4)研究開発
研究開発は、建物等の構造・形状、資材(高強度、耐火性等の面から)、作業支援機器、工法などの開発を行うのが仕事です。研究開発の成果は建物等のコスト、品質や納期に影響するため各ゼネコン企業は積極的に投資を行っています。
大学の工学部や建築系の学科などの出身者や、建築士や技術士などの資格を持っている方などが求められるケースが多いです。
なお、ゼネコン企業の職種は多様で株式会社大林組を例にすると以下のような職種があります。
営業 | 顧客のニーズに応じた提案を行い、受注後はプロジェクトマネージャーとして、工事全体に関わる |
---|---|
営業支援(営業企画・不動産・テナント営業・契約) | 各種情報を収集・分析し、営業戦略全体の立案や、開発事業の支援を行うほか契約内容の審査まで担う |
営業支援(見積・積算) | 提案時に必要となる工事費を、設計図をもとに材料の数量を算出するなどして適性に算出する |
開発事業 | 地域社会等のニーズを反映した企画や事業スキームの構築、事業運営にいたるまで、街全体を作り出すという役割を担う |
設計 | 提案時の設計やプロジェクト進行時の支援などを行う |
技術・研究開発 | 建設に関する新技術の研究や開発を行う |
エンジニアリング | 生産施設や再生可能エネルギー発電施設の基本計画から設計・施工までを一貫して対応。土木分野での汚染土壌対策工事、除染作業などの環境修復案件も行う |
施工管理 | 設計図から建造物へ具現化する仕事。施工に関わる人やものを現場で管理し、スムーズな工事進行を実現する |
生産支援(技術) | 施工現場を生産技術、品質管理、ICTなど、多様な面から支援する |
生産支援(生産設計) | 設計者が作成した設計図をもとに実際の施工図を描く。多様なノウハウや経験が活用できる業務 |
生産支援(調達・企画) | 調達は各現場での必要資材の発注を行い、企画では工事が円滑に進めるよう支援する |
新領域 | 再生可能エネルギー、PPP、植物工場、水素関連ビジネス等の新領域分野に関する情報収集、事業計画の立案等や、事業化後の維持、管理、運営も担う |
現場事務 | 施工現場における、工事全体の損益管理や労務などの業務を担う |
管理(総務・人事・法務・経理・財務) | 企業経営などを含み、各種の専門的な知識を駆使することで、会社の根幹を支える |
2-2 建設業のおすすめの職種
求人や収入の多さからおすすめの職種を考えていきましょう。
①求人倍率
東京労働局が公表している令和元年12月分の「職業別有効求人・求職状況(一般常用)」のデータを見ると建設関係における求人倍率は以下のようになっています。
1)建築・土木技術者等 8.79倍
2)建設・採掘の職業 7.09倍
建設躯体工事の職業 10.86倍
建設の職業 5.77倍
電気工事の職業 6.00倍
土木の職業 8.85倍
採掘の職業 1.00倍
東京都の産業全体での求人倍率は1.89倍であることを考えると、建設業関連の職種は非常に高い倍率と言えるでしょう。また、これらの職種の中では建設躯体工事、土木、建築・土木技術者等が8倍以上と高く引く手あまたの職種になっています。
②収入
厚生労働省の「平成30年 賃金構造基本統計調査」を見ると、建設業関連職種の収入は以下の通りです。
一級建築士がトップで7百万円台、次いで技術士が5百万円台半ば、以降4百万円台半ば~5百万円までに クレーン運転士、電気工、配管工、掘削・発破工、測量技術者と金属・建築塗装工 が入ります。
4百万円~4百万円台半ばまでは鉄筋工、溶接工、とび工、玉掛け作業員、建設機械運転工 です。3百万円台半ば~4百万円までには左官、型枠大工、大工、土工、はつり工 が入ります。
設計、施工管理や研究開発などを希望する場合、一級建築士や技術士の資格があると有利ですが、収入面においても優遇される可能性があるでしょう。現場の作業職を検討する場合、収入面ではクレーン運転士、電気工、配管工などが有利な職種になるはずです。
3 建設業の職種別年収
ここでは建設業の各職種における年収を賃金構造基本統計調査とゼネコン企業大手の給与から紹介していきましょう。
3-1 賃金構造基本統計調査での建設業の年収
「平成30年 賃金構造基本統計調査」の「職種別第1表 職種別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)」のデータをもとに、建設業の各職種の年収について計算した結果をまとめたものが下表の内容です。
年収の算出にあたっては、企業規模計の箇所で各職種の「きまって支給する現金給与額」×12月+「年間賞与その他特別給与額」により計算しています。その結果、年収1位は断トツで「一級建築士」、2位が「技術士」となっており、専門的・技術的職業従事者に該当する方達が上位を占めることがわかりました。
3位の「クレーン運転士」以下は5百万円未満となっており、現場作業関連職は専門的・技術的職業に比べ年収面では差があると言わざるを得ません。ただし、専門的・技術的職業の平均年齢は現場作業関連職よりも高い点は考慮しなければなりません。
職種 | 年収(千円) |
---|---|
一級建築士 | 7399.5 |
技術士 | 5614.6 |
クレーン運転士 | 4911.8 |
電気工 | 4808 |
配管工 | 4728.1 |
測量技術者 | 4699.9 |
掘削・発破工 | 4657.3 |
金属・建築塗装工 | 4564.6 |
鉄筋工 | 4473.2 |
溶接工 | 4219.5 |
とび工 | 4207.1 |
玉掛け作業員 | 4101.1 |
建設機械運転工 | 4015.8 |
左官 | 3935.3 |
型枠大工 | 3925.8 |
大工 | 3781 |
土工 | 3695.4 |
はつり工 | 3587.3 |
建具製造工 | 3477.1 |
3-2 ゼネコン企業大手の収入
参考としてゼネコン企業大手の従業員年収や初任給などを紹介しましょう。
①従業員年収
ゼネコン企業大手の従業員年収を有価証券報告書等から確認してみました。売上高や事業規模等においてスーパーゼネコンと言われる株式会社大林組と清水建設株式会社、その次のクラスに属する株式会社長谷工コーポレーションと五洋建設株式会社の従業員年収をまとめものが下表です。
2019年3月31日現在
会社名 | 従業員数(人) | 平均年齢(歳) | 平均年間給与額(千円) |
---|---|---|---|
大林組 | 8,763 | 42.5 | 10,526 |
清水建設 | 10,336 | 43.0 | 10,101 |
長谷工コーポレーション | 2,436 | 41.3 | 9,344 |
五洋建設株式会社 | 2,793 | 42.8 | 8,382 |
ゼネコン企業大手の従業員の平均年齢はやや高いですが、年収が800万円~1000万円といった高額になっており、収入面では魅力的な就職先です。職種では施工管理や設計などでは平均以上の収入が期待できるでしょう。
②ゼネコン企業大手の初任給
初任給の例(全国型・総合職)として大林組と清水建設の内容を紹介します。学歴により以下のような内容で初任給が設定されています。
なお、両者とも各種手当が用意されていますが、大林組では「割増手当、別居手当、住宅手当、宿日直手当、特殊作業手当、海外勤務手当、通勤費」といった内容です。賞与は年2回(7月、12月等)です。
大林組の初任給(2018年4月実績)(全国型) | 大林組 | 清水建設 |
---|---|---|
大学院了(博士) | 290,000円 | 290,000円 |
大学院了(修士) | 260,000円 | 260,000円 |
大卒 | 240,000円 | 240,000円 |
短大・高専卒 | 210,000円 | 220,000(高専卒) |
高卒 | 190,000円 |
4 建設業界への就職に役立つ資格
建設業界に就職する際に取っておくと有利になる、優遇されるなど役立つ資格を紹介しましょう。
1)設計系
資格名 | 主な内容 |
---|---|
一級建築士 | 一級建築士は建築士法に基づいた国家資格で国土交通大臣から認可を受け、設計業務と工事監理業務を担います。設計では住宅、学校、病院、ビル、倉庫、劇場、体育館、商業施設などすべての構造物の設計が可能です。 規模の大きな建物では一級建築士の資格が必要となるため、ゼネコン企業への就職では重要になります。建設業界で高額年収を目指すなら取っておきたい資格と言えるでしょう。 |
二級建築士 | 二級建築士も建築士法に基づいた資格ですが、主に戸建住宅などの比較的小規模な建造物のみの設計が可能です(木造、鉄筋コンクリート造、鉄骨造の設計等)。 二級建築士は都道府県知事の免許を受け設計業務、工事監理業務を行います。二級建築士を取得後、実務経験を積みながら一級建築士を目指すという方が少なくないです。 |
技術士 | 技術士は、技術分野での高度な専門技術を有する者として位置づけられる国家資格です。建設部門の技術士ではゼネコン企業等に勤めその後建設コンサルタントとして活躍するケースが多く見られます。 他方、設計業務に従事する技術士も少なくありません。ただし、建築設計よりは土木設計を担当するケースが多いです。 |
2)施工管理系
資格名 | 主な内容 |
---|---|
施工管理技士 | 施工管理技士は建設現場で施工計画書の作成、安全の遵守、工事進行の調整などを担う現場のエキスパートで、建設業法で定められた国家資格です。 土木施工管理技士、建築施工管理技士、管工事施工管理技士、電気工事施工管理技士、造園工管理技士、建設機械施工技士の種類に分かれ、各々1級と2級があります。各1級と2級の資格を有することで就職や給与(手当)で有利になるでしょう。 施工管理技士を取得すれば「専任技術者」や「主任技術者」「監理技術者」「現場代理人(現場監督)」になることが可能です。 |
建築積算士 | 建築物の工事費に関して、数量算出から工事費算定までを担う専門家のことで、公益社団法人日本建築積算協会で認定する民間資格です。 設計事務所や建築積算する事務所などで求められる資格になり、手当などが支給されるケースも少なくありません。 |
3)電気系
資格名 | 主な内容 |
---|---|
電気工事士 | 住宅、オフィスビル、工場、商業施設などの電気設備の安全を確保するために工事内容によっては、電気工事士の資格がないとその電気工事ができないと法令(電気工事士法)で定められています。 そのため建設業以外の製造業など幅広い業界で活用できる資格です(第一種と第二種の2種類あり)。 |
電気主任技術者 | 事業用電気設備等の設置者や所有者には、その設備等の工事、維持及び運用に関する保安の監督をさせるために電気主任技術者を選任しなければならないと、電気事業法で定められています。 電気主任技術者の主な仕事は、高圧受変電設備や電気設備の保守・管理などで、建設工事会社、設備管理会社などで不可欠な資格です。 電気主任技術者の資格には、第一種、第二種及び第三種電気主任技術者の3種類があり、電気工作物の電圧等によって分かれます。第一種がすべての事業用電気工作物が対象となるため、最上位資格であり高額年収(800万円以上等)も期待できるでしょう。 |
4)設備管理系
資格名 | 主な内容 |
---|---|
ボイラー技士 | ボイラー技士は、労働安全衛生法に基づく国家資格で、空調・温水ボイラーの操作、点検などの業務を担います。主に設備管理会社、製造業の工場や大型商業施設などでの求人が多いです。 ボイラー技士には特級、1級と2級があります。 |
エネルギー管理士 | エネルギー管理士は、エネルギー使用の合理化に向け、エネルギーを消費する設備の維持、エネルギーの使用の方法の改善及び監視、その他経済産業省令で定める業務の管理を担っています。 エネルギー管理士は一定以上のエネルギーを使用する工場等で設置されることが法令で義務付けられており、製造業、パワープラント・インフラ、建設及び設備業などで歓迎さえる資格です。 |
建築設備士 | 建築設備士は、空調・換気、給排水衛生、電気等の建築設備全般についての知識及び技能をもち、建築士に対して高度化・複雑化した建築設備の設計・工事監理に関する適切な助言ができる専門家(国家資格)です。建築設備士はゼネコン、建設コンサルタント会社、設備管理会社などで求められています。 |
5)消防・防災系
資格名 | 主な内容 |
---|---|
消防設備士 | 消防設備士は、消防用設備等又は特殊消防用設備等の工事、整備、点検を担う国家資格者です。劇場、デパート、ホテルなどの建物は、用途、規模、収容人員に応じて屋内消火栓設備、スプリンクラー、自動火災報知設備などの設置義務がありますが、それらの工事、整備等を行うには、消防設備士の資格が必要になります。 消防設備士はビルメンテナンス会社、防災設備設置会社、エンジニアリング会社などで求められる資格です。 |
消防設備点検資格者 | 消防設備点検資格者とは、スプリンクラーや消火栓、消火器、誘導灯などが正しく設置され、適正に維持管理されているかどうかを点検できる消防法に基づく資格です。 消防設備点検資格者は設備施工会社、ビルメンテナンス会社防災設備設置会社などで歓迎される資格です。 |
6)インテリア系
資格名 | 主な内容 |
---|---|
インテリアコーディネーター | インテリアコーディネーターは、居住者にとっての快適な住空間を作るために適切な提案や助言ができる専門家で、インテリア産業協会が認定する資格です。 内装、家具、ファブリックス、照明器具、住宅設備などのインテリアについての幅広い商品知識を有しインテリア計画や商品選定の助言を行います。 ハウスメーカー、設計事務所、工務店、内装施工業社などでの就職で有利になる可能性があります。 |
インテリアデザイナー | 「インテリアデザイナー」は、「インテリアに関する商品知識、販売技術、インテリアデザイナーとしての理解力や表現力」を有する者として日本デザインプランナー協会が認定する民間資格です。 ハウスメーカー、デザイン事務、設計事務所、家具メーカーや家具販売会社などでの就職で役立つでしょう。 |
7)その他
資格名 | 主な内容 |
---|---|
マンション管理士 | マンション管理士は、管理組合の運営、建物に関する構造上の問題や修繕工事、管理規約の修正や改正などに関して管理者や所有者等の相談にのり助言や支援等を行う専門家(国家資格)です。主にマンション管理会社、不動産会社やデベロッパーなどでの就職に有利になると見られています。 |
コンクリート診断士 | コンクリート診断士は公益社団法人日本コンクリート工学会が認定する資格です。既存コンクリート構造物を対象とし、橋梁、トンネルおよび道路土工構造物(シェッド・ 大型カルバート等)の点検・診断業務などで活躍できる資格と言えます。 コンクリート診断士は国土交通省の業務発注における技術者資格等の区分にも記載される資格で、都道府県の業務発注においても評価されている資格です。 本資格はゼネコン企業を含む建設会社、建設コンサルタント会社、土木設計事務所などで歓迎されるでしょう。 |
クレーン運転士 | クレーン運転士は、工事現場や建設現場でクレーンを使用し荷物をつり上げ移動させる際に必要な免許です。 クレーンにはいくつか種類があり、移動式の「移動式クレーン」や、工場等の天井に設置されている「天井クレーン」などがあり、取得する運転免許も違ってきます。 クレーン運転士は、建設・土木業や製造業の会社、工場・港湾・造船所等の施設を有する事業所などでのニーズが高く活躍の場が広い資格です。 |
5 まとめ
建設業は大きく建築工事と土木工事に分かれ、各々多様な専門工事で構成されますが、一式で請け負う一式工事もあります。専門工事は20以上の種類があるため、建設業の職種は多岐にわたり様々な専門性を活かせる場が多いです。
そのため建設業界への就職では設計、施工管理、電気、設備管理、インテリアなど多様な分野での資格取得が有効となります。建設業も景気に左右される業界ですが、現代においては人手不足が著しい業界であるため自身の資格も考慮しつつ就職先として一度は検討してみてください。